リサシテイション

根田カンダ

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第10話 致命的ミス

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 スナイプ、ケン、やっさんはシマー内の《コール・ザ・ショット》プライベートサロンで待機していた。

「影虎遅えなあ…何やってんだよ?」

 一番乗りしていたスナイプが不満気にボヤいた。

「千葉にサバゲーの体験行くっつってたから…でも、珍しいよね?」

 サロン入りは何時もはスナイプが一番乗りで、『影虎』である真一は2番手で入っていたし、ケンとやっさんがサロン入りして影虎がいなかったのは、今まで一度もなかった。

「サバゲーでバテちゃって、寝ちゃったとか?(笑)僕ログアウトして連絡してみようか?」

 先陣を切る影虎の次のポジションのケンが言ったが

「寝落ちしてるなら、起こすのも可哀想だ(笑)今日は3人でシュミレーションしよう。
 影虎が戦闘不能になったシュミレーションだな。」

 スナイプが言った直後

『ヒメカさんがログインされました。サロンへの入室を承認されますか?』

 《シマー》NPCが、スナイプ達に尋ねて来た。

「ヒメカさんて…、あのヒメカさん?たまに助っ人来てくれてた、あの?」

 ケンの顔が急に明るくなった。
 夏菜のメイドカフェの源氏名であり、秋葉原のアイドルのヒメカ。コスプレイベントでは、数百人の囲みを誇るヒメカ。高校生のケンには憧れの存在だった。

「他にいねえだろ(笑)」

「私の様なオジサンでも、彼女の様な素敵な女の子には、ときめきますね(笑)」

 スナイプもやっさんも嬉しそうだ。

「許可で。これからはヒメカさんの入室はずっと許可で!」

 ケンの言葉にNPCが一度頷くと、自動ドアからヒメカが入って来た。

 夏菜であるヒメカのアバターは、メキシコ系アメリカ人女性のアバターで、真一達のアバターに合わせて、アメリカ軍服を着ていた。

「こんにちわ!承認ありがとうございます!
 真一くん、影虎は急用出来て私が代わりに来ました!て言うか、ウチの社長が君達のスポンサーになりたいって、今真一くんと話してるんだけど(笑)」

 ヒメカがポーズを取って挨拶すると、スナイプ達は立ち上がって拍手をした。

「影虎いらねぇ!ヒメカちゃん来てくれるなら、影虎ずっといらねぇ!(笑)
 つか、ヒメカちゃんトコの社長さんて…田中学?あの?!
 コンピュータ工学博士でIT富豪の?!俺らのスポンサーに?」

 スナイプ達は全員で顔を見合わせ、その後まだポーズを決めたままのヒメカを見た。

「そう!その田中社長(笑)博士かどうかはわからないけど…(笑)
 少なくとも社長自身に博士の自覚はないし(笑)」

 ヒメカは目を横に挟む様なピースサインにポーズを変えた。

[アバダーだけど、いちいち可愛いな!]

 ケンはそう思いながら

「でも…影虎がどんな返事するか…
 今までスポンサーはみんな断って来てるしさ…」

 ケンは残念そうに俯いて言い、スナイプとやっさんは、黙ってケンを見ていた。


 
 影虎達のチームはずっとフリーでやって来ていた。
 自分達の好きな様に、自分達が出たい大会に。
 賞金だけで生活には困らなかったし、スポンサーが付いたが為にバランスが崩れて勝てなくなったチームも見て来た。
 スポンサーの意向で新メンバーを追加されたり、使い慣れたコントローラーが使えなくなったり、スポンサーが付く事で自由が効かなくなる事が嫌だったからだ。


[自由と言えば聞こえは良いが…]

 
 スナイプは考え込んだ。
 『自由』を理由にしていたが、チーム全員が同じく思って居たのは、やはり『他人』との付き合い、『大人』との付き合いが怖かったからだ。
 ケン以外は全員成人だったが、『社会』に生きる者達に後ろ指を刺され、それぞれと出会うまで、独りで耐えていた彼らには『スポンサー』と言う『社会』や『大人』に対しての恐怖があったのだった。


[でも、田中社長ならメリットはデカ過ぎる程デカい!]


 《シマー》内ではコントローラーは必要としないが、今まで影虎達が使ってたコントローラーが、難波のオフィスが作ったオーダーメイドのコントローラーだったからだ。

 難波のオフィスはNGD。
 NANBA GAME DEVICES。コントローラーやゲーム周辺機器の製造会社だった。
 すべてがオーダーメイドで、ゲーム種を問わずプレイヤーのプレイスタイルのデータや指や腕の長さ、手のひらのスパンにエイムのクセ等細かいデータを取り、レバーやボタンの材質、形状、バネの強さ、スイッチボタンの配置まで、0.何ミリ単位で調整して世界で1つ、オンリーワンのコントローラーを製作してる『工房』だった。
 その為に値段は張るが、世界のトッププレイヤー達もNGDのコントローラーを使っているくらいだった。


[それに、ヒメカちゃんもいる!ヒメカちゃんのチームも世界レベルだし、協力も出来る!]


 夏菜のオフィスは、女の子ばかりのゲームプレイヤー育成ジムも運営している。
 コスプレアイドルチームとして、芸能界で活躍しているメンバーも多い!


[アイドルと友達になれるかも!]


 思春期のケンは、怪我をして引きこもりになってからはアイドルにのめり込んだ時期もあり、ドンキホーテ上層のアイドル劇場に通った事もあった。

 やっさんは、50歳を越えるやっさんにはヒメカは娘の様だった。
 実の娘とは、もう何年もあってはいない。連絡すら取ってもらえてない。
 アイドルを夢見ていたやっさんの娘は、父親が日本中を騒がせた〝犯罪者”になってしまった事で、夢を諦めるしかなかった。


[憎んでるんだろうな…]


 娘が夢見てたアイドル。娘の代わりに応援したい気持ちがあるし、娘もゲームが好きだった。


[ヒメカちゃん達のチームの活躍を応援してるかもしれない。私がヒメカちゃん達のチームとコラボ出来たら…]


 自分の父親とわからなくても、応援してくれるかもしれない!
 そう思っていた。

 真一のチーム全員が嶋のスポンサードを受ける事での、現実世界への希望を抱いていた。
 

[でも…決めるのはリーダーの真一だ…]


 少し沈んでるメンバー達を見てヒメカは

「なんでみんな落ちてるの?」

 焼肉店での真一は嶋の申し出を受け入れていたし、真一達のチームが今までスポンサーを付けていなかった理由を知らないヒメカは、メンバー達の表情を理解出来なかった。

「嫌…なの?」

「嫌なもんか!嬉しいよ!でも…決めるのは影虎だし…」

「真一くん…影虎はもう受け入れてたよ?今話してるのは…話って言うより契約の話(笑)
 みんなの活動は今まで通りで、社長が提供するのは、みんなが必要なモノ。
 お金とか、海外遠征とかの援助とか。みなさん海外遠征してないでしょ?確かにネットゲームだから、遠征の必要はないけど、やっぱり現地に行っての交流は、メリット大きいよ?
 通訳やボディーガードも社長がつけてくれるし、賞金も全部みんなのモノ!」

「マジで!てか、ウチらのメリットしかないじゃん!田中社長、それでいいの?」

「いいの!(笑)私がそうじゃん?
 私は社長のオフィスのエンジニアでもあるけど、自由な活動させてもらってる(笑)
 心配はいらないから、コザショやろうよ!私《シマー》初めてだし!」

 スナイプ達は歓喜し、ヒメカを加えた4人はシュミレーションモードに入った。






 その頃真一は嶋のオフィスの地下、スーパーコンピューター『アリサ』のメインコンピューター室にあるカプセルの中に横たわっていた。
 嶋達と別れ、自宅前に着いた時にひき逃げにあった為だった。
 
 ひき逃げ犯は、嶋達のボディーガードが尾行してた男達だった。

 ボディーガード達は犯人達を追わず、真一の救助救命を優先した。
 
 犯人達の身元は『アリサ』が調べていたし、衛星をハッキングし追跡しているからだ。

 アメリカ資本の運送会社の非常勤日本人役員。
 国籍は日本だが、高校大学とアメリカに留学し、大学卒業から日本へ帰国するまでの経歴不明。
 バックパッカーとして、全米を巡ってた事になっているが…。
 『アリサ』の予測では、CIA工作員の確立99.99%。
 更に『アリサ』からの通信で


ーーー横須賀米軍基地、輸送機の離陸準備。工作員ピックアップ後、アメリカ本国への避難支援作戦と思われます。ーーー

 『アリサ』の通信は嶋を含め、ボディーガード達全員に届く。
 他のボディーガード達が工作員確保に動いていた。

 真一救助を優先したボディーガード達は、自分達のナノマシンを使い、出血部の止血と損傷した内臓の修復と脳の保護を行った後、真一の体温を23℃にまで下げ、身体の代謝を完全に停止させた。
 ボディーガード達は全身がナノマシンであり、真一の肉体との相性を考慮されていない。

[適合しないかもしれない…]

 それ故の応急処置の為、体温を下げ身体の代謝を停止させて仮死状態にする必要があったのだった。

「井上さんを『アリサ』のもとへお願いします。」

 嶋はボディーガード達に指示をし、『アリサ』による脳スキャンで人格と記憶の保存、ナノマシンによる負傷箇所の治療準備を進めた。

[井上さんをCIAが…タイミング的に美保子と?でもなぜ井上さんを?]

 嶋は混乱していた。
 美保子の指示と思われるが、なぜ今まで交流の無かった真一なのか?
 それ以上に、自分と関わった為に真一が襲われた…
 その罪悪感で混乱していた。

[絶対に死なせない!井上さんが希望するならナノシステムも使う!]

 

 事実真一はボディーガード達の救助が無ければ、ほぼ即死のダメージだった。



 真一がひき逃げにあった10分後、真一を連れたボディーガード達はオフィスに到着た。

 夏菜が玄関で3人を迎え、すぐに嶋の待つ地下へと向かう。
 嶋はすでに『アリサ』の構築したバーチャル世界にダイブしている。
 エレベーターに乗った時点で、真一の脳内と身体のスキャンを『アリサ』が実行するだろうからだ。

 バーチャル世界は秋葉原の街。だが存在するのは嶋だけだった。
 そこへ真一が現れた。

「あれ?田中社長?あれ?さっき別れたのに…あれ?夜だったのに、昼?
 誰もいないし…あれ?」

「井上さん、ここは《シマー》と同じバーチャル世界です(笑)
 私のオフィスのメインコンピュータが創り出しました。
 まわりくどいのは苦手なんで、単刀直入に話します。
 井上さんは現実世界でひき逃げにあい、生死の境にいます。
 覚えてますか?」

 嶋は慎重に、それでも事実をそのままに伝えた。

「えっ?ひき逃げに…?
マンションの前で、急に車のライトが…生死の境?えっ?」

 真一は混乱していた。

「うちのボディーガード達がいなければ、即死だったかも知れません…。
 本来ならば警察を呼んで救急車で病院へですが、それではおそらく助からなかった。
 だから私の判断でここへ運び、勝手に脳と身体をスキャンし、人格と記憶を保存しました。
 勝手な事をして申し訳ありません。」

 そう言って嶋は深々と頭を下げたが、真一はまだ混乱したままだった。

「信じられませんよね?現にあなたは今ここに無傷でここにいる。
 でもそれはバーチャル世界にあなたがいるからで、現実ではありません。
 現実のあなたは、応急処置がされ低体温処置がされ、身体の代謝を停止させた仮死状態でベッドの上に横たわってます。
 見てみますか?」

 真一は言葉もなく、小刻みに何回も頷いた。

「『アリサ』見せてあげて下さい。」

 すくにバーチャル世界の秋葉原駅前広場に、カプセル内に横たわる真一が現れた。
 周りには飯塚やボディーガード達もいた。
 カプセルの中の真一に外傷らしい傷はみあたらないが、確かに衣類が破け夥しい出血の跡があった。

「き…傷は…傷はないけど…」

 真一は顔をこわばらせ言葉に詰まった。

「私の開発した生体ナノマシンで、応急処置が施されましたが、そのナノマシンはボディーガード達の身体を構成していたマシンです。
 彼等は全身がナノマシンで構成されており、構成も解除も彼等の判断で可能で、自らの意思で自身のマシンを使って応急処置をしました。
 今、井上さんのDNAに合わせたナノマシン構築を『アリサ』、私のメインCPUが計算していますが、もう完了するでしょう。」

「ナノマシンて…」

 生体ナノマシンは、嶋だけのテクノロジー。
 ナノマシンのテクノロジーは既にあったが、実質的にはナノサイズではなく、微生物サイズの物でしかない上に、実用されているのは精々が洗剤の香りカプセルや、医療でも研究がなされているが、いまだマウスでの実験段階でしかない。
 それも薬の成分を患部に確実に届ける為のカプセルで、『マシン』と呼べる代物ではない。
 薬剤ではなく細胞として働く生体ナノマシンは、完全なオーバーテクノロジーだ。

「身体を構成するナノマシンて…SFの世界でしょ?現実にあるなんて…」

「《シマー》もSFの世界だったけど、現実に登場しました。生体ナノマシンも現実に存在します。
 私だけのテクノロジーですが…それよりも、あなたの選択です。」

「僕の?」

 《シマー》を経験していた真一は少し理解が出来き、落ち着きを取り戻して来ていた。

「はい。話せば長くなりますが、井上さんが狙われたのは、恐らく私のせいです。私と関わってしまったから。
 そのお詫びは後程。今はあなたの選択です。生きるか死ぬか…
 私にはあなたの命を助ける義務がありますが、それはあなたの意思を尊重した上でです。
 それより低体温保存の仮死状態も、長く続ければ危険です!
 あなたが生きたいか、それともこのまま眠りにつくか…」

「僕は…生きたいです!今までは生きてる意味なんかわからなかった!
 小さい頃からイジメられ、大人になっても気持ち悪いとか、変態だとか言われて…
 でも、でも…それがゲームでも仲間が出来た!《シマー》が出来た!
 それから…それから!憧れてた田中社長と知り合えた!ヒメカちゃんとも仲良くなれた!
 もしかしたら僕の人生は、これからなのかもしれない!
 だから、だから生きたいです!」

 嶋は微笑んで一度頷き

「『アリサ』お願いします。」

 真一はカプセルの中の自分を凝視したが…
 カプセル内に少しモヤがかかっただけで…

「終わりました。井上さんの怪我の修復完了です。」

「えっ?」

 何が起こるか期待していた真一。

「終わり…?えっ?もっと光がピカーッ!とか、凄い音がするとか、風がぶわ~っ!とか…」

「ありません(笑)モヤはかかりましたが、それはナノマシンが大量に噴出されたからだけです(笑)
 ボディーガード達のナノマシンが離脱したと同時に、井上さんのDNA情報をインストールされた、井上さん専用の生体ナノマシンが即座に損傷部位の修復定着に入りました。
 ナノマシンは目には見えませんが、全身でないにしても、修復に数兆のナノマシンが必要だったでしょう。さすがにその数だと、モヤがかかった様に見えましたけど(笑)
 もう大丈夫です。拒絶反応も起こりません。すぐに動けますが…洋服が破れたままですね…
 『アリサ』洋服の修復も。」

 カプセル内の真一は眠ったままだったが、破れたチノパンや上着の血のシミが消えて行き、破れた個所も生き物の様に動き修復されて行った。

 真一はただ驚いた様な顔で見ているだけだった。

「さあ、現実世界へ戻りましょう。」

 嶋は生を選んだ真一に感謝していた。少しの罪悪感はやはりまだあるしそれは当然だが、自分と知り合えた事を喜んでくれていた事に特に感謝していた。

「『アリサ』私達を戻して下さい。」

 真一はまた演出を期待したが、何か起こるかもしれない時間もなく、瞬間的に目の前にカプセルの透明なキャノピーが現れた。

「???」

 あまりにも瞬間的過ぎて、一瞬理解が出来なかったが、カプセルのキャノピーが開き、笑顔の嶋が手を差し伸べて来た事で我に帰った。

「何か起きると、期待してた様な顔ですね(笑)」

「いや、あの…はい!期待してました…(笑)
 光の中を、ぶわ~っ!とか(笑)」

「正直ですね(笑)SFなら起こるんでしょうけど、現実はこんなモノです(笑)
 派手な演出はありません(笑)」

「ですね…(笑)」

[でも凄い経験だ!今日1日で僕は、100年先のテクノロジーを経験した!
 てか、田中社長!僕なんかが憧れちゃ、ダメなんじゃないか?]

 そう思いながら真一は、嶋の手を取り立ち上がってカプセルから出た。
 周りを見渡すと、秋葉原のヒーローだらけ!
 飯塚に塩田に難波。CPUやゲーム、ネット業界でトップを走る人物ばかり。
 さらに見た事もない装置。
 
 大きめの冷蔵庫程のガラスケースの中の、CPUの様な回路やケーブル繋がれた装置。

「あれが『アリサ』のメインとなる量子コンピューターです。」

「量子コンピューター!初めて見た!てか、日本にあったんだってより…実用されてるって…」

 量子コンピューターが実用されているのは、『アリサ』が世界唯一だ。
 世界的にはまだまだ実験段階であり、大きさもかなりの小型のスケール。

「ニュースて見たのは、もっともっと大きかった!こんなサイズで…」

 量子コンピューターは超高温になる為、真空状態ではなく、完璧な真空で超低温環境でないと回路が瞬時に焼き切れてしまう。
 真空を実現する超強化ガラス内で密封し、更に宇宙空間と同等の極限低温で無ければ運用は不可能だった。

 その強度や超低温を維持する為に、小型化が不可能に近いと言われてる。

 その小型化された量子コンピューターが、目の前ある!

 真一は興奮していた。

「このサイズでも、『富岳』どころか『昇陽』をも凌駕しています。
 まあ『昇陽』の実質開発者は社長ですけどね(笑)」

 飯塚の言葉に

「『昇陽』って、運用されてから世界一から一度も落ちてないですよね!
 それに『昇陽』の超超LSIの開発も、社長ですよね!凄え、凄えっ!
 てか僕、本当に何ともないや!本当に死にかけてたの?えぇぇぇーっ!」

 脈絡をキープ出来ない程、真一は興奮していた。

「それと事後報告なんですが、井上さんのスキャンをした時に…
 井上さん、コザショの約束あった事を『アリサ』から報され…
 待たせても悪いと思い、夏菜さんに代わりに行ってもらいました。
 申し訳ありません。」

[そう言えば、ヒメカちゃんがいない。]

「あっ!《シマー》でのアバダーのコントロールが…ヒメカちゃん、大丈夫ですか?」

 真一は夏菜の心配をしたが

「彼女なら大丈夫です。たまにボディーガードのみなさんとサバゲー行ってたみたいですから(笑)」

 嶋がボディーガード達を笑顔て見て言うと、ボディーガード達は苦笑いして目を逸らした。



 それから嶋達は真一をオフィスに案内し、夏菜にした同じ話をした。
 嶋やボディーガード達と同じく、体内にオーバーテクノロジーを抱える事になった真一には話す必要があったし、それ以上に嶋と関わった事によって『命を落とした』真一には話す義務があったからだ。

「僕の脳…パンクしそうです…凄いテクノロジーだけじゃなくて…社長やボディーガードさん達が、生体的には死んでるって…それに社長の奥さんや娘さんも…」

 ただ嶋は、美保子が真一を狙った可能性がある事は黙っていたし、信じたくはなかった。

 その、美保子とアリサを愛する『人としての愛情』と真一への罪悪感が、嶋に致命的な犯させてしまっていた。
 嶋はその事に気付いていない。


 真一を助けるべきではなかったのだった。















 





 

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