王家の宝物庫

三枝七星

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ヘリオドールのワンド

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(※宝石などを通して太陽を見るのは危険です。)
(※収斂火災に気をつけてください。)

 ヘリオドールを先端につけたワンドは、晴れの日よりも曇りの日に真価を発揮した。普段は日当たりの良い場所で太陽の光を蓄える。そうすると、強力な魔法が放てるというわけだ。
 曇りや雨の日にしか使えないわけではない。使い勝手で言えば、使った側からエネルギーを充填できる晴れの日のほうがよっぽど良い。
 ただm曇りや雨の日、悪しき怪物をこの杖の力で追い払おうとするならば、太陽の現し身と呼べるこの黄緑色の宝石から、一筋の光が放たれるのを見ることになるだろう。地上の太陽を、その時だけ騙るのだ。

 真っ黒な雲が空にたむろして、雨粒を落とすような日こそ、悪霊たちは喜んでやってくる。そういう時に、このワンドを持って表に出る。追い払うための呪文を唱える。そうすると、魔力を蓄えたヘリオドールは、一緒に貯めていた光も放つのだ。天使の階梯のように、それはさも宝石を通して陽光が差すかのようでもある。かくして、この光は悪霊をなぎ払い、追い払う。あとの仕事は、悪霊祓いの聖職者たちに任せよう。このワンドの持ち主は、悪霊たちに今日を晴れだと思わせるだけで良い。それができるように、常日頃からこの杖に本物の太陽を観察させておけば良い。もっとも、この二者が対面し、はしゃぎすぎると、宝石を通した光が火事を起こすこともある。全くもって、光でも何でも、強いものは害も考えなくてはならぬ。

 ヘリオドールの杖は手がかかる。
 けれど、晴れの日にちゃんと面倒を見たならば、それは手の届く陽光になって、必要な時にあなたを守るだろう。
 地上の小さな太陽。晴れの日に、また並んで空を見よう。
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