巻き込まれ体質の俺は魔王の娘の世話係になりました

亜瑠真白

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私ね、日生にお礼がしたい

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 校門を出たところで俺達は足を止めた。
「あっ、悪い。痛くなかった?」
 俺はパッと手を離した。
「うん、大丈夫。それより日生。」
「うん?」
「私の話、聞いてくれてありがと。」
 そう言ってニッと笑った。あんまり無防備に笑うから、反応に困る。
「別に…」
「私ね、日生にお礼がしたい。私に出来ることなら何でもするぞ? 何でも言って!」
「何でも、ね…」
 別に何か見返りが欲しくて連れ出した訳じゃないし、むしろ自分のためって感じもする。でもラフェが俺に対して何もしないことに負い目を感じるなら、この関係は上手くいかないだろう。それなら何か「お礼」にあたるものを考えたほうがいい。そう思いながら辺りを見渡すと、道路を挟んだ向こうに見える広場でクマの着ぐるみが風船を配っていた。
 あれでいいか。俺は広場の方を指さした。
「じゃあ、あの風船をもらって来てくれないかな。俺、風船集めるのが趣味なんだけど、もらいに行くの恥ずかしくて。」
 大嘘だけど。
「風船ってなんだ?」
「ほら、向こうで子供に配ってる丸いやつだよ。」
「ふーん。日生、見かけによらず子供なんだな。」
「悪かったよ。」
「まあ、いい。そんなことでいいならすぐに渡そう。」 
 よかった、いい考えが浮かんで。
 一安心したその時、ラフェは胸の前で指をクロスさせ、何かを唱えた。
「~~~~セレ」
 すると突然強烈な向かい風が吹き、俺はとっさに手で顔を隠した。指の隙間から見えたのは、猛烈な勢いでこっちへ飛んでくる大量の風船だった。風船で命の危機を感じたのは今まで生きてきてこれが初めてだ。
 近くまで来た風船の束を、ラフェはひょいっとジャンプして捕まえた。
「ほら、あげる。」
 いつの間にか風は止み、得意気に風船の束を差し出すラフェが目の前にいた。冷汗が背中を伝う。
 俺の全感覚が過去MAXで異常アラームを鳴らしている。こいつはヤバい、と。
「遠慮しなくていいんだぞ? 日生がここに残れるように言ってくれたおかげで、あの人に会わなくて済むんだから。」
「あの人って?」
「魔王だよ。私の父親。魔王としては尊敬してるけど、父としてはほんっとうに頭が固くて嫌になる。もうしばらく頭を冷やしてればいいんだ。」
 そう言って腹立たしそうにそっぽを向く。
「…ん? もしかして帰りたくない理由って…」
「父と喧嘩して家を飛び出してきたんだ。向こうが謝るまで帰ってなんかやらないもんな!」
 ラフェの言葉に一瞬体がよろめいた。つまり、親と喧嘩したから家出してきたってこと!? なんだよその理由…俺はてっきりもっと…
「これからどうする? また魔法で風を起こしてもっともっと風船を集めるか? それとも…」
 俺はスマホを取り出した。
「…もしもし、成瀬先輩ですか? まだ近くに高木先輩もいます? そうですか、良かったです。あの…舐めた口きいてすいませんでした! こいつ、ヤバいです! すぐにでも魔界へ帰します!」
「話が違うぞ、日生ぇ!?」
 ラフェが驚いた声をあげる。
 こうして絶対魔界へ帰したい俺と、絶対帰りたくないラフェの攻防が始まった。
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