僕のために争わないで!幼馴染の不仲を穏便に解決するには僕が女になるしかなかったらしい……あ、あれなんだか二人の様子が!?

えだまめ

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第1話 性別転換

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 朝起きたら、女になっていた。
朝起きて真っ先に覚えたのがこの感覚とは如何なものかと思う。

 やっぱり胸の形と丸みがあった。
そして下半身はたおやかなYの形を描いている。
 ……髪の質感もやっぱ違う。僅かながらにごわついていた僕の、あの頃の髪の毛はどこにいっちゃったんだろう。
 
 恐る恐る、ベットから華奢な足で降りてペタペタと、やがて鏡の前に立つと。
そこにいたのは美少女だった。

 光沢と張りがある、サラサラの長髪。
控えめな肩幅に、程よい具合に潤った素肌。
胸元あたりから覗かす黒い影。つぶらな瞳。

「ウ、ウソだろ……」

 首筋に冷や汗が線を描く。
動転した気のあまり、腰が抜けて崩れ落ちた。
 ぺたん座りになっても尚、痛くない。
 どうやら体が柔らかくなっているらしい。
やっぱり昨日までの僕じゃないんだ。息を呑んだ。


 ――いわゆる板挟みといった形で高校生活を迎えた。

 というのも、事の原因は幼稚園からの幼馴染である御門《みかど》 遥華《はるか》と氷月《ひつき》 舞《めい》が僕と同じ高校のA組になってしまったことだろう。

 御門 遥華と氷月 舞は、誰もが口を揃えて不仲だと言う。
 犬猿の仲と言った具合だ。今までに「喧嘩をするぐらい仲がいいのね」と母さんがポツリと零した矢先、そこから血みどろの取っ組み合いにまで発展したほど。
 それ具合に仲が悪いのだ。

 そして昔から二人は、やたらと俺に付きまとってきた。
 小学校の放課後に二人して僕の家に尋ねてきたり、休日には行きたくもないのに手を引っ張られて何処かに連れて行かれたり、と。
 その先々でも、彼女たちの喧嘩を耳にするのが日課だった。

 いつからこんな調子だったのかと思い返してみれば、幼稚園時代の染め物遊びをしていた時が僕の中での最も古い記憶だった。
 このときは確か二人は僕がしようとしている染め物に、「この花を混ぜるの!」「いやこっちの花がいい!」だとか争っていた覚えがある。

 あれから約12年。良くも悪くも変わらない彼女たち。
 毎日僕が学校に登校する度、そういった喧嘩揉め事が起こるのはやっぱり日常茶飯事で、最初は止めに入っていた委員長も次第に目を瞑るようになった。

 いつからか、僕がクラス内で” 二人のトラブルメーカー ”だと罵られるようになってから、ようやく気づかせられることになった。
 
 彼女たちの喧嘩は大抵僕を基軸に勃発している。
だからこの喧嘩を止められるのはのだと……。

 最近の悩みはこれだった。
僕がどんなに手を施しても、変わらぬ結果だからだった。


 そんなある晩、僕は夢を見た。
 夢の内容は白く照り輝く雲の中で、神を名乗る人物と話を交わすといった内容だった。なぜか彼は僕の悩みを既に知っているみたいだった。口調からしても髭モジャの容姿からしても優しい雰囲気を持つ彼に、気づけば相談にのって貰っていた。

 そして、あるとき神は言う。
それならお前が、どうだと。

 実におかしな話だと思った。
 たけど神様曰く、二人の喧嘩の原因は僕を異性の恋愛対象として奪い合っているからだという。だからその恋愛対象から外れるように性を展開してしまえばいい、と。ブサイクになるよりはいいでしょ?云々かんぬん。
 
 そこでようやく夢が覚めた。
というのがここまでの経緯である。


「翔~。早く起きなさーい! 遥華ちゃんと舞ちゃんが待ってくれてるわよー」

 一階から響く母さんの声が耳を指す。
そういえば、今日は学校だったんだ……。
ウソでしょ? ってことはこの姿で登校しなきゃいけないってこと!?

「遅いわねー。ごめんね、二人とも翔を起こしてもらってもいい?」
「はーい。お邪魔しまーす」

 なんで次から次に。
やめて、やめて、来ないで……。
こんな姿を見られたら、絶対なにか起こるに決まってる。

 そんな思いとは裏腹に近づいてくる、タタタと階段を駆け上がる音。

「翔、入るよー」
「……失礼します」

 返事の有無なんて関係ない。幼馴染だから平気でドカドカ入ってくる。
僕がちょうど布団に身を隠したところで、バタンと扉が開いた。
 そして気配がだんだんとこちらに迫ってきてる気がした。
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