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ダンス、ダンス、ダンス

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あれから、やっと体調が戻った僕がベットから離れられるようになって数日、僕の為に開催が延期になっていた舞踏会が開催される事になった。


イライザ「今日は貴女の晴れ舞台、しっかり励むのですよ」


「はい、マダム▪イライザ」


舞踏会を前に、僕のダンスの点検にきたイライザさんからようやく及第点をもらえた。


まもなく、舞踏会が始まる。

やっぱり、ちょっと緊張するよね。


「オリビア、大丈夫か?」


「ん、ちょっと緊張してるけど平気」


ルケルのエスコートで会場に入ると、回りからなにやら、ため息が聞こえる?僕、ちゃんとしてるよね?


二人で正面、ベルタ公爵に挨拶する。


「オリビア▪フォン▪グーデンベルクです。本日はお招き頂き、恐悦至極でございます」


公爵「おお、これは、これは、やっと逢う事がかなったな。まさに噂にたがわぬ美しさだ、ルケルは果報者よ」


公爵が前にでて僕に触れようとした時、間にルケルが割り込んだ。


「伯父上、そこまでで」


「お兄ちゃん?」


「ほう、あの冷血漢のお前がそこまでか、まあ、これはこれで良い事だが」


公爵はルケルに耳打ちする。


「情に流されては困るぞ」


「わかっております」


「?」


音楽が流れ始める、ダンスタイムだ。

ルケルお兄ちゃんが僕の手を取る。


「オリビア、私と踊ってくれるか」


じっと僕の顔を見るお兄ちゃんルケル、青い目で銀髪でイケメンでカッコいい。

こんな人が僕のお兄ちゃんルケルだなんて誇らしい、顔が熱くなる。


「はい」


今夜は二人で最高のダンスを、披露しよう。

ね、お兄ちゃん。


位置につく、曲がはじまる。

最初のステップから2ステップ、3ステップ、よし、完ぺき!続けて、次のステップ、お兄ちゃんがピッタリ合わせてくる。

まだまだいくよ、はい!、からの、はい!、そして回転して、はい!


曲が終わった?!はあっ、はあっ、はあっ、息が限界、でも、気持ちいい、お兄ちゃんルケルも息を切らして、汗がキラキラしてる。


気がついたら、ダンスをしているのは僕達二人だけだった。


「凄い」、「素晴らしいダンスだ」、「最高の二人だ」


次の瞬間、会場は拍手と人々の称賛の言葉で埋め尽くされた。

イライザさんが、涙目になってる。


二人で顔を見合せて、くすっと笑う。

ああ、楽しい。

お兄ちゃんとこんな楽しいの、何時以来かな。

僕はお兄ちゃんルケルに抱きついた。


「やった、やったよ、お兄ちゃんルケル!最高だよ」


「ああ、最高だな、楽しいな」


お兄ちゃんルケル、だいすき」


「?!!ああ!私もだいすきだ、オリビア!」


それから、いろんな人に挨拶してたら、お腹がすいてきた。


お兄ちゃんルケル、ちょっとお腹がすいてきちゃった。食べてきていい?」


「はは、食べるのはいいが、食べ過ぎるなよ」


「そんなこと、なりませんよーっ」


僕が料理のあるブースに向かおうとしたら、お兄ちゃんルケルに呼び止められた。


「オリビア」


「ん?なに」


「私はこれから公爵と話がある、食べたら侍女と部屋に戻ってなさい」


「はぁい」


そこで別れて料理のテーブルでいくつか摘まんでると、一人の茶髪の男性に声をかけられた。


「オリビア様とお見受け致します」


「?はい」


「少しお話しを宜しいでしょうか?」


あれ?この人、僕は知ってる?!


「グリン?」


グリン「はは、さすがリン、分かっちゃった?」


「ああ、久しぶり!元気そうだね」


「リン!」


後ろから声?振り返ると、また、茶髪の男性、よく見るとイエルだ。


「イエル!も、逢えて嬉しいよ」


グリンが前に出て僕を隠すように言う。


グリン「いろいろ言いたい事があるけど、今はいい、それより早く逃げよう」


「逃げる?」


イエル「リンは捕まってるんじゃないの?」


「そうだった?!ああ、楽しかったから忘れてた」


「「楽しかった!?」」


その時、グリンはリンのチョーカーを凝視して目を見開いた。


ギリッ


グリンは口の端を噛んでいた。


「グリン?」



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



グリン視点


とある子爵家の次男と三男として髪を茶に染め、ベルタ公爵家主催舞踏会になんとかイエルと共に入り込めた。


末席で待っていると、最後に主賓の二人が入場してきた。


ああ、やっと見つけた。

ぼくのもっとも大切でかけがえのない人、マリンから魔道レターで元気なのは聞いていたけど、ぼくもイエルも自分の目で見るのは王都以来だ。


すこしは成長したかと思ったけど、幼い感じが変わらない。

だけど、流行りのドレスにきらびやかなネックレス、イヤリングがシックな感じで全体的にまとまりがあり、黒髪と合わさって少し大人びて見えて、絶妙な取り合わせだ。

しかも、本人の美しさはまったく変わらない。


ああ、早く、早く君を抱き締めたい。


だけど、なぜルケル兄上をそんな愛しい者を見る様な目で見ている?


それから始まったダンスタイム、二人の息の合ったダンスと二人の自然な微笑み、ぼくはルケル兄上に強い嫉妬を感じていた。


だが、今、分かった。

ルケル兄上、ぼくは貴方を一生許さない。


リンが一人になったのを見て、ぼくとイエルはリンに話しかけた。


そして、リンと逃げようと話していた時、違和感に気づいた。

リンがしているチョーカーからつい最近、見た事のある魔力が漏れていたからだ。


それはあの奴隷商人が使用していた魔道具だ。


❪奴隷の首輪❫


指定された主人に逆らえない。

逆らえば激しい痛みが続く。

主人から一定の距離、離れると同じく痛みが続く。

主人は任意に痛みを与える事もできる。

解放は主人が解放を宣言するか、主人が死んだ時のみ。


ギリッ


ぼくは無意識に、奥歯で口の端を噛んでいた。


リン「グリン?」


もし、いままでのルケル兄上に対するリンの眼差しも首輪のせいだとしたら?

たしか、奴隷の首輪の上位に❪隷属の首輪❫というものがあると、どこかで聞いた事がある。

ある程度、装着者の意識を操れるとか、まさか?!


イエル「兄上、どうしました?」


「リン、その話しはまた今度にしよう、今日はこれでぼくらは帰るよ」


リン「え?、ん、分かった」


イエル「あ、兄上?!なにを??」


「後で話す」


イエル「…………?!分かりました」


ぼくらはリンに別れをつげて公爵邸を後にした。


◆◆◆


「兄上!何故、何故です?何故リンを連れて行かなかったのです?!」


「リンに付けられていたチョーカーはただのチョーカーじゃない」


「?!!まさか」


ぼくは遠ざかる公爵邸を見ながら言った。


「奴隷の首輪、それも特別製だ」


ダンッ


イエルが馬車の扉を叩いた。


「許さない、許さない、許さない、ルケル!!!」




ルケル、ぼくらはもう貴方を兄とは思わない。

リン、すまない。

必ず、必ず救いだす。

それまで待っていてくれ。

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