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僕も興味あるんだけどな
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あの色々あった魔法合宿から数日経ち、私は平穏な日常を取り戻していた。学校で授業を受け、リアナとお昼ご飯を食べ、放課後は第二図書室でルイスと三人で過ごす。この時間が幸せなものだって、一度失って改めて実感した。
ルイスの淹れてくれた紅茶を飲みながら、放課後の穏やかな時間が流れる。ルイスがティーカップを置いた。
「そう言えば、僕からはちゃんと言ってなかったね。リアナ、僕は告白してエマと付き合うことになったんだ」
「え……」
「ル、ルイス!?」
私は思わず立ち上がった。
「あれ……もしかして、まだ言ってなかったの?」
ルイスが困ったように私を見る。私は茫然とした様子のリアナの方を向いた。
「ごめん、リアナ! ずっと言おう言おうと思ってたんだけど、自分の話ってどうしても恥ずかしくて! 決して隠してた訳じゃないんだけど……すいません、許してください!」
そう言って勢いよく頭を下げる。この沈黙が怖い。さすがに怒ってる、よね……?
恐る恐る頭を上げると、リアナはいつになく目をランランとさせていた。
「エマとルイスが付き合うってすごい……! 前に聞いたエマの好きな人ってルイスのことだったんだ」
「その話、僕も詳しく聞きたいな」
リアナは私の手を取った。そして反対の手でルイスの手を取る。
「私の大切な友達2人が付き合うなんて、私も幸せ」
そう言って嬉しそうに微笑む。
「リアナ……」
そんなに喜んでもらえるなんて、なんだか胸がいっぱいになってしまう。
「ねえ、好きな人と付き合うってどんな気持ち?」
リアナは興味津々といった様子で私達に目を向けてくる。そんなの恥ずかしくて言葉に出来な……
「すごく幸せな気持ちだよ。夢みたいだけど夢じゃないって思うたびに嬉しくなるんだ」
ルイスが答えた。
「ちょっとルイス!?」
「じゃあ、付き合ったら今までと何か変わった? エマはどう思う?」
そう言って私を見つめる。
「えっと、その……」
恥ずかしくて逃げたいのに、リアナが手を握っているから逃れられない。
その時、17時を知らせる鐘が鳴った。
「もっと2人の話を聞きたいけど、もう帰らないと」
そう言ってリアナは私達の手を離した。ほっと胸を撫でおろす。
帰り支度をして部屋を出る間際、リアナは私達の方を振り返った。
「2人が幸せで、私も嬉しい。これは本当だよ」
それだけ言って部屋を後にした。
「リアナがあんなに喜んでくれるなんて思わなかったよ」
ルイスが言った。
「そうだね。興味津々で聞いてくるのは恥ずかしくてちょっと困ったけど」
そう言って席に着くと、ルイスとの目線が近くなった。
「僕も興味あるんだけどな。エマは僕と付き合ってから何が変わったと思っているのか」
ルイスは余裕そうに微笑む。この男は、私が困っているのを分かっててまた……!
「僕はたくさん変わったと思ってるよ。例えば、自分の気持ちを我慢しなくてよくなった。エマにどれだけ『好き』って伝えてもいいってことだよね」
そう言うと身を乗り出して私の髪を一束すくった。鼓動が早くて、息が止まりそうになる。
「それに、エマが望むのなら髪以外にも触れていいってことだよね?」
大人っぽく惑わせてくるルイスに、私はとても弱い。
「ルイ……ス……」
「赤くなっちゃって可愛い。好きだよ」
「……私も、好き」
緊張して声が掠れたけど、気持ちを言葉に出来た。
ルイスは私の髪から手を離し、自分の額を押さえた。心なしか顔も赤い。
「そんなこと言われると、愛おしすぎてちょっと困っちゃうんだけどな……」
緊張が解けたら、そんなルイスが可愛くて思わず笑ってしまった。
「ふふっ、ルイスが困ってるなんて珍しい」
ルイスは拗ねたように私を見つめる。
「笑うなんてイジワルなんじゃない?」
「だって、いつもは私ばっかりルイスにドキドキさせられてるから、いつもと違う様子が可愛くてつい……」
「私ばっかり、じゃないんだけどな。でも、それなら前教えてくれたみたいにいろんな方法でもっと僕を困らせてよ。ね、センセ?」
そう言っていたずらっぽく微笑む表情に、また体が熱くなった。
ルイスの淹れてくれた紅茶を飲みながら、放課後の穏やかな時間が流れる。ルイスがティーカップを置いた。
「そう言えば、僕からはちゃんと言ってなかったね。リアナ、僕は告白してエマと付き合うことになったんだ」
「え……」
「ル、ルイス!?」
私は思わず立ち上がった。
「あれ……もしかして、まだ言ってなかったの?」
ルイスが困ったように私を見る。私は茫然とした様子のリアナの方を向いた。
「ごめん、リアナ! ずっと言おう言おうと思ってたんだけど、自分の話ってどうしても恥ずかしくて! 決して隠してた訳じゃないんだけど……すいません、許してください!」
そう言って勢いよく頭を下げる。この沈黙が怖い。さすがに怒ってる、よね……?
恐る恐る頭を上げると、リアナはいつになく目をランランとさせていた。
「エマとルイスが付き合うってすごい……! 前に聞いたエマの好きな人ってルイスのことだったんだ」
「その話、僕も詳しく聞きたいな」
リアナは私の手を取った。そして反対の手でルイスの手を取る。
「私の大切な友達2人が付き合うなんて、私も幸せ」
そう言って嬉しそうに微笑む。
「リアナ……」
そんなに喜んでもらえるなんて、なんだか胸がいっぱいになってしまう。
「ねえ、好きな人と付き合うってどんな気持ち?」
リアナは興味津々といった様子で私達に目を向けてくる。そんなの恥ずかしくて言葉に出来な……
「すごく幸せな気持ちだよ。夢みたいだけど夢じゃないって思うたびに嬉しくなるんだ」
ルイスが答えた。
「ちょっとルイス!?」
「じゃあ、付き合ったら今までと何か変わった? エマはどう思う?」
そう言って私を見つめる。
「えっと、その……」
恥ずかしくて逃げたいのに、リアナが手を握っているから逃れられない。
その時、17時を知らせる鐘が鳴った。
「もっと2人の話を聞きたいけど、もう帰らないと」
そう言ってリアナは私達の手を離した。ほっと胸を撫でおろす。
帰り支度をして部屋を出る間際、リアナは私達の方を振り返った。
「2人が幸せで、私も嬉しい。これは本当だよ」
それだけ言って部屋を後にした。
「リアナがあんなに喜んでくれるなんて思わなかったよ」
ルイスが言った。
「そうだね。興味津々で聞いてくるのは恥ずかしくてちょっと困ったけど」
そう言って席に着くと、ルイスとの目線が近くなった。
「僕も興味あるんだけどな。エマは僕と付き合ってから何が変わったと思っているのか」
ルイスは余裕そうに微笑む。この男は、私が困っているのを分かっててまた……!
「僕はたくさん変わったと思ってるよ。例えば、自分の気持ちを我慢しなくてよくなった。エマにどれだけ『好き』って伝えてもいいってことだよね」
そう言うと身を乗り出して私の髪を一束すくった。鼓動が早くて、息が止まりそうになる。
「それに、エマが望むのなら髪以外にも触れていいってことだよね?」
大人っぽく惑わせてくるルイスに、私はとても弱い。
「ルイ……ス……」
「赤くなっちゃって可愛い。好きだよ」
「……私も、好き」
緊張して声が掠れたけど、気持ちを言葉に出来た。
ルイスは私の髪から手を離し、自分の額を押さえた。心なしか顔も赤い。
「そんなこと言われると、愛おしすぎてちょっと困っちゃうんだけどな……」
緊張が解けたら、そんなルイスが可愛くて思わず笑ってしまった。
「ふふっ、ルイスが困ってるなんて珍しい」
ルイスは拗ねたように私を見つめる。
「笑うなんてイジワルなんじゃない?」
「だって、いつもは私ばっかりルイスにドキドキさせられてるから、いつもと違う様子が可愛くてつい……」
「私ばっかり、じゃないんだけどな。でも、それなら前教えてくれたみたいにいろんな方法でもっと僕を困らせてよ。ね、センセ?」
そう言っていたずらっぽく微笑む表情に、また体が熱くなった。
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