冷酷王子が記憶喪失になったら溺愛してきたので記憶を戻すことにしました。

八坂

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 突然のことに私はすっかり目を覚ましてしまった。視線の先には協力者であるウェン様の姿があった。

 「早速エリーゼさんを救うナイトになろうと思ったのにまさか本物のナイト様がいるなんて思っていませんでした。」
 「ウェン、これはどういうことだ。」
 「ガロンは元気だった?見ない間に一段とたくましくなったね?」

 きっと私を助けに来たのであろうウェン様とガロン様が鉢合わせしてしまった。ここの2人は面識があるようでお互いの名前を知っているらしい。しかしガロン様は抜いた剣を鞘に戻すことはなく、ウェン様も何やら笑顔が暗く空気がピリついているのがすぐに分かる。

 「お前、どうしてここにいる。」
 「だからエリーゼさんのナイトになるために...」
 「ふざけるな!」

 聞いたこともない声量でガロン様が怒鳴るものだから大変びっくりしてしまった。そしてその声と共に私を抱きしめている腕も強くなっていた。今までは嫌悪感を感じていただろうが吊り橋効果なのだろうか?と考えるほどに少し照れくさく感じていたくらいであった。そんな風に考えてしまう自分が恥ずかしく顔が熱くなってしまった。

 「もうエリーゼさん、僕がいるんだからガロンばっかり意識しないでくださいよ。」
 「ちょっと静かにしてください。」
 「俺の質問に答えるんだ!」
 「ガ、ガロン様。これも私が説明します。」
 
 私はガロン様にウェン様との密会の内容を話した。もちろんガロン様を陥れた原因というのは伏せてだが。

 「ではお前がエリーゼを危険に晒したということか?」
 「ですから、自分から志願したのです。ウェン様は助けに来てくださったんですよ。」
 「エリーゼが言っていることを信じたいが、この男を信じることができないのだ。」
 「それはどうしてですか?」
 「それは僕が説明しますね。」

 静かに私とガロン様の話を聞いていたウェン様の口が開いた。ゆっくり私とガロン様の方に近づいたかと思うと一瞬で私たちの後ろに回り込んでいた。その瞬間にガロン様の力が一気に抜けてその場に倒れこんでしまった。

 「ガロン様?!」
 「大丈夫。薬で眠ってもらっただけだよ。」

 気が動転してしまったが確かに息はしているし苦しそうな表情もしていない為本当なのだろう。しかし何故急にガロン様を眠らせたのかは全く理解できない。

 「ガロンに眠ってもらったのは僕がこれからすることに口を出してほしくないからですよ。」
 「ウェン様、また私の脳内読み始めたんですか?」
 「ごめんね。今から能力使うから制御をとったんだ。」

 そういうとウェン様は私の頭にそっと片手を置いた。そしてもう片手は私の目を隠すように顔を覆った。本来は物凄く恐怖を感じるであろう行動なのだろうが何故だか嫌悪感を感じなかった。

 「今から僕とガロンのお話を君の脳内に流し込むね。」
 「なぜそんな回りくどいことをするのですか?」
 「んー僕の力を見てほしいのと、同時進行でガロンの記憶を戻す準備がしたいからかな。」
 「な、るほ...ど...。」
 「それじゃあ、おやすみなさい♪」

 そうして私は夢の中に落ちていった。
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