【完結】未来から来た私がもたらしたもの

ぅ→。

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冬がやってきたのだが、辛い。

何が辛いって?水仕事だ。

未来では冬より夏の方が嫌だったが、この時代に来て気が付いた。それは未来ではお湯が簡単に出て、電化製品が揃ってるからということに。

洗濯するのにもお米をとくのにも冷たい水を使う。未来では無洗米という便利なものがあった。しかもここは屯所、何十人もの洗濯やら米をとくから大変である。

手を擦ったり、口元に持っていきはあはあ息を吹き掛けたりして温めようとするがあまり効果がなかった。

そんな私を見かねて八木邸の奥さんが手伝ってくれる。お礼にハンドクリームを渡したら、その効果に感激された。この時期はどうしても手荒れが酷くなるので辛いのだと。それならばと作り方も教えていつでも使ってもらえるようにした。次いでにシャンプーやリンス、洗剤の作り方も教える。

将軍様は江戸に帰ったけど、毎日LINEのやり取りをしている。将軍様が大阪にいたのは天皇が即時攘夷を望んでおり、それを将軍様は時期を伸ばすために来ていた。日米修好通商条約は天皇の許可なく結んだもので、天皇はお怒り。統治は天皇から預かってるものであり、元は天皇のもの。そこで幕府は期間を延ばし、天皇にも攘夷は不可能であることを認識してもらうことにした。

そう幕府は攘夷すると天皇に言ったけど、それが現実的ではないことを知ってる。だけど、天皇は外国嫌いで攘夷すべしとの考えなのだ。天皇の即時攘夷、これに反応したのが長州藩なのだ。天皇の即時攘夷は外交での攘夷ではあったが、長州藩はそれを自分たちのいいように捉えて外国船に大砲をうち放った。それにより西欧諸国VS長州藩の戦争が起きる。諸藩はこれに参加せず、長州藩の敗北となった。その戦争の多額の賠償金は長州藩の領土を植民地化されないように幕府が支払ってるのだ。この現状があるのにもかかわらず、長州藩は倒幕派である。だから、私は長州藩が好きになれないのだ。

幕府は外国に対して開国すると言ったのに対して、朝廷には攘夷すると言ったりして矛盾しているが、外国と朝廷に挟まられてその中で必死に道を探してる。

将軍様も未来のことを含め、沢山のことを私に聞いてくる。将軍様自身ネットで調べてるのか結構質問の内容が深い。それだけ日本のことを考えてるし、幕府のことも考えてる。

薩長同盟さえ防げれば幕府は存続するだろう。薩摩は単独でイギリスに勝てたくらい戦力があり、またお金もある。ただ薩摩を倒幕派にさせないことが重要ではあるが既に薩英戦争は起きてしまった。これが原因で倒幕派になったと言われる。薩英戦争は生麦事件が原因となってるが、生麦事件は大名行列を横切ったイギリス人3人が斬られ1人死亡2人重症という事件であった。ただ、突然斬ったわけではない。身振り手振りではあったが馬から降りて端に行くように指示してる。その指示が伝わらなかったのか、あれよあれよと籠の前まで行ってしまい、これは大無礼となり斬られたのだ。

薩摩はこの事を最初から正直に話したわけではなく誤魔化したため幕府も状況把握が遅くなり、薩英戦争となった。

井伊直弼が暗殺されて以来、幕府の求心力は失い悪い方向へと向かっていってる。第二次長州征討までに幕府側が新しい武器や軍隊を作って長州に勝つことがポイントとなる。ここでの負けが決定打となるのだ。将軍様もそれは分かっていて、今から武器開発、軍隊整備の案に取り掛かってる。名目は攘夷のため。

「麗奈、考え事か?」
「一さん、うん。過去のことと未来のことをね」

洗濯の手が止まっていたので続きをする。一さんも手伝ってくれた。

「公方様は頑張っておられる」
「うん。私はこのまま幕府が続けばいいと思うよ」

幕府を終わらせるにしても将軍様自ら終わらせ、王政復古するのならばいいけど。長州にやられるのは納得が出来ない。

「長州だけには負けない」
「ああ」

京は金払いのいい長州贔屓で新撰組は人斬り集団だと嫌悪されてるけど、無闇に人を斬ったりはしてない。第一に捕縛を主体としている。抜刀された時に限り、こちらも刀を抜いているのだ。

まあ壬生浪士組の時に強引に金策に走ったのも京の人から嫌われてる要因であるが、今は幕府から給金が出てる。

「だが、俺たちは大名ではない。僅かな力としかなれないだろう」
「新撰組の力は長州にとっては恐ろしいものよ?新撰組の影響で明治維新が2年も遅れたとされてるのだから」

200超えの人がいたとしても倒幕派はそれ以上にいる。それらを抑えてきたのだから立派なものだと思う。

この間、桂小五郎を捕縛できたのは更に大きい。吉田稔麿も捕縛できてれば更に良かったが、大きくは望むまい。

あとは坂本龍馬を捕縛できれば尚のこといい。彼が薩長を結びつける役目をする。坂本龍馬は暗殺される前に捕縛しなければならない。未来では坂本龍馬は誰が殺したか不明となってるが、当時は新撰組の所業にされていた。そのせいもあり、近藤勇が倒幕派に投降した時は坂本龍馬の仇とし処刑されている。

「それよりも新撰組内でも問題がある」
「何?」
「男色が流行ってる」
「へ?それってもっと後の出来事では?」
「どうやら、俺たちの閨事を聞いた隊士たちがお互い慰めるために始まったのが切っ掛けのようだ」

うん。一さん、ほぼ毎日、求めてくるからね。最近は沖田総司は諦めたのか文句すら言ってこないし。

「故に土方副長あたりから叱りがあるかもしれんから覚悟しておいたほうがいい」

凛ちゃんを娶らせた腹いせに大いに怒られそうね。この際、私も外で生活するのがいいんじゃないかな?女中は通えば問題ないしね。そのことを一さんに言ったら、新しい屯所に住みたくないのか?と聞かれてしまった。それは住みたいよ?結構、力を入れたしね。

一さんの予想は当たって、土方副長に呼ばれた。一さんと一緒に。

「お前ら何で呼ばれたか分かってるな?」
「何のことでしょう?」

一さん?シラをきるの?

「お前らの閨事のことだ!!」

無理だったね。

「夫婦たるもの閨事は普通のことかと。子を作り世継ぎを作るは武士の大事」
「俺は!風紀を乱すな!と言ってるのだ!」
「心が乱れるはその者の修行が足りぬが故」

一さんは、こちらに非がないと堂々としてる。それに対して土方歳三は怒りを爆発させていた。

「お前ら!二度と屯所内で閨事をするな!」
「無理」
「斎藤ぉ?」
「土方副長とて奥方と閨事を致すことかと。それと同じこと。我らだけ慎む理由がない」

閨事。閨事と聞いてるこちらが恥ずかしいのだけど。一さんは本当に無表情だな。

「俺はアイツとまだ一度も閨事をしてない」
「「え?」」
「……土方副長は不能であるのか?」
「斎藤ぉ?」
「え?土方副長って不能なのですか?」
「お前らぁ!!」
「土方さんって不能なんですね~?」

沖田総司が入ってきた。

「総司ぃ!貴様あ」
「鬼が不能~。皆に報告してきます~」
「待て!総司!」

土方歳三は沖田総司を追いかけて出て行ってしまった。

「ふむ。沖田に甘味でも奢るか」

もしかして沖田総司は私たちを助けてくれたのかな?1番迷惑かけてるのに?

私たちは部屋に戻り、それからも変わらない日々を送った。沖田総司に気にならならなくなったのかと聞けば、心が無になったと。またそれにより剣の腕が上がったそうだ。何故、私たちの閨事を気にしなくなったことで剣の腕が上達したのかは分からないが、沖田総司が気にしてないのであればいいだろう。

それよりも屯所中に土方歳三の不能説が流れた。土方歳三は火消しをしようとするが、すればするほど不能説が真実味帯びてる。
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