上 下
12 / 33

一緒だな。

しおりを挟む
 「これ…」

 散々ドレス選びに苦戦していたが部屋の隅っこにある1着のドレスに目を奪われた。薄い水色のパステルカラーが可愛く、裾に銀色のストーンが煌めいている。薔薇のような派手さではなく、タンポポのような親しみやすいのに可愛らしいような、そんなドレスだった。

 「頂けるならこのドレスがいいです。」
 「そうか。」

 何故かとても嬉しそうに微笑みながらガロン様は頷いた。ちょっと慣れてきたのか今までのような気持ち悪さは感じない。それにやっぱり顔は良いからその表情は映えていた。

 「どうしてそんな嬉しそうなのですか?」
 「いや、それは俺も気に入っていてな。エリーゼならとても似合いそうだと思っていたのだ。プレゼントしてやりたくてエリーゼの目に付かないように端に追いやったのだが見つかってしまった。」
 
 前言撤回。やっぱり気持ち悪い。気持ち悪過ぎてなのか、感情が昂っているのか顔が熱い。

 「考えていることが一緒だな。」
 「そ、そうですね。」

 何故か胸がザワついた。ああこんなにも私はこの人のことが嫌いなのか。そう考えせざるにはおえなかった。
 本当ならドレスを変えたいがしっくり来たのがのドレスしかなく、仕方なくこれを頂くことになった。



 城に帰る途中の馬車の中。ガロン様はいっぱい私に話しかけてきた。

 「エリーゼ。なぜそんなに不機嫌そうな顔をしているのだ?」
 「いえ、いつも通りです。いつも不機嫌なんです。」
 「いやエリーゼ。君はとても美しいよ。」
 「ああ、日当たりのいい所にい過ぎると体調が悪くなるので水分は取った方がいいですよ。」
 「俺を心配してくれるなんてエリーゼは優しいな。」
 「そんなことないです。極当たり前、これくらい3歳でも出来ます。」
 「ははは」
 「なんです?」
 「エリーゼの話はとても面白いな。」
 「興味無いって仰ってたじゃないですか。もう私話したくないですよ。」
 
 先程まで笑顔で話していたのにそこでガロン様は急に真面目な顔になった。

 (え、嫌だ怖い。なんかした?流石に失礼だった?けどこのくらいのことならずっと言ってたし怒られなかったから大丈夫だと思ったんだけど…。いや堪忍袋の緒が切れたとか?それなら怖すぎる!)

 怒られると思い私は俯き目をぎゅっと閉じた。

 「・・・れが。」
 「え?」
 「俺が、興味無いと言ったのか?」
 「はい?」
 「だから、俺がエリーゼの話に対して興味が無いと、そう言ったのか?」
 
 (やばい、完全に忘れてた。ただ頭おかしくなっただけだと勘違いしてた。)

 「いや~ガロン様じゃなかったかも?知れないですね~。あははは。」

 そう言うとガロン様は眉間に皺を寄せてまるで鬼のような形相だった。初めて心の底から人間が怖いと思った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

求職令嬢は恋愛禁止な竜騎士団に、子竜守メイドとして採用されました。

待鳥園子
恋愛
グレンジャー伯爵令嬢ウェンディは父が友人に裏切られ、社交界デビューを目前にして無一文になってしまった。 父は異国へと一人出稼ぎに行ってしまい、行く宛てのない姉を心配する弟を安心させるために、以前邸で働いていた竜騎士を頼ることに。 彼が働くアレイスター竜騎士団は『恋愛禁止』という厳格な規則があり、そのため若い女性は働いていない。しかし、ウェンディは竜力を持つ貴族の血を引く女性にしかなれないという『子竜守』として特別に採用されることになり……。 子竜守として働くことになった没落貴族令嬢が、不器用だけどとても優しい団長と恋愛禁止な竜騎士団で働くために秘密の契約結婚をすることなってしまう、ほのぼの子竜育てありな可愛い恋物語。 ※完結まで毎日更新です。

拾った宰相閣下に溺愛されまして。~残念イケメンの執着が重すぎます!

枢 呂紅
恋愛
「わたしにだって、限界があるんですよ……」 そんな風に泣きながら、べろべろに酔いつぶれて行き倒れていたイケメンを拾ってしまったフィアナ。そのまま道端に放っておくのも忍びなくて、仏心をみせて拾ってやったのがすべての間違いの始まりだった――。 「天使で、女神で、マイスウィートハニーなフィアナさん。どうか私の愛を受け入れてください!」 「気持ち悪いし重いんで絶対嫌です」  外見だけは最強だが中身は残念なイケメン宰相と、そんな宰相に好かれてしまった庶民ムスメの、温度差しかない身分差×年の差溺愛ストーリー、ここに開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

新婚なのに旦那様と会えません〜公爵夫人は宮廷魔術師〜

秋月乃衣
恋愛
ルクセイア公爵家の美形当主アレクセルの元に、嫁ぐこととなった宮廷魔術師シルヴィア。 宮廷魔術師を辞めたくないシルヴィアにとって、仕事は続けたままで良いとの好条件。 だけど新婚なのに旦那様に中々会えず、すれ違い結婚生活。旦那様には愛人がいるという噂も!? ※魔法のある特殊な世界なので公爵夫人がお仕事しています。

悪役令嬢に転生したので、人生楽しみます。

下菊みこと
恋愛
病弱だった主人公が健康な悪役令嬢に転生したお話。 小説家になろう様でも投稿しています。

私には弱小貴族くらいが丁度いい。

木山楽斗
恋愛
田舎の男爵令嬢であるルルーナは、特別裕福という訳でもないが平穏な生活を送っていた。 前世の記憶を持っている彼女は、二度目の人生に幸福を感じていた。妙なしがらみもない田舎の弱小貴族は、彼女の気質にあっていたのだ。 しかしそんな彼女に災難が降りかかってきた。領地に悪辣な伯爵令息ドルナスが現れたのである。 権力さえあればなんでもできるという考えを持つ彼は、ルルーナに対しても横暴に振る舞った。それによって、ルルーナは窮地に立たされる。 そんな彼女を救ったのは、偶然お忍びでやって来ていた第二王子のゼナートであった。 こうしてドルナスは、より権力を持つ者によって捻じ伏せられたのだった。

外では氷の騎士なんて呼ばれてる旦那様に今日も溺愛されてます

刻芦葉
恋愛
王国に仕える近衛騎士ユリウスは一切笑顔を見せないことから氷の騎士と呼ばれていた。ただそんな氷の騎士様だけど私の前だけは優しい笑顔を見せてくれる。今日も私は不器用だけど格好いい旦那様に溺愛されています。

【完結】わたくし、悪役令嬢のはずですわ……よね?〜ヒロインが猫!?本能に負けないで攻略してくださいませ!

碧桜 汐香
恋愛
ある日突然、自分の前世を思い出したナリアンヌ・ハーマート公爵令嬢。 この世界は、自分が悪役令嬢の乙女ゲームの世界!? そう思って、ヒロインの登場に備えて対策を練るナリアンヌ。 しかし、いざ登場したヒロインの挙動がおかしすぎます!? 逆ハールート狙いのはずなのに、まるで子猫のような行動ばかり。 ヒロインに振り回されるナリアンヌの運命は、国外追放?それとも? 他サイト様にも掲載しております

処理中です...