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HO4.ほら吹き男爵(5話)
1.侵略の露呈
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友藤陽助は、目の前で人間の身体を、イソギンチャクの触手のような、筒状の柔らかな有機体が突き破るのを目の当たりにして、声を出すことも叶わなかった。
苦痛の悲鳴は力をなくしたうめき声に変わり、崩れ落ちる。
「救急車!」
「何あれ……! 触手みたいな……!」
「寄生虫!?」
倒れた人物の身体から伸びた触手がうごめいている。陽助は思わず一歩下がってしまった。触れたくない。怖い。相手の身を案じるよりも、恐怖や嫌悪感が先に立つ。それを責める人間はこの場にいないだろう。
けれど、陽助はそんな自分の行動に心を痛める。
(僕のことを気に掛けてくれたのに)
少し前。気分が悪くなった陽助は、商業施設のフロア内に設えられたベンチに座って休んでいた。疲労だろうか。少し休めば良くなるだろう。飲み物でも買おうか。そういえば、あまり水を飲んでいなかった気がする。ここ東京では、石を投げれば自販機に当たる……と言うのも言い過ぎだが、少し歩けば飲み物は確保できる土地だ。
「具合が悪いんですか?」
そこに声を掛けてきたのが、例の男だった。
「救急車でも呼びましょうか?」
「あ、いえ、大丈夫です……」
「でも顔色悪いですよ」
気持ちはありがたいが、少し休んでいれば済むだろう。
「でも……」
彼は眉を寄せる。
「変な病気だったりしたら……」
もちろん、その可能性はあるだろうが、だからと言って「今」救急車を呼ぶ必要はない。休んで、帰って、様子を見て、その上で不調が続くなら病院を受診すれば良いわけで。陽助は困惑したが、まだ声を荒げて追い払う段階でもないだろう。穏やかに、
「それは帰ってから考えます」
「でも……」
何だろう、この人、どうして「そうですか、それじゃあ」と言って去ってくれないのだろうか。陽助は急に怖くなった。
「具合の悪い人は、救ってあげないと……」
救う。
「すく、う? え?」
その大仰なワードチョイスが陽助の心に引っかかった。
助ける、ではなくて?
彼が怪訝に思って顔を上げたその時。
男の全身から、触手の様な、筒状の有機体が飛び出したのだった。
商業施設の片隅とは言え、他に客も通りかかる場所だ。そういう人たちの目も引いて、悲鳴が上がる。パニックはたちまち広がった。
なんだこれは。
一体何なんだ。
陽助は絶句して、痛みに呻き、もがき、苦しむ彼をただただ凝視するしかできない。
「大丈夫ですか?」
そう聞いてやることもできず。
文部科学省宇宙対策室・東京多摩分室では、重苦しい雰囲気が漂っていた。
「いずれこうなるかもしれない、とは思っていたが……」
眉間に皺を寄せているのは、この分室の室長であり、今いる三人の中で、唯一の文部科学省の常勤職員でもある国成哲夫だ。
「私が思っていたよりも、被害者は多かったようですね」
沈痛のような、無表情にも見える表情で俯いているのは浪越テータ。簡単なシスター服、と言う出で立ちではあるが、実は地球人ではない。他の惑星から来たいわゆる「宇宙人」である。現在は。ここ多摩分室の「非常勤」と言う扱いになっている。
「すごい騒ぎになっちゃいますね……」
不安そうな表情をしているのは神林杏。テータと同じこの分室の非常勤であるが、彼は彼でここにいる事情が二人と異なる。
三人が見ているのは、インターネットで配信された、ニュース記事だ。
『寄生虫か? 体内から触手に破られ男性救急搬送』
そんな見出しで、都内の商業施設で、突然筒状の有機体に身体を破られて救急搬送された男性の記事が載っているのだ。
報道になる前から、既に関連省庁の常勤職員であり、かつこの宇宙対策室の人員には連絡が来ていた。都内の商業施設で「天啓」を受けたとおぼしき男性が、身体の中から突然、有機体に身体を食い破られて倒れたのだと。
この「宇宙対策室」が宇宙の何に対策しているのかと言うと、それは「侵略」である。
とある星から、地球を侵略するための洗脳電波が送られてきていることが発覚したのが数ヶ月前。その洗脳電波を受けることによって、「誰かを救済しなくてはならない」と言う確信じみた強迫観念に囚われ、「救済」を実行するためなら暴力的な行為も厭わなくなってしまう。
そして、その電波はどういう訳か体内で結晶のようなものを作り出し、それに伴って身体の一部をイソギンチャクの触手に似た、筒状の有機体に作り替えてしまう。
何がきっかけかわからないが、その有機体は突然宿主の身体を食い破って飛び出してくる。
まだ結論は出ていないが……この有機体、ある程度宿主の意思というのか感情と言うのか、多少は意向の様な物に従って動くらしい。らしいと言うのは、一命を取り留めた被害者たちから当時のことについて聞き取りを行うも、そんな状態になった時の自分の判断なんて誰も鮮明に覚えておらず、「なんか……よくわからないけど動いた」くらいの認識だったからである。
テータは、その星からやってきた宇宙人である。彼女は洗脳電波を送ってくる実行犯の部下であるそうなのだが、折り合いが悪く、実行犯の計画を挫くために単身、地球へ情報提供のために乗り込んできた。哲夫と出会い、事件解決を手伝ったことでこの分室の非常勤として所属することになったのだそうである。
それは、杏が二人と遭遇する前の出来事であり、その間にバディとして様々な「天啓」事件を解決してきたのだそうだ。
今までは、人格などに異変が起こったと情報提供があった人物に対して調査を行い、今回のようなことになる前にCT検査にこぎ着け、体内に結晶ができていれば外科手術で摘出する、と言う事をやってきたのだが、最近は本人への聞き取りを行っている最中に、この有機体の体外への出現が見られるようになってきた。
こうなっては、いずれ普通に生活している中でも突然こうなってしまうのではないか……と言う懸念は前から出ていた。
それが現実になってしまった。
「元々、小数ではあるが目撃者はあって、そういう人がSNSとかネットの掲示板で発言はしていたらしい」
対策室の業務内で遭遇した事件については、報道規制を敷いていたし、出す情報も制限していた。いたずらに混乱を広めないためではあるが、先日の椎木香菜美の事件も、人通りの少ないとはいえ町中での出来事であったため、やはり目撃者そのものはいた。救急車を呼ぼうかと気を遣ってくれたが、声を掛けずに見ていただけの目撃者が書き込んだのだろう。
陰謀論として相手にされていなかったようだが、今回、日曜日の商業施設という、多くの人目に触れる場所でこんなことが起こってしまった。国としては、どのように発表するかを考えなくてはいけないフェーズに入ったわけである。
「とはいえ、元々いつかは公表することを考えていたわけだし、それは問題ではないんだが……よりによって割とまずい形で露呈したな」
「最悪の形はなんだったんですか?」
「国家中枢の誰かが『救済者』だった場合」
テータの問いに、哲夫はしれっと応じた。確かに、それは恐ろしい。想像して、杏も首を振る。哲夫も冗談のつもりだったのだろう、うっすら笑っていたが、やがて真顔になり、
「どうする神林さん。国会議事堂行ってみるか?」
「どうします? そこにいる議員さんたち皆が神林さんを恐れたら……」
テータもいたずらっぽく笑う。
「や、やめてくださいよ。ものすごく怖いじゃないですか」
杏は慄いた。
神林杏がこの分室の非常勤をしている理由は、「募集に応じた」と言う一般的な理由ではない。
杏もまた「天啓」を受けた「救済者」の一人である。
ただ、他の「救済者」が「手段は問わないから人を救済せよ」と言う大まかな「天啓」を受けているのに対し、杏は「人類を滅ぼせ」と言う、極めて物騒で、有害で、明確な内容の「天啓」をもたらされているのである。
けれど、杏はその「天啓」を拒んだ。しかし、送り込まれた「天啓」自体は杏の中に残っているようである。何故それがわかったのか。それは、他の「救済者」が、彼に対して口を揃えて「あなたは何の天啓を受けているのか?」と問うからである。
どうやら、「滅び」と言う異なる「天啓」を受けた杏は、他の「救済者」たちから畏怖を感じられているようだ。ただし、「救済者」同士は相手がそうであるとはわからず、杏も他の「救済者」を判別することができない。「救済者」が杏の「天啓」を感じ取ることだけができるようだ。
そういう経緯もあり、文部科学省は杏を非常勤として加入させ、彼の体内で結晶ができたらわかるように、またその経過の観察として健康チェックを受けさせ、他の「救済者」が彼に反応することを利用して炙り出しをすることにしたのである。
ここまでで既に数人、「救済者」を見つけ出し、取り押さえることに成功している。杏がいなければ、今回のように町中で有機体に食い破られていたことだろう。
「そういえば」
杏はふと、以前テータに言われたことを思い出した。
「この前、浪越さんは『黒幕はデータを送ってから様子見の段階』って言ってましたよね?」
「ええ。その後気が変わって追加で何かしているかもしれませんが」
「浪越さんと同じように、向こうの手先の宇宙人が送り込まれてるってことはないんでしょうかね」
「ああ……」
「そういえば」
テータと哲夫は顔を見合わせた。杏は少しだけ得意な気持ちになる。この二人にも、思い至らないことはあった……。
「神林さんには話していませんでしたね」
「そうだな。あれ以来遭遇もしていないし……」
少々思っていた反応と違う。
「なんです……?」
「実は、神林さんの仰るとおり、例の上司に忠実な私の同僚が一人、地球に送り込まれています」
「神林さんと出会う少し前に俺たちも遭遇したんだが、それからどうしているのかはわからない」
「その人も、地球人に擬態しているんですか?」
「ええ。せっかくの機会ですから、神林さんにも彼のことをお話しましょう」
テータは戸棚に歩み寄った。紅茶を淹れるつもりなのだろう。テータは、このテーブルに座るときに紅茶を出したがる。なぜなら、彼女が初めてここに来たときに、哲夫がそうしてくれたから、だそうだ。
「彼の名前はι0500。黒幕に心酔し、それ故に他の星の全てを軽視している者です」
苦痛の悲鳴は力をなくしたうめき声に変わり、崩れ落ちる。
「救急車!」
「何あれ……! 触手みたいな……!」
「寄生虫!?」
倒れた人物の身体から伸びた触手がうごめいている。陽助は思わず一歩下がってしまった。触れたくない。怖い。相手の身を案じるよりも、恐怖や嫌悪感が先に立つ。それを責める人間はこの場にいないだろう。
けれど、陽助はそんな自分の行動に心を痛める。
(僕のことを気に掛けてくれたのに)
少し前。気分が悪くなった陽助は、商業施設のフロア内に設えられたベンチに座って休んでいた。疲労だろうか。少し休めば良くなるだろう。飲み物でも買おうか。そういえば、あまり水を飲んでいなかった気がする。ここ東京では、石を投げれば自販機に当たる……と言うのも言い過ぎだが、少し歩けば飲み物は確保できる土地だ。
「具合が悪いんですか?」
そこに声を掛けてきたのが、例の男だった。
「救急車でも呼びましょうか?」
「あ、いえ、大丈夫です……」
「でも顔色悪いですよ」
気持ちはありがたいが、少し休んでいれば済むだろう。
「でも……」
彼は眉を寄せる。
「変な病気だったりしたら……」
もちろん、その可能性はあるだろうが、だからと言って「今」救急車を呼ぶ必要はない。休んで、帰って、様子を見て、その上で不調が続くなら病院を受診すれば良いわけで。陽助は困惑したが、まだ声を荒げて追い払う段階でもないだろう。穏やかに、
「それは帰ってから考えます」
「でも……」
何だろう、この人、どうして「そうですか、それじゃあ」と言って去ってくれないのだろうか。陽助は急に怖くなった。
「具合の悪い人は、救ってあげないと……」
救う。
「すく、う? え?」
その大仰なワードチョイスが陽助の心に引っかかった。
助ける、ではなくて?
彼が怪訝に思って顔を上げたその時。
男の全身から、触手の様な、筒状の有機体が飛び出したのだった。
商業施設の片隅とは言え、他に客も通りかかる場所だ。そういう人たちの目も引いて、悲鳴が上がる。パニックはたちまち広がった。
なんだこれは。
一体何なんだ。
陽助は絶句して、痛みに呻き、もがき、苦しむ彼をただただ凝視するしかできない。
「大丈夫ですか?」
そう聞いてやることもできず。
文部科学省宇宙対策室・東京多摩分室では、重苦しい雰囲気が漂っていた。
「いずれこうなるかもしれない、とは思っていたが……」
眉間に皺を寄せているのは、この分室の室長であり、今いる三人の中で、唯一の文部科学省の常勤職員でもある国成哲夫だ。
「私が思っていたよりも、被害者は多かったようですね」
沈痛のような、無表情にも見える表情で俯いているのは浪越テータ。簡単なシスター服、と言う出で立ちではあるが、実は地球人ではない。他の惑星から来たいわゆる「宇宙人」である。現在は。ここ多摩分室の「非常勤」と言う扱いになっている。
「すごい騒ぎになっちゃいますね……」
不安そうな表情をしているのは神林杏。テータと同じこの分室の非常勤であるが、彼は彼でここにいる事情が二人と異なる。
三人が見ているのは、インターネットで配信された、ニュース記事だ。
『寄生虫か? 体内から触手に破られ男性救急搬送』
そんな見出しで、都内の商業施設で、突然筒状の有機体に身体を破られて救急搬送された男性の記事が載っているのだ。
報道になる前から、既に関連省庁の常勤職員であり、かつこの宇宙対策室の人員には連絡が来ていた。都内の商業施設で「天啓」を受けたとおぼしき男性が、身体の中から突然、有機体に身体を食い破られて倒れたのだと。
この「宇宙対策室」が宇宙の何に対策しているのかと言うと、それは「侵略」である。
とある星から、地球を侵略するための洗脳電波が送られてきていることが発覚したのが数ヶ月前。その洗脳電波を受けることによって、「誰かを救済しなくてはならない」と言う確信じみた強迫観念に囚われ、「救済」を実行するためなら暴力的な行為も厭わなくなってしまう。
そして、その電波はどういう訳か体内で結晶のようなものを作り出し、それに伴って身体の一部をイソギンチャクの触手に似た、筒状の有機体に作り替えてしまう。
何がきっかけかわからないが、その有機体は突然宿主の身体を食い破って飛び出してくる。
まだ結論は出ていないが……この有機体、ある程度宿主の意思というのか感情と言うのか、多少は意向の様な物に従って動くらしい。らしいと言うのは、一命を取り留めた被害者たちから当時のことについて聞き取りを行うも、そんな状態になった時の自分の判断なんて誰も鮮明に覚えておらず、「なんか……よくわからないけど動いた」くらいの認識だったからである。
テータは、その星からやってきた宇宙人である。彼女は洗脳電波を送ってくる実行犯の部下であるそうなのだが、折り合いが悪く、実行犯の計画を挫くために単身、地球へ情報提供のために乗り込んできた。哲夫と出会い、事件解決を手伝ったことでこの分室の非常勤として所属することになったのだそうである。
それは、杏が二人と遭遇する前の出来事であり、その間にバディとして様々な「天啓」事件を解決してきたのだそうだ。
今までは、人格などに異変が起こったと情報提供があった人物に対して調査を行い、今回のようなことになる前にCT検査にこぎ着け、体内に結晶ができていれば外科手術で摘出する、と言う事をやってきたのだが、最近は本人への聞き取りを行っている最中に、この有機体の体外への出現が見られるようになってきた。
こうなっては、いずれ普通に生活している中でも突然こうなってしまうのではないか……と言う懸念は前から出ていた。
それが現実になってしまった。
「元々、小数ではあるが目撃者はあって、そういう人がSNSとかネットの掲示板で発言はしていたらしい」
対策室の業務内で遭遇した事件については、報道規制を敷いていたし、出す情報も制限していた。いたずらに混乱を広めないためではあるが、先日の椎木香菜美の事件も、人通りの少ないとはいえ町中での出来事であったため、やはり目撃者そのものはいた。救急車を呼ぼうかと気を遣ってくれたが、声を掛けずに見ていただけの目撃者が書き込んだのだろう。
陰謀論として相手にされていなかったようだが、今回、日曜日の商業施設という、多くの人目に触れる場所でこんなことが起こってしまった。国としては、どのように発表するかを考えなくてはいけないフェーズに入ったわけである。
「とはいえ、元々いつかは公表することを考えていたわけだし、それは問題ではないんだが……よりによって割とまずい形で露呈したな」
「最悪の形はなんだったんですか?」
「国家中枢の誰かが『救済者』だった場合」
テータの問いに、哲夫はしれっと応じた。確かに、それは恐ろしい。想像して、杏も首を振る。哲夫も冗談のつもりだったのだろう、うっすら笑っていたが、やがて真顔になり、
「どうする神林さん。国会議事堂行ってみるか?」
「どうします? そこにいる議員さんたち皆が神林さんを恐れたら……」
テータもいたずらっぽく笑う。
「や、やめてくださいよ。ものすごく怖いじゃないですか」
杏は慄いた。
神林杏がこの分室の非常勤をしている理由は、「募集に応じた」と言う一般的な理由ではない。
杏もまた「天啓」を受けた「救済者」の一人である。
ただ、他の「救済者」が「手段は問わないから人を救済せよ」と言う大まかな「天啓」を受けているのに対し、杏は「人類を滅ぼせ」と言う、極めて物騒で、有害で、明確な内容の「天啓」をもたらされているのである。
けれど、杏はその「天啓」を拒んだ。しかし、送り込まれた「天啓」自体は杏の中に残っているようである。何故それがわかったのか。それは、他の「救済者」が、彼に対して口を揃えて「あなたは何の天啓を受けているのか?」と問うからである。
どうやら、「滅び」と言う異なる「天啓」を受けた杏は、他の「救済者」たちから畏怖を感じられているようだ。ただし、「救済者」同士は相手がそうであるとはわからず、杏も他の「救済者」を判別することができない。「救済者」が杏の「天啓」を感じ取ることだけができるようだ。
そういう経緯もあり、文部科学省は杏を非常勤として加入させ、彼の体内で結晶ができたらわかるように、またその経過の観察として健康チェックを受けさせ、他の「救済者」が彼に反応することを利用して炙り出しをすることにしたのである。
ここまでで既に数人、「救済者」を見つけ出し、取り押さえることに成功している。杏がいなければ、今回のように町中で有機体に食い破られていたことだろう。
「そういえば」
杏はふと、以前テータに言われたことを思い出した。
「この前、浪越さんは『黒幕はデータを送ってから様子見の段階』って言ってましたよね?」
「ええ。その後気が変わって追加で何かしているかもしれませんが」
「浪越さんと同じように、向こうの手先の宇宙人が送り込まれてるってことはないんでしょうかね」
「ああ……」
「そういえば」
テータと哲夫は顔を見合わせた。杏は少しだけ得意な気持ちになる。この二人にも、思い至らないことはあった……。
「神林さんには話していませんでしたね」
「そうだな。あれ以来遭遇もしていないし……」
少々思っていた反応と違う。
「なんです……?」
「実は、神林さんの仰るとおり、例の上司に忠実な私の同僚が一人、地球に送り込まれています」
「神林さんと出会う少し前に俺たちも遭遇したんだが、それからどうしているのかはわからない」
「その人も、地球人に擬態しているんですか?」
「ええ。せっかくの機会ですから、神林さんにも彼のことをお話しましょう」
テータは戸棚に歩み寄った。紅茶を淹れるつもりなのだろう。テータは、このテーブルに座るときに紅茶を出したがる。なぜなら、彼女が初めてここに来たときに、哲夫がそうしてくれたから、だそうだ。
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