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死ぬほどいらないです。
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「さあエリーゼ、好きな服を選ぶがいい。」
「いや、ここどこですか?」
目がちかちかするくらいゴージャスなドレスたちが私の視界を邪魔してくる。変な魔法陣に飛び込んだと思ったら急に服を選べと言われても、戸惑ってしまうのは仕方ないだろう。ドレスは大きい体育館のような広さの部屋に丁寧に展示されており、すぐに選べないほど数多くあった。
「ここは王宮が管理している衣装部屋だ。元々実母がドレスを集めることが趣味でな。城に置いておくスペースがなくなったと言って一人で遠くの地にドレス用の家を建てて、この路地からその家に繋がる魔法陣を設置したのだ。知ったような口をしているが全て使用人から聞いた話だがな。」
そう言いながら切なそうな顔をして教えてくださった。場違いな感想なのだがリリー様の行動力が尊敬の域を越えていて呆気にとらわれていた。ドレスがお好きな人はいくらでもいる。実家にいた時も仲良くしていたご令嬢がドレスが好きで自分の部屋の押し入れには収まり切れずに別の部屋を貰ったと自慢話を聞いたこともある。しかしそんな自慢話はおままごとレベルに聞こえるほどリリー様のやっていたことは群を抜いている。正直リリー様は可憐でお淑やかなイメージがあったからここまでの収集癖があるとは知らなかった。最初にこの場所を見た時にはカリーナ様が頭に思い浮かんでしまったが、確かによく見てみるとあの人が好きそうな派手で濃い色のドレスは少なく淡いパステルカラーのドレスが多く揃っていることに気付いた。そこに気付くと一気に息がしやすい環境になった。
そんなことよりもガロン様はよっぽどリリー様のことが好きだったのだろう。10歳でリリー様が亡くなってしまってリリー様のことを忘れてしまっていてもおかしくないのに、むしろ10歳の頃よりもリリー様の色々なことを知っているガロン様はとても素敵に見えた。もちろん人としてだけど。
「そんな素敵な場所に私を入れてしまって良かったのですか?」
「何を言っている?その素敵な場所に俺の素敵な人を招くのは何も不思議なことではない。」
ガロン様は私の方に向き直り私を見つめ、
「さあ、ここから気に入った服を選んでくれ!」
「死ぬほどいらないです。」
「なんでそんなことを言うんだ?もしかして気に入らなかったか?ここにある服は誰も着ていないから全て新品だぞ?」
捨て犬のような瞳で私の手を取り、必死に熱弁をしてきた。先ほどは頼りになる手だと思っていた物も完全に気のせいだったのかなと思ってしまうくらいに今私の手を握っているそれは本当に嫌で仕方なかった。日本でいうところのセクハラに近い感覚である。ガロン様は容姿端麗だからまだ我慢できているものの、これが違っていたらと思うと吐き気がしてくる。
「そういうことではないんです。」
私は熱弁を否定しながら静かに、そして出せる最大の力で彼の手を振りほどこうとした。
引きこもりの私では騎士の力に勝てなかったのはダサすぎるので内緒。
「いや、ここどこですか?」
目がちかちかするくらいゴージャスなドレスたちが私の視界を邪魔してくる。変な魔法陣に飛び込んだと思ったら急に服を選べと言われても、戸惑ってしまうのは仕方ないだろう。ドレスは大きい体育館のような広さの部屋に丁寧に展示されており、すぐに選べないほど数多くあった。
「ここは王宮が管理している衣装部屋だ。元々実母がドレスを集めることが趣味でな。城に置いておくスペースがなくなったと言って一人で遠くの地にドレス用の家を建てて、この路地からその家に繋がる魔法陣を設置したのだ。知ったような口をしているが全て使用人から聞いた話だがな。」
そう言いながら切なそうな顔をして教えてくださった。場違いな感想なのだがリリー様の行動力が尊敬の域を越えていて呆気にとらわれていた。ドレスがお好きな人はいくらでもいる。実家にいた時も仲良くしていたご令嬢がドレスが好きで自分の部屋の押し入れには収まり切れずに別の部屋を貰ったと自慢話を聞いたこともある。しかしそんな自慢話はおままごとレベルに聞こえるほどリリー様のやっていたことは群を抜いている。正直リリー様は可憐でお淑やかなイメージがあったからここまでの収集癖があるとは知らなかった。最初にこの場所を見た時にはカリーナ様が頭に思い浮かんでしまったが、確かによく見てみるとあの人が好きそうな派手で濃い色のドレスは少なく淡いパステルカラーのドレスが多く揃っていることに気付いた。そこに気付くと一気に息がしやすい環境になった。
そんなことよりもガロン様はよっぽどリリー様のことが好きだったのだろう。10歳でリリー様が亡くなってしまってリリー様のことを忘れてしまっていてもおかしくないのに、むしろ10歳の頃よりもリリー様の色々なことを知っているガロン様はとても素敵に見えた。もちろん人としてだけど。
「そんな素敵な場所に私を入れてしまって良かったのですか?」
「何を言っている?その素敵な場所に俺の素敵な人を招くのは何も不思議なことではない。」
ガロン様は私の方に向き直り私を見つめ、
「さあ、ここから気に入った服を選んでくれ!」
「死ぬほどいらないです。」
「なんでそんなことを言うんだ?もしかして気に入らなかったか?ここにある服は誰も着ていないから全て新品だぞ?」
捨て犬のような瞳で私の手を取り、必死に熱弁をしてきた。先ほどは頼りになる手だと思っていた物も完全に気のせいだったのかなと思ってしまうくらいに今私の手を握っているそれは本当に嫌で仕方なかった。日本でいうところのセクハラに近い感覚である。ガロン様は容姿端麗だからまだ我慢できているものの、これが違っていたらと思うと吐き気がしてくる。
「そういうことではないんです。」
私は熱弁を否定しながら静かに、そして出せる最大の力で彼の手を振りほどこうとした。
引きこもりの私では騎士の力に勝てなかったのはダサすぎるので内緒。
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