冷酷王子が記憶喪失になったら溺愛してきたので記憶を戻すことにしました。

八坂

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一緒だな。

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 「これ…」

 散々ドレス選びに苦戦していたが部屋の隅っこにある1着のドレスに目を奪われた。薄い水色のパステルカラーが可愛く、裾に銀色のストーンが煌めいている。薔薇のような派手さではなく、タンポポのような親しみやすいのに可愛らしいような、そんなドレスだった。

 「頂けるならこのドレスがいいです。」
 「そうか。」

 何故かとても嬉しそうに微笑みながらガロン様は頷いた。ちょっと慣れてきたのか今までのような気持ち悪さは感じない。それにやっぱり顔は良いからその表情は映えていた。

 「どうしてそんな嬉しそうなのですか?」
 「いや、それは俺も気に入っていてな。エリーゼならとても似合いそうだと思っていたのだ。プレゼントしてやりたくてエリーゼの目に付かないように端に追いやったのだが見つかってしまった。」
 
 前言撤回。やっぱり気持ち悪い。気持ち悪過ぎてなのか、感情が昂っているのか顔が熱い。

 「考えていることが一緒だな。」
 「そ、そうですね。」

 何故か胸がザワついた。ああこんなにも私はこの人のことが嫌いなのか。そう考えせざるにはおえなかった。
 本当ならドレスを変えたいがしっくり来たのがのドレスしかなく、仕方なくこれを頂くことになった。



 城に帰る途中の馬車の中。ガロン様はいっぱい私に話しかけてきた。

 「エリーゼ。なぜそんなに不機嫌そうな顔をしているのだ?」
 「いえ、いつも通りです。いつも不機嫌なんです。」
 「いやエリーゼ。君はとても美しいよ。」
 「ああ、日当たりのいい所にい過ぎると体調が悪くなるので水分は取った方がいいですよ。」
 「俺を心配してくれるなんてエリーゼは優しいな。」
 「そんなことないです。極当たり前、これくらい3歳でも出来ます。」
 「ははは」
 「なんです?」
 「エリーゼの話はとても面白いな。」
 「興味無いって仰ってたじゃないですか。もう私話したくないですよ。」
 
 先程まで笑顔で話していたのにそこでガロン様は急に真面目な顔になった。

 (え、嫌だ怖い。なんかした?流石に失礼だった?けどこのくらいのことならずっと言ってたし怒られなかったから大丈夫だと思ったんだけど…。いや堪忍袋の緒が切れたとか?それなら怖すぎる!)

 怒られると思い私は俯き目をぎゅっと閉じた。

 「・・・れが。」
 「え?」
 「俺が、興味無いと言ったのか?」
 「はい?」
 「だから、俺がエリーゼの話に対して興味が無いと、そう言ったのか?」
 
 (やばい、完全に忘れてた。ただ頭おかしくなっただけだと勘違いしてた。)

 「いや~ガロン様じゃなかったかも?知れないですね~。あははは。」

 そう言うとガロン様は眉間に皺を寄せてまるで鬼のような形相だった。初めて心の底から人間が怖いと思った。
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