15 / 50
誤解
しおりを挟む
孤児院を出て教会への渡り廊下を歩いていると向こうから司教が歩いてきた。
エリザベスを見つけると
「エリザベス様。今から孤児院に迎えに行くところでした。」とこちらに駆け寄る。
そしてキョロキョロと辺りを見回すと、
「閣下は?」と聞く。
エリザベスはきょとんとして
「ルシアーノ様はお見かけしてませんが」
というと
司教は「そうでしたか‥」というものの腑に落ちない様子。
「そちらにいらっしゃらないのですか?」
「ええ‥‥皆孤児院の方に行かれたかと‥‥おや?パム?どうしたのですか」
(え?パム?)
とエリザベスが振り返った時だった。
ドン!!とエリザベスの体に衝撃が走る。
(え?!)
グラリと視界が傾く。
傾いた視界に見えたのはパムの走っていく後ろ姿。
(パムがぶつかった?)
踏ん張ろうとするも足をグリッとひねってしまった。
転ぶ!これからくるであろう衝撃にギュッと目を閉じた。
「あぶなかった‥‥」
その言葉にハッとなる。
転んでいない。
司教が咄嗟に抱き止めてくれていたのだ。
顔を上げると司教の心底ほっとした顔が見える。
転ばずに済んだ。
エリザベスも心からホッとした。
下は石畳。バランス崩したままここで転んでたら顔にあざの一つも作っていたかもしれない。
「司教様ありがとうございます。」
とゆっくり自分の力でたとうとした時、ズキっと足首が痛んでまたよろめいた。
またそれを大丈夫ですかと司教が支えながらも青ざめる。
「パムは一体どういうつもりで‥!あとできつく注意しておきます。申し訳ございません。」
その言葉にエリザベスは司教の顔を見た。
「いえ、きっと何か理由があったに違いありません。理由を聞いていただけませんか‥聞けばきっと‥‥」
とその時だった。
「教会で抱き合うなんて随分大胆なんだな」
よく通るくぐもった声がした。
はっと2人で声の方を見る。
そこには片目をすがめて不快そうに顔を歪めて嗤うルシアーノが立っていた。
「それともこのくらい慣れてるとでも?噂通りの令嬢で恐れ入る!」
話しながらゆっくり近づいてくる。
一瞬何を言われているのかわからなかったエリザベスだが状況を理解する。
今エリザベスは司教に抱き支えられて立っている。
その状態でパムの話をしていたのだ。
この時だけ切り取れば近く顔を突き合わせて親しく話しているように見えただろう。
足が痛まぬようゆっくり体を離しながら「いいえ、誤解です!」と訴える。
「誤解?この状況で何を言ってるんだ?」
言いながらハッとバカにしたように笑う。
「閣下!本当に誤解です。エリザベス様がよろめいたのでお支えしただけなのです。」
司教もエリザベスの援護をしてくれる。がルシアーノは不快な顔を崩そうとせず歩を進めエリザベスの目の前まで来て止まると覗き込むように腰をかがめた。
「よろめくような段差はないように思うが?もしやよろめいた振りで誘惑が常套手段か?なあ。婚約者と来ている教会でいくらなんでもやりすぎだとは思わないか?」
「ちが‥‥違います!誤解です!子供が‥
「子供?」
「はい、子供とぶつかってしまい‥
「子供なんてどこにいるというのだ!!」
エリザベスの言葉を遮りスイッチが入ったようにルシアーノが声を荒げた。
エリザベスは先日怒鳴られたことを思い出し、ひゅっと息を呑む。
慌てたのは司教だった。
まさかルシアーノがここまで激昂すると思っていなかったようだ。
「閣下!ご令嬢にそのような!頭ごなしにお気の毒です!」
「お気の毒?」
今度は不愉快そうに司教を見る。
「気の毒は俺の方じゃないか?国中で知らぬもののいない股の緩いご令嬢を娶らないといけないんだぞ?不本意だろうが関係ない!王族命令ときたもんだ!おまけに爵位だけは無駄に高くて蔑ろにもできない!そこまで言うなら司教が代わってくれよ!そしたら病気をうつされている様を遠くから見て笑ってやるよ!!」最後の方は怒鳴り声となっていた。
(病気?どうして病気の話に‥)エリザベスがそこまで考えた時ハッと気付き、羞恥で赤くなるよりさっと青ざめた。
「閣下!!」同じく意味に気づき真っ青な司教が素っ頓狂な声を上げた。
と同時に
「ルカァァ!!!!」
ルシアーノの大きい声にも負けないくらいの大声が響いたかと思うと
ガキイ!!聞いたことのないような音が鳴った。
エリザベスを見つけると
「エリザベス様。今から孤児院に迎えに行くところでした。」とこちらに駆け寄る。
そしてキョロキョロと辺りを見回すと、
「閣下は?」と聞く。
エリザベスはきょとんとして
「ルシアーノ様はお見かけしてませんが」
というと
司教は「そうでしたか‥」というものの腑に落ちない様子。
「そちらにいらっしゃらないのですか?」
「ええ‥‥皆孤児院の方に行かれたかと‥‥おや?パム?どうしたのですか」
(え?パム?)
とエリザベスが振り返った時だった。
ドン!!とエリザベスの体に衝撃が走る。
(え?!)
グラリと視界が傾く。
傾いた視界に見えたのはパムの走っていく後ろ姿。
(パムがぶつかった?)
踏ん張ろうとするも足をグリッとひねってしまった。
転ぶ!これからくるであろう衝撃にギュッと目を閉じた。
「あぶなかった‥‥」
その言葉にハッとなる。
転んでいない。
司教が咄嗟に抱き止めてくれていたのだ。
顔を上げると司教の心底ほっとした顔が見える。
転ばずに済んだ。
エリザベスも心からホッとした。
下は石畳。バランス崩したままここで転んでたら顔にあざの一つも作っていたかもしれない。
「司教様ありがとうございます。」
とゆっくり自分の力でたとうとした時、ズキっと足首が痛んでまたよろめいた。
またそれを大丈夫ですかと司教が支えながらも青ざめる。
「パムは一体どういうつもりで‥!あとできつく注意しておきます。申し訳ございません。」
その言葉にエリザベスは司教の顔を見た。
「いえ、きっと何か理由があったに違いありません。理由を聞いていただけませんか‥聞けばきっと‥‥」
とその時だった。
「教会で抱き合うなんて随分大胆なんだな」
よく通るくぐもった声がした。
はっと2人で声の方を見る。
そこには片目をすがめて不快そうに顔を歪めて嗤うルシアーノが立っていた。
「それともこのくらい慣れてるとでも?噂通りの令嬢で恐れ入る!」
話しながらゆっくり近づいてくる。
一瞬何を言われているのかわからなかったエリザベスだが状況を理解する。
今エリザベスは司教に抱き支えられて立っている。
その状態でパムの話をしていたのだ。
この時だけ切り取れば近く顔を突き合わせて親しく話しているように見えただろう。
足が痛まぬようゆっくり体を離しながら「いいえ、誤解です!」と訴える。
「誤解?この状況で何を言ってるんだ?」
言いながらハッとバカにしたように笑う。
「閣下!本当に誤解です。エリザベス様がよろめいたのでお支えしただけなのです。」
司教もエリザベスの援護をしてくれる。がルシアーノは不快な顔を崩そうとせず歩を進めエリザベスの目の前まで来て止まると覗き込むように腰をかがめた。
「よろめくような段差はないように思うが?もしやよろめいた振りで誘惑が常套手段か?なあ。婚約者と来ている教会でいくらなんでもやりすぎだとは思わないか?」
「ちが‥‥違います!誤解です!子供が‥
「子供?」
「はい、子供とぶつかってしまい‥
「子供なんてどこにいるというのだ!!」
エリザベスの言葉を遮りスイッチが入ったようにルシアーノが声を荒げた。
エリザベスは先日怒鳴られたことを思い出し、ひゅっと息を呑む。
慌てたのは司教だった。
まさかルシアーノがここまで激昂すると思っていなかったようだ。
「閣下!ご令嬢にそのような!頭ごなしにお気の毒です!」
「お気の毒?」
今度は不愉快そうに司教を見る。
「気の毒は俺の方じゃないか?国中で知らぬもののいない股の緩いご令嬢を娶らないといけないんだぞ?不本意だろうが関係ない!王族命令ときたもんだ!おまけに爵位だけは無駄に高くて蔑ろにもできない!そこまで言うなら司教が代わってくれよ!そしたら病気をうつされている様を遠くから見て笑ってやるよ!!」最後の方は怒鳴り声となっていた。
(病気?どうして病気の話に‥)エリザベスがそこまで考えた時ハッと気付き、羞恥で赤くなるよりさっと青ざめた。
「閣下!!」同じく意味に気づき真っ青な司教が素っ頓狂な声を上げた。
と同時に
「ルカァァ!!!!」
ルシアーノの大きい声にも負けないくらいの大声が響いたかと思うと
ガキイ!!聞いたことのないような音が鳴った。
50
お気に入りに追加
221
あなたにおすすめの小説
【完結】そんなに側妃を愛しているなら邪魔者のわたしは消えることにします。
たろ
恋愛
わたしの愛する人の隣には、わたしではない人がいる。………彼の横で彼を見て微笑んでいた。
わたしはそれを遠くからそっと見て、視線を逸らした。
ううん、もう見るのも嫌だった。
結婚して1年を過ぎた。
政略結婚でも、結婚してしまえばお互い寄り添い大事にして暮らしていけるだろうと思っていた。
なのに彼は婚約してからも結婚してからもわたしを見ない。
見ようとしない。
わたしたち夫婦には子どもが出来なかった。
義両親からの期待というプレッシャーにわたしは心が折れそうになった。
わたしは彼の姿を見るのも嫌で彼との時間を拒否するようになってしまった。
そして彼は側室を迎えた。
拗れた殿下が妻のオリエを愛する話です。
ただそれがオリエに伝わることは……
とても設定はゆるいお話です。
短編から長編へ変更しました。
すみません
記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。
せいめ
恋愛
メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。
頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。
ご都合主義です。誤字脱字お許しください。
私の愛した婚約者は死にました〜過去は捨てましたので自由に生きます〜
みおな
恋愛
大好きだった人。
一目惚れだった。だから、あの人が婚約者になって、本当に嬉しかった。
なのに、私の友人と愛を交わしていたなんて。
もう誰も信じられない。
【完結】公女が死んだ、その後のこと
杜野秋人
恋愛
【第17回恋愛小説大賞 奨励賞受賞しました!】
「お母様……」
冷たく薄暗く、不潔で不快な地下の罪人牢で、彼女は独り、亡き母に語りかける。その掌の中には、ひと粒の小さな白い錠剤。
古ぼけた簡易寝台に座り、彼女はそのままゆっくりと、覚悟を決めたように横たわる。
「言いつけを、守ります」
最期にそう呟いて、彼女は震える手で錠剤を口に含み、そのまま飲み下した。
こうして、第二王子ボアネルジェスの婚約者でありカストリア公爵家の次期女公爵でもある公女オフィーリアは、獄中にて自ら命を断った。
そして彼女の死後、その影響はマケダニア王国の王宮内外の至るところで噴出した。
「ええい、公務が回らん!オフィーリアは何をやっている!?」
「殿下は何を仰せか!すでに公女は儚くなられたでしょうが!」
「くっ……、な、ならば蘇生させ」
「あれから何日経つとお思いで!?お気は確かか!」
「何故だ!何故この私が裁かれねばならん!」
「そうよ!お父様も私も何も悪くないわ!悪いのは全部お義姉さまよ!」
「…………申し開きがあるのなら、今ここではなく取り調べと裁判の場で存分に申すがよいわ。⸺連れて行け」
「まっ、待て!話を」
「嫌ぁ〜!」
「今さら何しに戻ってきたかね先々代様。わしらはもう、公女さま以外にお仕えする気も従う気もないんじゃがな?」
「なっ……貴様!領主たる儂の言うことが聞けんと」
「領主だったのは亡くなった女公さまとその娘の公女さまじゃ。あの方らはあんたと違って、わしら領民を第一に考えて下さった。あんたと違ってな!」
「くっ……!」
「なっ、譲位せよだと!?」
「本国の決定にございます。これ以上の混迷は連邦友邦にまで悪影響を与えかねないと。⸺潔く観念なさいませ。さあ、ご署名を」
「おのれ、謀りおったか!」
「…………父上が悪いのですよ。あの時止めてさえいれば、彼女は死なずに済んだのに」
◆人が亡くなる描写、及びベッドシーンがあるのでR15で。生々しい表現は避けています。
◆公女が亡くなってからが本番。なので最初の方、恋愛要素はほぼありません。最後はちゃんとジャンル:恋愛です。
◆ドアマットヒロインを書こうとしたはずが。どうしてこうなった?
◆作中の演出として自死のシーンがありますが、決して推奨し助長するものではありません。早まっちゃう前に然るべき窓口に一言相談を。
◆作者の作品は特に断りなき場合、基本的に同一の世界観に基づいています。が、他作品とリンクする予定は特にありません。本作単品でお楽しみ頂けます。
◆この作品は小説家になろうでも公開します。
◆24/2/17、HOTランキング女性向け1位!?1位は初ですありがとうございます!
【完】前世で種を疑われて処刑されたので、今世では全力で回避します。
112
恋愛
エリザベスは皇太子殿下の子を身籠った。産まれてくる我が子を待ち望んだ。だがある時、殿下に他の男と密通したと疑われ、弁解も虚しく即日処刑された。二十歳の春の事だった。
目覚めると、時を遡っていた。時を遡った以上、自分はやり直しの機会を与えられたのだと思った。皇太子殿下の妃に選ばれ、結ばれ、子を宿したのが運の尽きだった。
死にたくない。あんな最期になりたくない。
そんな未来に決してならないように、生きようと心に決めた。
牽制してくる不倫女は、本当に存在しますか?
ぽんぽこ狸
恋愛
公爵子息である夫に嫁いではや半年、ローズは、政略結婚であってもそれなりに仲の良い夫と、それなりの夫婦生活を送っているつもりだった。
しかしある夜、彼との時間を終えた後、今まで体を重ねていたベットで見覚えのない派手な下着を見つけてしまう。桃色の布地に柔らかなフリルがあしらわれた扇情的な下着はどう思い返してもローズの物ではない。
ほかにも浮気を疑う怪しい点が出てきて、ついにローズは牽制してくる浮気相手を突き止めようと行動を起こすのだった。
アップテンポで進みます。五万文字いかないぐらいのお話です。
ぜひぜひさくっと読んでいってくださいませ。😊
文章が肌に合った方は、よろしければ長編ものぞいてみてくれると飛び跳ねて喜びます。
忘れられた妻
毛蟹葵葉
恋愛
結婚初夜、チネロは夫になったセインに抱かれることはなかった。
セインは彼女に積もり積もった怒りをぶつけた。
「浅ましいお前の母のわがままで、私は愛する者を伴侶にできなかった。それを止めなかったお前は罪人だ。顔を見るだけで吐き気がする」
セインは婚約者だった時とは別人のような冷たい目で、チネロを睨みつけて吐き捨てた。
「3年間、白い結婚が認められたらお前を自由にしてやる。私の妻になったのだから飢えない程度には生活の面倒は見てやるが、それ以上は求めるな」
セインはそれだけ言い残してチネロの前からいなくなった。
そして、チネロは、誰もいない別邸へと連れて行かれた。
三人称の練習で書いています。違和感があるかもしれません
夫の不貞現場を目撃してしまいました
秋月乃衣
恋愛
伯爵夫人ミレーユは、夫との間に子供が授からないまま、閨を共にしなくなって一年。
何故か夫から閨を拒否されてしまっているが、理由が分からない。
そんな時に夜会中の庭園で、夫と未亡人のマデリーンが、情事に耽っている場面を目撃してしまう。
なろう様でも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる