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悪魔の絆編
第二十話 凸凹パーティー①
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(結局俺寝れてないし、あんたらの信頼だだ下がりなんだけど…。)
そう心の中でモルガンを睨みつけた後、俺はレズリィの助けを借りてようやく立ち上がった。
「すいませんクロムさん…私ちょっと取り乱していました。」
「ちょっと?」
「あうぅ…かなり取り乱していました。でも!そうなるのも仕方ありません、この人達のことを私達に説明ください。」
唇を尖らせながら自分の質問に持ちかけたレズリィ、俺は渋々レズリィ達に昨夜起こった事を話した。
最初はセーレを研究対象として奪おうとした事に驚いていたが、彼女が過去にルカラン王国の魔法研究者の一人だった事や、厄災魔獣を研究対象として俺達に協力をお願いするためと理由を告げると理解したのか彼女達を疑う目はしなくなった。
「本当なんですかそれ、あの厄災魔獣に対抗する薬を作れるって。」
「前代未聞の挑戦で作るには難儀するが、あるかないかでは戦闘の環境は違ってくる。最もあの厄災魔獣を解き放つ前に事を終わらせればそれで済む話だけどね。」
「ちなみにその薬は作るのにどれくらいかかりますか?」
「私の研究室に行って材料や器材を確認しないとね、君達は霊長の里に行くのだろう?私の研究室もそこにあるから共に行こうじゃないか。」
レズリィとコハクは理解し合うようにお互い頷き、彼女達をパーティーの仲間として温かく迎えいれた。
「分かりました、私達からもお願いします。協力して帝国の企みを阻止しましょう。」
「やりましたねクロムさん、頼もしい仲間が二人もできました!」
「あはは…そうだな…。」 (言えない!言えるわけない!逆にこいつ等に脅されてるって!毒を植え付けられて殺されそうになってるって!)
コハクは尊敬な眼差しで俺を見つめてくるが、何故彼女達がここまで協力的なのか本当の事は言えず、俺は笑みをこぼしながら少し顔を背けた。
その先でモルガンと目があった、俺に気づいた彼女は口元に人差し指をつけて静かにするポーズをとった。いやこの場合は誰にも言うなという合図を示しているのだろう、その仕草を感じとったと認識したのかすぐ手を後ろに隠して普通にパーティーの皆の中に溶け込んでいった。
「ちょっと…本気であんな奴等を仲間にするわけ?あいつらは私を狙ってきたのよ、今の話だって私を捕まえるための嘘の口実かもしれないじゃない…!」
セーレはモルガン達の視線から逸れた後、俺に近づき耳打ちするよう話した。彼女が一番納得できないだろう、彼女を狙おうと襲ってきた人物と旅をするなんて。
「昨日出会ったあの時のままだったらな、何とか説得して研究対象をお前から厄災魔獣に切り替えさせたから襲われる心配はないはずだ。」
「それはお前の憶測でしょ、他の奴に頼むって選択肢はあったのになんでこいつな訳?」
「俺だって嫌だったさ!でも俺の命がかかってんだ!嫌になるのはお前だけじゃねえんだよ!」
「何よ弱みでも握られたわけ?昨日あいつらと一緒にいた理由ってそういう事?」
俺とニーナは互いに内緒話しするよう小声で話していたが、話がどんどん激化し喧嘩並みの会話になっていた。
「っていうかそもそも助けてやったのに逃げる事ねぇだろ!あれがなかったら穏便に和解できたかもしれないのに!」
「はぁ?誰も助けてなんて言ってないし、あの状況で和解できるほど落ち着いてなかったでしょあのお面の奴。大人しくお前は〇〇切り落とされてればよかったのに。」
「聞いてたのなら助けろよ!つか人前でそれ言うな!」
いがみ合う二人を見てレズリィはため息をこぼし、仲裁するよう声をかけたその時…
「待って…!待ってくださいよモルガン先生!」
人混みに紛れて切羽詰まる男性の声が響き、その声がする方向に顔を向けると息を切らしながら両手に重たそうな手提げのバッグを持ってこちらに走ってくる人物がいた。
「遅いぞルミール、もうすぐ出発だと言うのに。」
「急すぎますよ!はぁ…はぁ…ゆっくり朝を過ごせると思った矢先に管理人さんから先生の手紙を渡された時には驚きましたよ!始発の馬車で里に帰るだなんて!」
「すまないね、こっちの用件を先に終わらせないといけなくてってしまってな。」
焦茶色の短髪に長く尖った耳をしたエルフの男性が自由すぎるモルガンに注意をするように話していた。手を胸に当て息を整えながら話しているところを見るに外であまり運動しなさそうな体格に見える。
「ああすまない、自己紹介が遅れたな。彼はルミール・オルフェン、私の助手だ。」
「ルミールです、はぁ…モルガン先生が何か面倒をかけたみたいですみません。」
彼は袖で額の汗を拭き取り、何度もパーティーの前で腰を折って謝っていた。皆は彼の謝罪を軽く打ち消しながら優しく接していたが、俺は彼を見て少しばかり苦い顔した。
「ルミール…ルミールか…。」
忘れもしない、あれはゲーム中盤に差し掛かる大きな事件。争いにより崩壊しかけた霊長の里に、血を流して倒れたルミールと彼を抱き抱えるモルガンの姿。
彼の皮膚は褐色に染まり、焦茶色の髪も白髪に変貌していた。その姿はエルフから忌み嫌われるダークエルフそのものだった。
「何故ルミールは死ななければならない?ルミールが皆に何をした?奴等はただ…この姿である事が嫌いなだけで殺したんだ。」
モルガンの悲痛で歪んだ表情がプレイヤーの前に映し出される。憎しみ…強い恨みが彼女の中を埋め尽くし、彼女の体が醜い化物へと変化する。
「身勝手だろう?だから私もそうするのさ。」
何十人もの人の声が重なり不協和音を奏でる巨体な灰緑の蛇に変身し、勇者に襲いかかるシーンを俺は思い出した。
(モルガンが霊長の里に反乱を起こすきっかけになったエルフ族。こいつだけは…絶対に守らなきゃいけねぇ。)
目を閉じてあのシーンを振り返りながら最悪の結果を生まないよう心に決めた時、外部から誰かが呟く声が聞こえた。
「あの…。」
「えっ!?あ…どうしたんだ?」
目の前にいたルミールが手招きしているのを見て、俺は腰を折って顔を近づけると彼が耳打ちしてきた。
「隣にいる方、悪魔族ですよ…!」
「え?ああこいつ?関わらなきゃ襲われないから心配するな。」
「ああ…ええっ?」
心配で教えたはずが軽くあしらわれた返答にルミールは固まる。当然の反応だ、人間と悪魔がつるむところなど稀に見ないのだから。
「ふん…。」
そんな彼女は俺達二人を冷ややかな目で見た後俺のそばを離れた。その入れ替わりでコハクがこちらにやってきた。
「クロムさん、アルノアさんが馬車の手配をしたから早く来いと言ってます。」
「わかった今行く、悪いなせっかく教えてくれたのに、でもあまりこの事は周りに言わないでくれよ。」
そうルミールに告げ、コハクと共に馬車の乗り場に向かった。
ルミールは初めて見る関係に頭の中が疑問だらけになりまじまじと俺の背中を見つめた。そんな時モルガンが後ろから肩に手を置かれ、彼の疑問に答えるかのように話し始めた。
「これが勇者パーティーだ、驚きだろう?私も最初驚いた。利用できるものは利用する、まるで私のようじゃないか。」
「モルガン先生、それだとあの人が可哀想ですから絶対あの人の前で言わないでください。」
ルミールはじろっとモルガンを半眼で睨み、馬車の乗り場に足早で向かった。
「ニーナ、私あの子に何かしたか?」
自身がした過ちを分からず隣にいたニーナに問いた、ニーナが無言で縦に首を振ったのを見てそうなんだと軽く思いながら皆が集まる馬車の乗り場に向かった。
「乗るのは5人だと思ってたんだが、まさか8人に増えるなんてな…はぁ。」
霊長の里行きの馬車は2台、乗客10名程度のスペースがある車だ。アルノアは自身のパーティーだけだと思って先約していたが、予期せぬ仲間の追加に頭を悩ませながら追加の申請に再び戻った。
「私達は別に構わないよ、2台目の馬車に乗って行くから。なぁ勇者君?」
「すみませんチェンジでお願いします、なんか怖いですこの人。」
「怖いとは心外だなこれから一緒に困難に立ち向かう仲間なのに。」
「見えてんだよ!バックから昨日いじってた器具とかが!」
モルガンは何食わぬ顔で俺の肩を掴みこちら側に引き寄せようとしていた。その時に彼女の持つ手提げのバッグからチラッと銀色に光る何かが見え、嫌な予感がした俺は咄嗟に彼女の手を振り解いた。
そんなやりとりをしてる間にアルノアが帰ってきて、馬車に乗車できる人数を皆に伝えた。
「1台目の馬車は先に乗った客がいるから乗れるのは4人までみたいだ。」
「では、私とニーナとルミールと勇者君で決定だな。」
モルガンは俺の肩を掴んで離さない、一体何故ここまで俺を求めようとするのか?昨日の件を思い出すかぎり絶対ろくなことじゃない。
俺は咄嗟に少しでもモルガンから離れるように皆にある提案をした。
「いや、ここはさ…皆の交流もかねてバラバラに乗るのはどうだ?平等にじゃんけんで決めよう。」
「なるほど…たしかに会ったばかりですし交流は必要ですよね。」
「うーむ…仕方ないが理にかなってる、ここは平等にじゃんけんで決めようか。」
「じゃあ勝った人が1台目、残りは2台目でいくぞ。じゃあ、せーの…。」 (よーし…とりあえずこれでモルガンと一緒の席は避けられる。例え一緒でも仲間の誰かがいればフォローしてくれるだろう。)
ただモルガンから離れたいという理由を知らない皆はその提案に納得し、全員で囲んで中央に腕を伸ばした。
「「「最初はグー!じゃんけん…」」」
ーー数分後。
「じゃあ先に行ってるぞ。」
「セーレさん、他のお客さんに迷惑かけちゃだめですよ。」
「ウン…ダイジョウブダイジョウブ…。」
1台目の馬車に乗った、レズリィ、アルノア、コハク、ルミールを見送るためセーレは口元を半月状に笑いながら手を振った。
そして4人を見送った後、ため息を吐きやる気のない気だるさな表情が表れた。
「じゃあ見送った事だし私達も行きましょうか、ねぇ?勇者君。」
「ソッ…ソウデスネ…。」
俺は諦めついた苦笑いをしながらモルガンと2台目の馬車に乗り込み、その後からニーナとセーレが乗り込んだ。
馬車の構造は後方の両開きの扉が入口となり、側には横一面に窓ガラスが張られ左右の景色を楽しめる作りになっている。その下には長椅子が設置されお互い対面するように座る形式になっている。
俺とモルガン、セーレとニーナという組み合わせで片側ずつ座ったところで、俺とセーレは顔を下げながら同じ事を心の中で叫んだ。
((こいつと隣とか絶対ムリ!))
そう思っても今更乗り変えることなど出来ない、徐々に人数が集まり定員がいっぱいになったところで2台目の馬車は霊長の里に向けて動き出した。
そう心の中でモルガンを睨みつけた後、俺はレズリィの助けを借りてようやく立ち上がった。
「すいませんクロムさん…私ちょっと取り乱していました。」
「ちょっと?」
「あうぅ…かなり取り乱していました。でも!そうなるのも仕方ありません、この人達のことを私達に説明ください。」
唇を尖らせながら自分の質問に持ちかけたレズリィ、俺は渋々レズリィ達に昨夜起こった事を話した。
最初はセーレを研究対象として奪おうとした事に驚いていたが、彼女が過去にルカラン王国の魔法研究者の一人だった事や、厄災魔獣を研究対象として俺達に協力をお願いするためと理由を告げると理解したのか彼女達を疑う目はしなくなった。
「本当なんですかそれ、あの厄災魔獣に対抗する薬を作れるって。」
「前代未聞の挑戦で作るには難儀するが、あるかないかでは戦闘の環境は違ってくる。最もあの厄災魔獣を解き放つ前に事を終わらせればそれで済む話だけどね。」
「ちなみにその薬は作るのにどれくらいかかりますか?」
「私の研究室に行って材料や器材を確認しないとね、君達は霊長の里に行くのだろう?私の研究室もそこにあるから共に行こうじゃないか。」
レズリィとコハクは理解し合うようにお互い頷き、彼女達をパーティーの仲間として温かく迎えいれた。
「分かりました、私達からもお願いします。協力して帝国の企みを阻止しましょう。」
「やりましたねクロムさん、頼もしい仲間が二人もできました!」
「あはは…そうだな…。」 (言えない!言えるわけない!逆にこいつ等に脅されてるって!毒を植え付けられて殺されそうになってるって!)
コハクは尊敬な眼差しで俺を見つめてくるが、何故彼女達がここまで協力的なのか本当の事は言えず、俺は笑みをこぼしながら少し顔を背けた。
その先でモルガンと目があった、俺に気づいた彼女は口元に人差し指をつけて静かにするポーズをとった。いやこの場合は誰にも言うなという合図を示しているのだろう、その仕草を感じとったと認識したのかすぐ手を後ろに隠して普通にパーティーの皆の中に溶け込んでいった。
「ちょっと…本気であんな奴等を仲間にするわけ?あいつらは私を狙ってきたのよ、今の話だって私を捕まえるための嘘の口実かもしれないじゃない…!」
セーレはモルガン達の視線から逸れた後、俺に近づき耳打ちするよう話した。彼女が一番納得できないだろう、彼女を狙おうと襲ってきた人物と旅をするなんて。
「昨日出会ったあの時のままだったらな、何とか説得して研究対象をお前から厄災魔獣に切り替えさせたから襲われる心配はないはずだ。」
「それはお前の憶測でしょ、他の奴に頼むって選択肢はあったのになんでこいつな訳?」
「俺だって嫌だったさ!でも俺の命がかかってんだ!嫌になるのはお前だけじゃねえんだよ!」
「何よ弱みでも握られたわけ?昨日あいつらと一緒にいた理由ってそういう事?」
俺とニーナは互いに内緒話しするよう小声で話していたが、話がどんどん激化し喧嘩並みの会話になっていた。
「っていうかそもそも助けてやったのに逃げる事ねぇだろ!あれがなかったら穏便に和解できたかもしれないのに!」
「はぁ?誰も助けてなんて言ってないし、あの状況で和解できるほど落ち着いてなかったでしょあのお面の奴。大人しくお前は〇〇切り落とされてればよかったのに。」
「聞いてたのなら助けろよ!つか人前でそれ言うな!」
いがみ合う二人を見てレズリィはため息をこぼし、仲裁するよう声をかけたその時…
「待って…!待ってくださいよモルガン先生!」
人混みに紛れて切羽詰まる男性の声が響き、その声がする方向に顔を向けると息を切らしながら両手に重たそうな手提げのバッグを持ってこちらに走ってくる人物がいた。
「遅いぞルミール、もうすぐ出発だと言うのに。」
「急すぎますよ!はぁ…はぁ…ゆっくり朝を過ごせると思った矢先に管理人さんから先生の手紙を渡された時には驚きましたよ!始発の馬車で里に帰るだなんて!」
「すまないね、こっちの用件を先に終わらせないといけなくてってしまってな。」
焦茶色の短髪に長く尖った耳をしたエルフの男性が自由すぎるモルガンに注意をするように話していた。手を胸に当て息を整えながら話しているところを見るに外であまり運動しなさそうな体格に見える。
「ああすまない、自己紹介が遅れたな。彼はルミール・オルフェン、私の助手だ。」
「ルミールです、はぁ…モルガン先生が何か面倒をかけたみたいですみません。」
彼は袖で額の汗を拭き取り、何度もパーティーの前で腰を折って謝っていた。皆は彼の謝罪を軽く打ち消しながら優しく接していたが、俺は彼を見て少しばかり苦い顔した。
「ルミール…ルミールか…。」
忘れもしない、あれはゲーム中盤に差し掛かる大きな事件。争いにより崩壊しかけた霊長の里に、血を流して倒れたルミールと彼を抱き抱えるモルガンの姿。
彼の皮膚は褐色に染まり、焦茶色の髪も白髪に変貌していた。その姿はエルフから忌み嫌われるダークエルフそのものだった。
「何故ルミールは死ななければならない?ルミールが皆に何をした?奴等はただ…この姿である事が嫌いなだけで殺したんだ。」
モルガンの悲痛で歪んだ表情がプレイヤーの前に映し出される。憎しみ…強い恨みが彼女の中を埋め尽くし、彼女の体が醜い化物へと変化する。
「身勝手だろう?だから私もそうするのさ。」
何十人もの人の声が重なり不協和音を奏でる巨体な灰緑の蛇に変身し、勇者に襲いかかるシーンを俺は思い出した。
(モルガンが霊長の里に反乱を起こすきっかけになったエルフ族。こいつだけは…絶対に守らなきゃいけねぇ。)
目を閉じてあのシーンを振り返りながら最悪の結果を生まないよう心に決めた時、外部から誰かが呟く声が聞こえた。
「あの…。」
「えっ!?あ…どうしたんだ?」
目の前にいたルミールが手招きしているのを見て、俺は腰を折って顔を近づけると彼が耳打ちしてきた。
「隣にいる方、悪魔族ですよ…!」
「え?ああこいつ?関わらなきゃ襲われないから心配するな。」
「ああ…ええっ?」
心配で教えたはずが軽くあしらわれた返答にルミールは固まる。当然の反応だ、人間と悪魔がつるむところなど稀に見ないのだから。
「ふん…。」
そんな彼女は俺達二人を冷ややかな目で見た後俺のそばを離れた。その入れ替わりでコハクがこちらにやってきた。
「クロムさん、アルノアさんが馬車の手配をしたから早く来いと言ってます。」
「わかった今行く、悪いなせっかく教えてくれたのに、でもあまりこの事は周りに言わないでくれよ。」
そうルミールに告げ、コハクと共に馬車の乗り場に向かった。
ルミールは初めて見る関係に頭の中が疑問だらけになりまじまじと俺の背中を見つめた。そんな時モルガンが後ろから肩に手を置かれ、彼の疑問に答えるかのように話し始めた。
「これが勇者パーティーだ、驚きだろう?私も最初驚いた。利用できるものは利用する、まるで私のようじゃないか。」
「モルガン先生、それだとあの人が可哀想ですから絶対あの人の前で言わないでください。」
ルミールはじろっとモルガンを半眼で睨み、馬車の乗り場に足早で向かった。
「ニーナ、私あの子に何かしたか?」
自身がした過ちを分からず隣にいたニーナに問いた、ニーナが無言で縦に首を振ったのを見てそうなんだと軽く思いながら皆が集まる馬車の乗り場に向かった。
「乗るのは5人だと思ってたんだが、まさか8人に増えるなんてな…はぁ。」
霊長の里行きの馬車は2台、乗客10名程度のスペースがある車だ。アルノアは自身のパーティーだけだと思って先約していたが、予期せぬ仲間の追加に頭を悩ませながら追加の申請に再び戻った。
「私達は別に構わないよ、2台目の馬車に乗って行くから。なぁ勇者君?」
「すみませんチェンジでお願いします、なんか怖いですこの人。」
「怖いとは心外だなこれから一緒に困難に立ち向かう仲間なのに。」
「見えてんだよ!バックから昨日いじってた器具とかが!」
モルガンは何食わぬ顔で俺の肩を掴みこちら側に引き寄せようとしていた。その時に彼女の持つ手提げのバッグからチラッと銀色に光る何かが見え、嫌な予感がした俺は咄嗟に彼女の手を振り解いた。
そんなやりとりをしてる間にアルノアが帰ってきて、馬車に乗車できる人数を皆に伝えた。
「1台目の馬車は先に乗った客がいるから乗れるのは4人までみたいだ。」
「では、私とニーナとルミールと勇者君で決定だな。」
モルガンは俺の肩を掴んで離さない、一体何故ここまで俺を求めようとするのか?昨日の件を思い出すかぎり絶対ろくなことじゃない。
俺は咄嗟に少しでもモルガンから離れるように皆にある提案をした。
「いや、ここはさ…皆の交流もかねてバラバラに乗るのはどうだ?平等にじゃんけんで決めよう。」
「なるほど…たしかに会ったばかりですし交流は必要ですよね。」
「うーむ…仕方ないが理にかなってる、ここは平等にじゃんけんで決めようか。」
「じゃあ勝った人が1台目、残りは2台目でいくぞ。じゃあ、せーの…。」 (よーし…とりあえずこれでモルガンと一緒の席は避けられる。例え一緒でも仲間の誰かがいればフォローしてくれるだろう。)
ただモルガンから離れたいという理由を知らない皆はその提案に納得し、全員で囲んで中央に腕を伸ばした。
「「「最初はグー!じゃんけん…」」」
ーー数分後。
「じゃあ先に行ってるぞ。」
「セーレさん、他のお客さんに迷惑かけちゃだめですよ。」
「ウン…ダイジョウブダイジョウブ…。」
1台目の馬車に乗った、レズリィ、アルノア、コハク、ルミールを見送るためセーレは口元を半月状に笑いながら手を振った。
そして4人を見送った後、ため息を吐きやる気のない気だるさな表情が表れた。
「じゃあ見送った事だし私達も行きましょうか、ねぇ?勇者君。」
「ソッ…ソウデスネ…。」
俺は諦めついた苦笑いをしながらモルガンと2台目の馬車に乗り込み、その後からニーナとセーレが乗り込んだ。
馬車の構造は後方の両開きの扉が入口となり、側には横一面に窓ガラスが張られ左右の景色を楽しめる作りになっている。その下には長椅子が設置されお互い対面するように座る形式になっている。
俺とモルガン、セーレとニーナという組み合わせで片側ずつ座ったところで、俺とセーレは顔を下げながら同じ事を心の中で叫んだ。
((こいつと隣とか絶対ムリ!))
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