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シノ、襲来
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最近ラフェの様子が変だ。「魔力回復ツアー」の後から、俺に対する態度がおかしい。妙によそよそしいというか、何というか。
「ラフェ、大人しくしてたかー」
放課後、俺がいつものように部屋に入ると、ラフェは飛び退った。
「お、おお! 日生じゃないか! えっと…どうしたんだ?」
「いや、いつも来てるだろ。」
「そ、そ、そうだったな。」
こんな調子が数日続いている。
「お前さぁ、最近変だぞ? 俺何かしたか?」
「そ、それは…」
ラフェは目を泳がせた。その時、視界の端に黒い点が現れた。
「え…?」
そっちに顔を向けると、その点はどんどん広がっていく。
「お、おいラフェ! お前、魔法使ってるのか!?」
「違う! 私じゃない! でもこの穴はきっと…」
ラフェがそう言いかけた時、穴から薄茶色の猫耳が飛び出した。ん? 猫耳…?
「よいしょっとぉ!」
そう言って穴から現れたのは、頭に猫耳のついた小学生くらいの女の子だった。
「お姉さまぁっ!」
そう言ってラフェに抱きついた。え、妹?
「ちょっと、シノ! 一人で来たの!? パパとママは?」
「内緒で来ちゃいました!」
ラフェは俺に目を向けた。
「ごめん、日生。この子は従妹のシノ。」
シノというその子は俺を横目で見た。
「いたんですか?」
ラフェに対するのとは違う冷たい声。前にもこんなことあったな…
「まあ、とりあえず分かった。高木先輩達を呼んでくるから、この部屋から絶対に出すなよ。」
「うん。」
はぁ…また厄介なことになった。
「ねえ、お姉さま。」
「なに?」
「しばらく会わない間にお姉さまは尻尾と角がしまわれてしまったんですね。シノもあと百年くらいしたら同じようになるのでしょうか。」
そう言って自分の耳を触った。私の角と尻尾がしまわれるようになったのは、魔界から出てくるちょっと前くらいだったな。
「そうだな。じきにそうなるんじゃないか。」
「そしたらまた、お姉さまとお揃いですね! でも、シノはお姉さまのふさふさで美しい尻尾の感触が忘れられないのです。わしゃわしゃさせてもらえませんか?」
そう言って純粋な瞳で見つめてくる。ぐぅっ…、そうやって見られると弱いんだよな…
「分かった。じゃあ、日生が戻ってくるまでな。」
私は角と尻尾を出した。
「…それなら一生戻ってくんなですよ。」
「なんか言った?」
「いいえ! 久しぶりのおさわり嬉しいです! それじゃあ、失礼します!」
そう言って尻尾に抱きつく。
「ああ~この触り心地ですぅ…ふさふさで柔らかくて、艶やかで、お姉さまの香りが一杯に…ん?」
シノは動きを止めた。そして、私と目を合わせる。
「お姉さまの尻尾から知らない匂いがします…誰かに触らせましたか?」
ドキっ!
「いやぁー、シノの勘違いじゃないかぁ? もちろん触らせたりなんかしないもんね?」
「いいえ、勘違いではありません! 明らかにお姉さまとは別の誰かの匂いがします! 誰ですか! お姉さまの高貴で麗しい尻尾に触れる不届き者は! シノがけちょんけちょんにしてやりますっ!」
そう言って私の尻尾をぎゅっと抱きしめた。
「高貴で麗しいかは別として、シノも昔から触ってるだろ。」
「シノはいいんです! だって特別だから! …はっ!」
シノは何か思いついたように顔をあげた。
「もしかして、お姉さま…心に決めた人がいるのですか!?」
「ちっ、違う違う! あれはつい流れで…じゃなくって! あ、そうそう! この世界で知り合った、女の!知り合いとな、偶然ぶつかった時があったからそれかなぁ? あはは…」
「むぅぅ…!」
シノは不満そうに口を尖らせた。
「もし男だったら八つ裂きにしてやるところでした。」
「あっははは…」
目が冗談に見えないんだよなぁ… とにかくシノを日生に近づけないようにしようと思った。
「ラフェ、大人しくしてたかー」
放課後、俺がいつものように部屋に入ると、ラフェは飛び退った。
「お、おお! 日生じゃないか! えっと…どうしたんだ?」
「いや、いつも来てるだろ。」
「そ、そ、そうだったな。」
こんな調子が数日続いている。
「お前さぁ、最近変だぞ? 俺何かしたか?」
「そ、それは…」
ラフェは目を泳がせた。その時、視界の端に黒い点が現れた。
「え…?」
そっちに顔を向けると、その点はどんどん広がっていく。
「お、おいラフェ! お前、魔法使ってるのか!?」
「違う! 私じゃない! でもこの穴はきっと…」
ラフェがそう言いかけた時、穴から薄茶色の猫耳が飛び出した。ん? 猫耳…?
「よいしょっとぉ!」
そう言って穴から現れたのは、頭に猫耳のついた小学生くらいの女の子だった。
「お姉さまぁっ!」
そう言ってラフェに抱きついた。え、妹?
「ちょっと、シノ! 一人で来たの!? パパとママは?」
「内緒で来ちゃいました!」
ラフェは俺に目を向けた。
「ごめん、日生。この子は従妹のシノ。」
シノというその子は俺を横目で見た。
「いたんですか?」
ラフェに対するのとは違う冷たい声。前にもこんなことあったな…
「まあ、とりあえず分かった。高木先輩達を呼んでくるから、この部屋から絶対に出すなよ。」
「うん。」
はぁ…また厄介なことになった。
「ねえ、お姉さま。」
「なに?」
「しばらく会わない間にお姉さまは尻尾と角がしまわれてしまったんですね。シノもあと百年くらいしたら同じようになるのでしょうか。」
そう言って自分の耳を触った。私の角と尻尾がしまわれるようになったのは、魔界から出てくるちょっと前くらいだったな。
「そうだな。じきにそうなるんじゃないか。」
「そしたらまた、お姉さまとお揃いですね! でも、シノはお姉さまのふさふさで美しい尻尾の感触が忘れられないのです。わしゃわしゃさせてもらえませんか?」
そう言って純粋な瞳で見つめてくる。ぐぅっ…、そうやって見られると弱いんだよな…
「分かった。じゃあ、日生が戻ってくるまでな。」
私は角と尻尾を出した。
「…それなら一生戻ってくんなですよ。」
「なんか言った?」
「いいえ! 久しぶりのおさわり嬉しいです! それじゃあ、失礼します!」
そう言って尻尾に抱きつく。
「ああ~この触り心地ですぅ…ふさふさで柔らかくて、艶やかで、お姉さまの香りが一杯に…ん?」
シノは動きを止めた。そして、私と目を合わせる。
「お姉さまの尻尾から知らない匂いがします…誰かに触らせましたか?」
ドキっ!
「いやぁー、シノの勘違いじゃないかぁ? もちろん触らせたりなんかしないもんね?」
「いいえ、勘違いではありません! 明らかにお姉さまとは別の誰かの匂いがします! 誰ですか! お姉さまの高貴で麗しい尻尾に触れる不届き者は! シノがけちょんけちょんにしてやりますっ!」
そう言って私の尻尾をぎゅっと抱きしめた。
「高貴で麗しいかは別として、シノも昔から触ってるだろ。」
「シノはいいんです! だって特別だから! …はっ!」
シノは何か思いついたように顔をあげた。
「もしかして、お姉さま…心に決めた人がいるのですか!?」
「ちっ、違う違う! あれはつい流れで…じゃなくって! あ、そうそう! この世界で知り合った、女の!知り合いとな、偶然ぶつかった時があったからそれかなぁ? あはは…」
「むぅぅ…!」
シノは不満そうに口を尖らせた。
「もし男だったら八つ裂きにしてやるところでした。」
「あっははは…」
目が冗談に見えないんだよなぁ… とにかくシノを日生に近づけないようにしようと思った。
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