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彼女の話
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目を覚ますと、そこは支部室のソファの上だった。ソファの前では三人が話している。
「あれ、みなさん……痛っ」
「あー、そのまま横になってていいから。応急処置はしたけど、もう少しで救護員が来てくれるからそれまで我慢な」
そう言って、杉野さんは起き上がろうとした私を支えながら寝かせてくれた。武田支部長が口を開く。
「麻生君も目を覚ましたところで、小森君。どうして主獣に剣を刺すことが出来たんだい?」
「はい。私はPBN最大の謎について明らかにするために色々なデータを解析していました」
「最大の謎というと?」
「PBNがどうやって発生しているのか、ということです。最初の個体がどうやって発生したのかは分かりませんが、その他の個体は最初の個体のクローンなのではないかと仮説を立てました」
クローン……
「正確に言えば全く同じではないですが、それに近いと考えています。PBNは雌雄がないですが、多細胞生物でも無性生殖によって個体を増やす生物がいます。その方法を参考にすると、PBNの体のある一部分が突出し、それが成長してやがて分裂することで新しい個体になるのではないかと考えました」
「でも、体の一部が突出したPBNなんて一回も報告されてないぞ」
杉野さんが口を挟んだ。
「それが海中で行われていたとしたら? 私達には検知できません。もしこの仮説のように個体を増やしているとしたら、突出する起点となる部位は皮膚が薄いのではないかと考えたんです。また、主獣だけ尾が二股に分かれていて攻撃も効かないことから、主獣が親、系獣はその子と考えました。そして主獣の過去の戦闘データを解析して、尾の付け根から1m上、そこが起点になっていると予想しました。一か所でも体に傷を与えられれば、組織の結合が弱まり、他の箇所も抵抗力が下がる可能性が高い。効率性を考えると、起点と心臓の二点を正確に攻撃出来れば、主獣を倒すこともできると思います」
小森さんは申し訳なさそうな顔をした。
「確証はなかったので誰にも話していなかったのだけど、そのせいで麻生ちゃんに怪我を負わせてしまったね……ごめんなさい」
「謝らないでください。小森さんが来てくれたおかげでこの程度の怪我で済んだんです。私を助けてくれてありがとうございます」
私は小森さんに手を伸ばした。
「……ええ」
小森さんは優しく手を握った。
「あれ、みなさん……痛っ」
「あー、そのまま横になってていいから。応急処置はしたけど、もう少しで救護員が来てくれるからそれまで我慢な」
そう言って、杉野さんは起き上がろうとした私を支えながら寝かせてくれた。武田支部長が口を開く。
「麻生君も目を覚ましたところで、小森君。どうして主獣に剣を刺すことが出来たんだい?」
「はい。私はPBN最大の謎について明らかにするために色々なデータを解析していました」
「最大の謎というと?」
「PBNがどうやって発生しているのか、ということです。最初の個体がどうやって発生したのかは分かりませんが、その他の個体は最初の個体のクローンなのではないかと仮説を立てました」
クローン……
「正確に言えば全く同じではないですが、それに近いと考えています。PBNは雌雄がないですが、多細胞生物でも無性生殖によって個体を増やす生物がいます。その方法を参考にすると、PBNの体のある一部分が突出し、それが成長してやがて分裂することで新しい個体になるのではないかと考えました」
「でも、体の一部が突出したPBNなんて一回も報告されてないぞ」
杉野さんが口を挟んだ。
「それが海中で行われていたとしたら? 私達には検知できません。もしこの仮説のように個体を増やしているとしたら、突出する起点となる部位は皮膚が薄いのではないかと考えたんです。また、主獣だけ尾が二股に分かれていて攻撃も効かないことから、主獣が親、系獣はその子と考えました。そして主獣の過去の戦闘データを解析して、尾の付け根から1m上、そこが起点になっていると予想しました。一か所でも体に傷を与えられれば、組織の結合が弱まり、他の箇所も抵抗力が下がる可能性が高い。効率性を考えると、起点と心臓の二点を正確に攻撃出来れば、主獣を倒すこともできると思います」
小森さんは申し訳なさそうな顔をした。
「確証はなかったので誰にも話していなかったのだけど、そのせいで麻生ちゃんに怪我を負わせてしまったね……ごめんなさい」
「謝らないでください。小森さんが来てくれたおかげでこの程度の怪我で済んだんです。私を助けてくれてありがとうございます」
私は小森さんに手を伸ばした。
「……ええ」
小森さんは優しく手を握った。
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