相棒と世界最強

だんちょー

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11話 最強の力

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「おっと……そろそろ体がモタねぇみてェだなァ。少し離脱するぜェ」

 大気が震えるほどの魔力を発した僕。

 地面を蹴ったら空まで飛んでいき……

 空気を蹴って斜め下に急降下する。

(びえぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!!!)

「ヒヒャヒャヒャヒャ!」


 もうなにが起きてるのかわからなかった。
 わからなかったけど、こいつが最高に強いことだけはわかった。

 地面が見えてきたと思ったらそこにはジャイアントシープがいた。

 ジャイアントシープはランクllの魔物。
 オークよりも強い魔物だった。

 ・・・・それが着地の衝撃で絶命


「ひゅ~♪ 夜飯ゲットだなァ?」

 出鱈目に強すぎて…理不尽すぎて…


 ーーー憧れた


 ただ、その言動は本当に気に入らなかった。
 軽薄そうで頭のおかしな話し方。
 動きもなんか気持ち悪かった。

 できれば僕の体でそういう話し方はしないでほしい。

「これ以上は体が壊れちまうからなァ。変わるぞォ?」

 そう言うと、僕の中にあった黒剣の思考や何かが抜けた。

 体の感覚が戻り始めた瞬間

 激痛が走った。

「い……ッっ……っ!!!?????」

 叫べないぐらい、体中が痛すぎて、呼吸も忘れるほどだった。

『カラダができてねぇからなァ。しょうがねェ代償だと思っとけェ。ゆっくり深呼吸しろォ?反動で死ぬとか情けねぇことしたらぶっ殺すぞォ?』

 (そんな……理不尽な…っ…!)

 パニックに陥ったがなんとか呼吸を整えることができた。
 しかし体は一向に動かすことができない。

『丸一日ぐらいはそのままだなァ。もう眠テェだろ?ゆっくり休めヤぁ。魔物がこねェようにしてやるからヨォ』

 確かに…。
 体中痛いけど、どうしてか眠い。
 でも、まだ言えてなかった。

 眠る前に……一言…だけ。

「あ…りが…と…」

『おうよォ』



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 フフフ……ふひッ!!

 ヒヒャッ……ヒヒャヒャヒャヒャヒャ!!!!!

 そいつは、笑いを堪えていた。
 ずっと。ずっと。ずっと。

 運命の出会い…いや。

 悪魔的な出会いをしたことで可能性が現れた。

 あの戦い以来、この世界はゴミの支配する領域になった。
 それからの人々は皆、ゴミの気を発するようになり、胸糞悪い時代がやってきた。

 人々は縛られる。
 あいつらによって。

 ランクXには至れなくなる。
 あいつらのせいで。

 だがそれがどうだ?

 目の前に、一切のゴミの気を持ってない奴がいるじゃねぇか。
 こいつなら、


 ーーー天使を殺せる



『…潰させねぇし折らせねぇ。……ゴミが気づく前にこいつを強くしねぇとなァ。 ヒヒャッ!!!魔力を放出して良かったぜェ……!!気付いたやつらは必ずここに集まって来るぜぇッ!!可能性を感じろォ?オマエらは……こいつの食いもんだ』

 何千年と待った己の目的のために、今度は出来る限りのことをする。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




「ねぇ~お姉ちゃんもう飽きちゃったんだけどぉ?
 ……いつまでこいつ倒せないでいるの?それが本気なの?全力出してるの?リミッターは解除した?脳みそ振り絞って考えた?最善策を思い浮かべた?動きを意識してるの?もっと極限まで……集中しなよ?ちんたらしてる暇はないんだよ?それでも私の弟子なの?ねぇ?聞いてるの?戦ってても返事ぐらいしないと。常識だよね?なんで死にそうになってるの?もっとできるよね?できないはずないよね?私の弟子だよ?私が認めたんだよ?間違ってるはずないよね?……はやくしろッ!」

 ビクッ。

 少女は目前にいる敵に圧倒されていた。

 飛竜
 ランクl Vの魔物。
 その鱗はとても硬く、物理も魔法も通しづらい。
 空を自由自在に飛び、その口から放たれる炎は500°を超える。
 そして爪には猛毒があり……
 注意する点がありすぎて、本来は1人で戦う魔物ではない。

 ましてや同格のランクlVでは歯が立たないのに。

 しかし彼女は戦った。
 少しでも早く、強くなりたかったから。

 誰のためでもなく、自分のために。
 剣が好きだった。戦うのが面白かった。
 それと…

 綴り書に出てくる彼女の強さに魅せられた。

 いつかぶっ飛ばしたいと今でも思っている。
 でもまだまだ先。
 いつかがすぐに来ることはない。
 それまで私は、この人類最強に指示を仰ぐ。

「!????」

 飛竜がものすごい勢いで吹っ飛び、岩山にぶつかって潰れた。

 ああ。私はこの人を怒らせてしまった。
 今回ばかりは…死ぬかもしれない。

 以前、達成できなかった訓練があった。

 私の弱点の克服。
 筋力とその持続力だ。

 あまりにも過酷で無謀すぎる訓練に私は一度心が折れかけた。

 しかし、その「心が折れる」よりも膨大な恐怖を味わって上書きをされた。

 …思い出すだけで体が震える。

 …今回はそれと同等か

 もっと最悪なことが起こるかもしれない。

「はは……」

 怒りすぎてもはや笑うしかないのだろう。

「きた……」

 ??
 意を決して師匠に視線を向けた。

 師匠は師匠じゃなかった。
 いつものだらしない姿でも狂気じみた姿でもない。
 まるで恋する乙女のような顔をしていた。
 顔は耳まで赤くなり、キャーキャー叫んでいる。

 なにが起きたのだろう。
 初めて見る師匠に困惑した。

「ははははっ!!!!すごい…!!すごいよ…!誰!?!?君は誰なんだ!?!?この気……遠くてもわかる……!!」



 ーーーあそこだーーー



 ゼロ…あらためレイシアは生まれて初めて、本気を出した。

 魔力の解放で大気は揺れ、蹴った地面はひび割れて大陥没を起こした。
 周囲にいる動物や虫はその気に当てられただけで絶命するほど。


 向かう先は、冒険者の街。


 超高速で移動するため周りのものは衝撃波で破壊されていく。
 途中にある民家もお構いなし。
 とにかくまっすぐに突っ切っていった。


 まだ夢の途中。
 私は ランクXになるんだ。

 そのためならどんな犠牲もいとわない

「私に…その力をよこせ…!」

 このペースでも3日かかることが嘆かわしいほどに気分は高まっていた。

 そして…何が何だかわからずに取り残された彼女は…。

 目前に広がる衝撃波の痕を見て、再度確信した。
 あの人の強さは本物だと。

 彼女は、師匠を追いかけることを決めた。

 また出会う。

 ランクl Vの少女と能無し。

 一度は勝敗が決した2人。
 進んだものと、進めなかったもの。

 2人の運命が交わるのは

 もうすぐだ。




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