冷酷王子が記憶喪失になったら溺愛してきたので記憶を戻すことにしました。

八坂

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俺が君を一生をかけて愛し、守り抜く。

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 色んな食べ物や洋服、雑貨屋が立ち並び国民たちはとても穏やかに過ごしている。私も実家にいた時は良く街に出て買い物をしていたものだ。

 「ガロン様は何を買いに来たのですか?」
 「そういえば伝え忘れていたな。ついてきてくれ。」

 そう言われてどれも通らないであろう人1人分しか通れない真っ暗な裏路地に案内された。私は汚い所であってもある程度は耐性があるおかげで助かったが普通の令嬢であれば発狂するレベルでとにかく汚かった。色んなゴミや動物の死骸なのが沢山あり少し体調が悪くなってしまった。するとそれに気付いたガロン様は先程まで5歩ほど先に居たがすぐ近くまで寄って下さってた。

 「すまないエリーゼ、君を置いていってしまって。」
 「気にしないでください。気配を消す魔法を施されていますし、忘れてしまうのも当然です。」
 「いや、」

 少し目を伏せて何かを決意したようなガロン様はとてつもなく汚い道に片膝をついた。

 「何されているんですか?!汚れてしまいます!」
 「聞いてくれエリーゼ。」

 そう言うと私の瞳をじっと見てきた。あまりにも真剣な眼差しで一体何の話だろうかと私は少し緊張し固まっていた。ガロン様が少し青みがかった唇を静かに開く。

 「エリーゼ。」
 「はい?」
 「俺が君を一生をかけて愛し、守り抜く。」
 「いやいや、大丈夫ですので。」
 「俺がそうしたいんだ。」
 「本当に大丈夫ですし、早く立ってください!」
 「エリーゼは優しいな。そういうところも愛している。」
 「あーもう!」

 真剣な顔をして何を言い出すかと思ったら想像の100倍どうでもいいことだった。この生活が始まってまだ1日目だが既に彼の愛の言葉に耐性が付いてきて何を言われても動じないメンタルが出来上がってしまってることに気付いてしまったのと綺麗なお洋服が汚れている現状を見ている不快感で頭が混乱してしまい、大きい声で叫んでしまった。

 「そんなことより!行きたいお店は何処にあるのですか?」
 「それならもうある。」
 「へ?」

 ガロン様は何も無いただの壁を指差してそう言った。あぁ、遂に目が本当におかしくなったのだ。お医者さんに何と言おうか考えているとガロン様は壁に手を当てて何かブツブツと唱えた。するとただの壁に魔法陣が浮かび上がった。

 「な、なんですか、これは?」
 「転移用の魔法陣だ。入るぞ。」
 「いや入るぞって…怖いですよ!」
 「俺がいるから心配ない。」

 そう言ってガロン様は私の手を取り魔法陣に飛び込んで行った。私も意を決してガロン様の手をギュッと握り魔法陣に飛び込んだ。朝にフルーツを食べさせてこようとした手はとても怖かったが今回はとても頼もしかった。

 「エリーゼ、目を開けてみろ。」

 魔法陣に飛び込む時に無意識に目を瞑っていたようだ。ガロン様に言われて目を開くと…

 「うっわ。」

 そこにはカリーナ様が来ていそうな豪華絢爛なドレスやアクセサリーがずらりと並んでいた。本来であるなら『綺麗!』『素晴らしいわ!』と言葉を紡ぐ所だろうが、嫌な人を思い浮かべてしまった私には最低な反応しか出来なかった。
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