冷酷王子が記憶喪失になったら溺愛してきたので記憶を戻すことにしました。

八坂

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久しぶり

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 「どんな山奥にあるのかと思ったら私の実家の近くじゃない...」

 住所の場所は何故か見覚えがあると思っていたけれどまさか私の家の近くの地域だとは思わなかった。けれどそれで納得もした。私の家は隣の国に隣接している地域にある。つまりウェン様はうちの国の人ではなかったのだ。それであれば管理されていないのも当たり前である。国としても自国内で終わらせたかったから隣国に報告や捜索願を出せないのだろう。
 住所につくとそこには大きい豪邸があった。それはそれは綺麗な素晴らしい壁や装飾があり、少し怖気づいた。夜も深く、どうやってこの家に侵入しようかと考えていた。すると門が自動で開いた。

 (よし、お化け屋敷か。帰ろう。)

 この世界に自動ドアも何も存在していない。つまり考えられるのは幽霊以外考えられないのだ。幽霊なんていない主義ではあるが、この世界は魔法があるくらいだし幽霊の1人いてもおかしくはない。

 「お化けはいないですよ?」
 「ひぃ!」

 急に声をかけられて自分でもびっくりするくらい高い悲鳴が出た。その声は塀の上から聞こえてきたのだ。それは多分誰でもびっくりするだろうと信じている。最初は幽霊かと思った。しかし私の考えていることを読んでいる。間違いなくウェン様である。

 「相変わらず面白いですねエリーゼさん♪」
 「相変わらず人で弄ぶのが好きなんですねウェン様。」
 「酷いなぁ。ただ驚かせているだけなのに。」

 そういうと3mくらいの塀をひょいと飛び降りてきた。凡人がそんなことをしたら足を折りそうだがさすが貴族とでもいうのか、そこら辺の受け身は心得ているらしい。

 「それを弄んでいるというんですよ?」
 「まあまあ。そんな顔しないでよ。」

 そういうと私の頭にポンと手を添えた。これが何もセットしていない髪の毛でウェン様は命拾いしただろう、セットしていたら軽く拳が出る。

 「殴るなら顔以外にしてくださいね?」
 「簡単に心を読まないでください。」
 「ん~、じゃあ心を読まずに言うけれど君はガロンのことについて聞きに来たんだろ?」
 
 先ほどまで敬語で爽やかな喋り方をしていたのに急に1トーンほど声色を落とし、テンションも下がっていた。その姿はさながら闇落ちしているような感覚であった。

 「はい、ガロン様の記憶を弄ったのはウェン様ですよね?」
 「そうだよ。僕の中では大誤算だったけどね?」
 「大誤算?私からしたらいい迷惑で国としても大変問題になっているからむしろ大成功なんじゃないんですか?」
 「ちょっと違うんだよね、けどここで話す話じゃないからこっちに来て。」

 そういうとウェン様は屋敷の中に入っていった。正直すごく怪しいし怖すぎる。行きたくはないがここまで来てしまったなら後戻りはできない。私は生まれたての小鹿のような足にならないように最大に気を付けながらウェン様について行った。
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