ヨナと人魚の住まう海底都市

荒野羊仔

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エピソード15. 決別

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 私は二人の子供を連れて島へと帰還した。行きは七日掛けて潮の流れを掻き分けながら遡っていたのに対し、帰りは潮の流れに乗り方角を微調整するだけで済んだ。結果として行きよりも一日早く戻ることができた。櫓を使っての方向転換は容易く、行きの苦労が嘘のようだった。
 進行方向の調整より困難を極めたのはむしろ子供たちの面倒を見ることだった。エサウは時折船の外へ身を乗り出したし、セムは泣いてばかりいた。大海の真ん中にあって、母から引き離された子らが死なないように見張ることは容易ではない。ほんの少し目を離した隙に、彼らは海の底へとまっしぐらだ。私は彼らが泣き疲れて寝息を立て初めてようやく眠りについた。二人をしっかりと抱き抱えて。
 それは末子であった私が、子を成せぬ私が抱く初めての温もりであった。私の不始末でいとも容易く消えてしまう松明が、私の胸の内にこんなにも暖かな火を灯すのだ。
 与える者が一方的に何かを与えるということはなく、与えられている者から何かしらを受け取ることもある。与える側になって初めて、私も知らぬ間に誰かに何かを与えたことがあったのかもしれないと思えたのだ。それはまるで福音のようでもあった。奪うだけではなかったのかもしれないと。この子供達が私から何かを奪っているとは、到底思えなかったのだ。
 六つの夜を超え、私はこの島に戻ってきた。島中の女が私を出迎え、そして口々に問いただした。夫はいつ戻ってくるのかと。その子供たちは何だと。
 私は真実を語るより他になかった。だがそれを口にすることがひどく恐ろしくもあった。それにひどく疲れてもいた。二人の幼子の世話をしながら、ほとんど眠らずに船を漕いできたのだ。私の意識も船を漕ぎ始めていた。古い言葉で船を漕ぐ、はうたた寝をすることを意味した。櫓で船を操ってきた私にはその由来がわかる。波に揺られ意識がフッと遠いところに行きそうになる感覚がそっくりだった。
 とにかく少しだけ寝かせてくれと、私は女たちにエサウとセムを預け家へ戻り、寝床へ就く前に意識を失った。
 その日の夜、女たちは私の家へ集った。地面が見えなくなるほど女たちがひしめいていた。私はその中心で声を張り上げた。
 七つの夜を超えた先、言い伝え通り島があったこと。子供たちはそこから連れてきたこと。だがその島も既に海に沈みつつあり、今や海の森と化していること。その島で起こったことの全て。そして同じように、人魚が鯨を引き連れて男たちを海へ引き摺り込んだこと。
 女たちは皆嘆き悲しみ、皆耳を塞ぎ、命の音を聞いた。心を落ち着かせて涙を流さないように。だがしかし女たちの悲しみが凪になることはなかった。滂沱の涙は零れ落ち、家の中は嘆きに満ちた。女たちの嘆きに呼応するように、豪雨が降り注いだ。
 私はその真ん中で、ただひたすらに沈黙を保った。伴侶を亡くした女たちの悲しみは、痛いほどにわかった。それは私が妻を亡くした痛みとよく似ていたが、どれひとつとして同じものはなかった。半端な慰めが何の意味も持たないことを、私は理解していた。女たちの涙が止まるか、或いは夜明けが訪れるまで、私は岩のように荒れ狂う波を受け止めるより他にはない。
「でも、男たちが死んだかはわからない。そうでしょう、長老?」
 不意に顔を上げ、問い掛けたのはヨナ、お前の母、アディラだ。涙に濡れ頬に張り付いた巻き毛が、お前によく似ていた。
 凛とした声でアディラは続けた。女たちの嘆きの声の中でも、その声はよく通った。
「男たちは鯨の腹に収まった。だけど死んだところを見た訳ではない。人魚が男たちを引き摺り込んだのなら、生きていないとおかしい。だってそうでなければ子を成せない」
 その瞳には青い炎が宿っていた。怒りだ。熱く滾った怒りが静かに彼女の心を燃やし、彼女を突き動かした。彼女は立ち上がった。
「ヨナタンは、死んでなんかいない。私は絶対に信じない。絶対に」
 そうして彼女は外に出た。一人になりたいのだろうと思い、私はそれを止めなかった。それが彼女を見た最後だった。
——彼女は、島から姿を消した。幼子だったお前を残して。
 彼女の不在に気付いたのは、夜が明け女たちが解散してしばらく経った後だった。
 女たちが家から消えると、家の中は信じられないほど静まり返った。男たちと七つの夜を共に過ごし、幼子と六つの夜を過ごした私に、静寂はひどく耐え難いものに思えた。静寂の中、横になり目を閉じたが、眠りは中々訪れなかった。男たちの恐怖に歪む顔が瞼の裏に浮かぶ。嵐の海の音が聞こえる。女たちの嘆きが聞こえる。
 私のせいで消えていった男たち。私のせいで悲嘆に暮れる女たち。そしていつか私のせいで子供たちまでどうにかなってしまうのではないかと——。
 どれほどの時が流れたのかわからない。ただ横たわって死体と変わらないような時を過ごしていた頃、ふと家の外から子供の泣き声が聞こえた。それは微かな声ではあったが、静寂を打ち破るには十分だった。
 子供まで死なせてしまう訳にはいかない。私は重い体を引き摺るようにして家の外へ出た。
 そこにいたのがヨナ、お前だ。お前は海に向かって激しく泣き声を上げていた。その小さな背を見て察したのだ。彼女は海に身を投げたのだと。
 お前の泣き声を聞いて女たちが集まってきた。女たちも全てを察したようだった。
 そのうちの一人、"近所のおばさん"はエサウとセムを連れてきていた。彼女はずい、と私の前に二人を差し出した。
「長老、貴方がこの子達を育てるべきよ。私たちはまだ、夫たちを失ったことを受け入れられていない。私たちが戻ってきてほしいと願ったのは夫たちで、この子たちじゃない。血の縁の遠いこの子たちはこの島の命を長らえさせるかも知れないけど、私たちはまだ受け入れられない。助けてはあげるけど、貴方が育てて。男たちの代わりに」
 そう言ってエサウとセムを私の腕に抱かせた。何と冷たいのだろうとあの時は思ったがね。本心もあっただろうが、あれは彼女なりの優しさだった。何か拠り所がなければ生きていけない私を生かすための方便だった。
 三日三晩に渡って豪雨は降り注ぎ、雲間から光の柱が聳え立ち、晴れ間が覗いた。海は男たちを飲み込んでなお、何事もなかったかのようにそこに佇んでいる。ヨナタンの言う通り、魚は戻ってきた。潮の流れが変わったのだ。
 男たちが死んだのか、人魚になったのか、海がいい場所だから帰ってこないのか分からない。ただ男たちは島に戻らない。それだけが真実だった。島の女たちは海に出ることを忌避している。私もそれに同調した。だからかつて女の仕事とされた釣りを子供たちには男の仕事だと教えるようになった。
 その日私は、秘密裏に本を燃やした。——全てだ。もう誰も、好奇心に駆られてしまわないように。語り継がれてきた英知は囲炉裏の灰となった。お前を含め子供たちには、男達は病で死んだと伝え、船は『棺』だと教えるようにしている。もう二度と、誰も船に乗らないように。



「それからのことはお前の知っての通りだ。私は身寄りのない幼子たちを家に集めて育てた。ヨナ、サラ、モアブ、エサウ、セム。皆私の愛しい子供たちだ。せめてこの子たちが大きくなるまで死ねないと思って生きてきた」
 長老は瞼を閉じ、深く息を吐いた。長い沈黙が僕たちの間に横たわった。
 長老がどれだけ苦労して僕たちを育ててきたか、僕は知っている。どれほど愛されていたかも。
 だけど、彼の心のうちを何も知らなかった。僕と同じ〈海にある〉心を持ち、同じ過ちを犯すかもしれない僕をどうすれば陸に引き留められるか、ずっと気を揉んできたのだ。
 長老は再び口を開いた。両の手を天へ向かって開き、まるで手のひらに落ちた雨粒を見るように。
「だが、もう十分なのかもしれない。お前たちは島の女たちに憎まれていると感じたことはないはずだ。腰までもないような背の子供だったヨナが、私の背を追い越そうというくらいだ。女たちも悲しみを乗り越え、お前たちに笑いかける。子を持てなかった私がこんなに多くの子を持ち、生かすことで生かされ、十分に生きた。……そう言い聞かせている」
 長老は僕の瞳を見つめた。これから大事なことを言うからよく聞くように、そう目で語り掛けられているようだった。
「惜しむらくは、私は全てを知ることのないまま死ぬ。——それだけが、本当に悔やまれる。これが私の本心だ。ヨナ、お前の考えは人を殺すかもしれない。私のように」
 自分の願いを優先すること。そのことで島の誰かの命が縮まるかもしれない。
——それでも。
「それでも、僕にとって僕自身の意思を殺すことの方が、耐え難いんです。僕が皆を生かしても、皆が僕を生かしてくれるかは分からない。——突然母がいなくなったように、誰かがいないと生きていけないと大変なんだ。
 なら、僕は僕を生かすことを第一に選びます。その上で誰かを助けたければそうします。皆も自分のために生きればいい。同じように、助けてくれる人がいたら嬉しい。
 いつか僕の過ちは長老と同じ道を辿り、後悔する日が来るかもしれない。……でも、来ないかもしれない。〈明日の海を僕は見ない〉。今、この時を生きるんだ」
 僕は手のひらを握りしめる。どこからか紛れ込んだ砂が、指の中で熱を帯びた。それは僕が僕を生きている証だった。
「僕は僕の目的を定めた。もう迷わない。振り返らない。僕は、海へ行く」
 口にした言葉は、体の内に留まっていた時よりもずっと決意を増した。
 僕は海へ行く。あの水平線の果てよりももっと遠く、深く、世界の秘密が眠る場所まで辿り着いてみせる。知りたいことを全部、知ってみせる。
 それが叶った暁には。またこの島に戻ってきて語り継ぐのも、悪くはないかなと思うのだ。
「……私は昨日、男手が足りなくなるから海へ行くなと言ったね。だが本当は人一人居ても居なくても、世界は回っていく。あと数年もすれば子供達は大きく育つ。完全に同じではなくとも、補うことはできる。そしてそれが普通になり、だからヨナ、お前が海へ向かうということは、帰る場所を失うということだ。次に戻る頃には居場所などなくなっている。それでもいいなら、お前はお前の道を行きなさい」
 僕がいなくても世界は回る。だから自分の好きにするといい。
 それは世界から突き放されるようで、でも背中を押されているようでもあって。
 僕は初めて、長老の心に触れているような気持ちになった。子の巣立ちを祝福する親心。父も母もいないけれど、背を押してくれる人がいる。
 サラも、長老も。僕の家族は僕の夢を応援してくれている。
 瞼を閉じて父と母の姿を思い浮かべる。まだ物心もつかないような昔の、最古の記憶。
 あれは鯨が獲れた最後の時なのだと思う。母の腕に抱かれながら、漁に出る前の賑やかな浜辺で、大声を上げる男たち。その中で一人、柔らかい笑みを浮かべる父の黒い瞳。太陽の光を浴びて温かく柔らかな母の髪。
 その後も一緒に居たはずなのに、思い出すのはいつもこの場面ばかり。この後はもう海へと向かう背中の記憶だけだ。
「僕は覚えていますよ。父のこと。働き盛りの男達の姿。……叶うなら、話してみたかった」
「母のことは……残念だった」
 母は幼子だった僕を残して島から消えた。何の痕跡も残さず、おそらく波間へ。
 父のいない世界に未練がなかったのか、或いは——。
「きっと、母も死んだんじゃなくて海へ行ったんだと思います。僕と同じように」
 父の行方を追って、海へ向かったんじゃないか。
 確信があった。
 僕が海へ行きたがるのは。母の背中を目で追っていたから。手足が追い付かずとも、視線だけはどこまでも共にあったから。
 母は飛び降りるようにではなく、両手を頭の上に上げ、まるで魚のように海へ飛び込んで行った。きっと、あの海原を魚のように泳いでいったに違いないのだ。
「僕は海へ行きます。人魚に会うために。まだ見ぬものを見るために。世界の秘密を、全部知りたい。——それこそが、僕の命に意味を与えるんだ。
 ——ううん、意味なんてなくったっていい。僕は、僕がそうしたいからそうする。それだけ」
 長老は最早何も言わず、ただ頷いた。
 同じ想いを抱いた二人。別々の道を選んだ二人。僕たちの道はここで別れる。けれど、それは悲しいことなんかじゃない。僕が、二人分の想いを抱えて、進んでいくから。
「……この岬の下に、船を保管した洞窟がある。私が旅をした、魯のついた船だ。子供のお前には大変かもしれないが、乗って行くといい。……大海を泳ぐことは体力を消耗する。人魚が泳げないお前を気付かぬうちに殺してしまうことがあるかもしれないからな。目的の場所に辿り着いたら捨てていきなさい。いずれ『棺』としてどこかの岸辺に流れ着くだろう」
 全てを話し終えた長老の背は、一回りも二回りも小さくなったように見えた。その分僕の体は大きくなったようだった。
 言葉の持つ力は強い。長老の想いを継いで、話に出てきた様々な人の想いを受け取って、この短時間で大人になったような気分だった。
 言葉がある限り、僕たちは語り継いでいける。誰かの物語を。誰かの想いを。自分の糧にして、成長していける。
「長老。ありがとう。僕は真実を探しに行きます。そしていつか、長老にその話をしにきます。だから——それまで生きていてください」
 長老は笑いながら僕の方を向いた。穏やかな笑みだった。
「ヨナ、まさか陸と海では時間の流れが異なるということを忘れてはいまいな? 老い先短い老人をあまり虐めてくれるな。……まぁ、なるべく長生きしよう。なるべくね」
 僕は立ち上がり、長老を見下ろした。大切な者たちを失い続けて小さくなったその体を、僕は愛しく思う。その小さな体で僕たちを育ててくれたことを、尊く思う。
 だけどもう、振り返らない。これでお別れだ。
「じゃあ、いってきます。長老。どうかお元気で」
「ああ、いってらっしゃい。ヨナ、どうか元気で」
 長老は海を見つめたまま、そう告げた。波の音に混じって、微かに鼻を啜るような音が聞こえた。
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