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ある男女の話
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高級羽毛の買い付けから帰ってきた俺は乙女と合流した。
「つまり、ラフェちゃんが魔界を出てきた原因は、お父さんにお見合いを勝手に進められたことみたい。」
「なるほどな。」
「でもこの世界に結婚相手を探しに来たわけじゃないみたいだから、どうにかしてお父さんと和解してもらうことが必要かなって。」
「そういう事なら、今後はその方針がよさそうだな。」
結婚相手を探しに来たのなら、一人の生贄を見つければ済む話で手間が省けたんだが仕方ない。
「買い付けはどうだった? 結構遠くまで行ったんでしょ。」
「ああ。おかげでいいのが買えたよ。」
俺は羽毛の入った袋を見せた。明日はこれを布団に加工してくれる業者のところへ持ち込まないとな。
「へぇー、柔らかそう! でも、ラフェちゃんの尻尾の方が…」
「え? 尻尾?」
「そう! ラフェちゃん、実は尻尾と角があるんだよ。特に尻尾なんてふっさふさでねー。あ、でも異性は見ちゃダメなんだって。残念だね。」
「…へぇ。」
俺はメガネの位置を直した。
え、角とか、尻尾とか、完全に想定外なんだが? 管理委員に任命された時、初めに思ったことは魔界の恐怖でも秘密組織の高揚でもなく、『え、女子と接するの?』だった。クラスメイトの女子と話すこともあるが正直苦手だ。気兼ねなく話せる女子は幼なじみである乙女くらいだ。
管理委員に任命されてから、俺はいつか出てくるかもしれない箱の中の女子を想定して勉強した。普段は見ない、漫画やアニメ、雑誌なんかを片っ端から集めた。どんなタイプの女子が出てきたとしても、自分の『冷静沈着』というスタイルを保っていられるように。属性ならツンデレ、妹、お姉さん、僕っ子、あとはヤンデレなんかも勉強した。外見の特徴なら、銀髪、金髪、縦ロール、片目隠し、ツインテール…特にツインテールはいつからか乙女がするようになったから見慣れるのに時間がかからなかった。実際出てきたラフェは黒髪ロング高飛車属性で、普段から暴君な姉に慣れている俺にとっては大した敵じゃなかった。それなのに…
けもの属性は考慮してなかった…! 不覚だ。ま、まあでも異性は見れないと言っていたし、大丈夫だろう…
「潔? おーい、戻ってこーい。」
その声にハッと我に返ると、すぐ近くに乙女の顔があった。
「大丈夫?」
「悪い。ちょっと考えごとをしてた。」
「そっか。…ねえ、潔。」
「何だ?」
「結婚って、どう思う?」
何を急に言い出すかと思えば。
「どうって、それは家族の問題だろ。父親の決めた相手をラフェが受けいれるかどうかは…」
「だーっ! 違う! 私が聞きたいのは潔のこと! 潔は結婚したい? したくない?」
乙女は一体どうしたんだ。俺が結婚…? こんなに女子が苦手で、結婚どころか付き合えるわけがない。
「したくないわけじゃないが、まあまず無理だろうな。」
「どうして?」
「女子は苦手なんだ。上手く話せない。」
「私とはいつも話してるじゃん。」
「だって乙女はガキ大将やってた時から知ってるからな。あの頃の乙女は…」
短髪でスカート履いてるのなんて見たことが無くて、それにすぐ喧嘩しては生傷を作ってた、小学生の頃の乙女の姿が浮かんだ。
「ちょっと! 昔のことは言わないでよ!」
「まあ、それだけ乙女は俺の中で特別ってことだな。」
「…ばか潔。」
罵倒してきたくせに乙女は少し嬉しそうだった。
「つまり、ラフェちゃんが魔界を出てきた原因は、お父さんにお見合いを勝手に進められたことみたい。」
「なるほどな。」
「でもこの世界に結婚相手を探しに来たわけじゃないみたいだから、どうにかしてお父さんと和解してもらうことが必要かなって。」
「そういう事なら、今後はその方針がよさそうだな。」
結婚相手を探しに来たのなら、一人の生贄を見つければ済む話で手間が省けたんだが仕方ない。
「買い付けはどうだった? 結構遠くまで行ったんでしょ。」
「ああ。おかげでいいのが買えたよ。」
俺は羽毛の入った袋を見せた。明日はこれを布団に加工してくれる業者のところへ持ち込まないとな。
「へぇー、柔らかそう! でも、ラフェちゃんの尻尾の方が…」
「え? 尻尾?」
「そう! ラフェちゃん、実は尻尾と角があるんだよ。特に尻尾なんてふっさふさでねー。あ、でも異性は見ちゃダメなんだって。残念だね。」
「…へぇ。」
俺はメガネの位置を直した。
え、角とか、尻尾とか、完全に想定外なんだが? 管理委員に任命された時、初めに思ったことは魔界の恐怖でも秘密組織の高揚でもなく、『え、女子と接するの?』だった。クラスメイトの女子と話すこともあるが正直苦手だ。気兼ねなく話せる女子は幼なじみである乙女くらいだ。
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けもの属性は考慮してなかった…! 不覚だ。ま、まあでも異性は見れないと言っていたし、大丈夫だろう…
「潔? おーい、戻ってこーい。」
その声にハッと我に返ると、すぐ近くに乙女の顔があった。
「大丈夫?」
「悪い。ちょっと考えごとをしてた。」
「そっか。…ねえ、潔。」
「何だ?」
「結婚って、どう思う?」
何を急に言い出すかと思えば。
「どうって、それは家族の問題だろ。父親の決めた相手をラフェが受けいれるかどうかは…」
「だーっ! 違う! 私が聞きたいのは潔のこと! 潔は結婚したい? したくない?」
乙女は一体どうしたんだ。俺が結婚…? こんなに女子が苦手で、結婚どころか付き合えるわけがない。
「したくないわけじゃないが、まあまず無理だろうな。」
「どうして?」
「女子は苦手なんだ。上手く話せない。」
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「だって乙女はガキ大将やってた時から知ってるからな。あの頃の乙女は…」
短髪でスカート履いてるのなんて見たことが無くて、それにすぐ喧嘩しては生傷を作ってた、小学生の頃の乙女の姿が浮かんだ。
「ちょっと! 昔のことは言わないでよ!」
「まあ、それだけ乙女は俺の中で特別ってことだな。」
「…ばか潔。」
罵倒してきたくせに乙女は少し嬉しそうだった。
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