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悪魔の絆編
第二十一話 勇者の責任①
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「ここは…またこの世界か。」
ふと目を開けるとそこは一度見た何も見えない暗闇が広がっていた。最初は何がなんだか分からず出口を探すよう歩き続けたが、二度目は冷静になってこの現象について考え出した。
「一体何なんだこれ…夢?いや、夢にしては頭がはっきりしてるな。たしか俺がここに来た時は…」
ーーけて…。
「っ!?声…?」
前回の記憶を思い出そうとした時、どこからか聞こえる声が響き俺は驚いて辺りを見渡した。
「えっ?何なんだあれ…妙にあそこだけ光ってるけど。」
ちょうど後ろを向くと遠くのほうにぼんやりと光る球体があった。
思い出した…たしか一度目も俺はあの光を追いかけていたことに。
ーーけて…。
周期的に聞こえる謎の声はまるでエコーがかかっているように肝心な部分からが聞き取りづらく、俺は聞こえてくる声に集中して耳を傾けた。
ーーけて…。ーーすけて…。ーーたすけて…。
ーー助けて…。
慣れてくるとだんだんその声はうっすらと聞こえてきた、「助けて…」と。
「助けて…それってお前の声か?」
俺は光る球体に思わず声をかけた、だが当然受け答えてくれるわけなく、俺は光る球体に向けて歩き出した。
歩く音は聞こえなかったが光る球体がどんどん大きくなっていくのを見て近づいているのがわかった。そして近づいたことでわかった、それは球体というより少し凸凹した形をしていた。
ーー助けて…。ーーワタシ…を…助けて…。
今度ははっきり聞こえた、「私を助けて」と。それによって目の前にあるものが一体何なのか明白になった。
人…凸凹した球体というより、丸くなって座っている人の姿だ。
「お前が言ってるのか?お前は…。」
俺は人であろうものに手を伸ばそうとした瞬間、妙な息苦しさを感じすぐに手を引っ込めた。
「ぐっ…がはっ!ハァハァ!」
その苦しさはどんどん強まっていき呼吸すらも困難になってきた、俺は必死に呼吸をしようとするが誰かに押さえつけられているように喉が動かない。
「いっ、息が…苦しい…呼吸が…!」
頭に酸素が行き届かなくなり、俺は悶えながら倒れた。かすかに見えた光る存在を最後に目を閉じた。
夢か…はたまた現か…俺は未だに苦しさに悶えていた、押さえつけられているような…いや、手の温かみが直に伝わる…これは。
「がはっ!ゲホッゲホッ!」
「やっと起きたか、浅い睡眠で助かった。」
目覚めて最初に見た光景は、俺の首を絞めていたモルガンの姿だった。やっと起きたという彼女の発言でどうやら俺を起こすのに非道なやり方をしたそうだ。
「お前…人を起こすのに首を絞めるってどうかしてるだろ…!」
俺は咳込みながらモルガンを睨みつけた、だがモルガンはそんな事を気にも留めず俺を起きたのを見てすぐ馬車の入口の扉を開けた。
「急いで起こさないといけなくなった。外に出ろ、緊急事態だ。」
「緊急事態って、他のお客はどうした?」
「外にいる、事情は彼に聞くんだ。私はこの子を起こす。」
見渡すと馬車は止まっており、乗っていたお客がいない。いるのは俺と目の前で椅子にも座らず床で座って寝ているセーレだけだった。
俺はモルガンの言う通り状況を確認するために外に出た。外は目的地である霊長の里ではなく、砂利道とすぐ隣に川と森が広がる景色だった。
「こんな場所で止まってる、馬に何かあったのか?」
そう言いながら周りを見渡すと後ろから困窮している声が聞こえた。
「ああ…どうすれば!今すぐ助けに行こうにも…。」
「助けに行くって…まさかこの森に入ろうっていうんですか!?」
そこには頭を抱えて悩んでいるガイドのメルトルとそれを取り囲むお客の姿があった。
「なぁ、えっと…何かあったのか?」
「あなたは…ああそうでした、寝ていたからわからなかったですね。」
メルトルは森の向こうに指を指し、震えた口でその内容を伝えた。
「あっちの方向に巨大な鳥型の魔物が馬車を掴んで飛んで行ってるのを目撃して…。」
「馬車…馬車だって!?おい、それってまさか…!」
「僕達の馬車は始発組ですので、おそらく先に先行していた1台目の馬車かと。」
巨大な鳥型の魔物に掴まれて飛んでいったところを見た。普通じゃ信じられない話だが、もしそんな馬鹿気た話が本当だとしたらあの馬車に乗っているのは…
「ちょっと…それ本当なの?」
低く怒気を帯びたセーレの声が俺の後ろから聞こえ、振り返ろうとした時には横を通り過ぎメルトルの胸ぐらを掴んでいた。
「どっち!どっちに行った!?」
「おいセーレ落ち着け!ガイドを離すんだ!」
鬼気迫る表情でメルトルを脅す姿を見て俺はセーレの肩を掴んで落ち着かせようとしたが、彼女は俺の事を見向きもしない。
「最後に見たのは…あっち…!」
震えた声で森の向こうに指を指し、それを知ったセーレはメルトルを突き放し指を指した方向に歩き出した。
「おいどこに行くんだ!」
「決まってるでしょ!レズリィ様を助けに行くのよ!」
「単独行動はよせ!今回ばかりは一人じゃ無理だ!」
「うるさいわね!お前が決めてんじゃないわよ!」
セーレはそう言うと掴んでいる俺の手を突き放し、凄いスピードで走って森へと消えていった。
あの速さではコハクでもない限り追いつくことなんて不可能だろう。
「ああくそ!レズリィ以外どうだっていいって言うのかよ。」
俺は頭を掻きながらセーレの独断行動に苛立ちを感じた。
「あの人を一人で行かせて大丈夫なんですか?すぐに追いかけて呼び止めないと。」
「すぐに俺も行く、あいつなら大丈夫だ。」
「だったら俺達も行くぜ。あいつの事は気に入らないが、1台目の馬車が危険な状況になってるって考えたら助けに行かなきゃいけないだろ。」
俺の前に冒険者であろう二人がこちらに歩いてきた、体格も良く背中に二つの剣を携えている者と片手斧を振り回す器用な者、たしかに助けに行く分には戦力は申し分ないだろう。だが…
「駄目だ、お前達はここにいるべきだ。」
俺の言葉より先に馬車に寄りかかって佇むモルガンが口を開いた。
「あんた、馬車があんな目にあってるっていうのに俺達に指を咥えてここで見てろって言うのか!?」
「興奮して周りの状況から目を逸らすな。ここは魔物が蔓延る場所、お前達のような戦闘経験のある者が全員離れれば誰がここにいるお客を守るというのだ?」
「ぐっ…。」
モルガンは冒険者の質問に答えながら、彼らを叱咤するよう自分から近づいた。彼らもモルガンが言った的を得ている発言に言葉が出なかった。
「それにお前達は治療は出来るのか?あっちに行っても魔物を倒す事しか出来ないのなら、ここで魔物から皆を守る事が得策じゃないか?」
「じゃああんたにはそれが出来るって言うのかよ、武器も防具もない一般人だろうが!そんな奴に指図されても納得するわけねえだろ!」
「心配してくれるのか?嬉しいねぇ。」
モルガンはニヤリと笑うと、誰もいない方角に手を伸ばし魔法陣を展開した。
地面から光の帯が複数に伸び、その中から真っ白な巨大な帯が上に向かって飛び出しモルガンの目の前に着地した。その帯は少しづつ緑色に変化し薄い表面もどんどん膨れ上がっていく、人間よりも倍以上の大きさになったところでその帯が一体何なのか周りにいた人ははっきりとわかった。
「だっ、大蛇だ!」
「いや…大蛇なんかじゃねぇ、あれは腕のある冒険者でも倒すのが一苦労と言われている毒蛇…ヒュドラだ!」
周りの人達は突然現れた蛇の魔物に驚き、悲鳴をあげながらその場を離れていった。
それもそのはず、人を簡単に丸呑みに出そうな口に目が合うだけで夢に出てきそうな赤い眼光、見るだけで触りたくないと感じる緑と紫色の波目状のまだら模様。人が苦手とされる蛇の特徴が全て当てはまるそれは、細長い舌を出し入れしながら逃げていった人を品定めするように見渡していた。
「あっ、あんた!何をする気だ!?」
体格の良い冒険者は背中から剣を抜き、恐怖と戦う意思が混じったかのように苦い顔しながらその一本をモルガンに向けた。
「心配しなくても私は君達の10倍は強い、だから安心してここを守っていればいい。」
立ちすくんでる冒険者に気にも留めず、モルガンは軽々とヒュドラの背に乗り森に向けて走り出した。
「ニーナはここで待機、彼らを守ってあげてくれ。」
「わかった。」
「よし、それじゃ行こうか勇者君。」
突然ヒュドラの長い尾が俺の体に巻き付き、持ち上げられた状態で森の中へと入っていった。
「うぉぁぁ!降ろせって自分で走れるから!って痛でででで揺らすな揺らすな!酔う!酔うって!」
クロムの大げさに聞こえる抵抗の声がだんだんと小さくなり、立ちすくんでいるだけだった冒険者の二人は唖然とした状態で、森の中に入っていった二人について語った。
「なぁ…あの女、ヒュドラを眷属として使役していたぞ。あんな上級レベルの魔物を眷属にしていたなんて一体何者なんだ?」
「いやそんな事よりも一人巻き込まれて森に入っていったけど大丈夫かあの男、あんなじたばたしてるところを見るとかなり弱そうに感じるんだけど…。」
「でもあいつ勇者って呼ばれてなかったか?」
「まさか、あんな蛇に巻き付かれてバタついている奴が勇者なわけないだろ。」
冒険者の中でもその勇者という肩書きはとても強大な力を持つ存在として語られていた。そんな絶対強者と語られている今代の勇者は、哀れな声を出しながらヒュドラに左右に揺らされ続けていた。
「うわぁぁ怖い怖い!離すなよ!絶対離すなよ!」
「それはフリで言ってるのか?」
「なわけないだろ!今にも地面スレスレで引きずられそうになってるんだよ!うわぁぁぁ!」
ヒュドラは俺が巻き付いている尾の部分を上げモルガンと話せる距離まで近づけた。
モルガンは巨大な大蛇に乗り慣れているのか、揺れている蛇の上でまったく身じろぎもせず普通に俺と会話をし始めた。
「まったく、勇者ならもっと堂々としてなきゃ駄目だろう?それともこういう魔物を近くで見るのは怖いのかい?勇者なのに。」
「いや…それは…。」
「私はね、出会った時から君のことが気になっていたんだよ。本当に君は勇者なのかなって。」
「っ!?」
モルガンは探りを入れるように俺の本音を聞き出そうとしていた。俺はモルガンの疑問に目を逸らして黙り込むと彼女はため息を吐き、思い出にふけるよう顔を上に向けた。
「私は20年前の戦争を経験していた、前戦で戦う者達を補助するために後方にいたが、あの勇者の力は遠くからでも確認出来た。」
モルガンは過去に起こった20年前の戦争を思い返していた。
20年前…ルカラン王国とルーナ城の同盟国による人間側と、勢力を拡大したグラン帝国による悪魔側に起こった戦争。
悪魔側の勢力には今で言う帝国幹部が十数人と、人間側と比べて絶望的な戦力差がある戦いとなった。
誰もが勝てないと心に思い、死を覚悟して戦いに挑むが…彼らのその気持ちは目の前の勇者の存在によってかき消された。
モルガンはその時の衝撃の光景に深く魅力され、言葉では言い表せないその不思議な存在に興味をそそられていた。
「大勢の敵を前にしてたった一人で無双するあの剣技、格上相手でも屈する事なく挑むあの精神力。もはや人間をやめていると思っていいほどだった。あの勇者の力の源はなんだ?どうして同じ人間にここまで差が生まれる?考えるだけで勇者の力というのは私の心を燻らせる!」
モルガンは早口でその時の光景を物語っていた、人が戦う姿にここまで細かく分析して知りたいと願うその意思に俺はしらけて顔を引きつった。
「だが君はそんな力を持っているようには見えない、だから私の心は別な意味で掻き立てられる。どうしてって?」
高揚した表情から一変、彼女の目がギョロリと俺を睨んだ。その相手を呑み込むような目に俺は息が詰まる感覚を感じた。
「肩書きが勇者というだけであって、君の存在は勇者クロノスの似非にしか見えないんだ。なぜ王はこんな貧弱な者を勇者に選んだのか、もしかして君には何かしらの潜在能力があるのではないか、そう思うと真相を知りたくてたまらないんだ。」
モルガンの気持ちに応えるようにヒュドラは上下左右に激しく揺らし始めた。まるで隠さずに吐けと言っているようだった。
「おい!やめろ!こんな振り回されたんじゃ言いたいことも言えないだろ!」
揺らされた事で若干頭が酔いが回り始め、抜け出したいために頭の中で思いついた言葉を並べて説得した。その言葉を聞きモルガンはヒュドラの背中をポンポンと軽く叩くと、蛇はすぐに揺らすのを止めた。
疲弊し今にも吐きそうな顔をしながら、モルガンが気になっている真相を俺なりの予想で答えた。
「はぁ…はあ…モルガンは…勇者クロノスの事をどこまで知っているんだ?」
「うーん…実際に見たのはあの戦争の時だね、その前に彼の事を噂に聞いたくらいだ。」
「だったら…クロノスにだって下積み時代があったってことじゃないのか?皆があいつを最強だって言うのはあいつが頑張ってきたことが認められたってことだろ。」
ゲームのストーリーも同じ、最初こそ弱い勇者でもラスボス前には人類を代表とする強者に化ける。それは今まで努力してきた積み重ねがその結果として表れている勲章なんだ。
だから俺は彼女に意見を申し立てた、果てない道でも一歩ずつ前に進んでいるということを。
「比べるまでもなく今代の勇者が弱いってことは俺が一番よく知ってる、だから弱いやらふざけてるやら今は何とでも言えばいいさ。俺の最強伝説は今じゃないんだから!」
我ながら厨二病ような台詞で恥ずかしくなった、でもそこまでの領域にいかないとラスボスに会うなんて夢のまた夢だ。俺はその覚悟をモルガンに示した。
「ふむ…私の聞きたかった答えじゃないが、無礼を欠いた言葉だったな…。」
そう肩を落としていたが、その直後モルガンは素早く手を伸ばし俺の額に人差し指を突きつけた。その思わぬ不意打ちに俺は思わず息が止まる。
「だったら尚更、自分が国を救う勇者であることを自覚しなよ。自分に足りないモノ、必要なモノを常に考えて行動し、時には相手を利用して自分の力としてモノにするんだ。自分が本当に得ようとする何かに辿り着くためには近道なんて通っちゃいけないってことを心に刻んでおきなよ。」
今まで脅したりからかうような素振りを見せてきたモルガンだが、今の彼女はまるで過去に経験してきた事を伝えているように見えた。
その話に俺は惹きつけられたのか、一文一句その言葉が心に響き「わかった…」と彼女に向けて小さく呟いた。
「分かればよろしい。」
普段の糸目と悪そうな微笑みに戻ったモルガンは、ヒュドラに向かって「もういいよ」と話しかけた。すると俺に巻きついていた尻尾がほどけ、ヒュドラの背に乗っかった。
ヒュドラの表面が鱗状にゴツゴツしていて助かった、振り落とされないよう両手両足で容易にしがみつくことができる。
だがその対比にモルガンの悠々と座る姿を見ると、男として格好がつかない恥ずかしい姿だった。
そんな俺の姿を見て彼女はふっと鼻で笑いながら言い募った。
「最強伝説は今じゃないのだろう?だったら楽しみにしておくよ、君がクロノスのような強者になれることを。」
「見てろよ…絶対…。」
見返したい気持ちを言葉にしようとした瞬間…ギィギャギャァァ!と奇怪な鳴き声が森の中にこだました。
「今のは!?」
「あっちだ、行ってみようか。」
二人は突如として聞こえた奇怪な鳴き声を頼りに、ヒュドラの背に乗って木々を薙ぎ倒しながら真っ直ぐ向かった。
その先に一台目の馬車があると信じて。
ふと目を開けるとそこは一度見た何も見えない暗闇が広がっていた。最初は何がなんだか分からず出口を探すよう歩き続けたが、二度目は冷静になってこの現象について考え出した。
「一体何なんだこれ…夢?いや、夢にしては頭がはっきりしてるな。たしか俺がここに来た時は…」
ーーけて…。
「っ!?声…?」
前回の記憶を思い出そうとした時、どこからか聞こえる声が響き俺は驚いて辺りを見渡した。
「えっ?何なんだあれ…妙にあそこだけ光ってるけど。」
ちょうど後ろを向くと遠くのほうにぼんやりと光る球体があった。
思い出した…たしか一度目も俺はあの光を追いかけていたことに。
ーーけて…。
周期的に聞こえる謎の声はまるでエコーがかかっているように肝心な部分からが聞き取りづらく、俺は聞こえてくる声に集中して耳を傾けた。
ーーけて…。ーーすけて…。ーーたすけて…。
ーー助けて…。
慣れてくるとだんだんその声はうっすらと聞こえてきた、「助けて…」と。
「助けて…それってお前の声か?」
俺は光る球体に思わず声をかけた、だが当然受け答えてくれるわけなく、俺は光る球体に向けて歩き出した。
歩く音は聞こえなかったが光る球体がどんどん大きくなっていくのを見て近づいているのがわかった。そして近づいたことでわかった、それは球体というより少し凸凹した形をしていた。
ーー助けて…。ーーワタシ…を…助けて…。
今度ははっきり聞こえた、「私を助けて」と。それによって目の前にあるものが一体何なのか明白になった。
人…凸凹した球体というより、丸くなって座っている人の姿だ。
「お前が言ってるのか?お前は…。」
俺は人であろうものに手を伸ばそうとした瞬間、妙な息苦しさを感じすぐに手を引っ込めた。
「ぐっ…がはっ!ハァハァ!」
その苦しさはどんどん強まっていき呼吸すらも困難になってきた、俺は必死に呼吸をしようとするが誰かに押さえつけられているように喉が動かない。
「いっ、息が…苦しい…呼吸が…!」
頭に酸素が行き届かなくなり、俺は悶えながら倒れた。かすかに見えた光る存在を最後に目を閉じた。
夢か…はたまた現か…俺は未だに苦しさに悶えていた、押さえつけられているような…いや、手の温かみが直に伝わる…これは。
「がはっ!ゲホッゲホッ!」
「やっと起きたか、浅い睡眠で助かった。」
目覚めて最初に見た光景は、俺の首を絞めていたモルガンの姿だった。やっと起きたという彼女の発言でどうやら俺を起こすのに非道なやり方をしたそうだ。
「お前…人を起こすのに首を絞めるってどうかしてるだろ…!」
俺は咳込みながらモルガンを睨みつけた、だがモルガンはそんな事を気にも留めず俺を起きたのを見てすぐ馬車の入口の扉を開けた。
「急いで起こさないといけなくなった。外に出ろ、緊急事態だ。」
「緊急事態って、他のお客はどうした?」
「外にいる、事情は彼に聞くんだ。私はこの子を起こす。」
見渡すと馬車は止まっており、乗っていたお客がいない。いるのは俺と目の前で椅子にも座らず床で座って寝ているセーレだけだった。
俺はモルガンの言う通り状況を確認するために外に出た。外は目的地である霊長の里ではなく、砂利道とすぐ隣に川と森が広がる景色だった。
「こんな場所で止まってる、馬に何かあったのか?」
そう言いながら周りを見渡すと後ろから困窮している声が聞こえた。
「ああ…どうすれば!今すぐ助けに行こうにも…。」
「助けに行くって…まさかこの森に入ろうっていうんですか!?」
そこには頭を抱えて悩んでいるガイドのメルトルとそれを取り囲むお客の姿があった。
「なぁ、えっと…何かあったのか?」
「あなたは…ああそうでした、寝ていたからわからなかったですね。」
メルトルは森の向こうに指を指し、震えた口でその内容を伝えた。
「あっちの方向に巨大な鳥型の魔物が馬車を掴んで飛んで行ってるのを目撃して…。」
「馬車…馬車だって!?おい、それってまさか…!」
「僕達の馬車は始発組ですので、おそらく先に先行していた1台目の馬車かと。」
巨大な鳥型の魔物に掴まれて飛んでいったところを見た。普通じゃ信じられない話だが、もしそんな馬鹿気た話が本当だとしたらあの馬車に乗っているのは…
「ちょっと…それ本当なの?」
低く怒気を帯びたセーレの声が俺の後ろから聞こえ、振り返ろうとした時には横を通り過ぎメルトルの胸ぐらを掴んでいた。
「どっち!どっちに行った!?」
「おいセーレ落ち着け!ガイドを離すんだ!」
鬼気迫る表情でメルトルを脅す姿を見て俺はセーレの肩を掴んで落ち着かせようとしたが、彼女は俺の事を見向きもしない。
「最後に見たのは…あっち…!」
震えた声で森の向こうに指を指し、それを知ったセーレはメルトルを突き放し指を指した方向に歩き出した。
「おいどこに行くんだ!」
「決まってるでしょ!レズリィ様を助けに行くのよ!」
「単独行動はよせ!今回ばかりは一人じゃ無理だ!」
「うるさいわね!お前が決めてんじゃないわよ!」
セーレはそう言うと掴んでいる俺の手を突き放し、凄いスピードで走って森へと消えていった。
あの速さではコハクでもない限り追いつくことなんて不可能だろう。
「ああくそ!レズリィ以外どうだっていいって言うのかよ。」
俺は頭を掻きながらセーレの独断行動に苛立ちを感じた。
「あの人を一人で行かせて大丈夫なんですか?すぐに追いかけて呼び止めないと。」
「すぐに俺も行く、あいつなら大丈夫だ。」
「だったら俺達も行くぜ。あいつの事は気に入らないが、1台目の馬車が危険な状況になってるって考えたら助けに行かなきゃいけないだろ。」
俺の前に冒険者であろう二人がこちらに歩いてきた、体格も良く背中に二つの剣を携えている者と片手斧を振り回す器用な者、たしかに助けに行く分には戦力は申し分ないだろう。だが…
「駄目だ、お前達はここにいるべきだ。」
俺の言葉より先に馬車に寄りかかって佇むモルガンが口を開いた。
「あんた、馬車があんな目にあってるっていうのに俺達に指を咥えてここで見てろって言うのか!?」
「興奮して周りの状況から目を逸らすな。ここは魔物が蔓延る場所、お前達のような戦闘経験のある者が全員離れれば誰がここにいるお客を守るというのだ?」
「ぐっ…。」
モルガンは冒険者の質問に答えながら、彼らを叱咤するよう自分から近づいた。彼らもモルガンが言った的を得ている発言に言葉が出なかった。
「それにお前達は治療は出来るのか?あっちに行っても魔物を倒す事しか出来ないのなら、ここで魔物から皆を守る事が得策じゃないか?」
「じゃああんたにはそれが出来るって言うのかよ、武器も防具もない一般人だろうが!そんな奴に指図されても納得するわけねえだろ!」
「心配してくれるのか?嬉しいねぇ。」
モルガンはニヤリと笑うと、誰もいない方角に手を伸ばし魔法陣を展開した。
地面から光の帯が複数に伸び、その中から真っ白な巨大な帯が上に向かって飛び出しモルガンの目の前に着地した。その帯は少しづつ緑色に変化し薄い表面もどんどん膨れ上がっていく、人間よりも倍以上の大きさになったところでその帯が一体何なのか周りにいた人ははっきりとわかった。
「だっ、大蛇だ!」
「いや…大蛇なんかじゃねぇ、あれは腕のある冒険者でも倒すのが一苦労と言われている毒蛇…ヒュドラだ!」
周りの人達は突然現れた蛇の魔物に驚き、悲鳴をあげながらその場を離れていった。
それもそのはず、人を簡単に丸呑みに出そうな口に目が合うだけで夢に出てきそうな赤い眼光、見るだけで触りたくないと感じる緑と紫色の波目状のまだら模様。人が苦手とされる蛇の特徴が全て当てはまるそれは、細長い舌を出し入れしながら逃げていった人を品定めするように見渡していた。
「あっ、あんた!何をする気だ!?」
体格の良い冒険者は背中から剣を抜き、恐怖と戦う意思が混じったかのように苦い顔しながらその一本をモルガンに向けた。
「心配しなくても私は君達の10倍は強い、だから安心してここを守っていればいい。」
立ちすくんでる冒険者に気にも留めず、モルガンは軽々とヒュドラの背に乗り森に向けて走り出した。
「ニーナはここで待機、彼らを守ってあげてくれ。」
「わかった。」
「よし、それじゃ行こうか勇者君。」
突然ヒュドラの長い尾が俺の体に巻き付き、持ち上げられた状態で森の中へと入っていった。
「うぉぁぁ!降ろせって自分で走れるから!って痛でででで揺らすな揺らすな!酔う!酔うって!」
クロムの大げさに聞こえる抵抗の声がだんだんと小さくなり、立ちすくんでいるだけだった冒険者の二人は唖然とした状態で、森の中に入っていった二人について語った。
「なぁ…あの女、ヒュドラを眷属として使役していたぞ。あんな上級レベルの魔物を眷属にしていたなんて一体何者なんだ?」
「いやそんな事よりも一人巻き込まれて森に入っていったけど大丈夫かあの男、あんなじたばたしてるところを見るとかなり弱そうに感じるんだけど…。」
「でもあいつ勇者って呼ばれてなかったか?」
「まさか、あんな蛇に巻き付かれてバタついている奴が勇者なわけないだろ。」
冒険者の中でもその勇者という肩書きはとても強大な力を持つ存在として語られていた。そんな絶対強者と語られている今代の勇者は、哀れな声を出しながらヒュドラに左右に揺らされ続けていた。
「うわぁぁ怖い怖い!離すなよ!絶対離すなよ!」
「それはフリで言ってるのか?」
「なわけないだろ!今にも地面スレスレで引きずられそうになってるんだよ!うわぁぁぁ!」
ヒュドラは俺が巻き付いている尾の部分を上げモルガンと話せる距離まで近づけた。
モルガンは巨大な大蛇に乗り慣れているのか、揺れている蛇の上でまったく身じろぎもせず普通に俺と会話をし始めた。
「まったく、勇者ならもっと堂々としてなきゃ駄目だろう?それともこういう魔物を近くで見るのは怖いのかい?勇者なのに。」
「いや…それは…。」
「私はね、出会った時から君のことが気になっていたんだよ。本当に君は勇者なのかなって。」
「っ!?」
モルガンは探りを入れるように俺の本音を聞き出そうとしていた。俺はモルガンの疑問に目を逸らして黙り込むと彼女はため息を吐き、思い出にふけるよう顔を上に向けた。
「私は20年前の戦争を経験していた、前戦で戦う者達を補助するために後方にいたが、あの勇者の力は遠くからでも確認出来た。」
モルガンは過去に起こった20年前の戦争を思い返していた。
20年前…ルカラン王国とルーナ城の同盟国による人間側と、勢力を拡大したグラン帝国による悪魔側に起こった戦争。
悪魔側の勢力には今で言う帝国幹部が十数人と、人間側と比べて絶望的な戦力差がある戦いとなった。
誰もが勝てないと心に思い、死を覚悟して戦いに挑むが…彼らのその気持ちは目の前の勇者の存在によってかき消された。
モルガンはその時の衝撃の光景に深く魅力され、言葉では言い表せないその不思議な存在に興味をそそられていた。
「大勢の敵を前にしてたった一人で無双するあの剣技、格上相手でも屈する事なく挑むあの精神力。もはや人間をやめていると思っていいほどだった。あの勇者の力の源はなんだ?どうして同じ人間にここまで差が生まれる?考えるだけで勇者の力というのは私の心を燻らせる!」
モルガンは早口でその時の光景を物語っていた、人が戦う姿にここまで細かく分析して知りたいと願うその意思に俺はしらけて顔を引きつった。
「だが君はそんな力を持っているようには見えない、だから私の心は別な意味で掻き立てられる。どうしてって?」
高揚した表情から一変、彼女の目がギョロリと俺を睨んだ。その相手を呑み込むような目に俺は息が詰まる感覚を感じた。
「肩書きが勇者というだけであって、君の存在は勇者クロノスの似非にしか見えないんだ。なぜ王はこんな貧弱な者を勇者に選んだのか、もしかして君には何かしらの潜在能力があるのではないか、そう思うと真相を知りたくてたまらないんだ。」
モルガンの気持ちに応えるようにヒュドラは上下左右に激しく揺らし始めた。まるで隠さずに吐けと言っているようだった。
「おい!やめろ!こんな振り回されたんじゃ言いたいことも言えないだろ!」
揺らされた事で若干頭が酔いが回り始め、抜け出したいために頭の中で思いついた言葉を並べて説得した。その言葉を聞きモルガンはヒュドラの背中をポンポンと軽く叩くと、蛇はすぐに揺らすのを止めた。
疲弊し今にも吐きそうな顔をしながら、モルガンが気になっている真相を俺なりの予想で答えた。
「はぁ…はあ…モルガンは…勇者クロノスの事をどこまで知っているんだ?」
「うーん…実際に見たのはあの戦争の時だね、その前に彼の事を噂に聞いたくらいだ。」
「だったら…クロノスにだって下積み時代があったってことじゃないのか?皆があいつを最強だって言うのはあいつが頑張ってきたことが認められたってことだろ。」
ゲームのストーリーも同じ、最初こそ弱い勇者でもラスボス前には人類を代表とする強者に化ける。それは今まで努力してきた積み重ねがその結果として表れている勲章なんだ。
だから俺は彼女に意見を申し立てた、果てない道でも一歩ずつ前に進んでいるということを。
「比べるまでもなく今代の勇者が弱いってことは俺が一番よく知ってる、だから弱いやらふざけてるやら今は何とでも言えばいいさ。俺の最強伝説は今じゃないんだから!」
我ながら厨二病ような台詞で恥ずかしくなった、でもそこまでの領域にいかないとラスボスに会うなんて夢のまた夢だ。俺はその覚悟をモルガンに示した。
「ふむ…私の聞きたかった答えじゃないが、無礼を欠いた言葉だったな…。」
そう肩を落としていたが、その直後モルガンは素早く手を伸ばし俺の額に人差し指を突きつけた。その思わぬ不意打ちに俺は思わず息が止まる。
「だったら尚更、自分が国を救う勇者であることを自覚しなよ。自分に足りないモノ、必要なモノを常に考えて行動し、時には相手を利用して自分の力としてモノにするんだ。自分が本当に得ようとする何かに辿り着くためには近道なんて通っちゃいけないってことを心に刻んでおきなよ。」
今まで脅したりからかうような素振りを見せてきたモルガンだが、今の彼女はまるで過去に経験してきた事を伝えているように見えた。
その話に俺は惹きつけられたのか、一文一句その言葉が心に響き「わかった…」と彼女に向けて小さく呟いた。
「分かればよろしい。」
普段の糸目と悪そうな微笑みに戻ったモルガンは、ヒュドラに向かって「もういいよ」と話しかけた。すると俺に巻きついていた尻尾がほどけ、ヒュドラの背に乗っかった。
ヒュドラの表面が鱗状にゴツゴツしていて助かった、振り落とされないよう両手両足で容易にしがみつくことができる。
だがその対比にモルガンの悠々と座る姿を見ると、男として格好がつかない恥ずかしい姿だった。
そんな俺の姿を見て彼女はふっと鼻で笑いながら言い募った。
「最強伝説は今じゃないのだろう?だったら楽しみにしておくよ、君がクロノスのような強者になれることを。」
「見てろよ…絶対…。」
見返したい気持ちを言葉にしようとした瞬間…ギィギャギャァァ!と奇怪な鳴き声が森の中にこだました。
「今のは!?」
「あっちだ、行ってみようか。」
二人は突如として聞こえた奇怪な鳴き声を頼りに、ヒュドラの背に乗って木々を薙ぎ倒しながら真っ直ぐ向かった。
その先に一台目の馬車があると信じて。
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小隊長である男『瀬能勝則』含めると12人の男達である
劣戦の戦場でその男達が現れると瞬く間に戦局が逆転し気が付けば日本軍が勝っていた。
しかし日本陸軍上層部はその男達を快くは思っていなかった。
上官の命令には従わず自由気ままに戦場を行き来する男達。
ゆえに彼らは最前線に配備された
しかし、彼等は死なず、最前線においても無類の戦火を上げていった。
しかし、彼らがもたらした日本の勝利は彼らが望んだ日本を作り上げたわけではなかった。
瀬能が死を迎えるとき
とある世界の神が彼と彼の部下を新天地へと導くのであった
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