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鏡の亜理砂▪その九 (血)
しおりを挟むゴウッ
振り上げられた巨大な腕。
魔法使いはアドバンテージを取られたら終わり。
「ごふっ、アリサ!?いやああああ!!!」
マルリーサの悲鳴が、虚しく森に響く。
ごめんなさい、マルリーサ。
全部、あたしの責任なの。
マルリーサはずっと止めていたのに、身勝手にも自分で危険に飛びこんだのよ。
だから、貴女が責任を感じる必要はないわ。
さようなら、皆。
馬鹿なあたしはさっさと忘れて皆、幸せになって。
最後に見たのは、メガオークの振り下ろした腕と流れ行く森の景色。
それと銀色の……獣…………?
▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩
ザーザーッ
何だろう?
雨の音?
見たことのない天井だ。
いや、岩がゴツゴツしてるのかな。
ここは洞窟?
う、凄い、喉が乾く。
身体が痛くて、思うように動かない。
でもあたし、死んだんじゃなかった?
「あ、うっ」
肩が焼けるように痛い。
でも触った感じ、腕は折れてない??
ブルッ
う、意外に寒い。
いや、この感じ、たぶん熱があるわね。
マルリーサは無事だろうか?
パチパチッ、パチッ
?
煙の臭い……焚き火なの?
あたしが目を凝らすと、目の前に銀色の毛皮がある事が判った。
オークかと思ったけど、これは別のケモノ?
なら、あたしは別の魔物にデザートとして掴まったんだろうか。
けれど、このモフモフ、とっても肌触りが良くて温かい。
何だか、ずっとこうして居たいような……。
ああ、また眠くなる。
?
何だか、凄いイケメンが、あたしを覗き込んでいる気がする。
貴方は…………だれ……?
◆◇◇◇◇
チュンチュンッ
チュンッ、チュンッ
鳥の声?
あ、う、眩し、朝日!?
「アリサ!!」
「?……マルリーサ?」
「はい、マルリーサです。ああ、良かった。アリサ、生きていてくれて、本当に良かった!」
「う、あたし、メガオークに襲われて……?そうだ!メガオークはどうなったの!?」
「メガオークはウォルフが倒しました。拐われた被害女性も救出できてます。ただ、貴女は瀕死の重症を負い、7日も寝込んでいたんです」
「ウォルフが!?、ここは?」
辺りを見回すと、そこは多分、何処かの町の宿のようだった。
じゃあ、あの銀色のケモノは、ウォルフだったって事?
でも、瀕死の重症って、私の身体に異常は感じられないけど??
サラッ
その時、あたしの視界を何かが過った。
それは、銀色の、髪の、毛?
誰、の?………あたしの??
え、こっち、くる時は茶髪に染めていて、最近は色落ちしてきて、少し黒が混ざっていた筈。
こっちで染めた覚えはないし、そもそも染め粉が売ってない。
「ごめんなさい、アリサ。貴女に重大な事を言わなければなりません」
「重大な事?」
マルリーサが妙に改まって、声を出す。
何なの?
「ウォルフが貴女を見つけた時、貴女は息をしていませんでした」
「息をしていない。死んでいたって事?」
「いえ、仮死の状況だったかと。それでウォルフが貴女に血を飲ませたんです」
「ちょ、ちょっと待って。今、何を飲ませたって言った?」
「ウォルフの血、生き血です。それを貴女に飲ませたんです」
「ーーー!??いや、意味が分かんない。何でウォルフはあたしに血を飲ませたの!?」
「………これから言う話は、他言無用でお願い出来ますか?」
「分かった」
マルリーサは頷くと、窓の戸を閉め、ドアの鍵を閉めた。
そんな秘密の話しなの?
あたしは唾を飲み込み、マルリーサの話しを待った。
「貴女が息を吹き返すかどうか、ほとんど賭けでした。貴女は、全身の骨が折れる瀕死の状態だったんです」
「ぜ、全身!?で、でもさ、今は何ともないんだけど?」
「それがウォルフの血の力です」
「血の力?」
「ウォルフには、銀狼の血が流れています。銀狼は聖獣フェンリルの末裔、その血には強大な生命力に溢れています。その強大な生命力の力で、貴女は死から逃れる事が出来た。血の力の再生能力は、どんな病、怪我を治す事が出来る。ただ、人間に使う事は初めてだったから、賭けだったんです」
「な、なんで……」
「アリサを助ける為でした。その、髪の毛が銀色になってしまい、申し訳ありません」
「ち、違」
「私達の勝手な行為で、貴女の大事な髪を変えてしまいました。銀狼の血は強く、今後、貴女の髪が元に戻る事はありません。本当に申し訳」
「違う!!!」
「アリサ?」
違う、違う!
今、あたしが気にしているのは、そんな事じゃない。
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