リサシテイション

根田カンダ

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第20話 政権奪取へ

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 レオンと柴田は、スパイに仕立て上げられた自衛隊員の娘を奪還する為に、病院駐車場で待機していた。
 その2人に『アリサ』からのGOサインの前に、嶋から通信が入った。
 『アリサ』が政府側へ送った基地座標がダミーと気づかれた為だ。
 2人はすぐに行動に移った。

 レオンは1階で待機。柴田は階段を駆け上がり、政府側の監視員に接触。
 監視員の3名は自衛隊員と『アリサ』から報告を受けており、ナース姿の女性監視員が2名と、警備員が1名だった。
 柴田はナースセンターから見える位置に立ち止まり、自衛隊特殊作戦時のハンドサインを使った。
 自分の階級のサインと別にただ、ついて来い!と。


 自衛隊特殊作戦に使うハンドサイン。


[変わってねぇんだ…(笑)作戦毎に変えろよ!相変わらず上層部には危機感がねぇんだな。
 それに、見た事もねぇ奴に簡単について来るって…。訓練がてらの監視員か。ダメだな、こいつら。
 レオン、監視員引き剥がした。娘さんと奥さんを避難させてくれ。]

[了解!じゃ、秋葉原で待ってるわ!]


 元自衛隊レンジャーバッチ持ちの柴田。最終階級は1等陸尉。軍階級では大尉にあたる階級だった。
 《シマー》軍に、今は滅ぼされた亡国が占拠していた日本の孤島。その孤島奪還作戦により負傷した柴田。
 中隊長でありながら孤島に上陸し、部下を庇っての負傷だった。
 実際には致命傷を負い、嶋によってナノマシンの身体と、第二の人生を与えられていた。

 柴田は監視員達に背を向けたまま、エレベーター前を通り過ぎて階段へと向かった。
 上へと登る階段へ足をかけた時、警備員姿の監視員が柴田にたずねた。


「1尉!発言よろしいでしょうか?」


 柴田は足を止めず、背を向けたまま


「許す。なんだ?移動しながら話せ。」


 と答えた。隊長級が下級隊員に、いちいち足を止めたり向き直る必要はない。


「1尉はどちらの所属でありますか。」


 柴田は尚も足を止めず


「貴様は私を疑っておるか?まあいい。
『別班』だ。」


 自衛隊の情報収集スパイ部隊、カウンター・インテリジェンス・センター、CIS。
 その更に深く沈んだ闇に、隊員全員がレンジャーバッチを所有する『別班』が存在すると噂されていた。
 CISはアメリカCIAの様な情報収集部署で、『別班』は秘密工作員の様な、非合法活動も辞さない組織だ。


「実在してたんだ…」


 ナース姿の女性監視員が驚き、それでも声を抑えて呟いた。
 一般的な自衛隊員の監視員達に、一気に緊張が走った。


「では1尉!『別班』が動くと言う事は、クーデターの噂は…」


 監視員達は、小さな娘の監視任務に不自然さを感じていた。
 感じてはいたが、任務に疑問を持つ事は許されず、同時にクーデターの噂も出て来た頃で、詳細は知らされずただ、監視を続けていたのだった。


「貴様らが知る必要はない。ないが…クーデターは現実だ。
 だから私が来た。」

「では、監視対象の女の子は我々と同じ自衛官の…」
 
「死にたいなら、もっと詳しく教えてやる。」


 柴田の感情のない言い方に、監視員達は言葉を呑み込んだ。


[自衛隊もレベル落ちたな。いちいち作戦に質問許す様になったのか?
 まあ、俺は上官じゃねぇけどな。]


 柴田は呆れながら階段を登っていたが踊り場の窓から見える駐車場から、レオンが娘と母親を乗せ車を発進させたのを見て、監視員達に向き直った。


「貴様らの任務もここまでだ。」


 柴田は指のナノマシンから電撃を飛ばし、3人を失神させた。
 失神した3人を見下ろしながら、自身の身体の機能に感嘆していた。


「近距離ならティザーいらねぇもんな(笑)
 社長凄ぇな!」


 柴田は悠々と階段を降り、徒歩で病院を後にした。

 

 江戸川地下の嶋には、『アリサ』から通信が入った。


ーーー娘さんと奥様の救出成功しました。娘さんの治療も。
 娘さんと奥様は今、みなさんと同席しておられ、アリサ様がおもちゃを貸してあげて、一緒に遊んでおられます。ーーー

[良かった!ありがとう。]


 嶋はすぐにスパイを行なっていた隊員が軟禁されている部屋へと向かった。
 隊員の監視は、『元』自衛隊員と古田が行っていた。
 嶋は部屋へ入ると、椅子に座っていた隊員にスマホを渡し


「奥さんに電話して、今の状況を聞いて下さい。
 娘さんの体調も。」


 嶋の穏やかな物腰と笑顔に、娘と奥さんの無事を確信し、すぐに電話をした。


「もしもし、俺だ。ゆみは無事か?」


 隊員の娘は、『ゆみ』と言う名だった。
 隊員の妻が現状を伝えたのか、隊員はスマホを耳にあてたまま涙を流し始めた。


「良かった、良かった!ゆみ、ゆみと代わってくれ!
 ああ、ゆみ!パパだよ!苦しくないか?痛い所はないか?」


 涙を流しながらスマホに必死で声を向ける隊員に、嶋は美保子とアリサを捜していた自分に重なったのか、うっすらと涙を浮かべていた。


「良かった、良かった!パパはもう少し仕事があるから、また後でね!いい子にしてるんだよ?」


 隊員はそう言って通話を切り、流れた涙を拭きもせず立ち上がり嶋に敬礼をした。


「ありがとうございました!自分は…自分は自衛隊を離脱します!
 ですが、スパイを働いたのは事実!娘と妻が無事なら思い残す事はありません!
 どの様な処罰も、喜んで受け入れます!」


 嶋はひとつ頷き、古田や隊員達と共に司令室に向かった。
 司令室には入間と中村、高岡達もいた。
 防衛庁長官だった男とその腹心2人は、更に地下の檻房に入れられている。
 嶋はひとつ頷いて司令室を見渡して言葉を発した。


「俺が協力する条件に、彼の自由も保証してもらおうか。
 彼がここに残るも出て行くも自由。自衛隊は離脱するそうだ。」


 入間や高岡は難色を示した。入間達が彼を自由にしても、自衛隊や政府は必ず彼を追い、捕まえる。
 そうなった時に、江戸川の地下基地は政府の知る所になり、計画は破綻する。
 それを危惧するのは当然ではあるが、嶋は不機嫌さを隠しもせずに続けた。


「別にあんたらの意見聞いたのは、あんたらの顔立てただけだし!
 嫌なら俺も協力しねぇし、彼と一緒にここを出て行くだけだ。
 古田さんと…すみません、お名前まだでしたね?失礼致しました。」


 嶋は『彼』の名前をまだ聞いていなかった。『アリサ』との通信ですでに知ってはいたが、筋として『彼』自身から名乗ってもらう必要があったのだ。


「はっ!自分は指揮通信システム隊隷下ネットワーク運用隊麾下川中良太2等陸尉であります!
 元、ではありますが!」


 川中は、敬礼をして答えた。


「川中さん。もう隊員ではないんですから、敬礼は不要ですよ(笑)」

「はっ!申し訳御座いません!」


 それでも敬礼をした川中に、嶋は苦笑いした。
 苦笑いしながら、柴田も最初の頃はそうだったと思い出した。


「川中さん、陸尉なら柴田さん知ってますかね?」


 同じ陸上自衛隊ならばと思い嶋は聞いたが、だからと言って知っているとは限らない。


「元陸上自衛隊西普連中隊長柴田1等陸尉。レンジャー徽章所有者です。」

「あんたに聞いてねぇ!」


 入間の発言に、嶋は珍しく怒鳴り声を上げた。

 長崎佐世保に駐屯する西部方面普通科連隊。通称西普連。
 所属隊員600名以上の半数がレンジャーバッチの、自衛隊の中でも有数の精鋭部隊だ。


「はっ!お会いさせて頂いた事は御座いませんが、お噂は!
 孤島奪還作戦を自らは負傷されても、部下に死者を出さずに成功に導いた英雄であられます!」


 嶋より古田が嬉しそうな顔をした。


[柴田は俺の同僚で、社長の部下だ!]


 そう言いたそうな顔をしていた。


「貴方の娘さんと奥さんを救出したのが柴田さんですよ(笑)」


 川中は驚いた顔のまま、言葉が出せなくなってしまった。

 柴田の噂は聞いていた。中隊長でありながら、レンジャーバッチ持ちばかりの小隊のみを率いて、自ら先頭に立ち孤島へ上陸。
 要塞化され駐屯していた50名の敵兵士を制圧し、本隊到着までの4日間に渡り、敵国からの応援部隊を、自隊に死者を出さず退け続けた英雄。
 その英雄柴田が自身の娘と妻の救出に動いてくれた!
 その光栄が、川中から言葉を奪っていた。


「川中さんよう、柴田は今、俺の同僚で社長の部下だ。
 アンタも社長の部下になったらどうだ?
 ねぇ、社長!」


 嶋自身もそうしたいと思っていたが、決めるのは川中自身だし、ただ黙って笑顔でいた。


「大変光栄ではありますが…、一時でもスパイ行為を行なった自分は処罰を受けるべきであり、お言葉に甘える事は出来かねます!」


 一本気で生真面目な川中に、嶋は苦笑いするしかなかった。


「中村!スパイを発見したのは社長だ!
そこの隙間だか入間だかじゃなく、大臣や隊員らでもねぇ!じゃあスパイだった川中さんの処罰権限は、社長だな!
 テメェらが処罰するなら、今から俺はテメェらの敵だ!
 俺の敵に、社長が味方する事はねぇぞ!
 ね!社長?」


 嶋は黙って頷いた。


 嶋を味方に引き入れたいクーデター派に、意を唱える事は出来なかった。
 

「決まり!川中さんはウチらで預かるって事で!
 川中さん、ウチは堅苦しいのは禁止だからね!
 敬礼はなしで!」


 嶋は川中に笑顔で頷いた。頷いてすぐに『アリサ』に通信をした。


[『アリサ』川中さんの登録を。私達の仲間です。]

ーーーそう言われると思い、既に登録しております。ーーー


[ありがとう。こっちはこれから今後について話し合う。
 みなさんの作戦決行は、少し待っててもらえるかな?
 考えがあるんだ。]

ーーー畏まりました。みなさんに伝えておきます。ーーー


 嶋は通信を切り、司令室のテーブルについた。


「さあ、あんた達の本気を聞かせてもらおうか?
 何人の自衛隊員があんたらに賛同してるんだ?」


 基地の規模はスキャンによってほぼ把握は出来ていた。
 約700名程の人員がこの基地内にいたが、戦闘員となれば、150名程だろう。残りの500名以上は兵器整備士やシステム運用エンジニア達の、バックアップ非戦闘員達だった。
 武装に関してはこの地下基地以外にも、広島呉の海上自衛隊の護衛艦が5隻。それも、それぞれがレールガンを搭載した護衛艦だった。


[レールガン搭載艦まであるのは意外だったが…
 結局は物理破壊兵器。《シマー》軍には時間稼ぎにもならねぇな。]


 そう考えながら嶋は、入間達にさらに問いかけた。


「この基地程度の装備と人員で何をどうするんだ?
 戦闘員は200人もいねぇだろ?
 総勢数百万の敵に何が出来るんだ?アメリカ、ロシア、中国の大軍が、《シマー》の前では、何の役にも立たなかったのに。」


 「我々には…」


 入間がタブレットを持つ隊員に合図をすると、元自衛隊運用幕僚の1等陸佐が立ち上がった。
 陸佐はタブレットの画像を司令室のモニターに映し出し、基地の武装や人員、運用システムを説明をした。


「更に合流予定の海自護衛艦5隻には、小型化されたレールガンを1機ずつ装備しています。
 戦国時代の織田信長の三段撃ちに習い、5機のレールガンをフル稼働させ、ある程度の連射を可能としています。
 連射を点ではなく、広範囲の面へと攻撃し、軍勢の進行や連携を断ち、各個撃破を考えております。」

 
 古田は苦笑いして俯いた。


[こいつら、何もわかってねぇな(笑)]


 たった5機のレールガン。アニメやSFで無敵の兵器と思われているが、実際は超遠距離砲撃が可能なだけの兵器で、旧時代の戦艦の砲撃や大砲となんら変わりはない。
 そもそも大質量の砲弾を、火薬の代わりに電力を使って発射する為、1発の砲弾を発射するだけでも、大量の電力が必要だ。
 それを連射など、原子力発電でもしなければ不可能だ。
 海自の船舶に原子力船はない。ディーゼルの発電設備では不可能な消費量だった。
 敵重要施設への攻撃には適しているが、陸上兵士がメインの《シマー》軍には無駄に大掛かりな兵器だ。
 嶋は呆れる様に首をふって


「レールガンなんか、射程が長いだけの役立たずだよ。火薬の大砲となんら変わりはない。
 それに、この日本でどこを面砲撃する?
 山か?空き地か?(笑)わざわざ《シマー》がそんな所を進軍すると思うか?
 奴等は人類の殲滅を目指してるんだ。奴等が戦場に選ぶのは、人口密集地。
 一般人を巻き添えに、人口密集地にレールガン撃つ?
 撃てる訳がねぇ!馬鹿な事言ってんじゃねぇよ!
 そもそも物理兵器は奴等に効かねぇ。さっきの俺見てわかんだろ?」


 つい1時間程前、嶋は数発もの45口径弾を受けながら、何の傷も負う事はなかった。
 弾丸の破壊エネルギーだけでなく、弾丸そのものも、嶋のナノマシンが吸収してしまったからだ。
 小型と言っても、10キロ以上のレールガンの砲弾までをも吸収は出来ないであろうが、ナノマシンは破壊されても、バックアップされた兵士の頭脳とナノマシンがあれば、復活は容易い。
 日本を目指す《シマー》軍が、どれ程の予備ナノマシンがあるかはわからないが、早ければ数分、長くても数時間で再生してしまうだろう。
 足止めにすらならない。


「おっしゃる通りだと思います。ですが我々には、敵の全容情報が皆無です。
 敵上陸地点の予想は西日本の日本海側と予測し、敵部隊の進路を山間部へと誘導する作戦を、すでに現地陸上部隊は展開中です。
 敵軍に核すら効果が無かったのは、大陸での戦闘で承知しております。ですがある程度の時間稼ぎが可能とのデータがあり、最新兵器のレールガンでも可能ではないかと…」


 幕僚隊員は苦々しさを隠しもせず嶋の質問に答えた。
 戦闘やそれに伴う作戦立案や遂行に、一般人である嶋に口出しされたくはない様だった。
 嶋はそれを気にも留めず


「奴等は統制のある軍じゃない。それぞれが好き勝手暴れる暴徒みたいなもんだ。それに死ぬ事もない。
 自分の身体や命を守る必要がない奴等には、誘導作戦なんか効果ない。
 こっちが弾幕張ろうが、地雷原張ろうが、無視して突っ込んで来るよ。」


 そう言いながら嶋は、『アリサ』と接続したパソコンのキーを叩き、黄砂の進行予想を表示させた。


「奴等は黄砂に紛れてやってくる。」


 嶋は黄砂濃度や分布図を、時間毎、日毎に変化させて行く。


「黄砂が奴等のナノマシンだ。九州から東日本まで、広範囲に黄砂は届く。
 奴等は特定の場所で実体化する必要はなく、思い思いの場所で実体化するだろう。
 九州で実体化する奴もいれば、東京で実体化する奴もいる。
 日本の広範囲の地域で、散発的、多発的に虐殺が始まる。
 綿密で高度な作戦を練るほど、裏をかかれるよ。」


 入間や高岡だけでなく、幕僚隊員も何も言えなかった。


「肉体や命を持つ人間の兵士だと、裏をかかれなくても太刀打ちできねぇよ。
 奴等に対抗出来るのは、俺みたいなナノマシンの身体を持つモンだけだ。」

「では田中社長、我々もナノマシンになれば!」

「確かにあんたらは戦闘のプロかもしんねぇ。けど一般的な戦闘のプロだ。奴等の闘いを見たろ?
 奴等のやってるのは、ゲームの戦闘だ。武器にもゲームの設定が付加されてる。
 あんたらの戦闘常識は通用しねぇ。
 それに、あんたらがどれだけ本気かもわかんねぇのに、なんで俺のテクノロジー出さなきゃなんねぇんだ?」


 嶋のナノマシンを使えば、とりあえずは《シマー》軍と戦える兵士は誕生する。
 
 だが、その後は?

 終わりのない戦争が続き、もし戦争が終わったとしても、新しい政府は嶋のテクノロジーを独占しようとするだろう。
 それは避けたかった。


[不老不死は存在してはいけない!]


 嶋の考えが古田にも伝わった。


「社長、とりあえずは人類を、命ある者達を守る事。
 人間であれ、動物であれ、この地球上の生命すべてを。」


 嶋は古田に頷き、入間達に条件を出した。


「では今すぐに、政府に対してクーデターをしかけろ。
 それが出来ないならば、俺らは俺らで《シマー》を迎え撃つ。」

「それは…準備が…」

 
 高岡が狼狽しながら答えたが、嶋は冷たい視線を高岡にむけ


「あんた、3ヶ月もここにいたんだろ?準備してたんじゃねぇのか?
 それがなんで今更準備なんだ?」


 高岡だけでなく、入間も何も言えずにいた。


「《シマー》軍は数万の軍勢で上陸するぞ!それも1週間以内に!
 たった700人程でどう戦う?どう国民守るんだ?
 その国民も、《シマー》軍が迫ってる事すらしらねぇ!
 今すぐ力ずくで政府を掌握して、全国民にしらせろ!
 全自衛隊を掌握して、《シマー》迎撃軍を編成しろ!
 そうしねぇと、日本国民の半数以上が虐殺されるんだ!
 準備だのなんだの、アクビが出る様な事、言ってんじゃねぇよ!」


 嶋はテーブルを叩いて叫んだ。
 叫んだが、入間も高岡も何も言えなかった。


「社長、ダメだこいつら!うちらだけでヤリましょうや!」


 古田がイラつきを隠しもせずに言うと、それまで黙っていた入間が立ち上がり中村に指示を出した。


「中村、館内放送を!すぐに政府へ攻撃を仕掛ける!
 1時間で出撃態勢を整える様、指令を出せ!
 我々は日本を掌握する!
 大臣!反対するなら、貴方を拘束します!」


 中村がマイクへと動いた時


「待て!私がする!」


 高岡が叫んだ。


「入間くん、すまなかった。
 田中さん、申し訳ありませんでした。
 私は本気です!本気で日本国民、いや世界の命を守りたい!
 クーデターを計画したのも私だ。
 だから、私が命令を出します!」


 高岡はマイクの前へと歩き、スイッチを入れた。


「高岡だ。
 全憂国烈士に告ぐ!これより作戦行動に入る。
 目標は日本政府!国会議事堂!
 現政府を打倒、臨時政府を樹立し敵勢力の侵略に備える!
 日本国民の命と未来は、諸君にかかっておる!
 出撃は今より1時間後!直ちに準備にかかれ!」


 司令室にいた幹部隊員達も、作戦の構築を始めた。
 国会議事堂周辺10キロの地図を広げ、進軍ルートや議事堂制圧後の防衛線の構築、人員や部隊の編成等、慌ただしく会議を重ねていった。


 嶋はそれを見て『アリサ』に通信。


[『アリサ』こっちは1時間後に国会議事堂制圧に動く。
 そっちのみなさんと連動出来るか?
 ナノマシン武装で戦闘に参加してもらい、その映像をネットで世界に流し、日本とアメリカの野望を全世界に知ってもらう!
 同時に世界中のゲームユーザーに協力を呼びかける!
 議事堂制圧は簡単だろう。戦闘自体ははこっちの自衛隊とボディーガードのみなさんにお願いし、井上さん達と夏菜さん達には、全世界に呼びかけてもらう。]

ーーー畏まりました。そちらの映像をこちらでも流してましたので、みなさんも状況は理解されております。
 ボディーガードのみなさんにも、ゲーム内装備を選んでもらいます。
 政府側の人員の殺傷については?ーーー

[出来れば死なせたくはないが、こちらの自衛隊側にも死傷者は出るだろう…。
 甘い事は言ってられないが、極力死者を出さずに。 
 私も参戦するから、命を奪わないといけない時は、私がやる!
 それと、ローウェンはどうしてる?]

ーーー彼にも映像を流しており、マスターへの協力を申し出て来ました。
 妻子の仇を取りたいと。ーーー

[わかった。お前の判断に任せる。こっちの状況は、引き続きみなさんに流していてくれ。]

ーーー畏まりました。御武運を。ーーー


 嶋は『アリサ』との通信を切り、高岡と入間に向け


「私の本名は、嶋智彦だ。クレイモアとE-7に搭乗していた。
 私が最前線に立とう。私は不死身だ。」

「その更に前に、俺ですね!俺は社長と同じ不死身だし、社長のボディーガードだ(笑)
 中村、俺はもう死んでるんだよ(笑)」


 古田は笑いながら言ったが、中村は口を両手で押さえ絶句した。
 入間はただ、目を瞑っていた。


























 
 

















 








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