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復活の厄災編
第三十八話 出撃②
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昼前になる頃、広い高原に集められた隊員達の前で青白い光が現れ新たな数名が出現した。
最初に見えたのは先端が地球儀のような形をした長い杖を軽々と持ち、肌を隠す茶色のトレンチコートを着用している銀髪ショートの女性エルフ。
会議の中で《第一の矢》という魔導隊が考えだした作戦の指揮をとる彼らの隊長、名をシリアスといった。
そして次に現れたのは弓矢と剣を携え、森林色のケープを羽織った近衛隊の隊長であるジアロと、紺色の服の上に白いワンピース、翡翠色の頭には狼のような耳が生えた勇者パーティーの目である獣人のコハクだ。
「クロムさん、そちらの準備は…って!お二人共また喧嘩したんですか!?」
コハクはまっすぐ俺達の所へ走っていくと、頭を押さえて悶絶する俺とアルノアの姿が見てとれた。その隣では片頬を膨らませながら二人に顔をそむけているレズリィの姿があった。
またという発言があるようにコハクもこの見慣れた光景に少し呆れていた、だがそのどこかで緊張感のあるこの場でいつもの光景が見れたことに少し日常の安心感もあった。
「い、痛え…今日で何回叩かれなきゃいけないんだよ。」
「あなた達が喧嘩をするからです、第一傷ついた信頼は治すことは出来ないってクロムさんが言ってたじゃないですか!」
レズリィの説教話にクロムは頭の痛みで苦笑しながらも、記憶を引き出すような素振りを見せながら口を開く。
「レズリィ、もうお前だってわかってるんじゃないか?何話しても何をやっても相容れない俺達は喧嘩でしか分かち合えないことを。つまりこれは…あれだ、スキンシップってやつだ。」
「キッショ!!お前私の体目当てで触ってきやがったのか!?」
おもむろにヤバそうな単語を垂れ流したクロムを見てアルノアはドン引きして叫んだ。
「お前も触って来てんだろ同じじゃねえか。」
「一緒にするな!女は男と違って発育した箇所が多いから触れたらキモがられるのは当たり前だろ!」
「ええ何?人がせっかくこれからのことを気づかってやってんのにまたいらぬ火種を起こそうとしてるの?」
「ああ?お前が変態だって知らしめなきゃそんな行為に注意してくれる人がいなくなるからこうして話してんだろ?」
話がどんどん苛烈になっていき、お互いの距離がどんどん縮まっていく。また掴み合いになりそうな雰囲気に見兼ねたレズリィは…
「お二人共?」
影を落とした目つきで睨みながらそう一言告げると、さっきまでバチバチしていた二人が互いに横に首を振って静かになった。
「やれやれ…あなた達のリーダーは一体誰なんだ?こんな関係で指揮は成り立つのか?」
勇者パーティーの意外な側面を見て不安気にジアロがその場に入ってきた。
「ご安心を、戦いになったら切り替わりますので。そうですよねお二人共?」
怒気を含んだレズリィの問いに、クロムとアルノアの二人は恐怖でか何度も縦に首を振って応えていた。
「まぁ…今日は君達の力を頼りにしている。勇者達と共にこの危機を乗り越えてようじゃないか。」
ジアロはそう期待を込めるような笑みを浮かべ、俺達のもとを離れ隊員達がいる方へ向かった。
さすがに心配かけすぎた、ここまでくると緊張感の無さすぎで逆に戦いになった時の切り替えが大変だ。
「じゃあ…とりあえず日常パートはここまでにしておいて俺達も本腰を上げるか。」
俺はのらりと立ち上がり、大きく深呼吸をして心を切り替えた。
ここからは命のやり取りをする戦が始まる、前にいる三人も俺の言葉にあてられ緊張感が浮かびあがる。
「よし!勇者パーティー出撃だ!」
「……。」
クロムのやる気のあるかけ声が響くが、誰も応じないことに愕然とした。
「いや答えてよ!そこはなんか返事するところでしょ!」
「急に言われてもな、っていうかいつからそんなかけ声決まったんだよ。」
「私も…さっきまでの状況から急に切り替えるのはちょっと…。」
ごもっともなアルノアとレズリィの意見に俺は恥ずかしさから手を顔に押さえて言う。
「あ…あはは…俺超恥ずかしい…とりあえず行こ、皆集まってるし。」
「そっ、そうですね。」
クロムの気恥ずかしい姿を隣で見ていたコハクはこわばった笑顔とともに三人の後をついて行った。
近衛隊と魔導隊を合わせた二百の隊員達は先頭にいる二人の隊長に顔を向けた。
隊長二人は隊員達に軽く頷きかけると、集団に向いて言葉を発した。
「聞け皆!私達は今から死霊の谷にいる悪魔達を掃討し、厄災魔獣の復活を阻止する!危険な戦いだ、相手はおそらく私達の倍以上の人数、それをまとめる幹部も存在する。」
「だがそれで負け腰になることは許されない!私達が負ければ里はおろか、この東の国が谷と同じく死の土地へと変貌する。それだけは絶対に避けなければならない!利用できるものや見つけたアイデアは全て活用しろ、決して希望の火を絶やしてはならない!」
ジアロは腰から銀製の剣を高く引き抜き、シリアスも同様長い杖を高く掲げ、叫んだ。
「「霊長の里全勢力、出撃だぁぁ!」」
隊長達のかけ声の後に隊員達は腕や武器を高く掲げ、地面が響くほどの声を張り上げた。
その轟く声は里の中にも聞こえていた。里の住民達がその声が聞こえる方向に顔を向ける中、修道服に模した真っ白な正装に身を包んだ里長のフォルティアは、彼らの予想される死闘に安否を気遣っていた。
「頼んだぞ君達、頼んだぞ勇者君。私も出来るかぎりの手を打とう。」
本来なら里を守る身として自分も出向かなければならない、その役割を隊の皆に任せてしまったことに罪悪感を感じていた。
たった一日、それだけの準備期間では大勢力の帝国軍と厄災魔獣を退けることは不可能に近いだろう。
隊の皆が全滅、里が壊滅することだけは避けなければならない。それは前戦で戦う者より皆を指揮る里長がよくわかっていた。
皆が頑張っている中、一人眺めて待つことなどできない。彼らを導く者として里長は自分にしかできない彼らの手助けを鑑みた。
「フォルティア様、こちらもそろそろ。」
里の警備にあたっていたエルフに呼びかけられ、向き直って頷いた。
「行こうか…彼女へ会いに。」
フォルティアの周りに三人のエルフが集められると、フォルティアの杖から青白い光が溢れ出し皆の体に包み込んだ。そして光が消えた時に彼らの体もその場から消えていた。
眩い光が徐々に消え、視界がはっきりするとそこは森の中だった。いや、森としての機能を果たせていない。まだ暖かいのに冬の時期に見れるような葉がすべて落ちた木がそこら一帯に並んでいる。
俺達勇者パーティーと大勢の隊員達は、シリアスによる広範囲転移魔法によりこの枯れた森へと飛んで来た。
急に大自然あふれる風景から時間が止まったかのようなもの寂しい風景に変わったことで、俺の隣に立っていたレズリィが寒気を感じたかのように両腕を体に回し、言った。
「…なんでしょう…嫌な感じがします…。」
「ああ…それに微かに匂うこの臭い、近いな…あの谷が。」
その予想にコハクは淡々と答えた。
「その通りです、ここから歩いて5分も経たないうちに目的地の死霊の谷に辿り着きます。」
「ああ、だが私達の先ずの目的地はこっちだ、ついて来い。」
ジアロに言われるがままその後をついて行った。木々が倒された獣道を進むと、枯れ木や草木もない更地と化した先ほどとは違う光景が目に広がった。
そこには先に来ていた近衛隊と魔導隊達が、木の枝や武器などの長物を使用して地面に巨大な魔法陣を描いていた。
里は圧倒的な数を誇る帝国軍に打ち勝つための策《第一の矢》という、巨大な魔法による先制攻撃を考えた。
巨大魔法の構築は理論上できると魔法界の中では証明されている、だがその巨大な魔法を作るための土台である魔法陣は人の手で作り出すことはできない。よって巨大魔法の詠唱には、通常よりも数十倍の大きさかつ正確な陣の形を作らなければならない。
さらにはその巨大魔法の威力を100%活かすために、敵の距離が近い現地で正確な魔法陣を描かなければならないのだ。
その準備として魔導隊は俺達が集合する少し前に現地へ赴き、合流次第すぐに作戦開始できるよう一緒に来た近衛隊達と土地の整備、巨大魔法陣の製作に取り掛かっていた。
コハクは敵の襲来を未然に防ぐため偵察隊として先に現地に向かっていた、この場所について知っているのはそういう理由なのだ。
「状況はどうだ?」
「陣の製作はあとちょっとで終わります。魔力回路を繋げて異常が見当たらないと確認がとれたらすぐに始められます。」
「わかった、合流した者達をここで待機させる。必要がある場合使ってくれ。」
「隊長一つ報告が、谷にいる悪魔達に妙な動きが確認されました。」
「わかった、案内してくれ。」
この作戦の指揮をしているジアロは魔導隊、偵察隊から状況を聞き即断に指示と行動に移していた。彼のリーダーたる周りの動かし方には勉強になる。
「そうだ…勇者、一緒に来てくれ。」
「ああ、わかった。」
彼を観察していると突如振り向き様に俺を誘った。俺は肯定の返事をすると目の前を歩く偵察隊の後をついて行った。
コハクの言う通り枯れた森の奥へ少し歩くと徐々に木々が無くなり黄土色の谷が見えてくる。漂う異臭に時より顔をしかめるが、たどり着いた先に広がる谷の風景に目を見開いた。
「うわ…マジか。」
谷というより大きなクレーターの中に細長く高い土壁が連なっている構造だった。まるで蛇状に流れる川に水が無くなり、その陸地だけが残っているような不思議な形をしていた。
だがその壮観な景色とは裏腹に下を見れば目視でも確認できる濃いガスが漂っている。得体の知れない気味の悪さと自然が本当の意味で死を迎えたという事実に言葉を言い表せなくなっていた。
「あれを見てください。」
偵察隊員が指を指す方向を見ると、広大な神秘の光景の中に異質なものが入り込んでいた。
「あの時より倍以上いる…いやそれよりも、あれだけの数が中央に集まって何をしているんだ?」
ジアロとクロムは見た、この谷の縄張りかのように大勢の悪魔が集められた帝国軍を。まるで蟻達が一ヶ所に群がるように何百という悪魔が谷の中央に群がっていた。
「周辺の偵察もしましたが、ジアロ隊長が来るまで不思議なくらいに悪魔を一人も見かけませんでした。おそらくあれが、死霊の谷にいる帝国軍の勢力かと。」
隊員がそう報告を述べるとジアロは不思議そうに顔をしかめた。
(おとといの偵察はこの辺りでも悪魔達が蔓延っていた、だからこそ安全な場所を確保するために今回は獣人の力を借りてこの場を見張っていてもらったのに。今度はその逆…悪魔を一人も見つけることが叶わなかった?)
改めて谷のほうを見た、もし自分の予想が正しければこの場にいる全勢力が一ヶ所に集まっていると考えた。
自分達が魔法陣の準備に取り掛かれることや一戦交えることはないのは大きな利点だが、全勢力が一ヶ所に集まるというのは何か大きな動きがあるように見えて胸騒ぎが止まらない。
「勇者、君の意見を聞きたい。この状況どう思う?」
その問いに俺は、セーレから聞かされた報告と今の状況を照らし合わせ予想を口にした。
「昨日の会議の前に、セー…スパイがあることを言っていたんだ。厄災魔獣の復活に関しての悪い噂を流せば組織は崩壊するって。きっとあれは…その噂の影響で組織が崩壊している瞬間かもしれない。」
「そんなことできるのか?相手は大多数の悪魔だ、人間相手じゃ限界がある。」
スパイが悪魔だなんて言えるわけないんだよなぁ、とスパイの行動に驚いているジアロの隣で俺は言えないもどかしさを感じていた。
「それにもうまもなく巨大魔法による先制攻撃が始まる、早くそのスパイを連れ戻さないと巻き込まれてしまうぞ。」
その言葉にふと思い返すと、作戦の内容をセーレに伝えていなかったことに気づきヤバイと感じた。
相手が人間よりも身体能力の高い悪魔であろうとさすがに急な不意打ちには対抗できない。とりあえず現在の場所を聞き出し、作戦の内容を話せばセーレを逃すことくらいはできる筈だ。
「わかった、連絡してみる。」
懐からマジックダイヤルを取り出しセーレに繋げた。
「セーレ、今繋げ…」
ガン!ズガガッ!ガガン!
彼女に一言状況の確認を聞こうとしたが戦闘音が激しく聞こえ、事態は逼迫してることに一気に緊張が走った。
「セーレ!?くそっ!戦闘中はさすがに聞こえにくいか。」
俺の話が聞けるような状況ではないとわかり、これからどうセーレに作戦の内容を伝えるか悩んでいると
ーー死…あなた…わ。
苛烈な戦闘音の中で言葉が聞こえる、俺はマジックダイヤルを耳に当てその会話を細かく聞き取った。
ーーお前の槍なんて当たらなければどうってことないのよ!
ーー逃げてるだけでしょ、当たったら即死なんて怖いものね!
セーレの他に誰かがいる、会話からして複数人で相手をしていない。その誰か…あのセーレにタイマンを張れる実力者といえば候補が絞られてくる。
俺は再びマジックダイヤルを耳に当て、その予想を一つに絞るため考察した。
「この声…聞き覚えがある。セーレが槍って言っていたってことは…シトリーか!」
ゲームをやっていたおかげか、どのキャラが喋っているか声だけで判別できた。帝国幹部シトリーが相手なら強すぎず弱すぎず互角に渡り合える。
だが問題はそこじゃない、セーレにどうやってその場から逃がせるかまだ解決できていない。
「相手が帝国幹部じゃ背を向けて逃げることなんてできるわけない、せめて気を逸せる何かがあれば…。」
俺は必死に思考を巡らせていると、俺達が歩いて来た方向からシリアスがこちらに向かってきた。
ジアロもそれに気づくとシリアスは到着早々用件を手短に話した。
「ジアロ、魔法陣の準備は整った。作戦を開始するから戻って。」
「ああ、そのことだが少し待ってもらえるか。」
どうやら巨大魔法を放つ準備が整ったらしい、だが準備ができ次第作戦を開始すると告げていたジアロは俺を心配してか開始時間を引き延ばすと告げた。
「待ってなんていられない、今敵勢力が集まっている今が好機。何か作戦に支障が出る出来事でも?」
シリアスはジアロに歩み寄り急かすような言葉を吐いた。その問いを答える前にジアロはチラリと俺の方を見た。
俺の答えを待っている、ここで俺が立ち止まっていたら皆動くことはできない。
まるで責任を押し付けられたようだ、俺の中で要らぬ焦りが生じ始め思考が狂う。
「すまん…俺の仲間がまだ谷にいるかもしれないんだ、何とか連絡とってあいつが巻き込まれないように…する…ため。」
「どうした?」
謝罪から一転、どこか遠くを見つめるように無表情になった俺にジアロは一声かけたが、俺にはそんな言葉が聞こえないほど突然閃いた情報に神経を集中していた。
「巻き込まれ…シトリーと戦っている…外は悪魔達が一斉に集まってる状態…セーレは人間じゃない、身体能力もあれば飛ぶことだって…だったら…。」
俺は一人ブツブツ小声で話していた、それを側から見ていたシリアスは珍しい物見たさからジアロに困惑気味で聞き出した。
「えっ、何?私なにか圧をかけるような言い方した?」
「むしろきっかけを与えてくれたのかもしれない、あの表情は焦って混乱しているような感じには見えない。」
その言葉通り、クロムの鋭い眼光はまっすぐ地面を向いて動こうとしない。時折まばたきをした時に頭と一緒に上へ向いて何かを呟いている。
「シリアス隊長だっけ?魔導隊の。聞きたいんだけど、作戦に使う巨大魔法の種類って何だ?」
「何っ?」
突然口にしたクロムの問いにシリアスは応じるべきか迷っていた。
「妙な質問ね、作戦内容は特大の魔法で帝国を一網打尽にすることだけど、魔法の大きさと勘違いしてるんじゃない?」
「いや、俺が聞きたいのは種類だ。火か?氷か?雷か?それとも他とは違う特殊な魔法か?」
クロムは再度その魔法の種類を聞き出した。シリアスにとってそれは別にやましい答えではない、だがクロムの何を考えているのか読めないその想像力に苦手意識を持っていた。
攻略会議の際にも彼の考え出したありえない作戦が《第二の矢》として組み込まれた、そんな経験を知っているからこそ彼の意外性な想像力が作戦に支障が出てしまうのではないかと不安になった。
「まず答えてくれる?あなたは何故それを知りたがるのか。聞いた話じゃ、あなたの仲間があの谷にいるから作戦開始時刻を引き伸ばしてほしいってことらしいけど、これとどんな関係が?」
不審な言動に目を光らせるシリアスの前で、クロムは脳裏に浮かんだ内容を語りだした。
ーーだが、それは聞くべきではなかったとこの場にいる者達は後で悔やむことになる。
最初に見えたのは先端が地球儀のような形をした長い杖を軽々と持ち、肌を隠す茶色のトレンチコートを着用している銀髪ショートの女性エルフ。
会議の中で《第一の矢》という魔導隊が考えだした作戦の指揮をとる彼らの隊長、名をシリアスといった。
そして次に現れたのは弓矢と剣を携え、森林色のケープを羽織った近衛隊の隊長であるジアロと、紺色の服の上に白いワンピース、翡翠色の頭には狼のような耳が生えた勇者パーティーの目である獣人のコハクだ。
「クロムさん、そちらの準備は…って!お二人共また喧嘩したんですか!?」
コハクはまっすぐ俺達の所へ走っていくと、頭を押さえて悶絶する俺とアルノアの姿が見てとれた。その隣では片頬を膨らませながら二人に顔をそむけているレズリィの姿があった。
またという発言があるようにコハクもこの見慣れた光景に少し呆れていた、だがそのどこかで緊張感のあるこの場でいつもの光景が見れたことに少し日常の安心感もあった。
「い、痛え…今日で何回叩かれなきゃいけないんだよ。」
「あなた達が喧嘩をするからです、第一傷ついた信頼は治すことは出来ないってクロムさんが言ってたじゃないですか!」
レズリィの説教話にクロムは頭の痛みで苦笑しながらも、記憶を引き出すような素振りを見せながら口を開く。
「レズリィ、もうお前だってわかってるんじゃないか?何話しても何をやっても相容れない俺達は喧嘩でしか分かち合えないことを。つまりこれは…あれだ、スキンシップってやつだ。」
「キッショ!!お前私の体目当てで触ってきやがったのか!?」
おもむろにヤバそうな単語を垂れ流したクロムを見てアルノアはドン引きして叫んだ。
「お前も触って来てんだろ同じじゃねえか。」
「一緒にするな!女は男と違って発育した箇所が多いから触れたらキモがられるのは当たり前だろ!」
「ええ何?人がせっかくこれからのことを気づかってやってんのにまたいらぬ火種を起こそうとしてるの?」
「ああ?お前が変態だって知らしめなきゃそんな行為に注意してくれる人がいなくなるからこうして話してんだろ?」
話がどんどん苛烈になっていき、お互いの距離がどんどん縮まっていく。また掴み合いになりそうな雰囲気に見兼ねたレズリィは…
「お二人共?」
影を落とした目つきで睨みながらそう一言告げると、さっきまでバチバチしていた二人が互いに横に首を振って静かになった。
「やれやれ…あなた達のリーダーは一体誰なんだ?こんな関係で指揮は成り立つのか?」
勇者パーティーの意外な側面を見て不安気にジアロがその場に入ってきた。
「ご安心を、戦いになったら切り替わりますので。そうですよねお二人共?」
怒気を含んだレズリィの問いに、クロムとアルノアの二人は恐怖でか何度も縦に首を振って応えていた。
「まぁ…今日は君達の力を頼りにしている。勇者達と共にこの危機を乗り越えてようじゃないか。」
ジアロはそう期待を込めるような笑みを浮かべ、俺達のもとを離れ隊員達がいる方へ向かった。
さすがに心配かけすぎた、ここまでくると緊張感の無さすぎで逆に戦いになった時の切り替えが大変だ。
「じゃあ…とりあえず日常パートはここまでにしておいて俺達も本腰を上げるか。」
俺はのらりと立ち上がり、大きく深呼吸をして心を切り替えた。
ここからは命のやり取りをする戦が始まる、前にいる三人も俺の言葉にあてられ緊張感が浮かびあがる。
「よし!勇者パーティー出撃だ!」
「……。」
クロムのやる気のあるかけ声が響くが、誰も応じないことに愕然とした。
「いや答えてよ!そこはなんか返事するところでしょ!」
「急に言われてもな、っていうかいつからそんなかけ声決まったんだよ。」
「私も…さっきまでの状況から急に切り替えるのはちょっと…。」
ごもっともなアルノアとレズリィの意見に俺は恥ずかしさから手を顔に押さえて言う。
「あ…あはは…俺超恥ずかしい…とりあえず行こ、皆集まってるし。」
「そっ、そうですね。」
クロムの気恥ずかしい姿を隣で見ていたコハクはこわばった笑顔とともに三人の後をついて行った。
近衛隊と魔導隊を合わせた二百の隊員達は先頭にいる二人の隊長に顔を向けた。
隊長二人は隊員達に軽く頷きかけると、集団に向いて言葉を発した。
「聞け皆!私達は今から死霊の谷にいる悪魔達を掃討し、厄災魔獣の復活を阻止する!危険な戦いだ、相手はおそらく私達の倍以上の人数、それをまとめる幹部も存在する。」
「だがそれで負け腰になることは許されない!私達が負ければ里はおろか、この東の国が谷と同じく死の土地へと変貌する。それだけは絶対に避けなければならない!利用できるものや見つけたアイデアは全て活用しろ、決して希望の火を絶やしてはならない!」
ジアロは腰から銀製の剣を高く引き抜き、シリアスも同様長い杖を高く掲げ、叫んだ。
「「霊長の里全勢力、出撃だぁぁ!」」
隊長達のかけ声の後に隊員達は腕や武器を高く掲げ、地面が響くほどの声を張り上げた。
その轟く声は里の中にも聞こえていた。里の住民達がその声が聞こえる方向に顔を向ける中、修道服に模した真っ白な正装に身を包んだ里長のフォルティアは、彼らの予想される死闘に安否を気遣っていた。
「頼んだぞ君達、頼んだぞ勇者君。私も出来るかぎりの手を打とう。」
本来なら里を守る身として自分も出向かなければならない、その役割を隊の皆に任せてしまったことに罪悪感を感じていた。
たった一日、それだけの準備期間では大勢力の帝国軍と厄災魔獣を退けることは不可能に近いだろう。
隊の皆が全滅、里が壊滅することだけは避けなければならない。それは前戦で戦う者より皆を指揮る里長がよくわかっていた。
皆が頑張っている中、一人眺めて待つことなどできない。彼らを導く者として里長は自分にしかできない彼らの手助けを鑑みた。
「フォルティア様、こちらもそろそろ。」
里の警備にあたっていたエルフに呼びかけられ、向き直って頷いた。
「行こうか…彼女へ会いに。」
フォルティアの周りに三人のエルフが集められると、フォルティアの杖から青白い光が溢れ出し皆の体に包み込んだ。そして光が消えた時に彼らの体もその場から消えていた。
眩い光が徐々に消え、視界がはっきりするとそこは森の中だった。いや、森としての機能を果たせていない。まだ暖かいのに冬の時期に見れるような葉がすべて落ちた木がそこら一帯に並んでいる。
俺達勇者パーティーと大勢の隊員達は、シリアスによる広範囲転移魔法によりこの枯れた森へと飛んで来た。
急に大自然あふれる風景から時間が止まったかのようなもの寂しい風景に変わったことで、俺の隣に立っていたレズリィが寒気を感じたかのように両腕を体に回し、言った。
「…なんでしょう…嫌な感じがします…。」
「ああ…それに微かに匂うこの臭い、近いな…あの谷が。」
その予想にコハクは淡々と答えた。
「その通りです、ここから歩いて5分も経たないうちに目的地の死霊の谷に辿り着きます。」
「ああ、だが私達の先ずの目的地はこっちだ、ついて来い。」
ジアロに言われるがままその後をついて行った。木々が倒された獣道を進むと、枯れ木や草木もない更地と化した先ほどとは違う光景が目に広がった。
そこには先に来ていた近衛隊と魔導隊達が、木の枝や武器などの長物を使用して地面に巨大な魔法陣を描いていた。
里は圧倒的な数を誇る帝国軍に打ち勝つための策《第一の矢》という、巨大な魔法による先制攻撃を考えた。
巨大魔法の構築は理論上できると魔法界の中では証明されている、だがその巨大な魔法を作るための土台である魔法陣は人の手で作り出すことはできない。よって巨大魔法の詠唱には、通常よりも数十倍の大きさかつ正確な陣の形を作らなければならない。
さらにはその巨大魔法の威力を100%活かすために、敵の距離が近い現地で正確な魔法陣を描かなければならないのだ。
その準備として魔導隊は俺達が集合する少し前に現地へ赴き、合流次第すぐに作戦開始できるよう一緒に来た近衛隊達と土地の整備、巨大魔法陣の製作に取り掛かっていた。
コハクは敵の襲来を未然に防ぐため偵察隊として先に現地に向かっていた、この場所について知っているのはそういう理由なのだ。
「状況はどうだ?」
「陣の製作はあとちょっとで終わります。魔力回路を繋げて異常が見当たらないと確認がとれたらすぐに始められます。」
「わかった、合流した者達をここで待機させる。必要がある場合使ってくれ。」
「隊長一つ報告が、谷にいる悪魔達に妙な動きが確認されました。」
「わかった、案内してくれ。」
この作戦の指揮をしているジアロは魔導隊、偵察隊から状況を聞き即断に指示と行動に移していた。彼のリーダーたる周りの動かし方には勉強になる。
「そうだ…勇者、一緒に来てくれ。」
「ああ、わかった。」
彼を観察していると突如振り向き様に俺を誘った。俺は肯定の返事をすると目の前を歩く偵察隊の後をついて行った。
コハクの言う通り枯れた森の奥へ少し歩くと徐々に木々が無くなり黄土色の谷が見えてくる。漂う異臭に時より顔をしかめるが、たどり着いた先に広がる谷の風景に目を見開いた。
「うわ…マジか。」
谷というより大きなクレーターの中に細長く高い土壁が連なっている構造だった。まるで蛇状に流れる川に水が無くなり、その陸地だけが残っているような不思議な形をしていた。
だがその壮観な景色とは裏腹に下を見れば目視でも確認できる濃いガスが漂っている。得体の知れない気味の悪さと自然が本当の意味で死を迎えたという事実に言葉を言い表せなくなっていた。
「あれを見てください。」
偵察隊員が指を指す方向を見ると、広大な神秘の光景の中に異質なものが入り込んでいた。
「あの時より倍以上いる…いやそれよりも、あれだけの数が中央に集まって何をしているんだ?」
ジアロとクロムは見た、この谷の縄張りかのように大勢の悪魔が集められた帝国軍を。まるで蟻達が一ヶ所に群がるように何百という悪魔が谷の中央に群がっていた。
「周辺の偵察もしましたが、ジアロ隊長が来るまで不思議なくらいに悪魔を一人も見かけませんでした。おそらくあれが、死霊の谷にいる帝国軍の勢力かと。」
隊員がそう報告を述べるとジアロは不思議そうに顔をしかめた。
(おとといの偵察はこの辺りでも悪魔達が蔓延っていた、だからこそ安全な場所を確保するために今回は獣人の力を借りてこの場を見張っていてもらったのに。今度はその逆…悪魔を一人も見つけることが叶わなかった?)
改めて谷のほうを見た、もし自分の予想が正しければこの場にいる全勢力が一ヶ所に集まっていると考えた。
自分達が魔法陣の準備に取り掛かれることや一戦交えることはないのは大きな利点だが、全勢力が一ヶ所に集まるというのは何か大きな動きがあるように見えて胸騒ぎが止まらない。
「勇者、君の意見を聞きたい。この状況どう思う?」
その問いに俺は、セーレから聞かされた報告と今の状況を照らし合わせ予想を口にした。
「昨日の会議の前に、セー…スパイがあることを言っていたんだ。厄災魔獣の復活に関しての悪い噂を流せば組織は崩壊するって。きっとあれは…その噂の影響で組織が崩壊している瞬間かもしれない。」
「そんなことできるのか?相手は大多数の悪魔だ、人間相手じゃ限界がある。」
スパイが悪魔だなんて言えるわけないんだよなぁ、とスパイの行動に驚いているジアロの隣で俺は言えないもどかしさを感じていた。
「それにもうまもなく巨大魔法による先制攻撃が始まる、早くそのスパイを連れ戻さないと巻き込まれてしまうぞ。」
その言葉にふと思い返すと、作戦の内容をセーレに伝えていなかったことに気づきヤバイと感じた。
相手が人間よりも身体能力の高い悪魔であろうとさすがに急な不意打ちには対抗できない。とりあえず現在の場所を聞き出し、作戦の内容を話せばセーレを逃すことくらいはできる筈だ。
「わかった、連絡してみる。」
懐からマジックダイヤルを取り出しセーレに繋げた。
「セーレ、今繋げ…」
ガン!ズガガッ!ガガン!
彼女に一言状況の確認を聞こうとしたが戦闘音が激しく聞こえ、事態は逼迫してることに一気に緊張が走った。
「セーレ!?くそっ!戦闘中はさすがに聞こえにくいか。」
俺の話が聞けるような状況ではないとわかり、これからどうセーレに作戦の内容を伝えるか悩んでいると
ーー死…あなた…わ。
苛烈な戦闘音の中で言葉が聞こえる、俺はマジックダイヤルを耳に当てその会話を細かく聞き取った。
ーーお前の槍なんて当たらなければどうってことないのよ!
ーー逃げてるだけでしょ、当たったら即死なんて怖いものね!
セーレの他に誰かがいる、会話からして複数人で相手をしていない。その誰か…あのセーレにタイマンを張れる実力者といえば候補が絞られてくる。
俺は再びマジックダイヤルを耳に当て、その予想を一つに絞るため考察した。
「この声…聞き覚えがある。セーレが槍って言っていたってことは…シトリーか!」
ゲームをやっていたおかげか、どのキャラが喋っているか声だけで判別できた。帝国幹部シトリーが相手なら強すぎず弱すぎず互角に渡り合える。
だが問題はそこじゃない、セーレにどうやってその場から逃がせるかまだ解決できていない。
「相手が帝国幹部じゃ背を向けて逃げることなんてできるわけない、せめて気を逸せる何かがあれば…。」
俺は必死に思考を巡らせていると、俺達が歩いて来た方向からシリアスがこちらに向かってきた。
ジアロもそれに気づくとシリアスは到着早々用件を手短に話した。
「ジアロ、魔法陣の準備は整った。作戦を開始するから戻って。」
「ああ、そのことだが少し待ってもらえるか。」
どうやら巨大魔法を放つ準備が整ったらしい、だが準備ができ次第作戦を開始すると告げていたジアロは俺を心配してか開始時間を引き延ばすと告げた。
「待ってなんていられない、今敵勢力が集まっている今が好機。何か作戦に支障が出る出来事でも?」
シリアスはジアロに歩み寄り急かすような言葉を吐いた。その問いを答える前にジアロはチラリと俺の方を見た。
俺の答えを待っている、ここで俺が立ち止まっていたら皆動くことはできない。
まるで責任を押し付けられたようだ、俺の中で要らぬ焦りが生じ始め思考が狂う。
「すまん…俺の仲間がまだ谷にいるかもしれないんだ、何とか連絡とってあいつが巻き込まれないように…する…ため。」
「どうした?」
謝罪から一転、どこか遠くを見つめるように無表情になった俺にジアロは一声かけたが、俺にはそんな言葉が聞こえないほど突然閃いた情報に神経を集中していた。
「巻き込まれ…シトリーと戦っている…外は悪魔達が一斉に集まってる状態…セーレは人間じゃない、身体能力もあれば飛ぶことだって…だったら…。」
俺は一人ブツブツ小声で話していた、それを側から見ていたシリアスは珍しい物見たさからジアロに困惑気味で聞き出した。
「えっ、何?私なにか圧をかけるような言い方した?」
「むしろきっかけを与えてくれたのかもしれない、あの表情は焦って混乱しているような感じには見えない。」
その言葉通り、クロムの鋭い眼光はまっすぐ地面を向いて動こうとしない。時折まばたきをした時に頭と一緒に上へ向いて何かを呟いている。
「シリアス隊長だっけ?魔導隊の。聞きたいんだけど、作戦に使う巨大魔法の種類って何だ?」
「何っ?」
突然口にしたクロムの問いにシリアスは応じるべきか迷っていた。
「妙な質問ね、作戦内容は特大の魔法で帝国を一網打尽にすることだけど、魔法の大きさと勘違いしてるんじゃない?」
「いや、俺が聞きたいのは種類だ。火か?氷か?雷か?それとも他とは違う特殊な魔法か?」
クロムは再度その魔法の種類を聞き出した。シリアスにとってそれは別にやましい答えではない、だがクロムの何を考えているのか読めないその想像力に苦手意識を持っていた。
攻略会議の際にも彼の考え出したありえない作戦が《第二の矢》として組み込まれた、そんな経験を知っているからこそ彼の意外性な想像力が作戦に支障が出てしまうのではないかと不安になった。
「まず答えてくれる?あなたは何故それを知りたがるのか。聞いた話じゃ、あなたの仲間があの谷にいるから作戦開始時刻を引き伸ばしてほしいってことらしいけど、これとどんな関係が?」
不審な言動に目を光らせるシリアスの前で、クロムは脳裏に浮かんだ内容を語りだした。
ーーだが、それは聞くべきではなかったとこの場にいる者達は後で悔やむことになる。
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