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2 令子さんの袋麺
2 令子さんの袋麺(4)
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「叔父さん、一応話しておくけど、一つ仕事の相談を受けたんだ」
翌日、開店前に料理の仕込みをしながら、叔父さんに石川月菜からの電話の内容を話して聞かせた。
まだなにも決まってないが、世話になっている叔父に内緒にしておくのは気持ちが悪い。
「へえ、そうか。よさそうな話じゃない。うまくいくといいな」
競馬新聞を見ながら叔父さんはのんびり言った。
「僕がいなくなっても大丈夫?」
「なに言ってんだよ。いままで一人でやってきたんだから、大丈夫に決まってるだろ」
そう笑いながら、僕が作った菜の花のからしあえをつまみ食いする。
「おいしい飯が食べられなくなって客は悲しむだろうけど」
「でもいますぐって話じゃないから」
「ふうん。まあ、とにかくこの店のことは心配無用だからね」
たこ飯にしらすのかきあげ、ふきの煮物。
今日のおすすめ料理の下ごしらえをしてから店を開ける。だが、すぐには客は来ない。
「袋麺は作ってみた?」
叔父さんがふきを箸でつまみながらたずねた。
「作ったけど茹で過ぎて失敗しました」
「へえ、そりゃ珍しいな。彼女が突然来たとか」
「なわけないでしょ」
袋麺は店にも置いてある。
「作ってあげましょうか、袋麺」
「卵は落としてね」
「了解です」
僕は叔父さんに粉末スープの素を差し出した。
「ちょっと舐めてみたらどうです。気になってるでしょ」
「まあね。そのために買ったようなもんだし。舐めてみた?」
「舐めましたけど、まあ……試してみてください」
叔父さんはてのひらに少しだけ粉末スープの素を出して、舌先で舐めた。
ふふ、と笑う。
「うんまあ、思った通りの粉末スープの素だ」
僕もまた舐めてみる。
「令子さんはこれ舐めると、父親のことを思い出すんだろうな」
「そうですね」
出来上がった袋麺を器に入れて、生卵を落とす。
「はいどうぞ」
「うまそー」
確かにおいしそうだ。
ずるずるっずるずるっ、と音をたてて麺をすすった叔父さんは、満足そうに顔をくしゃっとさせた。
「うまいなぁ。即席なのになんでこんなにうまいんだろ」
「不思議とたまに食べたくなりますよね」
「料理人の新でもそう思うんんだ? 邪道とか言いそうなのに」
「言いませんよ。むしろ好きです。冷凍食品とかも僕、好きですし。冷凍パスタは常備してありますよ」
「へえ、意外。おいしいんだ?」
「いまのはかなりおいしくなってます。それに安い。料理人としてはびびりますよ」
「へえ。じゃあ今度買ってみるか」
がらがらっと店の戸が開いて、令子さんが顔を覗かせた。
「あれ? 今日は金曜じゃないのにどうしたの」
驚く叔父さんと僕。
「金曜以外、来ちゃだめだった?」
「大歓迎だよ」
笑顔でカウンターに腰をおろした令子さんは鼻をすんすんさせた。
「娘は友達の家にお泊りで、母親も今日は帰りが遅いらしいの。だから、来ちゃった。この匂いってもしかして」
僕は残りの袋麺を令子さんに見せた。
「どれにします?」
翌日、開店前に料理の仕込みをしながら、叔父さんに石川月菜からの電話の内容を話して聞かせた。
まだなにも決まってないが、世話になっている叔父に内緒にしておくのは気持ちが悪い。
「へえ、そうか。よさそうな話じゃない。うまくいくといいな」
競馬新聞を見ながら叔父さんはのんびり言った。
「僕がいなくなっても大丈夫?」
「なに言ってんだよ。いままで一人でやってきたんだから、大丈夫に決まってるだろ」
そう笑いながら、僕が作った菜の花のからしあえをつまみ食いする。
「おいしい飯が食べられなくなって客は悲しむだろうけど」
「でもいますぐって話じゃないから」
「ふうん。まあ、とにかくこの店のことは心配無用だからね」
たこ飯にしらすのかきあげ、ふきの煮物。
今日のおすすめ料理の下ごしらえをしてから店を開ける。だが、すぐには客は来ない。
「袋麺は作ってみた?」
叔父さんがふきを箸でつまみながらたずねた。
「作ったけど茹で過ぎて失敗しました」
「へえ、そりゃ珍しいな。彼女が突然来たとか」
「なわけないでしょ」
袋麺は店にも置いてある。
「作ってあげましょうか、袋麺」
「卵は落としてね」
「了解です」
僕は叔父さんに粉末スープの素を差し出した。
「ちょっと舐めてみたらどうです。気になってるでしょ」
「まあね。そのために買ったようなもんだし。舐めてみた?」
「舐めましたけど、まあ……試してみてください」
叔父さんはてのひらに少しだけ粉末スープの素を出して、舌先で舐めた。
ふふ、と笑う。
「うんまあ、思った通りの粉末スープの素だ」
僕もまた舐めてみる。
「令子さんはこれ舐めると、父親のことを思い出すんだろうな」
「そうですね」
出来上がった袋麺を器に入れて、生卵を落とす。
「はいどうぞ」
「うまそー」
確かにおいしそうだ。
ずるずるっずるずるっ、と音をたてて麺をすすった叔父さんは、満足そうに顔をくしゃっとさせた。
「うまいなぁ。即席なのになんでこんなにうまいんだろ」
「不思議とたまに食べたくなりますよね」
「料理人の新でもそう思うんんだ? 邪道とか言いそうなのに」
「言いませんよ。むしろ好きです。冷凍食品とかも僕、好きですし。冷凍パスタは常備してありますよ」
「へえ、意外。おいしいんだ?」
「いまのはかなりおいしくなってます。それに安い。料理人としてはびびりますよ」
「へえ。じゃあ今度買ってみるか」
がらがらっと店の戸が開いて、令子さんが顔を覗かせた。
「あれ? 今日は金曜じゃないのにどうしたの」
驚く叔父さんと僕。
「金曜以外、来ちゃだめだった?」
「大歓迎だよ」
笑顔でカウンターに腰をおろした令子さんは鼻をすんすんさせた。
「娘は友達の家にお泊りで、母親も今日は帰りが遅いらしいの。だから、来ちゃった。この匂いってもしかして」
僕は残りの袋麺を令子さんに見せた。
「どれにします?」
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