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本編
第7話 回収作業
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数日後、ビオとロニアのメーカーから、問い合わせに対する返事が来た。
元々、ワンナイト広場で勝手に捨てられた人造人間たちが集まっていること自体はメーカーでも問題視されており、業界各社で横の連携を取りながら対応について考えていたところなのだそうである。
様子を見ながら……と思っていたが、やはりよからぬ組織に利用されているならそんな悠長なことは言っていられない。何らかの措置を執る、とのことだ。
(良かった……)
これで、皆元の会社に戻れる……。
(でも、戻ったらどうなるんだろう)
元の契約者のところには戻れないだろう。どんな処遇が彼らを待っているのか。
(少なくとも、もう簡単には会えない……)
シンスのことを思う。彼のキス、優しい腕、彼女を絶頂に導いた深くて優しい律動。
(会いたい……)
別に、部屋に入って、とか、までは考えてない。でももう一度会って、お別れが言いたかった。彼女は定時で仕事を上がると、電車に乗ってワンナイト広場に向かった。
そして、目を丸くする。
マイクロバスが数台来ていた。お問い合わせを送った会社のロゴが入ったバスもある。白衣を着た研究者、青いシャツの警備員……物々しい雰囲気だ。
「な、何これ……」
「綾音!」
声が掛かる。バスの窓から、シンスが手を振っていた。
「シンス!」
「関係者以外は立ち入り禁止です!」
警備員に阻まれる。見れば、走り去るバスを泣きながら追おうとして止められ、膝を突いている女性もいた。馴染みの人造人間が乗っていたのだろう……。
「関係者だよ!」
「ええと、そのぉ、通報した者なんですが……」
「そんな証拠ないでしょ! さ、行った行った!」
「綾音、ありがとうな!」
「シンス……さよなら。どうか元気で……」
「帰ったらあんたのこと、研究員に伝えるから」
「帰ったら最初にやるのは感染症検査だよ馬鹿!」
白衣の男が怒鳴った。綾音がそこでできることはなく、追い出されてそのまま帰路に就いた。
どうやら、綾音がお問い合わせを送ってから、連携していた各社はワンナイト広場での自社製品の回収を実行に移したらしい。元々、勝手に遺棄されたりしたことの責任について、どう対応するかが検討されていたところだった。しかし、犯罪に使われる可能性があるなら話は別だ。ワンナイト広場についても調査自体はされており、「怪物」組織が管理を狙っていることも頭痛の種だったようだ。
ロニアと言う人造人間をスパイに使われているとなると、もう介入のタイミングなんてものを測っていられなくなった。いつやるんだ。今しかない。皆で行けば怖くない、と言う事で、半ば突貫工事で作戦を立て、マイクロバスを複数台駆り出して広場に乗り込んだ、と言うわけだった。
と言う事は、ビオとロニアのメーカーからの報告メールで知った。通報のお礼に教えてくれたのだ。
『回収された彼らはどうなるのでしょうか?』
一番気になっていたことを、思い切って質問してみる。
『各種検査を経て、問題がなければ短期契約、単発契約になりますが、対応は各社で異なります』
『どこのメーカーかはわからないんのですが、「シンス」と名乗っている人造人間と仲良くなりました。メーカー名を教えていただけますか?』
相手は快く教えてくれた。『弊社製品ビオもよろしくお願いします』と言う営業文句も添えて。社風なのだろうか。
シンスのメーカーにも問い合わせた。彼はどうなるのかと。それに返事を寄越したのは、カスタマーサポートではなく、なんと研究員からだった。
『シンスは感染症始め、検査結果に問題なかったため、単発契約か短期契約のカタログに並びます。あなたにとても恩を感じているようでした。もし彼が必要なら本メールにご返信ください』
綾音は迷わず返信した。
元々、ワンナイト広場で勝手に捨てられた人造人間たちが集まっていること自体はメーカーでも問題視されており、業界各社で横の連携を取りながら対応について考えていたところなのだそうである。
様子を見ながら……と思っていたが、やはりよからぬ組織に利用されているならそんな悠長なことは言っていられない。何らかの措置を執る、とのことだ。
(良かった……)
これで、皆元の会社に戻れる……。
(でも、戻ったらどうなるんだろう)
元の契約者のところには戻れないだろう。どんな処遇が彼らを待っているのか。
(少なくとも、もう簡単には会えない……)
シンスのことを思う。彼のキス、優しい腕、彼女を絶頂に導いた深くて優しい律動。
(会いたい……)
別に、部屋に入って、とか、までは考えてない。でももう一度会って、お別れが言いたかった。彼女は定時で仕事を上がると、電車に乗ってワンナイト広場に向かった。
そして、目を丸くする。
マイクロバスが数台来ていた。お問い合わせを送った会社のロゴが入ったバスもある。白衣を着た研究者、青いシャツの警備員……物々しい雰囲気だ。
「な、何これ……」
「綾音!」
声が掛かる。バスの窓から、シンスが手を振っていた。
「シンス!」
「関係者以外は立ち入り禁止です!」
警備員に阻まれる。見れば、走り去るバスを泣きながら追おうとして止められ、膝を突いている女性もいた。馴染みの人造人間が乗っていたのだろう……。
「関係者だよ!」
「ええと、そのぉ、通報した者なんですが……」
「そんな証拠ないでしょ! さ、行った行った!」
「綾音、ありがとうな!」
「シンス……さよなら。どうか元気で……」
「帰ったらあんたのこと、研究員に伝えるから」
「帰ったら最初にやるのは感染症検査だよ馬鹿!」
白衣の男が怒鳴った。綾音がそこでできることはなく、追い出されてそのまま帰路に就いた。
どうやら、綾音がお問い合わせを送ってから、連携していた各社はワンナイト広場での自社製品の回収を実行に移したらしい。元々、勝手に遺棄されたりしたことの責任について、どう対応するかが検討されていたところだった。しかし、犯罪に使われる可能性があるなら話は別だ。ワンナイト広場についても調査自体はされており、「怪物」組織が管理を狙っていることも頭痛の種だったようだ。
ロニアと言う人造人間をスパイに使われているとなると、もう介入のタイミングなんてものを測っていられなくなった。いつやるんだ。今しかない。皆で行けば怖くない、と言う事で、半ば突貫工事で作戦を立て、マイクロバスを複数台駆り出して広場に乗り込んだ、と言うわけだった。
と言う事は、ビオとロニアのメーカーからの報告メールで知った。通報のお礼に教えてくれたのだ。
『回収された彼らはどうなるのでしょうか?』
一番気になっていたことを、思い切って質問してみる。
『各種検査を経て、問題がなければ短期契約、単発契約になりますが、対応は各社で異なります』
『どこのメーカーかはわからないんのですが、「シンス」と名乗っている人造人間と仲良くなりました。メーカー名を教えていただけますか?』
相手は快く教えてくれた。『弊社製品ビオもよろしくお願いします』と言う営業文句も添えて。社風なのだろうか。
シンスのメーカーにも問い合わせた。彼はどうなるのかと。それに返事を寄越したのは、カスタマーサポートではなく、なんと研究員からだった。
『シンスは感染症始め、検査結果に問題なかったため、単発契約か短期契約のカタログに並びます。あなたにとても恩を感じているようでした。もし彼が必要なら本メールにご返信ください』
綾音は迷わず返信した。
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