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13 ギルドの仕事を頑張ろう

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 翌日から、俺は冒険者ギルドに通い、依頼ボードから適当なものを選んで精力的に仕事をこなしていった。と言っても、まだ冒険者ランクが最低のFランクだったので、大した依頼はない。主に常設である薬草採取と素材集めが中心だ。

「おはようございます、バークさん」
 朝早くは、ギルドが混雑する時間帯だ。三つある受付のうち、二つの若い受付嬢の所には長蛇の列ができていたが、残りの一つ、初老の男性の受付には四、五人しか並んでいなかった。どこの世界も若い女性に人気で対抗するのは厳しい。
 俺は毎回、この真面目で大人しい初老の男性の所で受付をしてもらっていた。

「おお、トーマ君、おはよう」
「すみません、ちょっとお尋ねしますが、掲示板に〈ゴブリン退治〉の依頼が貼ってありますが、あれって、俺でも受けられますか?」
「ああ、受けられるよ。ランクの指定がないものは、どのランクでも大丈夫だ。〈ゴブリン退治〉はおそらく常設になるんじゃないかな。最近、数が増えたんだよ」
「なるほど。じゃあ、ちょっと薬草採取に行くついでに、ゴブリンがいたら退治してきます」
「ああ、気をつけてな」
「はい。行ってきます」
 俺はバークさんに手を振ってギルドを後にした。そして、依頼書に書かれていた南の森に向かった。

 この南の森は、危険度ランクで言えばCランクだ。つまり、生息する魔物はCランク以下のオーク、ランドウルフ、ゴブリン、スライム等だ。ただし。オークは単体ならCランクだが、三体以上になるとBランク以上になる。同様に、ゴブリンも単体ならDランクだが、集団になるとCランク以上になる。また、稀に変異種と呼ばれる個体が出現することがあり、これはどんな魔物であってもBランク以上の指定になる。

 俺は南の森の手前で、薬草を取りながら、少しずつ森の近くへ移動していた。多くの冒険者たちが、パーティを組んで森の中へと消えていく。

『マスター、森の奥から何かが近づいてきます』
(ああ、俺も察知した。複数だな)

 俺はメイスを構えて、戦闘態勢に入った。

「た、助けてくれええ~っ」
「いやあああっ」
 森の中から走り出てきたのは、若い男女四人組のパーティだった。そのうちの一人の男は足を怪我しているのか、もう一人の男に支えられて足を引きずりながら逃げている。

 彼らの後ろから、けたたましい声と木々をへし折る音が聞こえてきた。現れたのはゴブリンの群れだった。当然、四人組パーティを追いかけてきたのかと思ったが、ひどく慌てた様子で後ろを振り返りながら、四人組には目もくれず追い越していく。
 それもそのはずだ。ゴブリンたちを追って出てきたのは五匹のオークの集団だった。

「おいっ、お前たち、こっちだ」
 森の中からまた別の三人組パーティが飛び出してきて、リーダーらしき男が逃げている四人組に叫んだ。他にも近くにいた冒険者たちが集まって来た。

「すまん、ここにいる者たちでゴブリンの討伐をお願いする。俺たちはCランクパーティ《虹の翼》だ。俺たちでオークを止める」

「おう、分かった」
「任せろっ」
 近くの冒険者たちが返事をして、さっそくゴブリンの群れの討伐を始めた。

『マスター、我々も』
(ああ、先ずはゴブリンを片付けよう)

 俺はメイスを手に、乱闘が始まった場所へ走っていった。

 ゴブリンの群れは十三匹で、大した武器も持っていなかった。それに対して、冒険者たちは六人、どうやら二組のパーティのようで、まだランクも高くないのだろう、ゴブリンの群れに囲まれてかなり苦戦していた。

 「とおっ、そりゃっ、てええいっ……」
 俺は、危険な状況だった男一人、女二人のパーティの方から加勢した。初めて実戦で使う黒鉄のメイスだったが、実に使い勝手が良かった。ゴブリンごときは一撃で倒すことができる。

「な……す、すげえな」
「すごい……あっという間に倒しちゃった」
 六匹のゴブリンを瞬殺した後、そんな賞賛の声を背に、今度はもう一組のパーティの方へ駆けていく。
 だが、こちらはかなり戦い慣れたパーティのようで、俺が手助けする必要もなさそうだ。

「ぐああっ、くそったれ……」
 ゴブリンは片付きそうなので、もう一方のオークの集団とCランクパーティの戦いに目を向けた。
(ああ、やばいな。盾役の人がやられたみたいだ。よし、助けに行くか)

「助勢しますっ」
 俺は、盾役の人に襲い掛かっている斧を持ったオークに突進しながら叫んだ。

「ああ、助かるっ……って、えっ? 子供?」
 リーダーの盾役の若者は、凹んだ盾でオークの攻撃を防ぎながら驚きの声を上げた。

 彼の目の前で、横合いから突っ込んできた小さな少年は、オークの腕を黒いメイスで殴りつけると、返しの動作でオークの喉にメイスを突き刺していた。
 グギャアァッ……。
 オークは大量の血を流しながらよろよろと後退し、そのままばたりと後ろに倒れ込んだ。

 残りのオークは二匹だ。そのうちの一匹は魔法で顔を焼かれたのか、顔半分が焼けただれ、片目がつぶれ、後方で戦況を見守っていた。もう一匹は剣と盾を持った男と戦っており、男の後ろに弓を持った女性と魔法使いと思われるローブを着た女性がいた。

 俺は、後方にいるオークに狙いをつけて近づいていった。
 
 プギイイィッ! 
 顔を焼かれたオークがけたたましい声を上げて、全身を真っ赤に紅潮させた。

『マスター、あれは〈憤怒〉のスキルです。戦闘力が一時的に上がります。ご注意を』
(了解!)

「君、ありがとう、助かったよ。俺はルードだ」
 盾役の人が俺を追いかけてきて礼を言った。
「トーマと言います。間に合ってよかったです」

「ああ、危ない所だった。ところで、トーマ、君ずいぶん若いが、すごい腕前だな」
「いいえ、まだまだです。それより、来ますよ、注意してください」
「ああ、俺が奴の攻撃を防ぐ。隙を狙って攻撃してくれ」

 そう言うとルードさんは前に出てカイトシールドとロングソードを構えた。

 スキルを発動し終えたオークは、まるで全身から湯気を出しそうなほど真っ赤になって、荒い息を吐きながら近づいて来た。

(あれって、まともに攻撃を受けたらやばいんじゃないか?)

『はい。ルードという人の防御力よりオークの攻撃力の方が上です。受け流す技術があれば何とかなりそうですが……』

「ルードさん、奴はスキルで力が上昇している。まともに受けずに、かわす感じで……」
「なるほど。分かった」

 オークが太い棍棒を振り上げてルードさんに襲い掛かって来た。
「くっ……なんて力だ、くそっ」

 ルードさんは盾を斜めにして、こん棒が当たった瞬間体を入れ替えながら、上手く受け流したように見えたが、圧力でそのまま後ろの方へ三メートルほど転がった。
 オークはそのまま、ルードさんを追撃しようとした。

「ていっ!」
 プギャアァッ!
 俺は背後から、オークの右膝の裏を思い切りメイスで殴りつけた。

「とりゃっ!」
 思わず片膝を地面についたオークの首の後ろに、槍の先を突き刺す。
 ウギャアァッ!
 急所を突かれたオークは、よろよろと立ち上がろうとしたが、そのままばたりと前に倒れた。

 もう一匹のオークも、剣士さん、弓士さん、魔法使いさんが三人がかりの末、傷だらけのハリネズミのような姿で倒れていた。
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