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悪魔の絆編
第十七話 研究者モルガン②
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「ああっ!ぐっ!」
セーレの体には至る所に傷ができていた、反対にニーナには傷が見当たらない。いや、セーレの打撃では外傷があるか判別できないがこれだけは言える。
ニーナの動きにセーレがついて行けていない。
「セーレが押されてる!?」
「あの子は強いわ、強いけどあの何でも一人で解決しようとする考えがあの子を弱くしている。あんなに防戦一方で体中傷だらけなのに、あなたに助けを求めようともしない。」
モルガンが冷ややかな目で彼女を見つめてそう口にした。戦っている姿を見ただけでその特性まで判別するほどの観察眼を持っている彼女を見て、その実力は只者ではないと実感した。
「ああいう自己中心的な態度は、あの子がいた環境に毒されてしまったからなのだろうね。自身の私欲のために他を蹴落とし、結果だけで強くなったと肯定している哀れな種族だ。」
違うとそう反論したかったが、セーレと契約決闘をした記憶がふと蘇った。
ーー群がり、足を引っ張り合い、傷を舐め合う事しか出来ない。挙句相方を殺せばそれに激怒する始末、そんなものは負け犬の遠吠えと同じよ。
ーー本物の強さっていうのは自身で磨き上げる事でその真価が発揮される。
ーー仲間?それは同等のレベルの者と共闘する時に言うのよ。あれはチェスでいう駒、王を討つための手段の道具でしかないわ。
セーレの言う言葉には、まるで自分の力だけが正しいと結果づけているように感じた。
今思うと仲間になっても自分一人で突っ走るのは、魔物を簡単に倒せるというだけじゃなく、仲間の力など必要ないと証明するように見せているのだとしたら…
おそらくセーレはこの先、そのプライドが足枷になって進めなくなってしまうだろう。
「人生の中では全戦全勝なんて存在しない、負けないと自分の欠点がわからないし、負けることでしか見えない道も開けない。負けを実感せず勝ち続けるというのは、ああいう捻くれ者を生ませるんだ。」
モルガンの言葉が自然と頭に入っていった、彼女の言葉は何も言い論がないほど正しかった。
俺が嫌いだから協力したくないからの理由であってほしい、見てないで助けろと罵声で命令してほしい。
俺はどこかで、モルガンが言っていたような仲間意識のない捻くれ者であってほしくないと強く思った。
「ぐぁぁぁぁ!」
だが、そんな思いはセーレの苦痛の叫びによって実る事がなくなった。
ニーナの槍がセーレの脇腹に突き刺さり赤い鮮血が地面に飛び散った。
「くそっ…!どんな馬鹿力してんのよ!一瞬でも力抜いたら押し貫かれるわ…!」
セーレが震えた両手でニーナの槍を抑えていた。魔法で反撃しようにも意識を両手以外に持っていく事ができない、自身の得意な打撃も槍のリーチの前では届くことはない。
詰み…その言葉が頭の中を巡る。
それは俺も同じことを思っていた、歯をギリギリ鳴らし助けに行けないもどかしさに腹を立てた。
ふと、セーレが俺と目が合った。目を血走らせながら苦痛をその目で訴え、再び突き刺さっている槍に目線を戻した。
その行為に、俺は再びセーレに対するの想いをまた失った。
(セーレ…お前はそんな危険な状況になっても助けを求めようとはしないのか…。)
「勝負ありだね、勇者君には悪いけどあの悪魔は頂いていくよ。」
モルガンはそう言うと立ち上がり、セーレがいる方向に歩みよる。
このままでいいのか…セーレが負けて連れて行かれるのを黙って見ているのか?
このまま…モルガンの正論に納得したままでいいのか?
いや…まだある。
「救いたい奴がいるから…。」
モルガンは俺の呟いた言葉を耳にして振り返った。
「どういう…?」
「さっきの質問の答えだ、何であいつを仲間に入れたか。俺には救わなきゃいけない奴がいる、そのためにあいつが必要なんだ!」
ブチブチィ!!
「なっ!」
モルガンはその細めな目を大きく見開くほどに驚愕した。
拘束していたはずのクロムがそれを破ってモルガンの横を走って行ったからだ。
「粘着性の拘束を解いた!?どうやって!」
モルガンはクロムが座っていたベンチを振り返った。そこには焼け焦げたベンチと溶けたスライムが残っていた。
「火炎魔法で燃やしたのか…粘着物は熱すると粘着力が無くなって剥がれやすくなるのを利用した。だが自分の尻を燃やすんだぞ、そんなの耐性でもない限りそんな判断出来るはずがない。」
困惑したような表情を出しているモルガンとは反対に、クロムは必死な表情で二人に走って向かった。
「たしかにあいつはそういう奴だ、自分一人の力が強いと認識しているせいで誰かと協力しようとしたりしない。実際俺達もセーレの力には助けられた、でもそれは俺達以上セーレ以下の強さと相手していただけだ。」
俺はモルガンの正論に素直に納得した、剣を交じり合い、少しの間柄共に戦った彼女を見ていたことで、その告げられた言葉に大きく痛感させられた。
でもそれで仲間を手放すという選択にはならないし、捻くれ者と言われるまま彼女を野放しにしておくわけにはいかない。
これは俺達の問題だ、俺達があいつを変える!
「感謝するよモルガン、あのお面野郎を相手にさせてくれて。これであいつも成長出来るはずだ!」
俺の走る先には背を向けたニーナと刺さっている槍を食い止めているセーレがおり、再び俺はセーレと目が合った。
彼女は俺がこっちに向かって来ることに驚いた表情を見せていた。
「なっ…勇者!?」 (馬鹿!何で来た!?私でも戦えるのがギリギリなのに、お前が来て戦えるわけがないだろ!)
セーレの声で察したのかニーナは少し振り返って横目で俺の位置を把握した。
俺は攻撃されても防御できるように、持っている剣を左下に構えながらいつでも受ける準備をした。
(2対1になったら、どちらかの相手の様子を伺わないといけない。セーレは負傷していてもその強さは油断ならないはず…だったらこいつがとる行動は二つ。)
ーー二人を視界に入るようその場を離れるか、こっちに切り込んでくるかのどっちか。
そう考えながらニーナとの距離がまもなく2メートルと差し迫った瞬間、セーレに刺さっていた槍が抜かれ俺に向けて横に振りかざした。
キィィィィン!
「ぐぅっ!」
槍と剣が重なり激しい金属音と共に吹き飛ばされそうになったが、咄嗟に槍の持ち手を掴みなんとかその場に踏み止まった。
「へへっ…読み通りだ…!」
槍の戦い方はいかに相手との距離をとるかで変わってくる。もしあの場でニーナが離れてしまえば、俺は正面からあいつの猛攻を受けなきゃいけなくなる。
だが今の精神状態ではそうはならない。なぜなら今こいつは、セーレにダメージを与えられてブチ切れてる。相手を戦術で倒すのではなく力で倒そうとしている考えに俺は賭けた。
「捕まえたぞ!今だセーレ!ぐっ…動くな!」
槍をたぐりニーナの左腕を体を使って拘束した、それでもニーナの力に圧倒され腕を動かして俺の体を振りほどこうとした。
「馬鹿!無茶するんじゃないわよ!でも、よくやったわ!」
セーレの右手から強烈な黒いオーラが発し、身動きが制限されているニーナに目掛けて打ち込んだ。
(たとえ気持ちがわかり得なくても共通の目的があれば動いてくれる、お前は捻くれ者なんかじゃない!その拳で証明してやれ!)
「ハァァァ!ダークインパクト!」
俺は絶対に離さないと強く思い、ニーナの腕を必死に掴んだ。
だがニーナは弄ぶように軽々と俺を持ち上げて、セーレの攻撃から身を守るよう俺の体を盾にした。
「おいおいマジかよ!?」
誰であろうと人は急には止まれない、ましてや技を発動した直後に軌道をそらすなど至難の技とも言えるだろう。
俺は心の中で歯を食いしばる準備をした。セーレが軌道を逸らして打ってくれる、技を中止してくれる、そんな心遣いをしてくれるわけがない。
ドガッッ!
「ぐぇぇァァァァ!」(だよね!分かってたよ畜生!)
予想通り、セーレの重い一撃が俺の体に直撃した。嗚咽が出るような醜い叫び声を出して、目頭から涙が溢れた。
「邪魔だあァァァァ!」
セーレはクロムを殴っても止まることなく、片足を踏み込み今度は左手から再び「ダークインパクト」をニーナに打ち込んだ。
ドガァァァァ!
その拳がニーナの顔面に入り、力強く放った結果俺の体ごと一緒に吹き飛ばされた。
「ニーナ!」
モルガンも焦りを感じたのか、危機迫った表情でニーナが吹き飛ばされた場所に顔を向けた。
「今度は決まったでしょ…いや、決まっていて欲しいんだけど…。」
仰向けの状態でピクリともうごなさかないセーレ、苦戦を強いられもう起き上がってくるなと願いながらそう口にするが…
「フゥゥ…フゥゥ…!」
「こいつ…まだやれるっていうの?」
背をつけて倒れていたニーナが荒い息をたてながら起き上がった、だがその姿は先程よりも大きく異なっていた。
顔につけていたドクロの仮面が崩れ落ち、中から片頬が少し腫れた少女の顔が現れた。
雪のように白い肌を持ち、瞳と髪色が同じ桃色だった。
そしてフードが外れたことにより、中から背中まで伸びる綺麗な髪が露わになった。
「女?」
「めっちゃかわいい…。」
ニーナと一緒に吹き飛ばされた俺は地面にうつ伏せになりながら彼女の姿を見た。
無口で無感情な顔つき、殴られた頬の部分をさすりながら痛がる表情はまた萌える。
そう思った瞬間、ニーナはセーレに指を指し怒りのあまり声を荒らげた。
「この悪魔!女の子の顔をグーで殴るとか最低じゃない!」
彼女は怒り心頭な気持ちで叫んだのだろう、だが俺とセーレに聞こえたのは誰が聞いても可愛いと思えるツンツンとした特徴の声だった。
黒い怪しげなフード付きのポンチョ風コートを羽織り、ドクロのお面を被っていた姿でセーレと互角にやり合った者とは到底思えなかった。
いや…そんなことよりもまず気になったのは…。
「「お前普通に喋れたのぉぉ!?」」
戦っているときですら喋らなかった彼女を見て無口なキャラだと思っていたが大ハズレ。俺とセーレは打ち合わせをしたかのように同じ疑問をニーナに伝えた。
セーレの体には至る所に傷ができていた、反対にニーナには傷が見当たらない。いや、セーレの打撃では外傷があるか判別できないがこれだけは言える。
ニーナの動きにセーレがついて行けていない。
「セーレが押されてる!?」
「あの子は強いわ、強いけどあの何でも一人で解決しようとする考えがあの子を弱くしている。あんなに防戦一方で体中傷だらけなのに、あなたに助けを求めようともしない。」
モルガンが冷ややかな目で彼女を見つめてそう口にした。戦っている姿を見ただけでその特性まで判別するほどの観察眼を持っている彼女を見て、その実力は只者ではないと実感した。
「ああいう自己中心的な態度は、あの子がいた環境に毒されてしまったからなのだろうね。自身の私欲のために他を蹴落とし、結果だけで強くなったと肯定している哀れな種族だ。」
違うとそう反論したかったが、セーレと契約決闘をした記憶がふと蘇った。
ーー群がり、足を引っ張り合い、傷を舐め合う事しか出来ない。挙句相方を殺せばそれに激怒する始末、そんなものは負け犬の遠吠えと同じよ。
ーー本物の強さっていうのは自身で磨き上げる事でその真価が発揮される。
ーー仲間?それは同等のレベルの者と共闘する時に言うのよ。あれはチェスでいう駒、王を討つための手段の道具でしかないわ。
セーレの言う言葉には、まるで自分の力だけが正しいと結果づけているように感じた。
今思うと仲間になっても自分一人で突っ走るのは、魔物を簡単に倒せるというだけじゃなく、仲間の力など必要ないと証明するように見せているのだとしたら…
おそらくセーレはこの先、そのプライドが足枷になって進めなくなってしまうだろう。
「人生の中では全戦全勝なんて存在しない、負けないと自分の欠点がわからないし、負けることでしか見えない道も開けない。負けを実感せず勝ち続けるというのは、ああいう捻くれ者を生ませるんだ。」
モルガンの言葉が自然と頭に入っていった、彼女の言葉は何も言い論がないほど正しかった。
俺が嫌いだから協力したくないからの理由であってほしい、見てないで助けろと罵声で命令してほしい。
俺はどこかで、モルガンが言っていたような仲間意識のない捻くれ者であってほしくないと強く思った。
「ぐぁぁぁぁ!」
だが、そんな思いはセーレの苦痛の叫びによって実る事がなくなった。
ニーナの槍がセーレの脇腹に突き刺さり赤い鮮血が地面に飛び散った。
「くそっ…!どんな馬鹿力してんのよ!一瞬でも力抜いたら押し貫かれるわ…!」
セーレが震えた両手でニーナの槍を抑えていた。魔法で反撃しようにも意識を両手以外に持っていく事ができない、自身の得意な打撃も槍のリーチの前では届くことはない。
詰み…その言葉が頭の中を巡る。
それは俺も同じことを思っていた、歯をギリギリ鳴らし助けに行けないもどかしさに腹を立てた。
ふと、セーレが俺と目が合った。目を血走らせながら苦痛をその目で訴え、再び突き刺さっている槍に目線を戻した。
その行為に、俺は再びセーレに対するの想いをまた失った。
(セーレ…お前はそんな危険な状況になっても助けを求めようとはしないのか…。)
「勝負ありだね、勇者君には悪いけどあの悪魔は頂いていくよ。」
モルガンはそう言うと立ち上がり、セーレがいる方向に歩みよる。
このままでいいのか…セーレが負けて連れて行かれるのを黙って見ているのか?
このまま…モルガンの正論に納得したままでいいのか?
いや…まだある。
「救いたい奴がいるから…。」
モルガンは俺の呟いた言葉を耳にして振り返った。
「どういう…?」
「さっきの質問の答えだ、何であいつを仲間に入れたか。俺には救わなきゃいけない奴がいる、そのためにあいつが必要なんだ!」
ブチブチィ!!
「なっ!」
モルガンはその細めな目を大きく見開くほどに驚愕した。
拘束していたはずのクロムがそれを破ってモルガンの横を走って行ったからだ。
「粘着性の拘束を解いた!?どうやって!」
モルガンはクロムが座っていたベンチを振り返った。そこには焼け焦げたベンチと溶けたスライムが残っていた。
「火炎魔法で燃やしたのか…粘着物は熱すると粘着力が無くなって剥がれやすくなるのを利用した。だが自分の尻を燃やすんだぞ、そんなの耐性でもない限りそんな判断出来るはずがない。」
困惑したような表情を出しているモルガンとは反対に、クロムは必死な表情で二人に走って向かった。
「たしかにあいつはそういう奴だ、自分一人の力が強いと認識しているせいで誰かと協力しようとしたりしない。実際俺達もセーレの力には助けられた、でもそれは俺達以上セーレ以下の強さと相手していただけだ。」
俺はモルガンの正論に素直に納得した、剣を交じり合い、少しの間柄共に戦った彼女を見ていたことで、その告げられた言葉に大きく痛感させられた。
でもそれで仲間を手放すという選択にはならないし、捻くれ者と言われるまま彼女を野放しにしておくわけにはいかない。
これは俺達の問題だ、俺達があいつを変える!
「感謝するよモルガン、あのお面野郎を相手にさせてくれて。これであいつも成長出来るはずだ!」
俺の走る先には背を向けたニーナと刺さっている槍を食い止めているセーレがおり、再び俺はセーレと目が合った。
彼女は俺がこっちに向かって来ることに驚いた表情を見せていた。
「なっ…勇者!?」 (馬鹿!何で来た!?私でも戦えるのがギリギリなのに、お前が来て戦えるわけがないだろ!)
セーレの声で察したのかニーナは少し振り返って横目で俺の位置を把握した。
俺は攻撃されても防御できるように、持っている剣を左下に構えながらいつでも受ける準備をした。
(2対1になったら、どちらかの相手の様子を伺わないといけない。セーレは負傷していてもその強さは油断ならないはず…だったらこいつがとる行動は二つ。)
ーー二人を視界に入るようその場を離れるか、こっちに切り込んでくるかのどっちか。
そう考えながらニーナとの距離がまもなく2メートルと差し迫った瞬間、セーレに刺さっていた槍が抜かれ俺に向けて横に振りかざした。
キィィィィン!
「ぐぅっ!」
槍と剣が重なり激しい金属音と共に吹き飛ばされそうになったが、咄嗟に槍の持ち手を掴みなんとかその場に踏み止まった。
「へへっ…読み通りだ…!」
槍の戦い方はいかに相手との距離をとるかで変わってくる。もしあの場でニーナが離れてしまえば、俺は正面からあいつの猛攻を受けなきゃいけなくなる。
だが今の精神状態ではそうはならない。なぜなら今こいつは、セーレにダメージを与えられてブチ切れてる。相手を戦術で倒すのではなく力で倒そうとしている考えに俺は賭けた。
「捕まえたぞ!今だセーレ!ぐっ…動くな!」
槍をたぐりニーナの左腕を体を使って拘束した、それでもニーナの力に圧倒され腕を動かして俺の体を振りほどこうとした。
「馬鹿!無茶するんじゃないわよ!でも、よくやったわ!」
セーレの右手から強烈な黒いオーラが発し、身動きが制限されているニーナに目掛けて打ち込んだ。
(たとえ気持ちがわかり得なくても共通の目的があれば動いてくれる、お前は捻くれ者なんかじゃない!その拳で証明してやれ!)
「ハァァァ!ダークインパクト!」
俺は絶対に離さないと強く思い、ニーナの腕を必死に掴んだ。
だがニーナは弄ぶように軽々と俺を持ち上げて、セーレの攻撃から身を守るよう俺の体を盾にした。
「おいおいマジかよ!?」
誰であろうと人は急には止まれない、ましてや技を発動した直後に軌道をそらすなど至難の技とも言えるだろう。
俺は心の中で歯を食いしばる準備をした。セーレが軌道を逸らして打ってくれる、技を中止してくれる、そんな心遣いをしてくれるわけがない。
ドガッッ!
「ぐぇぇァァァァ!」(だよね!分かってたよ畜生!)
予想通り、セーレの重い一撃が俺の体に直撃した。嗚咽が出るような醜い叫び声を出して、目頭から涙が溢れた。
「邪魔だあァァァァ!」
セーレはクロムを殴っても止まることなく、片足を踏み込み今度は左手から再び「ダークインパクト」をニーナに打ち込んだ。
ドガァァァァ!
その拳がニーナの顔面に入り、力強く放った結果俺の体ごと一緒に吹き飛ばされた。
「ニーナ!」
モルガンも焦りを感じたのか、危機迫った表情でニーナが吹き飛ばされた場所に顔を向けた。
「今度は決まったでしょ…いや、決まっていて欲しいんだけど…。」
仰向けの状態でピクリともうごなさかないセーレ、苦戦を強いられもう起き上がってくるなと願いながらそう口にするが…
「フゥゥ…フゥゥ…!」
「こいつ…まだやれるっていうの?」
背をつけて倒れていたニーナが荒い息をたてながら起き上がった、だがその姿は先程よりも大きく異なっていた。
顔につけていたドクロの仮面が崩れ落ち、中から片頬が少し腫れた少女の顔が現れた。
雪のように白い肌を持ち、瞳と髪色が同じ桃色だった。
そしてフードが外れたことにより、中から背中まで伸びる綺麗な髪が露わになった。
「女?」
「めっちゃかわいい…。」
ニーナと一緒に吹き飛ばされた俺は地面にうつ伏せになりながら彼女の姿を見た。
無口で無感情な顔つき、殴られた頬の部分をさすりながら痛がる表情はまた萌える。
そう思った瞬間、ニーナはセーレに指を指し怒りのあまり声を荒らげた。
「この悪魔!女の子の顔をグーで殴るとか最低じゃない!」
彼女は怒り心頭な気持ちで叫んだのだろう、だが俺とセーレに聞こえたのは誰が聞いても可愛いと思えるツンツンとした特徴の声だった。
黒い怪しげなフード付きのポンチョ風コートを羽織り、ドクロのお面を被っていた姿でセーレと互角にやり合った者とは到底思えなかった。
いや…そんなことよりもまず気になったのは…。
「「お前普通に喋れたのぉぉ!?」」
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