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話しかけてくるな。
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今日もこの日がやってきてしまった。
「お嬢様、ガロン様と会食のお時間です。」
私が1番嫌いな言葉は何?と聞かれたら絶対「会食」と答えるだろうと思うほどにこの言葉を聞くと鳥肌が立つ。
「ねぇリゼ、会食をして一体誰が喜ぶの?」
「ガロン様がご所望なされているのです。そんな事を仰ってはいけませんよ。」
「婚約してから約5年間、お会いするのは月1で行われる会食だけ。しかも無言…リゼや他の使用人達のあんな気まずそうな顔いい加減見たくないし、この前来た新人の顔を見て本当に申し訳なかったわ。」
婚約者と会食をする際は選ばれた優秀な使用人達が私達の会食を見守る決まりになっている。そして新人が入ってくるとその会食で挨拶をすることが恒例となっていた。先月は研修を終わらせた新人のアリスが挨拶の為に会食の場に来ていた。その時のアリスのあの顔が今でも忘れられない。大丈夫かな?何かあったんじゃないのかな?もしかして私が何かしたのかな?と顔に書いてあった。そしておどおどしながらも
「お、お初にお目にかかります!アリスと申します。よ、よ、よろしくお願いします…!」
緊張しながらも立派に自己紹介をしてくれたアリスが微笑ましかった。
普段なら絶対口を開くものかと思っていたけれど、せっかくアリスが頑張ってくれたのだから私も頑張らなくちゃ!と婚約者であり王国騎士団長ガロン様に話しかけてみた。
「今日はお天気も良く、星が綺麗に見えていますね。」
「・・・」
「えっと…あ、今日はオペラを見に行ったんです!とても素敵でした。」
「・・・」
「ガ、ガロン様のお仕事は順調ですか?」
ガチャン!と音を立ててフォークとナイフを机に置いたガロン様は1つ息をついて私の方を向いた。
「話しかけてくるな。お前がどこで何をしていようと俺には関係ないし興味も湧かない。」
「えっ…」
「あと仕事はお前に関係がない。食事中なのだから静かにしろ。」
そして再びフォークとナイフを手に持ち食事をし始めた。
どこからその鋼のメンタルが手に入ったのだろうか。彼には使用人達の気まずそうな顔が見えていないの?その目は節穴?数年ぶりに話を振った結果がこれだなんて信じられない。私は頭に血が上ってしまい
「分かりました。今後一切話しかけません。出しゃばった真似をして申し訳ありませんでした。そしてこんな所もう一生来たくないですね!」
と余計な一言を付け加えて会食の場から離れて一目散に自室へと帰った。
(一生懸命言葉遣いも頑張って綺麗にして話しかけた結果がこれ?はぁ、前の暮らしが懐かしいよ、戻りたい!)
とある公爵令嬢であり、異世界転生者でもあるこの私、エリーゼ・ルーセルは前世を思い出しながら布団に入り眠りについたのであった。
「お嬢様、ガロン様と会食のお時間です。」
私が1番嫌いな言葉は何?と聞かれたら絶対「会食」と答えるだろうと思うほどにこの言葉を聞くと鳥肌が立つ。
「ねぇリゼ、会食をして一体誰が喜ぶの?」
「ガロン様がご所望なされているのです。そんな事を仰ってはいけませんよ。」
「婚約してから約5年間、お会いするのは月1で行われる会食だけ。しかも無言…リゼや他の使用人達のあんな気まずそうな顔いい加減見たくないし、この前来た新人の顔を見て本当に申し訳なかったわ。」
婚約者と会食をする際は選ばれた優秀な使用人達が私達の会食を見守る決まりになっている。そして新人が入ってくるとその会食で挨拶をすることが恒例となっていた。先月は研修を終わらせた新人のアリスが挨拶の為に会食の場に来ていた。その時のアリスのあの顔が今でも忘れられない。大丈夫かな?何かあったんじゃないのかな?もしかして私が何かしたのかな?と顔に書いてあった。そしておどおどしながらも
「お、お初にお目にかかります!アリスと申します。よ、よ、よろしくお願いします…!」
緊張しながらも立派に自己紹介をしてくれたアリスが微笑ましかった。
普段なら絶対口を開くものかと思っていたけれど、せっかくアリスが頑張ってくれたのだから私も頑張らなくちゃ!と婚約者であり王国騎士団長ガロン様に話しかけてみた。
「今日はお天気も良く、星が綺麗に見えていますね。」
「・・・」
「えっと…あ、今日はオペラを見に行ったんです!とても素敵でした。」
「・・・」
「ガ、ガロン様のお仕事は順調ですか?」
ガチャン!と音を立ててフォークとナイフを机に置いたガロン様は1つ息をついて私の方を向いた。
「話しかけてくるな。お前がどこで何をしていようと俺には関係ないし興味も湧かない。」
「えっ…」
「あと仕事はお前に関係がない。食事中なのだから静かにしろ。」
そして再びフォークとナイフを手に持ち食事をし始めた。
どこからその鋼のメンタルが手に入ったのだろうか。彼には使用人達の気まずそうな顔が見えていないの?その目は節穴?数年ぶりに話を振った結果がこれだなんて信じられない。私は頭に血が上ってしまい
「分かりました。今後一切話しかけません。出しゃばった真似をして申し訳ありませんでした。そしてこんな所もう一生来たくないですね!」
と余計な一言を付け加えて会食の場から離れて一目散に自室へと帰った。
(一生懸命言葉遣いも頑張って綺麗にして話しかけた結果がこれ?はぁ、前の暮らしが懐かしいよ、戻りたい!)
とある公爵令嬢であり、異世界転生者でもあるこの私、エリーゼ・ルーセルは前世を思い出しながら布団に入り眠りについたのであった。
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