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翌日の朝餉はとても静かなものだった。ただ一人を覗いて……。
「皆ぁどうしたですかぁ?暗いですよぉ」
凛ちゃんだけケロリとしていた。山南敬助の想いは凛ちゃんには届かなかったようだ。
そんな凛ちゃんを見て、沖田総司が近寄り凛ちゃんの頬を平手打ちした。
「山南副長の死を無駄にしないでください」
「沖田さん、酷い!凛をぶつなんてぇ」
沖田総司の想いも凛ちゃんには届かない。
「幹部は食後集まってくれ。麗奈君もだ」
近藤勇が皆を集める。私もということは凛ちゃんのことかな?同じ未来人としての意見を聞きたいとかそういうことかな?
食後、近藤勇の部屋に行く。一さんの横に座り、近藤勇が話し始めるを待った。
「凛君は屯所には置いておけないと判断する。……そこでわしの妾にしようと思う」
「近藤さん!」
「歳。これは山南さんをあのような死にいたしめらしたわしの責任でもある」
私はそっと手を挙げて、発言の許可をもらうのを待つ。
「どうしたんだい?麗奈君」
「皆さんからしたら近藤局長の妾になるということは誉高いことなのかもしれませんが、私がいた時代の女の子の考え方は少し違うのです」
「つまり?」
「近藤局長が相手では凛ちゃんは嫌がります」
きっぱりと告げると皆の目が嘘だろ?と向けられた。
「お前、近藤さんでは不服だと言うのか?」
「近藤局長、凛ちゃんが近藤局長に頬を赤らめたことはありますか?」
「いや、ないが?」
「私たちの時代は好きな人じゃないと婚姻したくないのです。また好きになる人も理想は見目よくお金を持ってる人です。まあこれはあくまで理想ですが……。また一夫一妻が基本のため妾という立場は嫌がるかと思います。勿論、婚姻したあと、夫が妾を持つことも」
私のいた時代の価値観を言うと皆が驚いていた。
「ならば麗奈君は誰が適任だと思う?」
「そうですね。見目良くお金持っていて、それなりの立場があり、後世にも名が残っていて人気のある土方歳三あたりが妥当ではないかと思います」
「俺!?」
そうあなた。
「俺にあんな餓鬼を娶れとか言うのかよ!?」
山南敬助は責任を取ったのだから、同じ副長である土方歳三と責任を取るべきでしょう。
「甘い言葉を一つや二つ吐けば、凛ちゃんならばすぐに頷くと思いますよ?」
「だが、俺には書類仕事があるから家にあまり帰れないぞ?それであいつは大人しく待ってられるか?」
「仕事は家ですればいいじゃないですか?」
「それをあいつに見られたら、どうするんだ?あいつはお前と違って拷問なんてされたらすぐに吐いちまうぜ?」
「それならば、ご安心を。凛ちゃんに文字は読めませんから」
「は?学校に行ってたんだろう?文字が読めないわけないだろう?」
「詳しく言うとこの時代の文字が読めないのです」
この時代の文字は繋がっていてミミズのように見える。また話し言葉と書き言葉が違った。そのことを説明する。
「では、お前も読めないのか?」
「はい。読めませんね」
勉強中だが、どうしても元の時代を引き摺ってるのかなかなか読めない。
「斎藤、本当か?」
「はい。麗奈は今、勉強中です」
文字は一さんに教わってる。
「お前が異国育ちだから読めないのではないか?」
「凛ちゃんの荷物が何かあれば証明できると思うのですが?」
スマフォあるでしょ?それ見れば一発よ。土方歳三は流石にここでスマフォを出すことは避けたいのか、スマフォは出さずに山崎烝に凛ちゃんの荷物を持ってくるように指示した。
凛ちゃんの学生カバンの中に教科書とノートがある。それを土方歳三は確認していた。他のメンバーも興味津々に凛ちゃんの荷物を見ている。
「これが普通であれば我々の文字は読めんな」
「というか、これの方が書くの面倒ではないのか?」
「確かに。未来では何でこんな面倒な書き方をするんだ?」
「文字が退化してるな」
皆、好き放題言ってる。
「これで凛ちゃんが文字を読めないことが分かったと思いますが?」
私は話を戻した。
「ああー!!分かった!俺があいつを娶ればいいんだろう!?」
「凛ちゃんを大人しくさせるためにも甘い言葉を吐いてくださいね」
「面倒くせぇ」
土方歳三はブツブツ言ってるが、話の方向性は決まった。
「本当にあの子は土方さんなんかでいいんですかね~?」
「総司」
「だって鬼の副長ですよ~?僕なら近藤先生の方がいいですよ~」
それは沖田総司だからでしょう?
「鬼の副長も未来では人気があるのですよ?」
「そうなんですか~?」
「はい。勿論、沖田さんも人気ですよ?」
土方歳三、沖田総司を知らない日本人は少ないだろう。
「他には誰が人気なのですか?」
「よく小説に出てくるのが、他に斎藤一、山崎烝、藤堂平助、永倉新八、原田左之助あたりですかね?」
何故か私に名前を呼ばれなかった幹部の人たちが落ち込んでる。
「近藤先生は?」
「近藤局長は勿論出てきますが、恋愛対象というより良き人という感じの脇役で登場することが多いですね」
恋愛もののほとんどが土方歳三と沖田総司になってると思う。たまにその他がいるくらい。
まあ何はともあれ、土方歳三には頑張ってもらわなくては。
それから暫くすると凛ちゃんな土方歳三にベッタリになった。土方歳三はウンザリした顔をしている。追い討ちをかけるように遊郭に行っても悋気を起こすと思うから行くのは禁止ですよと告げておいた。
凛ちゃんは盛大な結婚式を挙げたいと駄々をこねる日々らしい。土方歳三に盛大な結婚式とはどんなものか聞かれたのでYouTubeに出てる結婚式の動画を見せてあげた。この時代では無理だろと呟いていたが。凛ちゃんはウェンディングドレスを着れないことが不服のようで土方歳三に文句を言ってるという。私にドレスを作れという無茶ぶりしてきた。そこは土方歳三が甘い言葉を吐いて白無垢で納得させるところでしょうと返しておく。何とか凛ちゃんを土方歳三が宥めて白無垢での結婚式になった。顔は可愛いため白無垢も似合ってる。隣の新郎はゲンナリしてるけどね。
現在、建造中の屯所の近くに家を借りたという。今日から凛ちゃんはそこで住むことになった。凛ちゃんは家事は一切出来ないので通いのお手伝いさんも雇ったとのこと。
なんだかんだ言いながら、土方歳三は凛ちゃんを甘やかす。それでは凛ちゃんの成長にはならないと思うけど婚姻したのだから、あとは2人の問題で外野である私がどうこう言うことでもない。
「皆ぁどうしたですかぁ?暗いですよぉ」
凛ちゃんだけケロリとしていた。山南敬助の想いは凛ちゃんには届かなかったようだ。
そんな凛ちゃんを見て、沖田総司が近寄り凛ちゃんの頬を平手打ちした。
「山南副長の死を無駄にしないでください」
「沖田さん、酷い!凛をぶつなんてぇ」
沖田総司の想いも凛ちゃんには届かない。
「幹部は食後集まってくれ。麗奈君もだ」
近藤勇が皆を集める。私もということは凛ちゃんのことかな?同じ未来人としての意見を聞きたいとかそういうことかな?
食後、近藤勇の部屋に行く。一さんの横に座り、近藤勇が話し始めるを待った。
「凛君は屯所には置いておけないと判断する。……そこでわしの妾にしようと思う」
「近藤さん!」
「歳。これは山南さんをあのような死にいたしめらしたわしの責任でもある」
私はそっと手を挙げて、発言の許可をもらうのを待つ。
「どうしたんだい?麗奈君」
「皆さんからしたら近藤局長の妾になるということは誉高いことなのかもしれませんが、私がいた時代の女の子の考え方は少し違うのです」
「つまり?」
「近藤局長が相手では凛ちゃんは嫌がります」
きっぱりと告げると皆の目が嘘だろ?と向けられた。
「お前、近藤さんでは不服だと言うのか?」
「近藤局長、凛ちゃんが近藤局長に頬を赤らめたことはありますか?」
「いや、ないが?」
「私たちの時代は好きな人じゃないと婚姻したくないのです。また好きになる人も理想は見目よくお金を持ってる人です。まあこれはあくまで理想ですが……。また一夫一妻が基本のため妾という立場は嫌がるかと思います。勿論、婚姻したあと、夫が妾を持つことも」
私のいた時代の価値観を言うと皆が驚いていた。
「ならば麗奈君は誰が適任だと思う?」
「そうですね。見目良くお金持っていて、それなりの立場があり、後世にも名が残っていて人気のある土方歳三あたりが妥当ではないかと思います」
「俺!?」
そうあなた。
「俺にあんな餓鬼を娶れとか言うのかよ!?」
山南敬助は責任を取ったのだから、同じ副長である土方歳三と責任を取るべきでしょう。
「甘い言葉を一つや二つ吐けば、凛ちゃんならばすぐに頷くと思いますよ?」
「だが、俺には書類仕事があるから家にあまり帰れないぞ?それであいつは大人しく待ってられるか?」
「仕事は家ですればいいじゃないですか?」
「それをあいつに見られたら、どうするんだ?あいつはお前と違って拷問なんてされたらすぐに吐いちまうぜ?」
「それならば、ご安心を。凛ちゃんに文字は読めませんから」
「は?学校に行ってたんだろう?文字が読めないわけないだろう?」
「詳しく言うとこの時代の文字が読めないのです」
この時代の文字は繋がっていてミミズのように見える。また話し言葉と書き言葉が違った。そのことを説明する。
「では、お前も読めないのか?」
「はい。読めませんね」
勉強中だが、どうしても元の時代を引き摺ってるのかなかなか読めない。
「斎藤、本当か?」
「はい。麗奈は今、勉強中です」
文字は一さんに教わってる。
「お前が異国育ちだから読めないのではないか?」
「凛ちゃんの荷物が何かあれば証明できると思うのですが?」
スマフォあるでしょ?それ見れば一発よ。土方歳三は流石にここでスマフォを出すことは避けたいのか、スマフォは出さずに山崎烝に凛ちゃんの荷物を持ってくるように指示した。
凛ちゃんの学生カバンの中に教科書とノートがある。それを土方歳三は確認していた。他のメンバーも興味津々に凛ちゃんの荷物を見ている。
「これが普通であれば我々の文字は読めんな」
「というか、これの方が書くの面倒ではないのか?」
「確かに。未来では何でこんな面倒な書き方をするんだ?」
「文字が退化してるな」
皆、好き放題言ってる。
「これで凛ちゃんが文字を読めないことが分かったと思いますが?」
私は話を戻した。
「ああー!!分かった!俺があいつを娶ればいいんだろう!?」
「凛ちゃんを大人しくさせるためにも甘い言葉を吐いてくださいね」
「面倒くせぇ」
土方歳三はブツブツ言ってるが、話の方向性は決まった。
「本当にあの子は土方さんなんかでいいんですかね~?」
「総司」
「だって鬼の副長ですよ~?僕なら近藤先生の方がいいですよ~」
それは沖田総司だからでしょう?
「鬼の副長も未来では人気があるのですよ?」
「そうなんですか~?」
「はい。勿論、沖田さんも人気ですよ?」
土方歳三、沖田総司を知らない日本人は少ないだろう。
「他には誰が人気なのですか?」
「よく小説に出てくるのが、他に斎藤一、山崎烝、藤堂平助、永倉新八、原田左之助あたりですかね?」
何故か私に名前を呼ばれなかった幹部の人たちが落ち込んでる。
「近藤先生は?」
「近藤局長は勿論出てきますが、恋愛対象というより良き人という感じの脇役で登場することが多いですね」
恋愛もののほとんどが土方歳三と沖田総司になってると思う。たまにその他がいるくらい。
まあ何はともあれ、土方歳三には頑張ってもらわなくては。
それから暫くすると凛ちゃんな土方歳三にベッタリになった。土方歳三はウンザリした顔をしている。追い討ちをかけるように遊郭に行っても悋気を起こすと思うから行くのは禁止ですよと告げておいた。
凛ちゃんは盛大な結婚式を挙げたいと駄々をこねる日々らしい。土方歳三に盛大な結婚式とはどんなものか聞かれたのでYouTubeに出てる結婚式の動画を見せてあげた。この時代では無理だろと呟いていたが。凛ちゃんはウェンディングドレスを着れないことが不服のようで土方歳三に文句を言ってるという。私にドレスを作れという無茶ぶりしてきた。そこは土方歳三が甘い言葉を吐いて白無垢で納得させるところでしょうと返しておく。何とか凛ちゃんを土方歳三が宥めて白無垢での結婚式になった。顔は可愛いため白無垢も似合ってる。隣の新郎はゲンナリしてるけどね。
現在、建造中の屯所の近くに家を借りたという。今日から凛ちゃんはそこで住むことになった。凛ちゃんは家事は一切出来ないので通いのお手伝いさんも雇ったとのこと。
なんだかんだ言いながら、土方歳三は凛ちゃんを甘やかす。それでは凛ちゃんの成長にはならないと思うけど婚姻したのだから、あとは2人の問題で外野である私がどうこう言うことでもない。
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