上 下
25 / 77

24 ラマータでの最終日にあれこれやって過ごします 2

しおりを挟む
「そろそろ昼だな。どこかで飯を食おう。ポピィ、何が食べたい?」
「な、何でもいいです」
「ん、あのな、それ、俺に気を使っているつもりかもしれないが、逆だからな。俺があれこれ考えなくていいように、食べたい物をズバッと言ってくれた方が楽なんだぞ」
「あ、す、すみません、そんなつもりは……ええっと、それじゃあ、お、お肉、お肉が食べたいです」
「よし、じゃあ肉を食いに行こう」

 で、結局俺が選んだのは、公園の屋台だった。だって、この街の店なんて全く知らないのだから、仕方ないだろう。屋台は結構美味いし、安いからな。

「あああ、おいしいですぅ!」
 ほら、ポピィもすごく喜んでいる。下手に緊張して店で食べるよりこっちが正解なんだ。

 数種類の肉串とジョッキにいっぱいのシノン(野生のオレンジ)のジュースを前に、ポピィは幸せいっぱいの顔で微笑んでいた。
「うん、うまいな。遠慮せず食えよ」
「はいっ! こんなにお肉を食べたのは、生まれて初めてです」
(……)
 あ、うん、泣いてないぞ……肉の油がはねて目に入っただけだからな。

「んん……腹いっぱいだ。結構食ったな、ポピィも……」
「えへへ……もう一生食べなくていいかもです」
 ポピィは、ぽっこり膨れた小さなお腹をさすりながら、恥ずかしそうに笑った。いや、肉くらい毎日でも食べさせてやるから……。

「よし、じゃあ少し腹ごなしをするか?」
「は、はい……ええっと、どこへ?」
「まず、お前の冒険者登録をして、初級ダンジョンに潜ってみよう」
 俺の提案に、ポピィは一瞬緊張が顔をよぎったが、すぐに力強く頷いた。
「はいっ、お供します」

 まあ、昨日の今日だから当然トラウマはあるだろう。でも、俺はあえて彼女をダンジョンに連れて行くことを昨晩から決めていた。トラウマは真正面から向き合ってしか克服できないからな。しょせん他人事だが……。

『マスター、ポピィさんは《木漏れ日亭》で雇ってもらうので、冒険者になる必要はないのでは?』

(うん、そうなんだけどな。雇ってもらえるかどうか、確定じゃないし、もし雇ってもらえなかったら、冒険者で稼ぐのが手っ取り早いだろう? まあ、心配するな。ポピィが自力で生きていけるくらいには鍛えてやるつもりだ)

『……マスター、もう彼女のステータス見ちゃってますよね?』

((ドキッ)……いや、ほら、たまたまさ、治療の結果を見るために……はい、見ました)

 そうなんだよ。見てしまったんだよ、昨日、ダンジョンの中で……。動揺を隠すのに必死だったよ。だってさ、ポピィのギフトがすごいんだよ。見てみる?

***

【名前】 ポピィ  Lv 7
【種族】 人間とノームのハーフ   
【性別】 ♀        
【年齢】 12        

【体力】 132  【物理力】65
【魔力】 96   【知力】 102
【敏捷性】155  【器用さ】115
【運】  77
【ギフト】暗殺者        
【称号】 

【スキル】            
〈強化系〉身体強化Rnk2 跳躍Rnk2
〈攻撃系〉投擲Rnk3
〈その他〉魔力察知Rnk2 隠蔽Rnk2

***

 《暗殺者》だよ、暗殺者、アサシンだよ、あはは……笑うしかないね。しかも結構スキル持ってるし。これって、普通に《ギガントロック》の三人より強かったんじゃね? まあ、確かに力が弱いから、まともに戦えば勝てないだろうけど。
 俺だったら、たぶん、奴らが油断した隙に殺(や)っちゃっていたかもしれない。
 あ、それと、ポピィは俺より年上でした。お姉さんです、はい。

 ちなみに、今の俺のステータスはこうなっている。

***
【名前】 トーマ  Lv 19
【種族】 人族(転生)   
【性別】 ♂        
【年齢】 11        

【体力】 332  【物理力】150
【魔力】 305  【知力】 386
【敏捷性】305  【器用さ】355
【運】  124
【ギフト】ナビゲーションシステム         
【称号】 異世界異能者    

【スキル】            
〈強化系〉身体強化Rnk6 跳躍Rnk5
〈攻撃系〉打撃Rnk3 刺突Rnk5 棒術Rnk2
〈防御系〉物理耐性Rnk3 精神耐性Rnk5 索敵Rnk5
〈その他〉鑑定Rnk5 調合Rnk2 テイムRnk1

***

 半年前よりレベルが6上がり、新たに〈棒術〉と〈テイム〉のスキルを覚えた。棒術はメイスを武器にしていたからだろう。テイムは、まあ当然神獣スノウのお陰かな。テイムした覚えはないんだけどね。


♢♢♢

 ポピィの冒険者登録は何事も無く済んだ。ちょうど、冒険者が一番少ない昼時を選んだのが良かったな。
ギルドを出た俺たちは、受付の人から聞いた近くの武器屋に来ていた。ポピィの武器と、金が足りるなら簡単な防具を買ってやるためである。

「らっしゃい……なんだ、子どもか? 何の用だ?」
 店の奥から出てきたいかつい筋肉のオヤジが、ぶっきらぼうに言った。

「ああ、当然武器を買いに来たんだが、もういいや。帰るぞ、ポピィ」
「っ! ちょ、ちょっと待て」
 オヤジは慌てて呼び止めたが、俺は入口の所で振り返って言ってやった。
「子どもは迷惑なんだろう? だったら、子どもにも喜んで武器を売ってくれる、貧しい武器屋を探すさ」

「ぐぬっ……言っておくがな、うちより良い武器を売っている店など、この街には無いぞ」
「へえ、じゃあパルトスの街に帰ってから買うからいいよ。腕のいい武器屋の知り合いがいるからね」
「何、パルトスだって? そ、その腕のいい知り合いって、だ、誰だ?」
「ロッグスさんだけど、あんたには関係な……」
「やっぱり、そうか……」
 武器屋のオヤジはそうつぶやくと、いきなり俺たちの前に土下座した。

(えええっ? な、何? どうした?)

「すまねえ、この通りだ。師匠の知り合いに失礼な態度を取ったとあっちゃあ、この腕をへし折ってお詫びするしかねえ。どうか、許してくれ」

(うわあ、めんどくせえ。だったら最初からちゃんと応対しろよ)

「ええっと、あの、もういいから、どうか立ってくれ。ロッグスさんのお弟子さんなの?」
「おお、許してくれるか、ありがてえ。おうよ、俺はロッグス師匠の一番弟子のラングだ。お詫びに目いっぱいサービスさせてもらうぜ。どうか、見ていってくれ」

 そこまで言われたら仕方がない。俺は、棚に並んだ武器を見ていった。
「ポピィ、これがいい。ちょっと握って見てくれ」
 俺はすぐに一本のダガーナイフを取り上げて、ポピィに手渡した。当然、鑑定のスキルは使ったよ。

 ポピィには少し大きいかなとも思ったが、受け取った彼女は、軽々とそれを扱った。
「すごくいいです。えっと、こちら側の先っぽがギザギザになっているのは……」

「おう、兄ちゃん、さすがに良い物を選んだな。嬢ちゃん、それはな、ロープとかを切ることもできるし、突きさして引くことで傷がより深くなるんだ。黒鉄を混ぜてあるから丈夫さは保証するぜ」

「なるほど……で、でも、きっと高いんでしょうね?」

「ああ、まともな売値は一万二千ベルだ。だが、お詫びのしるしに五千に負けとくぜ」

 うん、五千なら十分にお買い得だ。だけど、もう少し頑張ってもらおうか。
「この革の胸当てと、籠手、ベルトをつけて、六千ベルでどうだ?」

「うぐっ……かああっ、足元見やがってえぇ! ああ、しようがねえ、その値段で売ってやるよ」

(よしっ、勝ったな)
『何の勝負をしてるんですか……(ためいき)』

 さっそくポピィに防具を装着させ、微調整をしてもらう。
「ありがとう。今度、またこの街に来たときは装備を買わせてもらうよ」
「ああ、またな。師匠に〝ラングは元気にやっている〟と伝えてくれ」
「分かった。必ず伝える」
 俺たちは、ラングのオヤジに手を振って別れを告げ、ダンジョンに向かった。
しおりを挟む
感想 43

あなたにおすすめの小説

全能で楽しく公爵家!!

山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。 未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう! 転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。 スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。 ※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。 ※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

加護とスキルでチートな異世界生活

どど
ファンタジー
高校1年生の新崎 玲緒(にいざき れお)が学校からの帰宅中にトラックに跳ねられる!? 目を覚ますと真っ白い世界にいた! そこにやってきた神様に転生か消滅するかの2択に迫られ転生する! そんな玲緒のチートな異世界生活が始まる 初めての作品なので誤字脱字、ストーリーぐだぐだが多々あると思いますが気に入って頂けると幸いです ノベルバ様にも公開しております。 ※キャラの名前や街の名前は基本的に私が思いついたやつなので特に意味はありません

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

目覚めたら地下室!?~転生少女の夢の先~

そらのあお
ファンタジー
夢半ばに死んでしまった少女が異世界に転生して、様々な困難を乗り越えて行く物語。 *小説を読もう!にも掲載中

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

処理中です...