冷酷王子が記憶喪失になったら溺愛してきたので記憶を戻すことにしました。

八坂

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もし噂が本当なら

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 「エリーゼさん?突然何を言い出すんですか?」

 確かに私は何を言い出しているのだろうか。そんなこと私が聞きたい。けれどそこまでしてでもガロン様の今の状態を変えたい。戻したい。端からしたらいい方向に進んでいるのかもしれないが、私からすると本当に調子が狂うし、あの状態が世間にバレてしまったらお父様やリゼを含めてこの国の人が危険にさらされてしまう。元より私はそんな正義感を持ち合わせたような人格はしていないがこういう風に自分に言い聞かせた方が格好がつく。

 「私はあんなガロン様見ていられません。それに大誤算だったのなら戻すべき。その為なら私が売られてもいいです。」
 「でも僕は君をそんな危険には晒したくない。」
 「それならウェン様の力でどうにかなるのですか?」
 「あの闇市場は変な小細工をされないように客人側が魔法などを使えなくなる結界が張られているから難しいね。」
 「なら私が適材適所です。」
 「うーん...。」

 ウェン様は唸りながら考えていた。それもそうだろう。急に1人の女が自分が売られるなんて宣言されたらびっくりするに決まっている。

 「売られた後にウェン様が助けてください。」
 「どういうことだい?」
 「私が売られて闇市場が終わった後にその商人の記憶を操作すればどうとでもなるのでは?」

 そう、結界が張られていない状態ではウェン様の魔法は最強と言っても過言ではないのだ。私は頭がとてもいいというわけではないがこういう小賢しい考えはいくらでも思いつく頭をしていてよかった。

 「それならどうにかなりそうだね。」
 「ではそれでお願いします。次の闇市場はいつなんですか?」
 「ちょうど明日の夜中にあるよ。場所はここ。」

 ウェン様は招待状を見せてくれた。その場所は城下町の裏路地を抜けた場所にあるらしい。うちの国は大きいが大きい故に管理不足がよく目立っている。この作戦が終わったら遠回しに報告しておこう。

 「わかりました。ではまた明日、今日くらいの時間に落ち合いましょう。」
 「はい。取引中に危ない動きが見られたら即刻中止しますからね。」
 「貴方すごく味方面してますけど一応敵なのは忘れないでください。」
 「そんなこと言わないでください。この作戦が成功したら僕が結婚を申し込むんですから。」
 「はいはい。」

 私はウェン様の戯言を右から左に流し、屋敷を後にした。幸いなことに私が脱走したことは一切バレることはなかった。
 翌日私は同じ方法で闇市場に出かけるのであった。




 最近エリーゼに会えないせいで気分がすこぶる悪い。使用人たちにエリーゼの様子を聞いているが使用人たちもエリーゼとはあまり接触ができていないようであまり話を聞けない。エリーゼの側近のリゼに話を聞きたいが、彼女はエリーゼにべったりとしているため話しかける隙もない。リゼを解雇したら俺と一緒にいてくれる時間が増えるのかと考えたことがあったがそんなことをしたらエリーゼが傷ついてしまうため解雇届を書きサインを書く寸前までいったがやめられてよかった。とにかくエリーゼ不足が凄いため使用人による食事の内容や服の話などで何とかやっていた。そろそろ限界に達しそうな頃ある噂が耳に入ってきた。

 「エリーゼ様が王宮を抜け出して1人の男性に会いに行ったそうよ。」
 「そんな噂どこで聞いたのよ。」
 「わからない。けれどそんな話が今王宮内で騒がれているわ。」

 エリーゼが別の男と会っている...?
 
 俺は全勢力を使いエリーゼの動向を探るように命令した。本人にはバレないように。エリーゼを疑ってはいない。だからこそ動向を探り潔白を証明するのだ。しかし、

 「もし噂が本当なら。その男ただではすまんぞ。」
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