「ごめんなさい」の話(エッセイ集)

三枝七星

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敬語の甲冑

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 敬語は武装だと思っている。

 と言うと何とも穏やかではないが、割と、「これだけ礼節を尽くしている私に、まさか失礼なことは仰いませんよね?」と言う圧を掛けながら敬語を喋っている気持ちがないでもない。
 もちろん、立場上お客様や取引先、同僚に対して失礼はできない、と言うのも本当。何かをするのに理由が一つしかあってはならない、ということはあるまい。いくつかある理由の一つに「武装として」というのがある。

 そして、敬語をきちんと使うというのは、ある意味知性や教育の現れでもあり(ちゃんと使えていますように)、それはそれで一つ、ステータスの誇示にも繋がるため、そう言う意味でもすごい圧を掛けられると思っている。実際の育ちは教育は置いておくとして、「そう見せられる」と言うのが対人では重要になることもある。
 要するに、敬語と言うのは現代におけるハチャメチャに派手な甲冑であると言っても過言ではない(過言かも知れない)。それは親からもらうものかもしれないし、はたまた恩師など、お世話になった人からもらうものかもしれない。
 派手な鎧を纏い、相手と対峙し、自分の「礼節の強さ」を誇示する。礼節とは強さである。その、最もわかりやすい指標が「敬語」ではないだろうか。

 敬語と言うと使い方をとやかく言われることもある。使い方を間違えると評価を下げることもあるが、使わないより使った方が”強い”と私は信じて使っている。最初は「ですます」だけだったのが「ございます」になったり、使える敬語の幅が広がっていくのもまた楽しい。使える武器が増える。

 時として「堅苦しいよ」と言われることもあるけれど、何と言うか「ちゃんとしている」ことが一番人間として強いと個人的に思っているので、堅苦しいくらいが丁度良いのではないかとも思っている。少なくとも、「敬語を使っている奴」と「敬語使わない奴」だと圧倒的に前者の方が付け入る隙がない。甲冑着てない奴と着てる奴、突然戦いになったらどっちが生き残るとかというと多分前者である(この多分は水に放り込まれるなど甲冑を着てて不利な状況があることを考慮している)。
 「ちゃんとしてる」方が文句を言われづらい。何故なら「ちゃんとしている」からである。文句を付ける部分は少ない方が良いのだ。空気に触れる部分が少ない方が酸化しない何らかの食べ物の様に。

 甲冑は一人では着られない。敬語も一人では身に付かない。

 まずは「お世話になっております」から始めて、一緒に天下を目指して見ませんか?

 ここまで書いて思ったけど、私は何と戦ってるんでしょうね。
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