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HO3.あなたの一番のユーザー(5話)
3.確信のカクテルパーティ
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犀東かやこが、SNSのコメント欄を閉鎖してしまった。香菜美が自分のアカウントから、「リクエスト再開の予定があれば告知して欲しいです」とコメントしたせいだろうと確信していた。もう一つ、メッセージを直接送るには、許可がいるのだが、向こうは絶対に香菜美からのメッセージを許可しないだろう。
そうやって、逃げるんだ。せっかく私が助けてあげようとしてるのに。そりゃ耳に痛いかもしれないけど、長期的には絶対犀東さんのためになるんだから。こうやって正しい指摘をする人なんてそうそういないんだから。エコーチェンバーでおかしくなってるんだ。自分の賛同者しかいない空間にいるから。
だから私みたいに「使命」を持った人が救ってあげないといけない。
あとは、リクエストが再開されたらリクエスト文に一言添えるかしかない。救って上げるために、犀東かやこの間違っているところを。
香菜美は昼休みを終えて事務室に戻った。今日は定時で上がろう。体調が良くないとか、用事があるとか理由付けて。だって、贔屓のクリエイターにちゃんと世間の道理を教えてあげるんだから、残業なんてしてる場合じゃない。幸いにも、この病院の受付は、夕方になると暇と言って差し支えのない閑散っぷりを見せる。受付時間外に突然患者が飛び込んでこなければの話だが、もう先輩に頼んでしまおう。
だって、私には「使命」があるんだし。
「椎木さん、よかれと思ってやってるんだろうけど、思い込み激しいんだよね」
ドアを開ける前に聞こえてしまった先輩の言葉も気にならないくらい、香菜美の頭の中は犀東かやこへの「救済」でいっぱいになっていた。
事務所内にある自分の荷物置きにランチトートを置くと、受付に座ろうとしたところで声を掛けられる。
「あの、すみません。面会終わったので、こちらお返しします」
「あ、はい。お気を付けてお帰りくだ、さい……」
スーツの男性が、三人分の面会バッヂを差し出している。後はシスターみたいな女性、もう一人、比較的若いスーツの青年。
その青年を見て、香菜美は指先から冷えていくような感覚を覚えた。
この人も私と同じで「使命」を受けている。
でも、この人は私と違う。この人は、私よりもっと偉い。すごいことを指示されている……。
でも、だから何だって言うんだろう。
緊張はすぐに溶けて消えていった。
「何か?」
「すみません、喉がちょっと変で」
ごまかす。この人に犀東さんは救えないんだ。確かに、自分よりすごい「使命」だろうけど、自分と違うと言うことは「正しさを教える」使命じゃないんだから。
私じゃないと犀東さんは救えないんだ。
私だけが救ってあげられるんだ。
「お気を付けてお帰りください」
「椎木」と言う名札を付けた事務員が、杏を見て明らかに狼狽したのを、当然三人とも見逃さなかった。
「病院ならすぐにCTを撮ってもらえそうですね」
建物から出て、テータが言う。
「とはいえ、『あなた「使命」を受けてるから今すぐCT撮ってください』って言って聞くとも思えません。何か上手い手はありませんか?」
彼女は二人を見て首を傾げた。
「とりあえず、彼女をマークするしかないな。ほんとうはもう一件回る予定だったが……」
哲夫が腕時計を見る。
「いや、大丈夫じゃないですか? 四時までに戻ってこられれば」
杏は言った。
椎木はランチトートを持っていた。前の会社でも、女性社員が似たような鞄を持っていたのを覚えている。だからと言って男性社員が弁当箱だけ抱えて移動するかというとそういうわけではないので、結局似たようなバッグは持つことになるが、それはさておき。
「多分、お昼から戻って来たところですよね。と言う事は少なくとも半休じゃない。お子さんがいて時短かもしれないけど少なくとも四時くらいまでは普通働きますよ」
今まで務めた、どの会社にも子供がいて時短勤務の社員はいたが、昼休憩を取る程度には勤務時間があったし、早くても退勤は四時を回っていたと思う。この病院の勤務形態がどうなっているかはわからないが……まだ正式に椎木に対する調査ができない以上、勤務時間を聞いてしまうわけにもいかない。
「指輪していませんでした。独身じゃないでしょうか?」
テータが言うと、哲夫は首を横に振った。
「結婚してても指輪しない人はいるし、子供がいるからって結婚しているとも限らないんだ」
「そうでしたね。失礼しました」
先日、和也のモバイルICに思い至らなかった事と言い、やはり常識を読み取って模倣しているだけのテータは、「例外」をすぐには思いつけない様だ。情けないことに、杏はそんなテータの異星人ならではの知識の不利に安堵してしまった。地球の事例なら、自分はまだ役に立てるみたいだ。
「次のアポイントを終えてからここに戻ってくることは?」
「できる。だが昼食は簡単になるぞ」
「良いですよ。浪越さんも良いですか?」
「ええ、構いません。行きましょう」
香菜美は定時になった瞬間に、「お先に失礼します」と言ってその場を離れようとした。先輩からの、業務上の注意は半分も聞いていなかった。
「あの、椎木さん? 話終わってないんだけど」
先輩は気色ばんだように言うが、香菜美はその顔を見返した。
「時間なので。あと今日は用事があるので」
「じゃあ最後に一つ」
「失礼します」
やや強めに言うと、流石の相手も怯んだようだった。なんの「使命」も持たない人間が。香菜美は内心で嘲笑う。彼女はその隙に、荷物を持ってさっさと事務所を出て行った。
「……嘘でしょ。保険証の有効期限ちゃんと確認しろって話をどうして無視できるんだ。何回目だと思ってんの?」
残された先輩は呆然として呟く。自席で聞き耳を立てていた上司が、ゆっくりと近付いてきた。
「明日、私から話すよ」
「明日出勤しますかね」
「あの様子ならするでしょう。自分が悪いって思ってなさそうだし」
しかし、翌日、香菜美は出勤しない。
ただし、ふてくされたわけではなくて……。
さて、犀東かやこを「救済」してやろうと誓ったは良い物の、どうやってコンタクトを取ったものか。香菜美はスマートフォンの画面を睨みながら考えた。SNSの全てのコメント欄は閉鎖されている。「新規のご依頼は受け付けておりません」と言う文言が追加されていた。
「あ、そうだメール……」
プロフィール欄に書かれたメールアドレスだけはそのままだった。「★→@」と、インターネットにメールアドレスを載せる際のお定まりの表記もある。香菜美はアドレスをコピーして、新規メールを立ち上げて宛先に貼り付けた。
その時だった。
「じゃあ依頼とかいっぱい来るの?」
「まあ貰ってる方だと思うよ」
女性二人が話しているのが聞こえた。振り返る。若い女性だ。香菜美より少し年上くらいの。一人が、もう一人に熱心に聞いている。
「でも、私より納品してる人いっぱいいるけどね」
依頼、納品。心臓が高鳴った。
「文句言う人とかいるの?」
心臓が止まるかと思った。
「あー、うん。この前一件あったな。ルール的に受けられないリテイク……直してください依頼だったからお断りしたけど」
この人……犀東かやこだ!
雷に打たれたような確信。香菜美はスマートフォンを握りしめて、聞き耳を立てる。
「やっぱり、リクエスト文に書いてないのに、『こうならこうに決まってるじゃないですか』って言ってくる人はいる」
「ヤバイね」
「まあ色んな人がいるねぇ」
小声で話しているが、カクテルパーティ効果でも働いているのか、香菜美の耳には一言一句聞こえてくる。手が震えた。視界が狭くなる。
こんな風に、私のこと人に悪く話すんだ。
ひどい。
こんなひどい人に色んな人がイラストを頼んでる。これじゃ私みたいにひどいことされる人が他にも出てきちゃう。
正さなきゃ。
やがて、話を聞いていた方の最寄りに着いたのか、降りていった。「犀東かやこ」らしき人は、彼女を見送ると、自分のスマートフォンを横に持って操作し始めている。ゲームでも遊んでいるのだろう。私がこんなに辛い思いをしてるのに、許せない。
「犀東かやこ」も席を立った。香菜美もそれに続いて下車する。気付かれないように、そっと後をついて行った。
定時に上がったおかげで、まだ外は明るい。もうすぐ夏が来るのだろう。
子供たちが児童公園から飛び出してくる。誰もいない。
「あの」
「犀東かやこ」の背中に、香菜美は声を掛けた。相手は、一瞬躊躇ったようだが、振り返る。
「はい?」
「犀東かやこさんですよね」
相手の顔がこわばった。
「人違いですけど」
嘘だ。今図星って顔したじゃない。
「私、いつもあなたにイラストリクエストしている者なんですが」
今度は、何かに気付いた顔をした。それで香菜美はますます確信を深める。
「だから人違いって言ってるじゃないですか」
「だって、さっき電車でコミッションの話してたじゃないですか」
「盗み聞きしたんですか?」
「聞こえたんです」
香菜美は訂正しながら話を続ける。
「やっぱり、私がリテイク出したから依頼受けなくなっちゃったんですか?」
「いや、だから人違いですって。さっきからあなたが言ってること、私には何も当てはまってないですよ」
「やっぱり、私が迷惑なんですね。でも、私犀東さんにわかって欲しくて。だって、前はあんなに私のリク文から読み取ってくれてたじゃないですか。それなのに、リテイクしたからもうやらないなんて。そんなことしちゃ駄目ですよ。このままじゃ、どんどん人が離れて行っちゃいます」
「犀東かやこ」は何も言い返さなかった。こちらの出方を窺っているように見える。
「だから……私が『救済』してあげます」
その時、「犀東かやこ」の視線が、香菜美の背後に移動した。
「なるほど、それがあなたの『使命』と言うわけですね」
涼やかな女性の声が香菜美にかかる。咄嗟に振り返った。
「あ、あなたたちは……」
昼に、面会バッヂを香菜美に返した三人が、そこに立っていた。
そうやって、逃げるんだ。せっかく私が助けてあげようとしてるのに。そりゃ耳に痛いかもしれないけど、長期的には絶対犀東さんのためになるんだから。こうやって正しい指摘をする人なんてそうそういないんだから。エコーチェンバーでおかしくなってるんだ。自分の賛同者しかいない空間にいるから。
だから私みたいに「使命」を持った人が救ってあげないといけない。
あとは、リクエストが再開されたらリクエスト文に一言添えるかしかない。救って上げるために、犀東かやこの間違っているところを。
香菜美は昼休みを終えて事務室に戻った。今日は定時で上がろう。体調が良くないとか、用事があるとか理由付けて。だって、贔屓のクリエイターにちゃんと世間の道理を教えてあげるんだから、残業なんてしてる場合じゃない。幸いにも、この病院の受付は、夕方になると暇と言って差し支えのない閑散っぷりを見せる。受付時間外に突然患者が飛び込んでこなければの話だが、もう先輩に頼んでしまおう。
だって、私には「使命」があるんだし。
「椎木さん、よかれと思ってやってるんだろうけど、思い込み激しいんだよね」
ドアを開ける前に聞こえてしまった先輩の言葉も気にならないくらい、香菜美の頭の中は犀東かやこへの「救済」でいっぱいになっていた。
事務所内にある自分の荷物置きにランチトートを置くと、受付に座ろうとしたところで声を掛けられる。
「あの、すみません。面会終わったので、こちらお返しします」
「あ、はい。お気を付けてお帰りくだ、さい……」
スーツの男性が、三人分の面会バッヂを差し出している。後はシスターみたいな女性、もう一人、比較的若いスーツの青年。
その青年を見て、香菜美は指先から冷えていくような感覚を覚えた。
この人も私と同じで「使命」を受けている。
でも、この人は私と違う。この人は、私よりもっと偉い。すごいことを指示されている……。
でも、だから何だって言うんだろう。
緊張はすぐに溶けて消えていった。
「何か?」
「すみません、喉がちょっと変で」
ごまかす。この人に犀東さんは救えないんだ。確かに、自分よりすごい「使命」だろうけど、自分と違うと言うことは「正しさを教える」使命じゃないんだから。
私じゃないと犀東さんは救えないんだ。
私だけが救ってあげられるんだ。
「お気を付けてお帰りください」
「椎木」と言う名札を付けた事務員が、杏を見て明らかに狼狽したのを、当然三人とも見逃さなかった。
「病院ならすぐにCTを撮ってもらえそうですね」
建物から出て、テータが言う。
「とはいえ、『あなた「使命」を受けてるから今すぐCT撮ってください』って言って聞くとも思えません。何か上手い手はありませんか?」
彼女は二人を見て首を傾げた。
「とりあえず、彼女をマークするしかないな。ほんとうはもう一件回る予定だったが……」
哲夫が腕時計を見る。
「いや、大丈夫じゃないですか? 四時までに戻ってこられれば」
杏は言った。
椎木はランチトートを持っていた。前の会社でも、女性社員が似たような鞄を持っていたのを覚えている。だからと言って男性社員が弁当箱だけ抱えて移動するかというとそういうわけではないので、結局似たようなバッグは持つことになるが、それはさておき。
「多分、お昼から戻って来たところですよね。と言う事は少なくとも半休じゃない。お子さんがいて時短かもしれないけど少なくとも四時くらいまでは普通働きますよ」
今まで務めた、どの会社にも子供がいて時短勤務の社員はいたが、昼休憩を取る程度には勤務時間があったし、早くても退勤は四時を回っていたと思う。この病院の勤務形態がどうなっているかはわからないが……まだ正式に椎木に対する調査ができない以上、勤務時間を聞いてしまうわけにもいかない。
「指輪していませんでした。独身じゃないでしょうか?」
テータが言うと、哲夫は首を横に振った。
「結婚してても指輪しない人はいるし、子供がいるからって結婚しているとも限らないんだ」
「そうでしたね。失礼しました」
先日、和也のモバイルICに思い至らなかった事と言い、やはり常識を読み取って模倣しているだけのテータは、「例外」をすぐには思いつけない様だ。情けないことに、杏はそんなテータの異星人ならではの知識の不利に安堵してしまった。地球の事例なら、自分はまだ役に立てるみたいだ。
「次のアポイントを終えてからここに戻ってくることは?」
「できる。だが昼食は簡単になるぞ」
「良いですよ。浪越さんも良いですか?」
「ええ、構いません。行きましょう」
香菜美は定時になった瞬間に、「お先に失礼します」と言ってその場を離れようとした。先輩からの、業務上の注意は半分も聞いていなかった。
「あの、椎木さん? 話終わってないんだけど」
先輩は気色ばんだように言うが、香菜美はその顔を見返した。
「時間なので。あと今日は用事があるので」
「じゃあ最後に一つ」
「失礼します」
やや強めに言うと、流石の相手も怯んだようだった。なんの「使命」も持たない人間が。香菜美は内心で嘲笑う。彼女はその隙に、荷物を持ってさっさと事務所を出て行った。
「……嘘でしょ。保険証の有効期限ちゃんと確認しろって話をどうして無視できるんだ。何回目だと思ってんの?」
残された先輩は呆然として呟く。自席で聞き耳を立てていた上司が、ゆっくりと近付いてきた。
「明日、私から話すよ」
「明日出勤しますかね」
「あの様子ならするでしょう。自分が悪いって思ってなさそうだし」
しかし、翌日、香菜美は出勤しない。
ただし、ふてくされたわけではなくて……。
さて、犀東かやこを「救済」してやろうと誓ったは良い物の、どうやってコンタクトを取ったものか。香菜美はスマートフォンの画面を睨みながら考えた。SNSの全てのコメント欄は閉鎖されている。「新規のご依頼は受け付けておりません」と言う文言が追加されていた。
「あ、そうだメール……」
プロフィール欄に書かれたメールアドレスだけはそのままだった。「★→@」と、インターネットにメールアドレスを載せる際のお定まりの表記もある。香菜美はアドレスをコピーして、新規メールを立ち上げて宛先に貼り付けた。
その時だった。
「じゃあ依頼とかいっぱい来るの?」
「まあ貰ってる方だと思うよ」
女性二人が話しているのが聞こえた。振り返る。若い女性だ。香菜美より少し年上くらいの。一人が、もう一人に熱心に聞いている。
「でも、私より納品してる人いっぱいいるけどね」
依頼、納品。心臓が高鳴った。
「文句言う人とかいるの?」
心臓が止まるかと思った。
「あー、うん。この前一件あったな。ルール的に受けられないリテイク……直してください依頼だったからお断りしたけど」
この人……犀東かやこだ!
雷に打たれたような確信。香菜美はスマートフォンを握りしめて、聞き耳を立てる。
「やっぱり、リクエスト文に書いてないのに、『こうならこうに決まってるじゃないですか』って言ってくる人はいる」
「ヤバイね」
「まあ色んな人がいるねぇ」
小声で話しているが、カクテルパーティ効果でも働いているのか、香菜美の耳には一言一句聞こえてくる。手が震えた。視界が狭くなる。
こんな風に、私のこと人に悪く話すんだ。
ひどい。
こんなひどい人に色んな人がイラストを頼んでる。これじゃ私みたいにひどいことされる人が他にも出てきちゃう。
正さなきゃ。
やがて、話を聞いていた方の最寄りに着いたのか、降りていった。「犀東かやこ」らしき人は、彼女を見送ると、自分のスマートフォンを横に持って操作し始めている。ゲームでも遊んでいるのだろう。私がこんなに辛い思いをしてるのに、許せない。
「犀東かやこ」も席を立った。香菜美もそれに続いて下車する。気付かれないように、そっと後をついて行った。
定時に上がったおかげで、まだ外は明るい。もうすぐ夏が来るのだろう。
子供たちが児童公園から飛び出してくる。誰もいない。
「あの」
「犀東かやこ」の背中に、香菜美は声を掛けた。相手は、一瞬躊躇ったようだが、振り返る。
「はい?」
「犀東かやこさんですよね」
相手の顔がこわばった。
「人違いですけど」
嘘だ。今図星って顔したじゃない。
「私、いつもあなたにイラストリクエストしている者なんですが」
今度は、何かに気付いた顔をした。それで香菜美はますます確信を深める。
「だから人違いって言ってるじゃないですか」
「だって、さっき電車でコミッションの話してたじゃないですか」
「盗み聞きしたんですか?」
「聞こえたんです」
香菜美は訂正しながら話を続ける。
「やっぱり、私がリテイク出したから依頼受けなくなっちゃったんですか?」
「いや、だから人違いですって。さっきからあなたが言ってること、私には何も当てはまってないですよ」
「やっぱり、私が迷惑なんですね。でも、私犀東さんにわかって欲しくて。だって、前はあんなに私のリク文から読み取ってくれてたじゃないですか。それなのに、リテイクしたからもうやらないなんて。そんなことしちゃ駄目ですよ。このままじゃ、どんどん人が離れて行っちゃいます」
「犀東かやこ」は何も言い返さなかった。こちらの出方を窺っているように見える。
「だから……私が『救済』してあげます」
その時、「犀東かやこ」の視線が、香菜美の背後に移動した。
「なるほど、それがあなたの『使命』と言うわけですね」
涼やかな女性の声が香菜美にかかる。咄嗟に振り返った。
「あ、あなたたちは……」
昼に、面会バッヂを香菜美に返した三人が、そこに立っていた。
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