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鏡の了▪その三 (覚悟)
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◆時は遡って▪美少女コンテスト二ヶ月と三週間前
とある医療機関
白井 了視点
バサッ
「あり得ない。その子の染色体は間違いなくXが二つ。染色体異常も痕跡も無く、頭の先から足の先まで完璧な女の子だよ」
診療室で無造作にカルテを投げる美人女医。
足を組んで僕達を睨み付ける。
ひえぇ?!
◆◇◇◇◇
僕達は間もなく、優秀な医師との紹介で現れた西園寺女医に面談。
様々な検査の後たった今、診断結果を聞いたところで彼女からから睨まれてる。
僕の診断結果は全くの健康体。
それも生まれた時から女性に間違いないとの絶対のお墨付きを貰う事となってしまい、姉と二人、唖然とした顔で診断結果を聞いている状況となっている。
そして西園寺女医からは、無駄に手間を取らせた事に対する強い蔑視にあっているところだ。
まさに理不尽、極まれり、だよ。
「でも間違いなく、つい先日まで弟は男だったんです。それがたった1日で女の子になったのは紛れもない事実で?!」
「は、だからなんだ。何が問題だ?普通に社会生活は送れるのだろう。世の中にはもっと大変な思いをしている患者がいるんだ。五体満足なら万々歳だろう」
「そ、そんな……」
「ね、姉ちゃん……」
た、確かに世の中で本当に苦しんでいる人達からすると、僕の病?は大したこと無いのだろうけど、でも当事者の僕からすると天地がひっくり返るくらいの話でもあったりするんだよ。
結局、何も分からないって事を悟らせたくなくって言ってるんだよ、この美人女医さんは!
「大体こんなに神様から、あり得ないくらいの祝福された容姿を貰っておきながら男に戻りたい?世の女性達を馬鹿にしてんのか」
いやいや、貴女も十分神様に祝福されてますって。
流れるような腰までの黒髪に白衣と眼鏡がインテリジェントな雰囲気を引き立てる。
眼鏡の奥にある長い睫毛の赤い大きい瞳は、おそらくハーフであろうか。
その整った日本人離れした容姿と胸元の大きな胸は、その溢れる大人の魅力に憧れを感じずにはいられない。
でも、ヤブを隠すような言動は納得いかないのも事実。
せっかく姉ちゃんが手配してくれた医療機関だけど、ただの空振りになりそうだ。
「ふむ。そこの 妹ちゃんは、私の言葉に納得がいかないようだな」
「そりゃそうですよ。先生の話はゼロ回答ですから。僕が納得出来る訳ないじゃないですか。先生は大したことは無いって言われましたけど僕は、突然に学校生活や本来の男としての平穏を奪われたんです。確かに健康上は問題ないのかも知れませんけど、僕の心は穏やかではありません。どちらにせよ、先生に治せないなら他を当たるまでです」
「了、失礼な物言いは!」
「姉ちゃん、僕はこれ迄生きてきた男としての将来が閉ざされた。なのにこの先生は大したことは無いって言ったんだ。ある日突然、人生が180度変わったのに大したこと無いって!確かに健康で五体満足なら生きていきくのに問題ないよ。世の中には生きたくとも生きられない人もいるのは分かる。でも、だからと言って僕の人生を否定する権利は先生にない、よ。そんなの、ないじゃない………うえぇーん」
「了!」
あれ?
変だな、涙が出て止まらない。
姉ちゃんが抱き込んでくれたけど、よけいに涙が出てきちゃう。
感情を上手くコントロール出来ない?!
な、何で!
「済まなかった」
「「?!」」
僕が姉ちゃんの胸で泣いていると、先生が頭を下げてきた。
な、何で?
「そうだな。人の大事は千差万別。人括りにするのは押し付けだった。悪かった」
「い、いえ……」
「…………?」
「結果的に力になれなくて済まなかった。だが、全く原因が掴めなかった訳でもない。私の専門は呪いや呪術関連なんだ。現代医療の外にある摩訶不思議な病や事件の解決に日頃から力を注いでいる。君の変化を促進したものは確かに未知の力が関係している。だけど今のところ、私のこれ迄の経験で見てきた、どの呪術や呪いとはまた違っていて、原因の特定が出来なかったのだ」
「じ、呪術や呪い…………?」
神妙な眼差しで見つめてくる先生。
え、先生は真面目に診療してくれてた?
でもその前にとんでもないワードが先生から飛び出したんだけと!?
「了。ここはね、呪いや呪術、妖怪の類いに対処する為に作られた日本で唯一の研究機関なの。この世界には科学では証明出来ないような事がいっぱいあるのよ。中には人に害成すものもある。その為の機関なの」
「呪術や呪い……異世界の様な不思議な話がこの世界にもあるの!?」
「そうよ。だから、お姉ちゃんは了の変化がそういった呪術や呪いの類いだと思って、ここに連れてきたの」
そうだったんだ。
つまり、この世界にも科学で説明出来ない話が沢山あるって事だよね?
そんな凄い事を姉ちゃんが知っていたのは気になるところだけど、結果として色々解って良かったかも。
「期待に応えられずに申し訳ない。だが、この施設で分からないとなると、君の変化の原因は他でも分からないと思う。残念だが……ね。代わり、と言っては何だけど、法的に不自由な事などの便宜を図れるように上に掛け合ってあげよう。性別で苦労がないように戸籍などをいじれるようにね。ここはそういった事での国とのパイプがあるから、今後の身の振り方を決めておくといいだろう」
「わ、かりました。先生も色々考えてくれてたんですね。最初に突き放した言い方をしたのは、僕に現状を覚悟させる為だったんですね。そんな先生の深い考えを誤解していたようで本当に申し訳ありません」
この日から僕は、不自由な女の子としての生活を続けていく事となったのである。
とある医療機関
白井 了視点
バサッ
「あり得ない。その子の染色体は間違いなくXが二つ。染色体異常も痕跡も無く、頭の先から足の先まで完璧な女の子だよ」
診療室で無造作にカルテを投げる美人女医。
足を組んで僕達を睨み付ける。
ひえぇ?!
◆◇◇◇◇
僕達は間もなく、優秀な医師との紹介で現れた西園寺女医に面談。
様々な検査の後たった今、診断結果を聞いたところで彼女からから睨まれてる。
僕の診断結果は全くの健康体。
それも生まれた時から女性に間違いないとの絶対のお墨付きを貰う事となってしまい、姉と二人、唖然とした顔で診断結果を聞いている状況となっている。
そして西園寺女医からは、無駄に手間を取らせた事に対する強い蔑視にあっているところだ。
まさに理不尽、極まれり、だよ。
「でも間違いなく、つい先日まで弟は男だったんです。それがたった1日で女の子になったのは紛れもない事実で?!」
「は、だからなんだ。何が問題だ?普通に社会生活は送れるのだろう。世の中にはもっと大変な思いをしている患者がいるんだ。五体満足なら万々歳だろう」
「そ、そんな……」
「ね、姉ちゃん……」
た、確かに世の中で本当に苦しんでいる人達からすると、僕の病?は大したこと無いのだろうけど、でも当事者の僕からすると天地がひっくり返るくらいの話でもあったりするんだよ。
結局、何も分からないって事を悟らせたくなくって言ってるんだよ、この美人女医さんは!
「大体こんなに神様から、あり得ないくらいの祝福された容姿を貰っておきながら男に戻りたい?世の女性達を馬鹿にしてんのか」
いやいや、貴女も十分神様に祝福されてますって。
流れるような腰までの黒髪に白衣と眼鏡がインテリジェントな雰囲気を引き立てる。
眼鏡の奥にある長い睫毛の赤い大きい瞳は、おそらくハーフであろうか。
その整った日本人離れした容姿と胸元の大きな胸は、その溢れる大人の魅力に憧れを感じずにはいられない。
でも、ヤブを隠すような言動は納得いかないのも事実。
せっかく姉ちゃんが手配してくれた医療機関だけど、ただの空振りになりそうだ。
「ふむ。そこの 妹ちゃんは、私の言葉に納得がいかないようだな」
「そりゃそうですよ。先生の話はゼロ回答ですから。僕が納得出来る訳ないじゃないですか。先生は大したことは無いって言われましたけど僕は、突然に学校生活や本来の男としての平穏を奪われたんです。確かに健康上は問題ないのかも知れませんけど、僕の心は穏やかではありません。どちらにせよ、先生に治せないなら他を当たるまでです」
「了、失礼な物言いは!」
「姉ちゃん、僕はこれ迄生きてきた男としての将来が閉ざされた。なのにこの先生は大したことは無いって言ったんだ。ある日突然、人生が180度変わったのに大したこと無いって!確かに健康で五体満足なら生きていきくのに問題ないよ。世の中には生きたくとも生きられない人もいるのは分かる。でも、だからと言って僕の人生を否定する権利は先生にない、よ。そんなの、ないじゃない………うえぇーん」
「了!」
あれ?
変だな、涙が出て止まらない。
姉ちゃんが抱き込んでくれたけど、よけいに涙が出てきちゃう。
感情を上手くコントロール出来ない?!
な、何で!
「済まなかった」
「「?!」」
僕が姉ちゃんの胸で泣いていると、先生が頭を下げてきた。
な、何で?
「そうだな。人の大事は千差万別。人括りにするのは押し付けだった。悪かった」
「い、いえ……」
「…………?」
「結果的に力になれなくて済まなかった。だが、全く原因が掴めなかった訳でもない。私の専門は呪いや呪術関連なんだ。現代医療の外にある摩訶不思議な病や事件の解決に日頃から力を注いでいる。君の変化を促進したものは確かに未知の力が関係している。だけど今のところ、私のこれ迄の経験で見てきた、どの呪術や呪いとはまた違っていて、原因の特定が出来なかったのだ」
「じ、呪術や呪い…………?」
神妙な眼差しで見つめてくる先生。
え、先生は真面目に診療してくれてた?
でもその前にとんでもないワードが先生から飛び出したんだけと!?
「了。ここはね、呪いや呪術、妖怪の類いに対処する為に作られた日本で唯一の研究機関なの。この世界には科学では証明出来ないような事がいっぱいあるのよ。中には人に害成すものもある。その為の機関なの」
「呪術や呪い……異世界の様な不思議な話がこの世界にもあるの!?」
「そうよ。だから、お姉ちゃんは了の変化がそういった呪術や呪いの類いだと思って、ここに連れてきたの」
そうだったんだ。
つまり、この世界にも科学で説明出来ない話が沢山あるって事だよね?
そんな凄い事を姉ちゃんが知っていたのは気になるところだけど、結果として色々解って良かったかも。
「期待に応えられずに申し訳ない。だが、この施設で分からないとなると、君の変化の原因は他でも分からないと思う。残念だが……ね。代わり、と言っては何だけど、法的に不自由な事などの便宜を図れるように上に掛け合ってあげよう。性別で苦労がないように戸籍などをいじれるようにね。ここはそういった事での国とのパイプがあるから、今後の身の振り方を決めておくといいだろう」
「わ、かりました。先生も色々考えてくれてたんですね。最初に突き放した言い方をしたのは、僕に現状を覚悟させる為だったんですね。そんな先生の深い考えを誤解していたようで本当に申し訳ありません」
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