巻き込まれ体質の俺は魔王の娘の世話係になりました

亜瑠真白

文字の大きさ
上 下
23 / 30
7

シノ、襲来

しおりを挟む
 最近ラフェの様子が変だ。「魔力回復ツアー」の後から、俺に対する態度がおかしい。妙によそよそしいというか、何というか。
「ラフェ、大人しくしてたかー」
 放課後、俺がいつものように部屋に入ると、ラフェは飛び退った。
「お、おお! 日生じゃないか! えっと…どうしたんだ?」
「いや、いつも来てるだろ。」
「そ、そ、そうだったな。」
 こんな調子が数日続いている。
「お前さぁ、最近変だぞ? 俺何かしたか?」
「そ、それは…」
 ラフェは目を泳がせた。その時、視界の端に黒い点が現れた。
「え…?」
 そっちに顔を向けると、その点はどんどん広がっていく。
「お、おいラフェ! お前、魔法使ってるのか!?」
「違う! 私じゃない! でもこの穴はきっと…」
 ラフェがそう言いかけた時、穴から薄茶色の猫耳が飛び出した。ん? 猫耳…?
「よいしょっとぉ!」
 そう言って穴から現れたのは、頭に猫耳のついた小学生くらいの女の子だった。
「お姉さまぁっ!」
 そう言ってラフェに抱きついた。え、妹?
「ちょっと、シノ! 一人で来たの!? パパとママは?」
「内緒で来ちゃいました!」
 ラフェは俺に目を向けた。
「ごめん、日生。この子は従妹のシノ。」
 シノというその子は俺を横目で見た。
「いたんですか?」
 ラフェに対するのとは違う冷たい声。前にもこんなことあったな…
「まあ、とりあえず分かった。高木先輩達を呼んでくるから、この部屋から絶対に出すなよ。」
「うん。」
 はぁ…また厄介なことになった。

「ねえ、お姉さま。」
「なに?」
「しばらく会わない間にお姉さまは尻尾と角がしまわれてしまったんですね。シノもあと百年くらいしたら同じようになるのでしょうか。」
 そう言って自分の耳を触った。私の角と尻尾がしまわれるようになったのは、魔界から出てくるちょっと前くらいだったな。
「そうだな。じきにそうなるんじゃないか。」
「そしたらまた、お姉さまとお揃いですね! でも、シノはお姉さまのふさふさで美しい尻尾の感触が忘れられないのです。わしゃわしゃさせてもらえませんか?」
 そう言って純粋な瞳で見つめてくる。ぐぅっ…、そうやって見られると弱いんだよな…
「分かった。じゃあ、日生が戻ってくるまでな。」
 私は角と尻尾を出した。
「…それなら一生戻ってくんなですよ。」
「なんか言った?」
「いいえ! 久しぶりのおさわり嬉しいです! それじゃあ、失礼します!」
 そう言って尻尾に抱きつく。
「ああ~この触り心地ですぅ…ふさふさで柔らかくて、艶やかで、お姉さまの香りが一杯に…ん?」
 シノは動きを止めた。そして、私と目を合わせる。
「お姉さまの尻尾から知らない匂いがします…誰かに触らせましたか?」
 ドキっ!
「いやぁー、シノの勘違いじゃないかぁ? もちろん触らせたりなんかしないもんね?」
「いいえ、勘違いではありません! 明らかにお姉さまとは別の誰かの匂いがします! 誰ですか! お姉さまの高貴で麗しい尻尾に触れる不届き者は! シノがけちょんけちょんにしてやりますっ!」
 そう言って私の尻尾をぎゅっと抱きしめた。
「高貴で麗しいかは別として、シノも昔から触ってるだろ。」
「シノはいいんです! だって特別だから! …はっ!」
 シノは何か思いついたように顔をあげた。
「もしかして、お姉さま…心に決めた人がいるのですか!?」
「ちっ、違う違う! あれはつい流れで…じゃなくって! あ、そうそう! この世界で知り合った、女の!知り合いとな、偶然ぶつかった時があったからそれかなぁ? あはは…」
「むぅぅ…!」
 シノは不満そうに口を尖らせた。
「もし男だったら八つ裂きにしてやるところでした。」
「あっははは…」
 目が冗談に見えないんだよなぁ… とにかくシノを日生に近づけないようにしようと思った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

イケメンストーカーに目を付けられましたが全力で逃げます!

Karamimi
恋愛
中学卒業間近に、ラブレターを晒されるというトラウマ的出来事を経験した渚。 もう男なんて大っ嫌い!絶対彼氏なんか作らない! そう決意したはずなのに。 学年一のイケメン、片岡隆太に告白される。 これはきっと何かの間違いだ… そう思っていたのに… どんどんストーカー化する隆太、周りもどんどん固められていき、追い詰められる渚! この絶体絶命の自体に、渚は逃げ切れるのか!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

隠れドS上司をうっかり襲ったら、独占愛で縛られました

加地アヤメ
恋愛
商品企画部で働く三十歳の春陽は、周囲の怒涛の結婚ラッシュに財布と心を痛める日々。結婚相手どころか何年も恋人すらいない自分は、このまま一生独り身かも――と盛大に凹んでいたある日、酔った勢いでクールな上司・千木良を押し倒してしまった!? 幸か不幸か何も覚えていない春陽に、全てなかったことにしてくれた千木良。だけど、不意打ちのように甘やかしてくる彼の思わせぶりな言動に、どうしようもなく心と体が疼いてしまい……。「どうやら私は、かなり独占欲が強い、嫉妬深い男のようだよ」クールな隠れドS上司をうっかりその気にさせてしまったアラサー女子の、甘すぎる受難!

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...