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第二章

馬庭の天狗 2

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よし、今日の稽古はここまでだ」
 幅八間、奥行き一六間の堂々たる道場に、太鼓の音が響き渡る。そして、稽古を終えた門下生たちの賑やかな声が後に続く。
「では、先生、また明日よろしくお願いします」
「先生、失礼いたします」
「ああ、また明日な」
 弟子たちが次々に帰りの挨拶に訪れ、門の方へ去って行く。それを見送る先生と呼ばれる男はまだ二十代半ばの若者である。彼はいかにも実直そうな表情と姿勢で神棚の方を向き、両手をついて頭を下げた。そして立ち上がると、道場の雨戸を閉め始める。

と、そこへ、裏庭の方から撫子の花を一輪口にくわえた、まだ前髪を上げて間もない十六七の少年が母屋の方へ行くのが見えた。
「おい、新三郎┅┅また稽古をほったらかして女遊びか?」
「ああ、これは兄上、本日もお仕事お疲れ様です」
「人ごとみたいに言いおって┅┅お前も樋口の男なのだぞ、少しは剣の稽古をだな┅┅」

 長兄のいつもの説教が始まると見るや、弟は片手を挙げて兄を制した。
「ああ、大丈夫です。わたしは天狗の生まれ変わり、稽古などしなくても剣では誰にも負けません。それは兄上もご存じではありませんか。ふふ┅┅それに、樋口の種を欲しがっている娘たちが、いやあ多すぎて大変ですよ。これも、樋口の家が栄えるための大切な役目ですからね」
「ぬうう、馬鹿者おぉっ!そのようにあちこちに種をばらまいたら、後でどんな騒動になるか分からんのかっ!」

 長兄の剣幕に、さすがの放蕩者の弟も恐れをなして母屋へ逃げ去る。
「こらっ、待てえぇっ!」
「父上えぇ、助けて下さい、兄上があぁ┅┅」
 弟が逃げ込む先は、いつも父のいる場所だった。
「このろくでなしがあぁっ、今日という今日はもう許さぬっ」
「ひいいっ、父上えぇ」

「あはは┅┅また何かやらかしたのか?しようもない奴じゃ」
 馬庭念流二代目樋口頼次は、三男新三郎定光が可愛くて仕方がないように頭を撫でながら笑った。
「父上、そやつをこちらへ。腐った性根を叩き直してやります」
「まあまあ、そのくらいにしてやれ」
「父上がそうやって甘やかすから、このろくでなしはいつまで経っても遊び惚けてばかりいるのです。いつか、樋口の家名に泥を塗ることをしでかすに違いござらぬっ」
「ううむ┅┅定久はああ言っておるが、どうなのじゃ、新三郎?」

 定光はいかにもしおらしい様子で正座し、兄に向かって頭を下げた。
「兄上、お許し下さい。これからは、心を入れ替えて稽古に精進いたします」
「先日もその言葉は聞いたぞ┅┅稽古をしたのは三日だけだったな」
「だって┅┅相手になる者がいなくてつまらないんですよ。兄上たちは教えるのに忙しくて、相手をしてくれないし┅┅」
「ほお、そうか┅┅では、明日からお前には特別な修行をしてもらおう」
「えっ?特別な修行┅┅何ですか、それは?」
「まあ、楽しみにしておれ┅┅では、明日な。必ず道場に来るのだぞ」
 定久はそう言うと自分の部屋へ去って行った。
「んん┅┅何か嫌な予感がするな┅┅」
「あはは┅┅頑張るのだぞ、新三郎┅┅頑張ったら、褒美に何でも好きなものを買ってやるからな」
「わあ、やったぁ┅┅頑張りますよ、父上」

 無邪気に歓声を上げた後、自分の部屋に向かいながら、定光はにやりとほくそ笑んだ。
(ふん、今どき真面目に剣術なんかやって何になるというんだ。早くまとまった金を貯めて江戸に出て行くぞ┅┅江戸にはいい女がたくさんいるだろうなあ┅┅楽しみだなあ┅┅)
 苦労知らずの放蕩息子はこの後訪れる厳しい運命の裁きを知らず、甘い夢想の中にこの夜も浸っていった。

 一方その頃、馬庭村に着いたダリルと副島は、樋口道場を訪ねるのは明日にしようということで、一夜の宿を探すために村の中を歩いていた。だが、なぜか村人たちはよそよそしく、厄介者を見るような目で二人を見ながらそそくさと家の中に入り、固く戸を閉じてしまうのだった。

「ふむ┅┅これはいったいどういう現象でしょうか?」
「まあ、考えられることは二つだな┅┅一つは俺たちが怪しい人間だと思われたということだ。だが、それならこうも一斉に同じ反応が返ってくるのもおかしい。誰か一人くらいは話を聞いてくれてもよさそうなものだ┅┅となると、もう一つの推論になるが┅┅」
 ダリルはそう言うと、辺りを見回していたが、村はずれにある大きな建物を指さして尋ねた。
「あれは村長の家か?」
「ああ、いいえ、たぶん寺でしょう。行ってみますか?」

 二人は椎の大木が枝を広げた先にある建物を目指して歩き出す。副島が予想した通り、そこはかなり大きな寺で、門には曹洞宗多胡(おおご)寺という看板が掛けられていた。二人は広い境内を歩いて本堂の裏手にある僧坊へ向かった。
「お頼み申す。旅の者二名、一夜の宿をお願いしたい。どなたかおいでか?」
 副島は僧坊の戸口の前で声を掛けた。やがて、中から足音が聞こえ、戸口が開いてまだ十歳ばかりの小僧が顔を出した。
「どうぞお入り下さい」
「かたじけない。では失礼いたす」

 二人は中に入り、小僧の案内で土間を通り炊事場の奧の上がり口から囲炉裏のある部屋へ入っていった。そこには四十半ばほどの僧侶が立って二人を迎えた。
「ようこそおいでなさいました。拙僧はこの寺の住職の永尊と申します」
「それがしは肥前藩士で長崎奉行所通師の副島計馬です」
「それがしはダリル・バスケスともします」
「おお、これは遠くからおいでですね。ささ、どうぞお座り下さい」

 二人は囲炉裏の前に腰を下ろした。
「お二方は旅の途中でございますか?この地にはいかなる御用向きで?」
「はい、剣術修行の旅です。ここには有名な馬庭念流の道場があると聞き、教えを請うために参った次第です」
「やはり、そうでしたか┅┅いや、よく修行のお侍様がおいでになるんですよ」
 僧侶はそう言うと、まだ何か言いたげな様子で囲炉裏に木の枝を差し込んだ。

「わるいさむらいきたか?┅┅んん┅┅むかし┅┅」
 ダリルの片言の問いに、永尊は驚いたような表情で彼を見た。
「はい、そうです┅┅樋口様の道場の盛名が近隣に広まるようになると、あちこちから入門者が押し寄せてきて┅┅最初の内は村の者たちも道場に米や野菜を大量に買い上げてもらうようになったので喜んでいました。ところが、数年前から、門下生を奪われたという道場の者たちや、嫌がらせに来る浪人などが増えてきて、村で暴れたり、娘たちを襲ったりすることが度重なり、今ではよそから来た人をひどく嫌うようになったのです」
「なるほど┅┅ダリルさんが言ったもう一つの理由とはそういうことでしたか┅┅もう一つ、つかぬ事を尋ねるが┅┅」
「はい、何でございますか?」
 副島は来る途中で農夫が言っていた天狗のことを永尊に尋ねた。

「ああ、そのことでございますか┅┅あはは┅┅実はもともとこの辺りには天狗の伝説がございまして、榛名山や妙義山には天狗が住んでいると言い伝えられております。そして、馬庭念流の初代定次様は、天狗から剣の奥義を教わったのだというまことしやかな話まで生まれております。それで、いつの頃からか今の御当主頼次様を大天狗、ご子息の定久様を小天狗と呼ぶようになったというわけでございますよ」
「なるほど、そういうことか┅┅」
「さて、何もお構いできませんが、夕餉をともにいただきましょう」
 永尊はそう言うと、炊事場の方へ降りていった。

「何とか一夜の宿は確保できたな」
「ダリルさんのおかげです。寺に泊まるという発想はありませんでした」
「そうか?ヨーロッパでは、教会に泊めてもらうのは普通のことだぞ。ただし、お布施を払わないといけないけれどな」
「そうだ┅┅後で少し宿代を奮発して、例の少年のことを訊いてみますか?ええっと、名前は何でしたっけ┅┅」
「確か、シンザブロウじゃなかったか?」
「おお、そうそう、新三郎でしたね」

 二人がそんな話をしていると、永尊と弟子の小僧がお膳やおひつ、汁が入った掛け鍋などを運んで来た。当然、酒も魚もなく、質素な精進料理だったが、できたての山盛りの飯と野菜の味噌汁、そして青菜の煮浸しは臓腑に染み渡るうまさだった。
「後で、近所の家に酒をもらいに行かせましょう。魚は残念ながらございませんが、味噌を朴葉に包んで囲炉裏で焼くと、良い酒の肴になるらしいです。朴葉は裏の林にありますので、作ってみましょう」
「いやあ、そこまでご親切にしていただくと、申し訳ない気持ちになります┅┅それで、少し御坊にご相談ですが┅┅」

 副島はそう言うと、懐から銀貨を二枚取り出して永尊の前に置いた。
「こ、これは?」
「宿代です」
「いや、これは受け取れません。そのようなつもりでお泊めしたのでは┅┅」
「ええ、分かっております。ですから、この村のある人物について、お話をして頂くということで、それを含めた謝礼というわけです」
「ある人物┅┅?」
「はい、実は┅┅」
 副島はそこで高崎城下で出会った少女のことを話して聞かせた。

 永尊とお膳を片付けてきた小僧は、じっとその話に聞き入っていたが、いつしか永尊は物憂げな表情になり、小僧は怒ったような表情で拳を握りしめていた。
「なるほど┅┅そうでしたか┅┅困ったものです」
 
 話を聞き終えると、永尊はため息をついてこう語り始めた。
「樋口家は代々この馬庭を領地として治めてきた郷士で、村人たちからすれば絶対的な存在です。以前はかなり酷いやり方で治めていた時期もあったと聞いております。ですが、徳川様の御世になってその権力も無くなり、特に先代の定次様はお優しくて村人に慕われておられました。ただ、定次様の弟で現在の当主頼次様は、村のことには無頓着なお方で、もっぱら定次様が創始された馬庭念流を広めることに腐心されてこられました。おかげで、馬庭念流は年々門下や道場が増え、その収益は莫大な額になっていると噂で聞いております。

 頼次様には男子のお子が三人おられます。長男の定久様は師範として後進の指導に当たられており実直なお方です。次男定勝様は前橋の道場主として家を出ておられますが、剣の腕は兄上を凌ぐという評判です。そして、三男がお話に出てきた新三郎定光様です。この方と姉の柚香様が妾腹のお子で、頼次様は目に入れても痛くないほど溺愛されております。
 そのためか、新三郎様はまだ元服する前から、村でわがまま勝手な振る舞いをなさっておられ┅┅特に、娘たちを手当たり次第に手籠めにされて┅┅拙僧が知るだけでも片手に余るほどの娘が被害に遭っております┅┅ですが、不思議なのは新三郎様はなぜか娘たちに嫌われず、むしろ慕う者が多いということです。村の者からすれば、娘を傷物にされてもそれを役人に訴えることなど恐ろしくてできるものではありません┅┅そのような訳で、いまだに新三郎様は好き勝手な振る舞いをなさっておられるということです┅┅」

「わ、わたしの姉もあいつに┅┅」
「これ、永秀、あいつなどと言ってはならぬ」
「はい┅┅でも┅┅でも┅┅」

 副島はオランダ語に通訳しながら、ダリルはその通訳を聞きながら、何度も拳を握ってうなり声を上げていた。
「胸くそ悪い話だ┅┅だが、よくある話でもある┅┅」
 ダリルは鼻息を荒くしてつぶやいた。
「ううむ┅┅こいつは参りましたね┅┅お玉に何と言えば良いか┅┅」
「ああ┅┅だが、オタマのためにも本当のことを言うしかないだろう」
「信じるでしょうか?┅┅」
 副島の問いに、ダリルはうなり声を上げて考え込んでしまう。
「御坊、よく話して下された。この金は仏様へのお布施でもある、どうか収めてくれ。それと一つ頼みがあるのだが┅┅」
「はい、拙僧にできることでございましたら、何なりと┅┅」

 その夜、ダリルと副島は囲炉裏の側に寝ころんで一夜を明かした。そして夜が明ける前に寺を出て、樋口道場へは行かず、高崎の城下へと急いで引き返していった。

「あーあ┅┅特別な修行というから何かと思ったら、水汲みだなんて┅┅しかも水瓶がいっぱいになるまでだと?いったい何回往復すればいいと思ってるんだ、兄上は┅┅」
 天秤棒に水桶をつけたものを肩に担いで、樋口新三郎はぶつぶつ言いながら村の共同井戸へ下っていった。井戸端には三人の村の女たちが、食器や野菜を洗いながらおしゃべりをしていたが、新三郎が歩いてくるのを見るとそそくさと洗い物を片づけて去って行こうとした。
「おおい、待てよ」
 新三郎は女たちを呼び止めると、天秤棒を担いで近づいていった。

「これに水を入れてくれないか?」
 女たちは顔を見合わせて迷っていたが、御館の坊ちゃんの頼みは断れなかった。仕方なく三人で交代しながら、二つの水桶に井戸の水を汲み上げて入れ始めた。新三郎はその横で鼻歌を口ずさみながら楽しげに眺めている。やがて、水桶がいっぱいになり、女たちはちょこんと頭を下げて去って行こうとした。
「ああ、ねえ、ついでにこれをあの坂の上まで運んでよ」
 女たちは仕方なく、これも交代しながら天秤棒を担いで坂の上まで運んでいった。
「やあ、ありがとう、助かったよ┅┅きれいなお姉さんたち」
 
こんな調子で、新三郎は井戸端に誰かいたら手伝わせながら、何とかあと二回で水瓶がいっぱいになるとこまでこぎつけた。
「ああ、もう疲れた┅┅夕方まだに終わらせればいいんだ、一休みしよう」
 そう言うと、新三郎は井戸の横に天秤棒を置き、傍らの椎の木の根方に座って目をつぶった。

「ん?」
 ふと側に近づいてくる足音に気づき、目を開いて見ると、目の前に近くの寺の小僧が手に何か持って立っている。
「何だ小僧か┅┅何か用か?」
 小僧は黙って手に持っていた言伝の紙切れを差し出した。
「ん、手紙?誰から預かった?」
 小僧は怒ったような顔で首を振り、そのまま走り去っていった。
「何だ、変な奴┅┅一体誰からだ?」
 新三郎は二つ折りになった紙を開いて中を見た。
「ええっと、〝申の刻に地蔵堂の裏でお待ちしています〟┅┅?名前が書いてないが、女だよな┅┅お志乃かな┅┅いや、おまさかも┅┅申の刻か、あと一刻半ほどかな┅┅よし、水汲みをやってしまうか┅┅」
 新三郎は手紙を懐にしまうと立ち上がった。
 
一方その頃、樋口道場では廻国の修行者という二人連れが、道場の片隅で稽古を見ていた。
 独特な長いかけ声と、頭に座布団を乗せたような防具も初めてだが、極めつけは、右足を大きく前に踏み出して前掛かりに体重を乗せ、竹刀を横に倒して揺らしながら構える馬庭念流独特の構えだった。

「あんな不自由な構えなのに、なかなか素早い動きをしますね」
「うむ┅┅俺のやり方に似ているかもな┅┅」
 ダリルの言葉に、副島はあっと小さな声を上げた。ダリルはよく腰を落として今からジャンプするぞというような構えを見せるが、それは一瞬のうちに加速して打ち込むためのものだ。馬庭念流の独特の構えも、打ち込んできた相手に対して、一瞬早く飛び込むための構えなのだと気づいたのである。

「ああ、そうか┅┅確かにあのまま前後に体重を移動させるだけで打ち込めるから、早いことは早いですね」
「ああ、だが、横の動きに対してはどうなんだろうな┅┅」
 二人がオランダ語で会話しながら見物しているのを、大勢の門弟たちも気になる様子でちらちら見ていた。

 太鼓が二回打ち鳴らされ、門弟たちが挨拶をして両側の壁際の方へ分かれていく。
「ようし、では掛かり稽古を行う。が、その前に、今日は新当流館林道場から津川殿と成瀬殿がお見えだ。それと、廻国の剣術修行をされている副島殿とバスケス殿もお見えになっておる。この機会に、他流の剣術を見るのはまたとない勉強になると思う。そこで、これからお二人ずつ立って頂き、当道場の師範代、松倉、本間、坂口、田所と一本勝負の試合をしてもらう。しっかり見て学ぶように。では、まず津川殿、副島殿、お願いいたす」
 定久の言葉に門弟たちは興奮したようにざわつき始める。

 副島と新当流の津川という三十半ばくらいの逞しいからだつきの武士が、竹刀を手に道場の中央に並んで立った。
「どうぞ、防具を着けて下さい」
 師範代の若者が防具無しで前に出てくるのを見て、副島が声を掛けた。若者はむっとした表情でそのまま副島の前に立った。
「けっこうでござる」
 副島がやれやれといった表情で苦笑するのを、ダリルは思わず吹き出しそうになって見ている。

「では、始めいっ!」
 太鼓の音とともに、あの独特の長いかけ声が道場に響き渡る。
 副島の相手の本間という若者は、新影流の正眼に似た構えから、ゆっくり右回りに移動しながら前後に体を揺らし、竹刀も小刻みに揺らしている。対して、副島はゆったりと正眼に構え、少しずつ相手との間合いを詰めていく。

「とおおぉぉす」
 本間がかけ声を掛けながら踏み込む動きを見せた。しかし副島はそれが誘いの手だと見抜いている。惑うことなく、正眼のままじりじりと間合いを詰めていく。
「てやっ、てえええぇぇい」
 かけ声から一呼吸遅らせて、ついに本間は副島の籠手を狙って打ち込んできた。ダリルが指摘したように、確かにスピードがあり、間合いさえきちんとつかんでいれば副島の体に竹刀が触れたかもしれない。だが、副島はわずかに体を右に開いてその打ち込みを外すと、かなりゆっくりした動作で本間の頭頂部に竹刀を振り下ろしていた。
 本間はその衝撃に思わず前のめりになり、床に両手をついて這いつくばった。それを見ていた門弟たちは声を失い、ぽかんと口を開いたまま固まってしまった。隣では、まだ激しい竹刀の音が続いていたが、副島は軽く頭を下げるとダリルの側に戻ってきた。

「わざと面を狙ったな?」
「ええ、人の忠告には素直に従うものです」
 ダリルはこらえきれずに声を殺して笑い、それを遠くから見ていた門弟たちは、自分たちが馬鹿にされたように感じた。
「先生、あいつらに思い知らせてやって下さい。このままでは┅┅」
「控えよ┅┅かの御仁は相当な遣い手だ┅┅もう一人の異国の剣士がどの程度の腕前か確かめねばならぬ┅┅」
 近くに来て耳打ちした門弟の一人に、定久はそう言ってたしなめつつも、自分が出なければ収まりがつかないだろうと感じていた。

 新当流の津川と門弟の松倉の試合は、なかなか決着がつかなかったが、津川の面と松倉の胴がほぼ相打ちになったところで定久は太鼓を打ち鳴らした。
「次、成瀬殿、バスケス殿、お願いいたす」

 ダリルは待ってましたとばかりに勢いよく立ち上がって、道場の中央に歩いて行く。そして、その場で膝の屈伸をし、肩をぐるぐると回して準備運動を始めた。それを見た門弟たちはくすくすと笑いだし、定久からたしなめられる。
「では、始めいっ!」
「おねがいします」
 ダリルは日本語でそう言うと、丁寧に頭を下げた。
「お、お願いします」
 相手の田所という門弟は戸惑ったように頭をちょこんと下げた。

 ダリルはいつものように腰を落として、片手で竹刀の先をぐるぐる回しながらゆっくりと間合いを詰めていく。対して田所は声を上げながら、本間と同じように右前に竹刀を構え、体を前後に揺らしながら、飛び込むタイミングを計っている。

「ヒョオオォォ」
 不意にダリルがかけ声とともに突進していく。それに対して田所は、例の左足を大きく後ろへ引き、前掛かりになって迎え撃つ体勢を取った。
 ところが、ダリルは間合いに入る寸前でいきなり右に飛んだのである。今まさに前に踏み出そうとしていた田所は、体勢を立て直すことが出来ず、慌てて体をひねろうとした所を左胴に突きを入れられて床に横転した。

「ありがとござました」
 ダリルは頭を下げると副島の横へ戻ってきた。
「実験成功ですか?」
「うむ┅┅あの弟子ではまだ何とも言えんな。出来ればあの師匠とやってみたい」

 定久はじっとダリルと副島の方を見つめていた。と、おおっというどよめきが起こり、もう一つの試合の方が決着を迎えていた。坂口という門弟が、成瀬の籠手に見事な一撃を決めて勝利したのである。太鼓が打ち鳴らされ、模範試合が終了した。

「今の試合を見て、それぞれ思うところが多々あったであろう。これを糧にさらに精進して稽古にはげむように。では、掛かり稽古を始めいっ!」
 定久の言葉に門下生たちは一斉に応と返事をして頭を下げる。そして、先ほど試合をした師範代たちが前に立って門弟たちが我先に走り寄っていき、掛かり稽古が始まった。

「そろそろ頃合いですかね」
「うむ、そうだな」
 ダリルと副島は立ち上がって定久のもとへ歩み寄った。
「良い稽古をさせて頂きました。我らはこれで失礼させて頂きます」
「これはお早いお発ちですな。後ほどそれがしも一手ご教授願おうと思うておりましたが┅┅もはや、当流に見るべきものは無いと見極められましたかな?」

「ああ、いや、決してそのようなことではござらぬ。少しばかり野暮用がございましてな。これから人に会わねばならぬのです」
 副島たちは、門弟たちを軽くあしらって打ち負かしたことで、定久が面目をつぶされたと感じているらしいことを悟った。そんな遺恨を残すことは避けたかったが、お玉のことでこれから地蔵堂まで行かねばならない。
「そうですか、それは残念です。では、お気をつけて」
 定久はそう言って軽く頭を下げると、視線を道場の方へ戻した。二人はもう一度頭を下げると道場を出て行った。

「ちょっとやり過ぎたか?」
 道場を出てすぐ、ダリルが小さな声でそう言った。
「そうですね┅┅しかもこの上新三郎を懲らしめれば、ますます怒らせてしまうでしょうね」
「ふむ┅┅だが、それはそれ、これはこれだ。やらねばならぬことはやる」
 ダリルは日本語でそう言った。
「ええ、そうですね。早く済ませて、江戸へ向かいましょう」
二人は足早に村はずれの多胡寺へ向かった。すでに陽は西に傾き、申の刻まであと半刻ほどになっていた。

「ふう、やれやれ、やっと終わったぞ┅┅さあて、汗を拭いて地蔵堂へ行くか┅┅」
 新三郎は天秤棒を放り投げると、手拭いを持って井戸へ向かった。道場の稽古が終わるまで後一刻ほどある。それまでに逢い引きを済ませて帰れば良い。少年はそう考えながらにやにやと頬を緩ませるのだった。

「お玉、よいな、ここに隠れておるのだ。何があっても出てきてはならぬぞ」
 お玉は新三郎の本心を聞かせてやると言われて、初めは嫌がったものの、父親やダリルたちに説得されてしぶしぶ承諾し、昼過ぎに寺に連れてこられた。しばらく待つように言われ、小僧の永秀と本堂や境内の片隅で遊んでいたが、帰ってきた副島とダリルに地蔵堂の中に連れて行かれた。そこにはもう一人、十五六の村の娘もいた。
「あんた、時々この村さ来てるベ┅┅新三郎と一緒のとこ見たことあるさね。あんたも新三郎に騙されたんだべ┅┅可哀想になあ、まだこんな小せえのに┅┅」
 村娘の言葉に、お玉はいたたまれない気持ちになったが、ここにいろと言われていたので仕方なく我慢して座り込んだ。

「名前はお玉ちゃんて言うんだべ?その様子だと、まだあの男のこと信じてるようだね?あたいが今から化けん皮ひんむいてやるから、ようぐ見ておくんだよ」
 そう言われても、お玉は素直に礼を言う気にはなれなかった。なんだか皆でよってたかって新三郎をいじめているように思えてならなかった。別に新三郎が他の娘と仲良くしたり、騙したりしていても自分には関係ないと思った。自分といるときの新三郎は優しくて強い理想の兄のような存在だった。それでいいではないか。お玉は心の中でそう叫びながら、じっと膝を抱えてうつむいていた。

「来たぞ┅┅おひさ、出て参れ」
 お堂の脇から副島の小さな声が聞こえてきた。村娘は立ち上がってお堂の中から外へ出て行った。
「やあ┅┅君かい?この手紙をくれたのは┅┅」
「うん」
「そうかそうか┅┅ええっと┅┅ごめん、名前何だったかな?」
「おひさ┅┅」
「ああ、そうそう、おひさちゃんだ┅┅あはは┅┅それで、どうしたの?」

 外では新三郎とおひさの声が聞こえていた。お玉は、新三郎の顔が見たくてそっとお堂の格子窓から外を覗いた。
 恥ずかしそうにもじもじしているおひさの側に歩み寄りながら、新三郎はお玉が初めて見るような下卑た笑みを浮かべていた。
「何だい?寂しくなったのかな?」
 おひさはうつむき加減で小さく頷く。
「ふふふ┅┅いいんだよ┅┅じゃあ、抱いてやるから、お堂の中に入りなよ┅┅」
「あん┅┅その前に、この前の約束、もう一回嘘じゃないって言って下さいな」
「約束?」
「もう忘れたんですか?江戸に一緒に連れて行くって┅┅そして夫婦になるって┅┅」
「ああ、そうそう、そうだったね┅┅うん、もちろん連れて行くよ」
「誰にでもそんなこと言ってるんでしょう?例えば┅┅そう、お玉ちゃんとか┅┅」

「お玉?┅┅誰だい、それは?」
「ほら、高崎から時々来てるじゃないですか?まだ、小さいけど色白の可愛い子┅┅」
「ああ、あのガキか┅┅あはは┅┅暇つぶしに遊んでやっているだけさ┅┅まあ、ちょっと可愛い顔しているから、少し体を撫でてやったらすっかり懐いてしまってな。でも、まだあと二三年しないと抱けないからな┅┅その前に俺は江戸に行くつもりだ」

 新三郎がそこまで言った時、お堂の裏から天狗の面を被った二人の男が音も無く現れた。
「わっ、な、何だお前たちは?」
「我らは妙義山に住む天狗だ。娘をおもちゃにして泣かせている悪い男を退治しに来た」
「ふざけるなっ!何が天狗だ、面を取って名乗れ。俺は樋口新三郎定光だ」
「ああ、知っておる。多くの娘たちをその名で脅して手籠めにしているのであろう?」
「違うっ、娘たちの方から抱いてくれと頼んでくるんだ、なあ、そうだろう、おさき?」
「ええ、最初はあたいもそうだった┅┅他の子も最初は遊び気分さね┅┅お屋敷の若様が優しい声を掛けてくるんだから、世間知らずの娘っこはそりゃあ騙されるべ。でもね、若様、中には本気になっちまう娘っこもいるんですよ┅┅もし、そんな子のお腹に赤ん坊ができたら、どうなさるおつもりです?」
「そ、それは、お前たちが望んだことだ、俺の知ったことではない」
「つまり、責任は取らないってことだべ?」
「う、うるさいっ、だったら最初から色目など使って近づくなっ!」

 お堂の中から外の様子を見ていたお玉はがっくりとうなだれて座り込んだ。新三郎のやっていることは何となくわかったし、無責任な所もわかった。だが、それは娘たちの自業自得だとも思った。一番ショックだったのは、新三郎がお玉のことを思い出せず、ただの子供扱いしたことだった。

「やはり、このまま放っておくにはいかんな。この先、まだ娘たちを泣かせるつもりなら、ここでお前の一物を切り取ってしまおうぞ」
「何だって?ふ、ふざけるなっ!天狗様をかたる痴れ者め、本当の天狗の子、樋口新三郎定光がその首切り落としてやる」
 新三郎はそう言うと、腰に差した二尺七寸の太刀を抜いた。このとき、その様子を境内の楓の木の陰から見ている人物がいた。新三郎の兄定光だった。定光は、副島とダリルが道場を出て行った後、こっそり後をつけていたのである。二人の門弟たちも同行していた。

「先生、行きましょう」
「いや、待て┅┅もう少し様子を見よう┅┅」
 定久は天狗の面を被った二人が、副島とダリルだと分かっていた。だが、なぜその二人が弟の女癖の悪さを知り、顔を隠して弟を懲らしめようとしているのか、分からなかった。
(┅┅あの二人なら、よもや新三郎を斬ることはあるまい。あの天狗の鼻をへし折って、女遊びをやめさせてくれるなら、願っても無いことだ)
 定久は心の中でそうつぶやいた。

「さあ、来い、ニセ天狗どもっ!」
 威勢の良い小天狗を前に、ダリルと副島はいささか予想が外れて戸惑っていた。予想では少し脅してやれば、おびえて言うことを聞くだろうと思っていたのである。
「さて、どうしますか?」
「俺の計画ミスだ┅┅俺が相手をする」
「殺してはダメですよ」
「ああ、分かっている」
 二人はオランダ語で素早く会話すると、副島がおひさを伴って地蔵堂の中へ入り、ダリルはロングソードを抜いて新三郎の前に立った。

「なんだ、二人がかりでもいいんだぞ」
「シンザブロウよわい。それがしひとりでじゅうぶん」
「何いっ、この赤毛の猿め┅┅」
 新三郎は体を前後に揺らしながら、刀を右に倒し上下に揺らす。

「とおおおっ」
 大きく長いかけ声を上げてから、一拍子遅れて一気に踏み込んできた。しかし、それが誘いの手であることは、先ほど副島が道場で教えてくれた。恐らく軽く面を入れるふりをして相手が受ければ、素早く切り返して腕を切り落とすつもりだろう。だから、ダリルはあえて相手の太刀を受けた。

 果たして、予想通り新三郎は軽く剣を一合すると、素早く手首を回して切り返し、ダリルの右籠手を狙ってきた。初めての相手なら見事に決まっていたであろうほどの、鋭い太刀さばきだった。
「あっ┅┅」
 キインという高い金属音が響き、見守っていた全員が息を飲んだ。新三郎は地面に落ちた剣を見つめて茫然としていた。何が起こったのか、すぐには理解できなかった。

「たて、シンザブロウ┅┅」
 ダリルはそう言うと、落ちた剣を拾って新三郎に差し出した。
「もういちどやるか?」
 新三郎は差し出された剣を見つめながら、手をわなわなと震わせていた。もう一度戦ったとしても勝つ気はしなかった。

そのとき、地蔵堂の扉が開き、小さな少女が飛び出してきた。
「もう、やめて。新三郎さんを許してあげて下さい」
 お玉がダリルの前に立って、両手を広げながら叫んだ。ダリルは戸惑いながら、副島の方へ目を向ける。副島は天狗の面を外し、頭に手をやってすまなそうに苦笑していた。
 
ダリルはため息を吐いて新三郎の剣を放り投げ、ロングソードを鞘に収めた。
「オタマ、そのおとこ、オタマだましていた、いいのか?」
 ダリルの問いにお玉は首を振って答えた。
「ううん、騙してないよ。あたいといるときは、新三郎さんは本当に優しかったもん┅┅ただの遊びだったとしても、あたい、嬉しかった┅┅ずっと騙していてくれればいいんだもん」
 ダリルはその小さな少女の中に、はっきりと女の性(さが)を見た。そして、過去の経験を思い出して何とも不快な感情の淵に沈みかけた。だが、そこから脱するすべもこの旅の中で身につけていた。

「そうか┅┅お前の人生だ。思うように生きるがいい┅┅」
 ダリルはオランダ語でそう言うと、くるりと背を向けて副島の方へ去って行った。副島は微笑を浮かべながらダリルを迎え、目で前方を指示した。ダリルが振り返って見ると、新三郎の背後にいつの間にか定久と二人の門弟が立っていた。

「弟がとんだご迷惑をおかけした。この通りだ」
 定久は頭を下げてそう言った。
「いや、こちらこそ、余計なお世話だったかもしれません┅┅」
「いや┅┅以前からこの愚弟の女遊びには困っておったのだ。それを止められなかったのは拙者を含めた家族の罪┅┅この後はそこにおる娘も含め、迷惑を掛けた娘たちには相応の謝罪をいたしたい┅┅それでどうか許して欲しい」

 副島とダリルは顔を見合わせ頷き合った。
「分かりました。ぜひお願いします。では、我々はこれで┅┅お玉、高崎に帰るぞ」
 お玉は嬉しそうに頷くと、新三郎を振り返ってにっこり微笑んだ。
「新三郎さん、また遊びに来るね」
 新三郎は自分の情けなさにうなだれていたが、その言葉に顔を上げてお玉を見た。無邪気に自分を慕う少女を、彼はまぶしげに見ながら小さく頷いた。お玉は嬉しそうに笑いながらダリルたちのもとへ駆けてくる。副島がその少女を抱き上げて、ダリル、おひさとともに本堂の方へ歩き出す。
「新三郎、お前のせいで竜虎を討伐し損なったわ┅┅」
 定久は去って行く四人連れを、鋭い目で見つめながらぽつりとつぶやいた。

 この後、樋口新三郎定光は心を入れ替えて剣の修行や学問の修得に励み、やがて義兄たちを越える技量を身につけるに至った。そして、三十半ばで早世した次兄定勝の後を継ぎ、
名も定勝と改めて馬庭念流四世を継ぐことになるのである。一方、お玉のその後については、副島もついに知ることはなかったが、二十年余りが過ぎた頃、樋口定勝が江戸の御前試合に出たと聞いたとき、同時に巷の噂話で、定勝の内儀がかなりの刀の目利きで、江戸の古物商が安い刀を高値で売りつけようとして酷い目に合ったということを耳にした。もしかするとお玉のことかもしれないと思い、副島は懐かしく空を見上げたものだった。
                                  

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