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カタイコオリは里では脆い
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「『冷結氷塊山』!!」
ガチガチガチガチーーーンッ
「行けるな!!」
「はいっ」
「『大規模っ フライッ返しぃ』!!」
フライっ!パァァーーーーーーーン
「おりゃあああああああ!!」
「たぁああああああああ!!」
「このぉおおおおおおお!!」
スパスパパパパパパパパパーーーーーン!!
『レベルが上がりました』
『レベルが上がりました』
フィーラ・アーデルハイト
[職業]氷層騎士
[レベル]37
[固有スキル]絶対氷盾
『レベルが上がりました』
『レベルが上がりました』
キャトル・ウォンサム
[職業]魔法使い
[レベル]26
[固有スキル]給湯昇火
『レベルが上がりました』
『レベルが上がりました』
スパンダ・クートル
[職業]料理人
[レベル]30
[固有スキル]目利きの極意
『レベルが上がりました』
『レベルが上がりました』
クリフト・インデサス
[職業]神官
[レベル]28
[固有スキル]優柔不断の迷審判
『レベルが上がりました』
ベクター・ノーン
[職業]白騎士
[レベル]38
[固有スキル]表裏の憂鬱
「スゲェ……」
「どうなってるんだコレ…」
「本当にレベルが上がってる…」
「私たちはあれだけ苦労して上がらなかったというのに…」
「これでも人によってはもう1、2段階強化できるみたいですから、試してもらいますか?」
「ああ。」
「ケー、行けるかい?」
シーーン…
「どこ行った?」
「あちゃ~… 結構後ろですね」
フラフラ…ヨロヨロ…
「みなさ~~ん…まってくださ~い…」
『「あ、忘れてた」』
ハァ…ハァ…ハァ…ハァ…ハァ…ハァ…
「やっと…やっと追いついた…」
「ケースケ・カミヤ!ここは魔物の多い地帯だから気を抜くなと言った…」
ギロッ
「…だ…ろ…」
「こっちのセリフですよ!」
ビクッ
「皆さんが自分のことを忘れてバンバン進むから置いてかれたんですけど!!?
皆さんの武器を召喚したら移動用のモンスターカードも魔力が足りないって朝言ったばっかりですよね!何を聞いてたんですか?」
「それならお前自身の強化を上げればよかったんじゃ…」
「自分にはカードが無いと言いませんでしたぁ!?」
「…すいません」
「あの!忘れているかもしれないんでもう一回言っておきますけど、自分はカードじゃない武器は使えないっていう体の構造してるんです。
せめてカード武器持ってない時くらいはほったらかしにはしないでください。」
『「マジでごめんなさい」』
小隊編成を終えて数日、代わるがわる小隊ごとにレベルアップさせては必要なカードを作り、試行錯誤しては別の小隊にとグルグルグルグル回してをしていた。
小隊を組む中で人同士の相性の良し悪しをみて何人か入れ替えたりなんだかんだして、なかなか悪くない程度の連携の基礎は掴めたらしいのだが、それに引き換え自分はというと…
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
そう、あれは昨日
キンッ!! キャンッ! ブォンッ!!
「とりゃっ フンっ! おとととっ なんの!」
「くうぅ…! このぉ! ヒィッ…! えいっ!」
「スゴイ…ザックさんの攻撃をギリギリ受け流せている…」
「あいつ、あんな腰が引けているのにどこにあんなパワーがあるというんだ…」
「おら!!」
この一撃はヤバい!!
「『Dr.ゴブリン』1号、2号
『見習いキューピット』、頼む!!」
「邪魔だぁーー!!」
ザンッ ギンっ スパッ
「配置カード『閻魔の足痕』の効果発動!!」
破壊された数だけデッキからドローでき、手札からドローした枚数 + 1枚デッキの1番下に戻すことで、相手1人または1体の攻撃力・防御力を10秒間大幅に引き下げる!!
「マジか…ヤベっ」
構え直された鋼の聖剣がそこに生まれた隙を逃すまいと持ち主の動きに最大限の補助をする。
もちろんレベルが40にもなるスーパー前衛職のフィジカルを一部落とされたところで半分のレベルの後衛職に負けるわけもなく、いくら振り込んでもその先に受ける刃が置かれていて、こちらの攻撃が届く気配すらなかった。
「オラぁ!」
軸足をかけられバランスを崩してしまい、その隙にと持ち手に裏拳がぶつけられ、剣が手から弾かれ、離れ、そして何より飛ばされ宙を舞う。
「参りました。」
「おっしゃオレの勝ちぃ!!」
「さすがですねザックさん フィーラさんの時と違って対応力が半端じゃあなかったです」
「へへっ そりゃダテに作戦会議で居眠りしてねぇからよ。そん時そん時に合わせて動き回んのがオハコってやつだ」
「仕事はしてください…」
本当に大丈夫なのか?この人が副隊長で…
「おめぇもいい剣筋だったぜ。とても後衛ジョブとは思えねぇくらいだ。」
「今のはカード武器だからだと思いますけど」
「カード武器だから?
カードじゃねぇ普通の武器だとなんか変わんのか?」
「変わるっていうか元々素人なので普通の剣を持ったところでそのまま素人なんですよね…
カード持ってたら片手塞がりますし」
「ふーーん ちょっとやってみよーぜ」
「話聞いてました!?」
ボロボロッ…
「だがら…いったじゃないれすかぁぁ…」
「悪い…ここまで弱ぇとは思わなくてよ…」
「もう…無理…」
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「また…配慮に欠けたことを…」
「まぁ気分がノる気持ちは分かります。
レベルが"大幅に"上がることが騎士団のお仕事ではほとんど無いと何名からも聞いてますから。
けど召喚士が一緒の場合体力もそんなにあるわけでもなく、皆さんと違って強化系のスキルは一つもないですし、使えてもカードは原則ドロー制。ひとつひとつの効果から自分のことを過信されても運次第でできない時はできないんで、そこら辺だけは把握お願いしますね。」
「すまなかった。」
「おいおい聞いたか 今の」
「ヤバいな」
「言葉だけで中隊長をねじ伏せた…!」
「当然さ。彼はドラゴン全員から信頼され、それに応え続けている人間。ボクらみたいに好かれたり嫌われたりがある人間じゃあ勝負にならないよ。」
「すげぇ…」
「…~…ですから、フィーラさんが前ばっかり見てたら『表裏の憂鬱』であるはずのないものが降ってきたりするんですから、今までの冷静さを忘れないでくださいよ」
「そうだった…」
「他にも…~」
こんな感じで、スキル以外の弱い部分が見え始めた。
一応小隊ごとに分ける際の基準とかはあって
・作成した仲間カードの属性
・各ドラゴンとの相性
・小隊メンバー同士のスキル、性格、必要武器
など、練りに練ってやっと仮で組んでいるのだが、現実と理想で問題点が2つ。
1つは合成しようと、カードガチャを使おうと、全員が全員に都合のいい武器は用意できないこと。
まぁこれは2個目の問題の都合上、『鋼の聖剣』のように効果や使用条件が複雑ではないなどの一定の条件さえ満たせば何人かは同じカードを共有することで取り急ぎ解決はした。
もう1つは、単純にいっぺんに30人分の面倒は見ることができないこと。
基本的に自分が援護をするには魔力を要するが、30人もいれば多かれ少なかれ六属性全部揃っているわけで、そこにドラゴンや魔法カードやその他もろもろが入っているので頑張ってレベリングしたとしても自分と一緒に戦えるのは1小隊、多くても2小隊まで。
ひとまず6人1小隊ごとにレベリングと観察してはいるものの、強化や装備カードを使う前後差に順応できている人が半分もいない。
どうやら強化割合が何割とかではなく何倍の可能性があるとのこと。
街中での強化のレベルは考えた方がいいのか?
ビュォォォォォ…
ゾワゾワ…!
スンスンッ…
「ん…?」「この感じ…」「今のは…」
「どうしました?隊長」
「今、何か感じたような…」
「フィーラさんも感じ取りましたか」
「私もってことは気のせいではないのか」
「はい。おそらくベクターさんも分かったんじゃないですか?」
「ああ、少しだけど感じたよ。奴らの正装から発せられる独特の匂いと気味の悪い気配。」
3度目以上経験するとえらいもので、マジックアイテムや救世会の黒い正装の気味の悪い気配とか独特のお香のような香りが風に乗ってきただけで分かるようになった。
「全くしつこい限りです」
「中隊長」
「お前達仕事だ。行くぞ」
『「はっ」』
強化したまま猛スピードで駆けつけると案の定、真っ黒なローブに身を包んだ、うつろな眼と生気を感じ取りにくい足ぶりの男が1人。手には今までの小瓶ではなく昼間なのに火をわずかに灯したランプ。
別の手段で来たか!
「騎士団だ!両手を頭の後ろに組んでその場に跪け!!」
「2度もさせるか」
スーーーッチャキンッ
「フィーラさん」
「分かっている。生け捕りだろ」
「お願いします。」
「変な魔法はかけないでくれ。今の状態ですらレベル差で加減を間違えると斬ってしまいそうなのでな。」
「了解です」
「お前達は一旦待機だ。後のフォローを任せる」
『「はっ!」』
「『仲間カード 『陰の者』 発動」
姿形・身体・魔法に特段変化はないが、あるポイントだけが急激に変わる。
足音がしても敵は気に留めず、近付いているのに警戒ひとつ忘れてしまったかのように目線は自分達6名に向いたままだ。
カッ!!
「神ノ意思ニ反スル者達ニハ神罰ヲ…」
「どこを見ている」
「イツノ間ニ…!?」
「『氷縛(ひょうばく)』」
カッチンッコチン
「クッ…救世会ノ名ノ下ニ裁キト救済アレ…!!
ウゥ!!ナゼダ!!」
「首輪に触らなければ自爆はできないのであれば諦めることだ」
カチャ…スーーー…チャキッ…
「私の氷はアタマと同じく相当硬いらしいのでな。」
一度救世会のテロを経験しているからかサクッと捕縛。
腕周りや足首などを氷漬けにされてかわいそうな気もするが、凍傷くらいなら自分の回復系カードで治せる。
目を覚まさせた後で謝ればいいか。
カランッピシィィ…! ボォォォオオオ!!
落としてしまったランプは中の灯火を失うどころか、漏れた液体を伝って飢えた獣の群れのようにその勢いを葉や木に広げ始め…
「キャトル!」
「『バスショット』!!」
バシャァァーーーン ジュゥゥゥゥーー…
消火に不似合いな湯けむりと引き換えに脅威になりかけた火と招かれざる客を捕える氷を一部を洗い流した。
『「セーフ…」』
数日ぶりの救世会の登場によりこの日のレベリングは中止。
急遽、ドラゴルド達を集めて今後の対策について話し合うことになった。
「ドラゴン族の皆様、急な招集にも関わらずご臨席いただ…」
ツイッ ツイッ
『なんだ、今喋って』
アッチ アッチ
ポけーー
「・・・・」
『王都の会議の口調で話されると説明に倍の労力と時間かかるんです。
”ご臨席“とか使わないで話してくれません?
肝心の族長があんな顔したままでは会議は進まないでしょ』
『分かった。善処する』
『まだカタいです。“善処”も厳しいですよ』
『なら…やってみる…では?』
『あっ それならちゃんと伝わります。
ザックさんの集まりだと思って話せばいけると思います』
『そうか。最善は尽くす』
「では仕切り直して。
ドラゴン族の皆さん、今日は急に集まってもらい、ありがとうございます。」
『こんな感じで合ってるのか…?』
『大丈夫です。そのまま続けてください』
「今日は救世会のことでご意見をお聞きしたいことがあってお呼び出ししました。」
「ウム。我も奴らにはアタマにきておった頃じゃモン。
何度も何度も一族の力や命を狙われて、いい加減我慢も限界じゃモン…!!」
人間態から計り知れない強さのオーラと魔力が湧き上がり、全身を握りつぶされるかのような感覚に支配される
「ぅぅ…!!」
「がぁ…!!」
「なんだ…この覇気…!?」
「長老、落ち着くでありまスルっ!
ここで怒っても救世会になんの復讐にもならないどころか、長老の怒気で大恩人サマ達の身がもたないでありまスル」
ハッ!
「スマンじゃモン。ついカッとなってしもうたじゃモン。」
「『光よ、彼らを癒したまえ』」
キラキラキラ…
「死ぬかと思った…サンキュー、ヴァイス」
「大丈夫でありまスルか?」
「ああ…。」
「なんとか…」
今のところ被害があったのは最初の邪神化事件の一回だけだが、いかに言ってもこの里が狙われすぎなので調査が終わったとは言っても王都の使者の立場として、騎士団として友好的な異種族を見殺しにして帰るわけにはいかないのだが、命令もなく滞在を伸ばすわけにはいかないということ。
今後の対策としても騎士達のレベルアップができそうなのは存在としてありがたいが、長居できない騎士団が、それを上回るデメリットの都合上、この異能の持ち主を王都に置いておくのはもっと危険であるということ
など、安全面から政治国交面の観点での問題を挙げて今後の一手、二手先に困っていることをどうにか悪戦苦闘、要所要所で補助しながらドラゴルドとザックさんが飽きないように現状を説明する。
「…ということで邪神化現象についての調査はほぼ終わり、その元凶である救世会の里や近くの街に対する破壊活動が止まない以上、騎士団としても王都に帰還できません。
そこで違う立場の方からご意見を賜…お聞きしたく。」
「フム、我も一族の長じゃモン。皆を守るために人間と要らぬ争いは起こしとうないところじゃモンが、きゅーせーかいの行いについては話が別じゃモン。
自らの目的のために罪のない者をいっぱい傷つけ、我らの命を物のように手に入れてまた大勢を傷つけることに利用ようとした落とし前はつけなければならんじゃモン。
場所が分かればすぐにでも攻め入りたいじゃモン。」
「そうですか…」
「問題は場所でありまスルね…」
「”ケースケ“」
『「「…!」」』
「なんだその顔は」
「ついに名前で呼ぶようになったか」
「ナチュラルに名前呼ばれた…」
「氷が溶けたでありまスル」
「明日は”てんぺんちぃー“ジャン…!」
「うっ…うるさいっ!今その話はしてないだろ!」
日に当たったことがないかのような白い顔を赤らめ、全身で恥ずかしがる姿を見てまた全員が静かに驚く。
脱線した話が戻ってくるのになかなかの時間を要した。
「この間お前の元にベクター達を置いていったな」
「はい」
「何か分かったのか」
「一応…アジトだか拠点があるだろうっていうだいたいの場所を詳しく調べてもらってはいるところです。」
「なに!?」「なぬ!?」
「なぜそれを早く言わなかった!」じゃモン!!」
「確かな証拠も無い上に範囲もかなり広いですし、ドラゴン達や騎士団的にも2つ問題があったからです。」
「問題?」
「はい」
「どんな問題だ、言ってみろ」
「一つ目。普通に考えてそのアジトは、ドラゴン達を邪神化させる液体とか、水に溶かしてか反応させてか大竜巻を起こすようなマジックアイテムを研究・製造してる場所です。
そんなところにターゲットであるドラゴンが来たところでご飯屋さんにカモやニワトリがネギや野菜背負って来るのと同じこと。
邪神化させるための液体を小瓶なんて生優しい量じゃなくてデッカいバケツとか放水用のマジックアイテムでも使ってかけられればドラゴルドは報告書の通り。
当然自分を含む人間も無事には済まないですよね。」
「ああ…。」
「二つ目の前に、大前提としてヴィクトリア王国側の代表者としてフィーラさんが同行するつもりですよね」
「当然だ。奴らには大勢の命が奪われている。
ヴィクトリア王国の騎士団として私達がしっかりと裁きを下さなければならない。」
「ドラゴルドも来るんだよな」
「当たり前じゃモン!!ドラゴン達が傷つけられた分、片っ端からブッ飛ばすんじゃモン!」
「とまぁ、こんな感じで利害は一致しますが、肝心の代表者同士、というかフィーラさんとドラゴン族との相性が悪い以上、今のままじゃ連携どころか今行って何も出来ずにみんな死にますよ。
ただでさえドラゴン族と人間の集団との友好もほとんどないのに、複雑なことが苦手なドラゴルドと変にプライドの高いフィーラさんとでは足並みが揃わなすぎますから、本当にアジトか分からない状態で「おっしゃくぞ!!」とは言えません。それに」
場所を教えてもらいながら○や△をつけた地図を机の中心に広げる。
地図上では両端間の距離は近いように見えるが、実際には何キロ何十キロも離れていて馬も連れていない、たかが30人の人間では到底探しきれない。ドラゴン達が探すにも騒ぎになる。自分が飛べるモンスターに乗って探しても結果は一緒、中型小型のモンスターを探すにも往復で大変な事になる。
「足並みはもちろん自分を含めた人間側の実力が足りていない今、王都にいらっしゃるアベルさん達にお仕事の合間合間で調べてもらっているところなのでその回答が返ってくるまで、やれる準備をするしかありません。」
「なんとかならないのか…!」
「じれったいんじゃモン…!!」
グゥ~~~~~…
「と、とりあえず落ち着いてメシにすっか?」
「そ、そうですね。準備してきます…」
暗い空気が飯ひとつで変わるほど甘い問題な訳がなく、味のしない昼食と気分の重たいままの午後を迎えた。
パチ パチパチ…パチパチ パチパチパチ
チーーン! カーッシャン…
パチパチ パチパチ…パチ…パチパチパチ…パチパチ
チーーン! カーッシャン…
コンコンッ
「は~い」
「私だ」
「どうぞー」
キィ…
「少し…いいか」
「どうしました?」
「午後なのだが…お前の予定はどうなってる」
「どう…って言われても非戦闘職の人達で集まって『各々好きな物を作ってみようの会』の見学したり、ドラゴン達の様子を見に行ったり話したりするくらいです。」
「同行してもいいか」
「いいですけど…戦闘職のフィーラさんが見ても面白いものはないと思いますよ?」
「構わない」
「あ、でもキャトルさん達の観察日記打ち込んじゃうんで少し待ってて下さい」
「ああ。」
しばらくパチパチッパチパチ、たまにチーンカッシャンとリズムの不揃いな音が2人の会話の代わりとして部屋に響く。
どうも会話し慣れない人がいるところもあってか、やたらとチラチラ視線が行き来するのがすごく気になるせいか、気が散ってしょうがない
「何か聞きたい事でも?」
「あ、いや…今はいい…」
「別に質問してもらってもいいですよ。コレはフィーラさんが読んで部下の事を知るために描き続けてる物ですから、特に王女様に提出しなきゃいけないようなものでもないので。」
「では遠慮はしないぞ」
「どうぞ」
「私は…何故こうもドラゴン族と相性が悪いのだろうか…」
一問目から重っ… 普通こういうのってどうでもいいことから聞かない?
まぁ本人からすれば相当重要なことだもんな…
「縦社会と気遣いとかの問題じゃないですか?」
「どういうことだ」
「ほら、ザックさんと話すときの言葉遣いと王女様と話す時の言葉遣いは変えるじゃないですか」
「当然だ。目上の方、それも王族となると言葉をひとつひとつ選ぶのは必要なことだ。」
「ならドラゴルドに対してはどうしてます?」
「ドラゴン族の長だからな、目上の方として扱うようにはしているが…」
「敬語を使うにしても単語選びを王女様と別物にしなきゃ会話のやりとりが成立できないですよね。」
「30人強も居てどうして私だけ会話できないのか、逆に私以外の会話が成立しているのか。疑問通り越して不満まである」
「だからです。縦社会がドラゴン達には合わないってことです。
人間の社会構造って王様を頂点に王女様とかの王様の血縁関係の人がいて、その下に大臣とか騎士団長のカムロさん、そのまた下ってなっていって、最終的に庶民と呼ばれる大勢に支えられて積み重なってますよね。ピラミッドは…分かります?」
「ピラ?なんだそれは?」
やっぱり分かるわけないか…この国、まともな世界史の授業ないみたいだし…
「簡単に言うとこう…三角に積み重なった古ーい建物があるんですけど…あ、」
ピラミッドではないけど三角錐が書かれたカードあったような… あった
「ちょっと形しか同じじゃないですけどこの画の頂点が王様で、下の方に行くにかけて身分が下がる…みたいな話です。分かりますか?」
「なんとなくはな。」
「で、横社会のドラゴルド達はドラゴルドという代表者はいますけど、基本的にはいびつな平面の円なんです。
自分がやれることをみんなの分請け負って、できないことはできるやつが。
何かしらあった時は隣の家だろうが里の端っこだろうがちゃんと手伝うから呼べっていう感じで里にいるみんなが家族としての役割を担ってるんです。」
「王都のそういう上下関係があってそれに応じて使うべき言葉の種類とか所作とかがあると思います。
しかしここはドラゴン達や人間の縦社会に疲れた大賢者が作った空間ですから、重要視されているのは“横並び”、横社会ってやつです。
大事なのは誰が敵で誰が仲間かって話だけで、たまにケンカしながらでも仲間同士で仲良くしようぜって最小限のルールの元、日々ゆったり生活してるんです。
弱肉強食とか実力差がどうとかではなく、ケンカしたからとかキツイ言葉で接してたからとかも関係なく、揺り籠から墓場も、その先までずっと仲間なんです。」
「そうだったのか… よく見てるんだな」
「見てると面白いですよ。
畑の近くでクシャミしたら「大根の葉っぱが全部吹き飛んでなくなるでねぇが!」ってドラゴルドがサンちゃんに怒られてたり、ネロが子供達に飛び方とかブレスの撃ち方とか教えてたり」
「クロが…?」
「ネロは口調があんな感じですけど、なんだかんだ面倒見いいんです。
ドラゴン達の変化に気づくのは1番早いですし、頭悪いふりして陰でいろんなことを考えてます。
ただ…」
「ただ?」
「フィーラさん、何か嫌われるようなことした覚えあります?
さっきもそうだったんですけど、この間からフィーラさんの近くでは見かけないんです」
「この間のお前への失言と、ポリアの街の大竜巻の時あたりで相当気に触ることを言ったようでな…」
「「クロなんとかしろ!」とか?」
「なぜ分かる?」
「なんとなくです」
「正しくは「説明しろ」…だったがそんな感じだな」
「でしょうね。
横社会のドラゴン族にとって上から目線は挑発を意味しますし、クロ呼びを許してるのザックさんだけなんです。」
「英雄とノロマザコの差か…」
「それもありますし、タイプの差の方が大きいんじゃないですか?ザックさんとフィーラさんの言葉を借りるとすれば、横並び派で大胆な馬鹿と、縦社会の慎重な真面目バカの差…とか。
分かりやすく言うと…ザックさんがフィーラさんのことを「おねえさん」って呼ぶかグレンが「おねーさん」って呼ぶかでだいぶ変わってくると思いますが…」
「おい…!なぜあのアホと汚れの知らない美少年を例に挙げた…!」
「正直言って片方は気分のいいものではないってことは分かるでしょ?」
「そうだが…!」
「グレンもあなたのことを少し怖がってるみたいですし」
ズーン…
「この世は残酷だ…」
「ほとんどフィーラさんの行動が原因ですけどね…」
「私はドラゴン達と共闘することは叶わないという事なのだろうか…」
「今のままでは…残念ながら。
ドラゴルドとフィーラさんだけで救世会のアジトに突入するにしても「ヴィクトリア王国騎士団第四中隊がこの場所を摘発する」~とか言ってる間にブレス打ち込んじゃいますね。
それでその後、人間側のやり方とドラゴン側のやり方が違うとか言って揉めますよね」
「何から何までお見通しか…」
「こっちだってただ仲良しこよしでやってないですよ。
フィーラさんが里を植民地にするとか言い出したり、取引の押し付けがあった時は容赦無くサンちゃんの刑からの日本語地獄、トドメに大量のモンスターでタコ殴りにして放り出すくらいの気持ちが無いと恐ろしくて同じ空間に入れれないですもん。」
「本当に容赦ないな…」
「人間側とドラゴン側の両方の期待と信用を背負ってる以上、5手6手先まで読まないと。」
「やっていることはほとんど政治だな」
「王様に“仲良くしたい宣言”をしておいてフィーラさんが原因で頓挫とか「戦になりました」はいろいろマズイでしょ。
ただでさえヤツらのせいで800年間隠してあった祠の場所が筒抜けになりかけてるのに、王国との友好関係が無くなったらどうなるとお思います?」
「どうなる…?
それは…現状維持か、話ができる魔物がいるということが広まって各国がドラゴン族の統治権を手中に納めようとするだろうな」
「その後は?」
「ドラゴン族対人間、国対国の血の争いは避けられないだろうな。」
「横社会を形成しているドラゴン族が人間に牙を剥くと大変ですよ、人間に置き換えるとレベル1人あたり3桁はいくでしょうから」
「そんなに強いのか!?」
「さっきの覇気なんて優しい方です。ドラゴルドが本気で怒ればオーラだけで衝撃波が生まれて近くにいた自分達は吹き飛ばされるか、圧でペチャンコになりますよ。」
「そう考えれば、私は今まで相当危険なことをしていたことになるのか…」
「そうですよ。ここは人間社会とは全く勝手が違うんです。少しは馴染んでください。」
「出来ると思うか?」
「あの時の正体不明だの化けの皮だの言って売られた決闘を挑む自信はどこ行っちゃったんですか…?」
「初日でバキバキにへし折られた…
あの思い出すだけでも恐ろしい地獄の“伝承の儀”とそれを語り継ぐという鬼にな…」
「わ~おひど~い サンちゃ~んっ フィーラさんがオニュむっ…」
「言うなぁぁああああ!!」
「むぐぐっ!!」
プハァ!…ハァ…ハァ…ハァ…
「他に…質問は…?」
ハァ…! ハァ…! ハァ…!
「そうだな…最後に一つ…聞きたい事がある」
「なんですか…?」
「どうにか赤い少年とお近づきに」
「黙らっしゃい犯罪者予備軍」
「スミマセン」
ある程度読める物になったので、ぬるくなりかけているお堅い隊長サマをお供に里の奥にある林の空き地へ向かう
「おーい!誰かトンカチ持っていったかー?」
「あーオレだ!ここんとこちゃちゃっと打ってしまうからもう少し貸してくれー」
「後で使うからゆっくりでいいぞー」
「あいよー」
「あれ…?どうして計算通りに術式が機能しないんだ?」
「オイ、さっき教えたところでクソみてぇなミスしてんぞ。
左下んとこ星は星でも6芒星だろ普通。」
「え…?6芒星の術式ってパワーが出すぎて暴発するんじゃ…」
「あ?どんなザコ回路使ったら暴発すんだ
6芒星じゃねぇとせっかく中に貯めた魔力が外に逃げんだろ」
「ってことは…こことここが外れちゃいますよ?」
「何やってんだ、紙よこせバカが…」
サラサラサラッ
「ほら、こうすりゃ回んだろ」
「なるほど!そんな手があったか!」
「ここにこのページの魔法陣を組み込むといいでありまスルよ」
「なんだこの魔法陣…!見た事ないぞ!」
「大賢者サマが使っていたものでありまスルから現代の人間の文明には残っていないでありまスルね。」
「この本…すごい…!
これならファイアボールでも上級魔法と同じくらいの威力が出るぞ!!」
「無駄なことはしないのが大賢者フレアの生き様でありまスル。」
「あ、オリバーさんお疲れ様です。」
「おうケースケ、思ったより来るの早かったな」
「少しフィーラさんに生産職の皆さんについて知ってもらおうと思って早めに切り上げてきました」
「そかそか、それはし~っかりと頼むぜケースケ。
なんせウチの中隊長は生産どころか非戦闘職について何も知らないからな。」
「はい。ビシバシと叩き込みます。覚悟してきてますよねっフィーラさん」
「あ…ああ。こここ、この機会だからなっ!範囲外のことも知っておくことも中隊長としての役目というものだっ…」
「と言うことなので、もう今までの常識の全てバッキバキにへし折ってきます。」
「頼んだ」
「ちょっ…お手柔らかに頼むぞ…」
「お邪魔しました。」
「あ、ちょっと待てケースケ」
「はい?」
「忘れるところだった。これを持っていけ。」
差し出されたのは片手いっぱいに乗るサイズのどちらかと言うとペチャっとした形をした、革張りの箱。
箱自体が肉厚で中には何も入っていなく、柔らかい素材が使われていてスナップボタン(パッチンボタン)が留めてある。
背面にはベルトを通すところが付いている
「これってもしかして…!」
「お前、全部出したらちょっとした山になるくらい沢山カード持ってるだろ。
いつも使う分くらいは分けて入れて持ち歩くモノがいるだろうと思って試しにな。」
「ありがとうございます!!やった!デッキケースをベルトにつけて歩くのやってみたかったんですよ!!
使ってみていいですか?」
「もちろんだとも。」
ベルトを一度外し、ちょうどいい場所に来るところを探す。右腰だと日常生活で当たったりして差し支えが出るので少しずらして右後ろに。
「どうですか?」
「サマになってるぜ。初めてつけたものとは思えないな。実際にカード入れてみせてくれ」
「はいっ!」
パチッと音を鳴らし、あるべき所にデッキを入れてみる。余裕はあるが大きすぎず、出し入れに困るほどはピッタリすぎず、そして何より中が柔らかい素材を使ってくれているのでジャンプしたり、急な動きがあっても中で心配になるような音がしない。まさに完璧なデッキケースだ。
サッ スッ パチッ
「完璧です!ありがとうございます!!」
「そんなに喜んでくれるとはな。作った甲斐があるってものだ。
そうだ、デイモンとレジーのところに行ってみろよ。アイツらも面白そーなものを作ってるみたいだからな。」
「はい、行ってみます。作業中ありがとうございました」
「気にするな。その顔が見れて生産職としては幸せだ。
それと同じの2ついるだろ、今日は気分がいいからついでに作っておいてやるよ」
「ほんとですか!ありがとごうざいます!」
「おうっ」
そこから何人か回って、1番、目につくデッカい物の元へ足が向く。
「スゲェ~…」
「あ、ケースケさん」
「あっお疲れ様ですドリアスさん」
「ケースケさんもお疲れ様です。午前中はなにか大変だったみたいですけど何が合ったんですか」
「はい。ちょっと連中の関係でまたありまして。」
「やっぱりそうだったんですね」
「やっぱり?」
「あのあとクリフトさん達がこの船の完成度合いを聞きにボクを探してたそうなので空路が急ぐかもって」
「空…ってことはコレ、飛行船になるんですか!?」」
「そうですよ。近いうちに小さい軍艦としてボクも役に立てるように設計してるんです。
まだ骨組みに板を張り終わっただけの小舟状態ですけどね。
なにぶん資料がニホン語だとエンジンとか運転のために使うシステムとかもまだまだ解析できてなくて…」
「それなら自分も少し手伝いますよ。専門用語とかは分かりませんけど、力になれると思いますよ」
「本当ですか!助かります!」
「ついでですからフィーラさんにも平仮名と片仮名を教えておきま……あれ?フィーラさん知りません?」
「5尺……1、2、3、4、5。ここのあたりか」
スーーーーー…チャキッ
「フッ!!」
「こんなものだな」
「あれ…材木は?置いてたよな」
「確かに置いたぞ。」
「中隊長、ここに置いてあった3メートルほどの材木知りませんか?」
「ああ、それなら切っておいたぞ。そこに全部。5尺だろ」
「「は?」」
「中隊長…これいくつで切ったんだよ…!」
「この手で尺取り虫のようにして5回目のところだが…」
『「「そんなわけあるか!!」」』
スペースの都合上まぁまぁの距離を持ち、集中して作業していたはずの者達も全員が声を揃えてツッコむ。
1尺と言えば通常30センチとちょっとなので、目標値は150~160センチくらいのはず。
見る資料や30.いくつのものもあれば、33センチのものもあるが、フィーラさんの勘違いはそんな甘い差ではない。
グーの状態から親指と小指を出したものを1尺としてカウントしてしまったため、1尺15センチ×5で必要な長さの70センチほどになってしまっている。
「どこに虫基準にして長さ測るやつがいる!!?」
「わっ…わざとじゃないんだ!
お前達の頑張っている様子を見て感化されたというか、微力ながらも手伝おうと思ってだなっ
ケケケケースケ、お前からも何か言ってくれ」
「いや、目を話した隙に勝手にやったんですからこれは庇っても庇いきれないでしょ。
中隊長さんなんですから自分でやったことくらい自分で後始末してください。」
「中隊長!どうなんですか!?」
「あ…あ…あ…」
ピューーンッ
「すみませんでしたぁぁぁ!!」
『「待てコラァァァ!!」』
「ギャーーーーー!!」
逮捕されましたとさ。
ズルズルズルズルズルズル…
「ほ、本当に反省しているんだぁぁぁぁ!!
サンちゃんの刑だけは…サンちゃんの刑だけはァァァァァ!!」
「今日の中隊長には弁明の余地なしっ!!大人しく反省してきてください!!」
「中隊長だからって許されると思うな!オレ達が苦労してとってきたエルダートレントを台無しにした分の責任はとってもらうぞ!!」
「もうあぎらめろぃ。この際オメェには横社会の厳しさを叩き込まねぇど一生、前に進むこどはでぎねんだ。」
「嫌だァァァァァァ!お慈悲をぉぉぉぉ!お慈悲をくださいぃぃ!!」
「まずは薪割りからやるだ。まっずぐに振り下ろせるようになるまで休憩無しだど」
「ごめんなさぁぁあああーーーーーーーい!!!!」
ガチガチガチガチーーーンッ
「行けるな!!」
「はいっ」
「『大規模っ フライッ返しぃ』!!」
フライっ!パァァーーーーーーーン
「おりゃあああああああ!!」
「たぁああああああああ!!」
「このぉおおおおおおお!!」
スパスパパパパパパパパパーーーーーン!!
『レベルが上がりました』
『レベルが上がりました』
フィーラ・アーデルハイト
[職業]氷層騎士
[レベル]37
[固有スキル]絶対氷盾
『レベルが上がりました』
『レベルが上がりました』
キャトル・ウォンサム
[職業]魔法使い
[レベル]26
[固有スキル]給湯昇火
『レベルが上がりました』
『レベルが上がりました』
スパンダ・クートル
[職業]料理人
[レベル]30
[固有スキル]目利きの極意
『レベルが上がりました』
『レベルが上がりました』
クリフト・インデサス
[職業]神官
[レベル]28
[固有スキル]優柔不断の迷審判
『レベルが上がりました』
ベクター・ノーン
[職業]白騎士
[レベル]38
[固有スキル]表裏の憂鬱
「スゲェ……」
「どうなってるんだコレ…」
「本当にレベルが上がってる…」
「私たちはあれだけ苦労して上がらなかったというのに…」
「これでも人によってはもう1、2段階強化できるみたいですから、試してもらいますか?」
「ああ。」
「ケー、行けるかい?」
シーーン…
「どこ行った?」
「あちゃ~… 結構後ろですね」
フラフラ…ヨロヨロ…
「みなさ~~ん…まってくださ~い…」
『「あ、忘れてた」』
ハァ…ハァ…ハァ…ハァ…ハァ…ハァ…
「やっと…やっと追いついた…」
「ケースケ・カミヤ!ここは魔物の多い地帯だから気を抜くなと言った…」
ギロッ
「…だ…ろ…」
「こっちのセリフですよ!」
ビクッ
「皆さんが自分のことを忘れてバンバン進むから置いてかれたんですけど!!?
皆さんの武器を召喚したら移動用のモンスターカードも魔力が足りないって朝言ったばっかりですよね!何を聞いてたんですか?」
「それならお前自身の強化を上げればよかったんじゃ…」
「自分にはカードが無いと言いませんでしたぁ!?」
「…すいません」
「あの!忘れているかもしれないんでもう一回言っておきますけど、自分はカードじゃない武器は使えないっていう体の構造してるんです。
せめてカード武器持ってない時くらいはほったらかしにはしないでください。」
『「マジでごめんなさい」』
小隊編成を終えて数日、代わるがわる小隊ごとにレベルアップさせては必要なカードを作り、試行錯誤しては別の小隊にとグルグルグルグル回してをしていた。
小隊を組む中で人同士の相性の良し悪しをみて何人か入れ替えたりなんだかんだして、なかなか悪くない程度の連携の基礎は掴めたらしいのだが、それに引き換え自分はというと…
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
そう、あれは昨日
キンッ!! キャンッ! ブォンッ!!
「とりゃっ フンっ! おとととっ なんの!」
「くうぅ…! このぉ! ヒィッ…! えいっ!」
「スゴイ…ザックさんの攻撃をギリギリ受け流せている…」
「あいつ、あんな腰が引けているのにどこにあんなパワーがあるというんだ…」
「おら!!」
この一撃はヤバい!!
「『Dr.ゴブリン』1号、2号
『見習いキューピット』、頼む!!」
「邪魔だぁーー!!」
ザンッ ギンっ スパッ
「配置カード『閻魔の足痕』の効果発動!!」
破壊された数だけデッキからドローでき、手札からドローした枚数 + 1枚デッキの1番下に戻すことで、相手1人または1体の攻撃力・防御力を10秒間大幅に引き下げる!!
「マジか…ヤベっ」
構え直された鋼の聖剣がそこに生まれた隙を逃すまいと持ち主の動きに最大限の補助をする。
もちろんレベルが40にもなるスーパー前衛職のフィジカルを一部落とされたところで半分のレベルの後衛職に負けるわけもなく、いくら振り込んでもその先に受ける刃が置かれていて、こちらの攻撃が届く気配すらなかった。
「オラぁ!」
軸足をかけられバランスを崩してしまい、その隙にと持ち手に裏拳がぶつけられ、剣が手から弾かれ、離れ、そして何より飛ばされ宙を舞う。
「参りました。」
「おっしゃオレの勝ちぃ!!」
「さすがですねザックさん フィーラさんの時と違って対応力が半端じゃあなかったです」
「へへっ そりゃダテに作戦会議で居眠りしてねぇからよ。そん時そん時に合わせて動き回んのがオハコってやつだ」
「仕事はしてください…」
本当に大丈夫なのか?この人が副隊長で…
「おめぇもいい剣筋だったぜ。とても後衛ジョブとは思えねぇくらいだ。」
「今のはカード武器だからだと思いますけど」
「カード武器だから?
カードじゃねぇ普通の武器だとなんか変わんのか?」
「変わるっていうか元々素人なので普通の剣を持ったところでそのまま素人なんですよね…
カード持ってたら片手塞がりますし」
「ふーーん ちょっとやってみよーぜ」
「話聞いてました!?」
ボロボロッ…
「だがら…いったじゃないれすかぁぁ…」
「悪い…ここまで弱ぇとは思わなくてよ…」
「もう…無理…」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「また…配慮に欠けたことを…」
「まぁ気分がノる気持ちは分かります。
レベルが"大幅に"上がることが騎士団のお仕事ではほとんど無いと何名からも聞いてますから。
けど召喚士が一緒の場合体力もそんなにあるわけでもなく、皆さんと違って強化系のスキルは一つもないですし、使えてもカードは原則ドロー制。ひとつひとつの効果から自分のことを過信されても運次第でできない時はできないんで、そこら辺だけは把握お願いしますね。」
「すまなかった。」
「おいおい聞いたか 今の」
「ヤバいな」
「言葉だけで中隊長をねじ伏せた…!」
「当然さ。彼はドラゴン全員から信頼され、それに応え続けている人間。ボクらみたいに好かれたり嫌われたりがある人間じゃあ勝負にならないよ。」
「すげぇ…」
「…~…ですから、フィーラさんが前ばっかり見てたら『表裏の憂鬱』であるはずのないものが降ってきたりするんですから、今までの冷静さを忘れないでくださいよ」
「そうだった…」
「他にも…~」
こんな感じで、スキル以外の弱い部分が見え始めた。
一応小隊ごとに分ける際の基準とかはあって
・作成した仲間カードの属性
・各ドラゴンとの相性
・小隊メンバー同士のスキル、性格、必要武器
など、練りに練ってやっと仮で組んでいるのだが、現実と理想で問題点が2つ。
1つは合成しようと、カードガチャを使おうと、全員が全員に都合のいい武器は用意できないこと。
まぁこれは2個目の問題の都合上、『鋼の聖剣』のように効果や使用条件が複雑ではないなどの一定の条件さえ満たせば何人かは同じカードを共有することで取り急ぎ解決はした。
もう1つは、単純にいっぺんに30人分の面倒は見ることができないこと。
基本的に自分が援護をするには魔力を要するが、30人もいれば多かれ少なかれ六属性全部揃っているわけで、そこにドラゴンや魔法カードやその他もろもろが入っているので頑張ってレベリングしたとしても自分と一緒に戦えるのは1小隊、多くても2小隊まで。
ひとまず6人1小隊ごとにレベリングと観察してはいるものの、強化や装備カードを使う前後差に順応できている人が半分もいない。
どうやら強化割合が何割とかではなく何倍の可能性があるとのこと。
街中での強化のレベルは考えた方がいいのか?
ビュォォォォォ…
ゾワゾワ…!
スンスンッ…
「ん…?」「この感じ…」「今のは…」
「どうしました?隊長」
「今、何か感じたような…」
「フィーラさんも感じ取りましたか」
「私もってことは気のせいではないのか」
「はい。おそらくベクターさんも分かったんじゃないですか?」
「ああ、少しだけど感じたよ。奴らの正装から発せられる独特の匂いと気味の悪い気配。」
3度目以上経験するとえらいもので、マジックアイテムや救世会の黒い正装の気味の悪い気配とか独特のお香のような香りが風に乗ってきただけで分かるようになった。
「全くしつこい限りです」
「中隊長」
「お前達仕事だ。行くぞ」
『「はっ」』
強化したまま猛スピードで駆けつけると案の定、真っ黒なローブに身を包んだ、うつろな眼と生気を感じ取りにくい足ぶりの男が1人。手には今までの小瓶ではなく昼間なのに火をわずかに灯したランプ。
別の手段で来たか!
「騎士団だ!両手を頭の後ろに組んでその場に跪け!!」
「2度もさせるか」
スーーーッチャキンッ
「フィーラさん」
「分かっている。生け捕りだろ」
「お願いします。」
「変な魔法はかけないでくれ。今の状態ですらレベル差で加減を間違えると斬ってしまいそうなのでな。」
「了解です」
「お前達は一旦待機だ。後のフォローを任せる」
『「はっ!」』
「『仲間カード 『陰の者』 発動」
姿形・身体・魔法に特段変化はないが、あるポイントだけが急激に変わる。
足音がしても敵は気に留めず、近付いているのに警戒ひとつ忘れてしまったかのように目線は自分達6名に向いたままだ。
カッ!!
「神ノ意思ニ反スル者達ニハ神罰ヲ…」
「どこを見ている」
「イツノ間ニ…!?」
「『氷縛(ひょうばく)』」
カッチンッコチン
「クッ…救世会ノ名ノ下ニ裁キト救済アレ…!!
ウゥ!!ナゼダ!!」
「首輪に触らなければ自爆はできないのであれば諦めることだ」
カチャ…スーーー…チャキッ…
「私の氷はアタマと同じく相当硬いらしいのでな。」
一度救世会のテロを経験しているからかサクッと捕縛。
腕周りや足首などを氷漬けにされてかわいそうな気もするが、凍傷くらいなら自分の回復系カードで治せる。
目を覚まさせた後で謝ればいいか。
カランッピシィィ…! ボォォォオオオ!!
落としてしまったランプは中の灯火を失うどころか、漏れた液体を伝って飢えた獣の群れのようにその勢いを葉や木に広げ始め…
「キャトル!」
「『バスショット』!!」
バシャァァーーーン ジュゥゥゥゥーー…
消火に不似合いな湯けむりと引き換えに脅威になりかけた火と招かれざる客を捕える氷を一部を洗い流した。
『「セーフ…」』
数日ぶりの救世会の登場によりこの日のレベリングは中止。
急遽、ドラゴルド達を集めて今後の対策について話し合うことになった。
「ドラゴン族の皆様、急な招集にも関わらずご臨席いただ…」
ツイッ ツイッ
『なんだ、今喋って』
アッチ アッチ
ポけーー
「・・・・」
『王都の会議の口調で話されると説明に倍の労力と時間かかるんです。
”ご臨席“とか使わないで話してくれません?
肝心の族長があんな顔したままでは会議は進まないでしょ』
『分かった。善処する』
『まだカタいです。“善処”も厳しいですよ』
『なら…やってみる…では?』
『あっ それならちゃんと伝わります。
ザックさんの集まりだと思って話せばいけると思います』
『そうか。最善は尽くす』
「では仕切り直して。
ドラゴン族の皆さん、今日は急に集まってもらい、ありがとうございます。」
『こんな感じで合ってるのか…?』
『大丈夫です。そのまま続けてください』
「今日は救世会のことでご意見をお聞きしたいことがあってお呼び出ししました。」
「ウム。我も奴らにはアタマにきておった頃じゃモン。
何度も何度も一族の力や命を狙われて、いい加減我慢も限界じゃモン…!!」
人間態から計り知れない強さのオーラと魔力が湧き上がり、全身を握りつぶされるかのような感覚に支配される
「ぅぅ…!!」
「がぁ…!!」
「なんだ…この覇気…!?」
「長老、落ち着くでありまスルっ!
ここで怒っても救世会になんの復讐にもならないどころか、長老の怒気で大恩人サマ達の身がもたないでありまスル」
ハッ!
「スマンじゃモン。ついカッとなってしもうたじゃモン。」
「『光よ、彼らを癒したまえ』」
キラキラキラ…
「死ぬかと思った…サンキュー、ヴァイス」
「大丈夫でありまスルか?」
「ああ…。」
「なんとか…」
今のところ被害があったのは最初の邪神化事件の一回だけだが、いかに言ってもこの里が狙われすぎなので調査が終わったとは言っても王都の使者の立場として、騎士団として友好的な異種族を見殺しにして帰るわけにはいかないのだが、命令もなく滞在を伸ばすわけにはいかないということ。
今後の対策としても騎士達のレベルアップができそうなのは存在としてありがたいが、長居できない騎士団が、それを上回るデメリットの都合上、この異能の持ち主を王都に置いておくのはもっと危険であるということ
など、安全面から政治国交面の観点での問題を挙げて今後の一手、二手先に困っていることをどうにか悪戦苦闘、要所要所で補助しながらドラゴルドとザックさんが飽きないように現状を説明する。
「…ということで邪神化現象についての調査はほぼ終わり、その元凶である救世会の里や近くの街に対する破壊活動が止まない以上、騎士団としても王都に帰還できません。
そこで違う立場の方からご意見を賜…お聞きしたく。」
「フム、我も一族の長じゃモン。皆を守るために人間と要らぬ争いは起こしとうないところじゃモンが、きゅーせーかいの行いについては話が別じゃモン。
自らの目的のために罪のない者をいっぱい傷つけ、我らの命を物のように手に入れてまた大勢を傷つけることに利用ようとした落とし前はつけなければならんじゃモン。
場所が分かればすぐにでも攻め入りたいじゃモン。」
「そうですか…」
「問題は場所でありまスルね…」
「”ケースケ“」
『「「…!」」』
「なんだその顔は」
「ついに名前で呼ぶようになったか」
「ナチュラルに名前呼ばれた…」
「氷が溶けたでありまスル」
「明日は”てんぺんちぃー“ジャン…!」
「うっ…うるさいっ!今その話はしてないだろ!」
日に当たったことがないかのような白い顔を赤らめ、全身で恥ずかしがる姿を見てまた全員が静かに驚く。
脱線した話が戻ってくるのになかなかの時間を要した。
「この間お前の元にベクター達を置いていったな」
「はい」
「何か分かったのか」
「一応…アジトだか拠点があるだろうっていうだいたいの場所を詳しく調べてもらってはいるところです。」
「なに!?」「なぬ!?」
「なぜそれを早く言わなかった!」じゃモン!!」
「確かな証拠も無い上に範囲もかなり広いですし、ドラゴン達や騎士団的にも2つ問題があったからです。」
「問題?」
「はい」
「どんな問題だ、言ってみろ」
「一つ目。普通に考えてそのアジトは、ドラゴン達を邪神化させる液体とか、水に溶かしてか反応させてか大竜巻を起こすようなマジックアイテムを研究・製造してる場所です。
そんなところにターゲットであるドラゴンが来たところでご飯屋さんにカモやニワトリがネギや野菜背負って来るのと同じこと。
邪神化させるための液体を小瓶なんて生優しい量じゃなくてデッカいバケツとか放水用のマジックアイテムでも使ってかけられればドラゴルドは報告書の通り。
当然自分を含む人間も無事には済まないですよね。」
「ああ…。」
「二つ目の前に、大前提としてヴィクトリア王国側の代表者としてフィーラさんが同行するつもりですよね」
「当然だ。奴らには大勢の命が奪われている。
ヴィクトリア王国の騎士団として私達がしっかりと裁きを下さなければならない。」
「ドラゴルドも来るんだよな」
「当たり前じゃモン!!ドラゴン達が傷つけられた分、片っ端からブッ飛ばすんじゃモン!」
「とまぁ、こんな感じで利害は一致しますが、肝心の代表者同士、というかフィーラさんとドラゴン族との相性が悪い以上、今のままじゃ連携どころか今行って何も出来ずにみんな死にますよ。
ただでさえドラゴン族と人間の集団との友好もほとんどないのに、複雑なことが苦手なドラゴルドと変にプライドの高いフィーラさんとでは足並みが揃わなすぎますから、本当にアジトか分からない状態で「おっしゃくぞ!!」とは言えません。それに」
場所を教えてもらいながら○や△をつけた地図を机の中心に広げる。
地図上では両端間の距離は近いように見えるが、実際には何キロ何十キロも離れていて馬も連れていない、たかが30人の人間では到底探しきれない。ドラゴン達が探すにも騒ぎになる。自分が飛べるモンスターに乗って探しても結果は一緒、中型小型のモンスターを探すにも往復で大変な事になる。
「足並みはもちろん自分を含めた人間側の実力が足りていない今、王都にいらっしゃるアベルさん達にお仕事の合間合間で調べてもらっているところなのでその回答が返ってくるまで、やれる準備をするしかありません。」
「なんとかならないのか…!」
「じれったいんじゃモン…!!」
グゥ~~~~~…
「と、とりあえず落ち着いてメシにすっか?」
「そ、そうですね。準備してきます…」
暗い空気が飯ひとつで変わるほど甘い問題な訳がなく、味のしない昼食と気分の重たいままの午後を迎えた。
パチ パチパチ…パチパチ パチパチパチ
チーーン! カーッシャン…
パチパチ パチパチ…パチ…パチパチパチ…パチパチ
チーーン! カーッシャン…
コンコンッ
「は~い」
「私だ」
「どうぞー」
キィ…
「少し…いいか」
「どうしました?」
「午後なのだが…お前の予定はどうなってる」
「どう…って言われても非戦闘職の人達で集まって『各々好きな物を作ってみようの会』の見学したり、ドラゴン達の様子を見に行ったり話したりするくらいです。」
「同行してもいいか」
「いいですけど…戦闘職のフィーラさんが見ても面白いものはないと思いますよ?」
「構わない」
「あ、でもキャトルさん達の観察日記打ち込んじゃうんで少し待ってて下さい」
「ああ。」
しばらくパチパチッパチパチ、たまにチーンカッシャンとリズムの不揃いな音が2人の会話の代わりとして部屋に響く。
どうも会話し慣れない人がいるところもあってか、やたらとチラチラ視線が行き来するのがすごく気になるせいか、気が散ってしょうがない
「何か聞きたい事でも?」
「あ、いや…今はいい…」
「別に質問してもらってもいいですよ。コレはフィーラさんが読んで部下の事を知るために描き続けてる物ですから、特に王女様に提出しなきゃいけないようなものでもないので。」
「では遠慮はしないぞ」
「どうぞ」
「私は…何故こうもドラゴン族と相性が悪いのだろうか…」
一問目から重っ… 普通こういうのってどうでもいいことから聞かない?
まぁ本人からすれば相当重要なことだもんな…
「縦社会と気遣いとかの問題じゃないですか?」
「どういうことだ」
「ほら、ザックさんと話すときの言葉遣いと王女様と話す時の言葉遣いは変えるじゃないですか」
「当然だ。目上の方、それも王族となると言葉をひとつひとつ選ぶのは必要なことだ。」
「ならドラゴルドに対してはどうしてます?」
「ドラゴン族の長だからな、目上の方として扱うようにはしているが…」
「敬語を使うにしても単語選びを王女様と別物にしなきゃ会話のやりとりが成立できないですよね。」
「30人強も居てどうして私だけ会話できないのか、逆に私以外の会話が成立しているのか。疑問通り越して不満まである」
「だからです。縦社会がドラゴン達には合わないってことです。
人間の社会構造って王様を頂点に王女様とかの王様の血縁関係の人がいて、その下に大臣とか騎士団長のカムロさん、そのまた下ってなっていって、最終的に庶民と呼ばれる大勢に支えられて積み重なってますよね。ピラミッドは…分かります?」
「ピラ?なんだそれは?」
やっぱり分かるわけないか…この国、まともな世界史の授業ないみたいだし…
「簡単に言うとこう…三角に積み重なった古ーい建物があるんですけど…あ、」
ピラミッドではないけど三角錐が書かれたカードあったような… あった
「ちょっと形しか同じじゃないですけどこの画の頂点が王様で、下の方に行くにかけて身分が下がる…みたいな話です。分かりますか?」
「なんとなくはな。」
「で、横社会のドラゴルド達はドラゴルドという代表者はいますけど、基本的にはいびつな平面の円なんです。
自分がやれることをみんなの分請け負って、できないことはできるやつが。
何かしらあった時は隣の家だろうが里の端っこだろうがちゃんと手伝うから呼べっていう感じで里にいるみんなが家族としての役割を担ってるんです。」
「王都のそういう上下関係があってそれに応じて使うべき言葉の種類とか所作とかがあると思います。
しかしここはドラゴン達や人間の縦社会に疲れた大賢者が作った空間ですから、重要視されているのは“横並び”、横社会ってやつです。
大事なのは誰が敵で誰が仲間かって話だけで、たまにケンカしながらでも仲間同士で仲良くしようぜって最小限のルールの元、日々ゆったり生活してるんです。
弱肉強食とか実力差がどうとかではなく、ケンカしたからとかキツイ言葉で接してたからとかも関係なく、揺り籠から墓場も、その先までずっと仲間なんです。」
「そうだったのか… よく見てるんだな」
「見てると面白いですよ。
畑の近くでクシャミしたら「大根の葉っぱが全部吹き飛んでなくなるでねぇが!」ってドラゴルドがサンちゃんに怒られてたり、ネロが子供達に飛び方とかブレスの撃ち方とか教えてたり」
「クロが…?」
「ネロは口調があんな感じですけど、なんだかんだ面倒見いいんです。
ドラゴン達の変化に気づくのは1番早いですし、頭悪いふりして陰でいろんなことを考えてます。
ただ…」
「ただ?」
「フィーラさん、何か嫌われるようなことした覚えあります?
さっきもそうだったんですけど、この間からフィーラさんの近くでは見かけないんです」
「この間のお前への失言と、ポリアの街の大竜巻の時あたりで相当気に触ることを言ったようでな…」
「「クロなんとかしろ!」とか?」
「なぜ分かる?」
「なんとなくです」
「正しくは「説明しろ」…だったがそんな感じだな」
「でしょうね。
横社会のドラゴン族にとって上から目線は挑発を意味しますし、クロ呼びを許してるのザックさんだけなんです。」
「英雄とノロマザコの差か…」
「それもありますし、タイプの差の方が大きいんじゃないですか?ザックさんとフィーラさんの言葉を借りるとすれば、横並び派で大胆な馬鹿と、縦社会の慎重な真面目バカの差…とか。
分かりやすく言うと…ザックさんがフィーラさんのことを「おねえさん」って呼ぶかグレンが「おねーさん」って呼ぶかでだいぶ変わってくると思いますが…」
「おい…!なぜあのアホと汚れの知らない美少年を例に挙げた…!」
「正直言って片方は気分のいいものではないってことは分かるでしょ?」
「そうだが…!」
「グレンもあなたのことを少し怖がってるみたいですし」
ズーン…
「この世は残酷だ…」
「ほとんどフィーラさんの行動が原因ですけどね…」
「私はドラゴン達と共闘することは叶わないという事なのだろうか…」
「今のままでは…残念ながら。
ドラゴルドとフィーラさんだけで救世会のアジトに突入するにしても「ヴィクトリア王国騎士団第四中隊がこの場所を摘発する」~とか言ってる間にブレス打ち込んじゃいますね。
それでその後、人間側のやり方とドラゴン側のやり方が違うとか言って揉めますよね」
「何から何までお見通しか…」
「こっちだってただ仲良しこよしでやってないですよ。
フィーラさんが里を植民地にするとか言い出したり、取引の押し付けがあった時は容赦無くサンちゃんの刑からの日本語地獄、トドメに大量のモンスターでタコ殴りにして放り出すくらいの気持ちが無いと恐ろしくて同じ空間に入れれないですもん。」
「本当に容赦ないな…」
「人間側とドラゴン側の両方の期待と信用を背負ってる以上、5手6手先まで読まないと。」
「やっていることはほとんど政治だな」
「王様に“仲良くしたい宣言”をしておいてフィーラさんが原因で頓挫とか「戦になりました」はいろいろマズイでしょ。
ただでさえヤツらのせいで800年間隠してあった祠の場所が筒抜けになりかけてるのに、王国との友好関係が無くなったらどうなるとお思います?」
「どうなる…?
それは…現状維持か、話ができる魔物がいるということが広まって各国がドラゴン族の統治権を手中に納めようとするだろうな」
「その後は?」
「ドラゴン族対人間、国対国の血の争いは避けられないだろうな。」
「横社会を形成しているドラゴン族が人間に牙を剥くと大変ですよ、人間に置き換えるとレベル1人あたり3桁はいくでしょうから」
「そんなに強いのか!?」
「さっきの覇気なんて優しい方です。ドラゴルドが本気で怒ればオーラだけで衝撃波が生まれて近くにいた自分達は吹き飛ばされるか、圧でペチャンコになりますよ。」
「そう考えれば、私は今まで相当危険なことをしていたことになるのか…」
「そうですよ。ここは人間社会とは全く勝手が違うんです。少しは馴染んでください。」
「出来ると思うか?」
「あの時の正体不明だの化けの皮だの言って売られた決闘を挑む自信はどこ行っちゃったんですか…?」
「初日でバキバキにへし折られた…
あの思い出すだけでも恐ろしい地獄の“伝承の儀”とそれを語り継ぐという鬼にな…」
「わ~おひど~い サンちゃ~んっ フィーラさんがオニュむっ…」
「言うなぁぁああああ!!」
「むぐぐっ!!」
プハァ!…ハァ…ハァ…ハァ…
「他に…質問は…?」
ハァ…! ハァ…! ハァ…!
「そうだな…最後に一つ…聞きたい事がある」
「なんですか…?」
「どうにか赤い少年とお近づきに」
「黙らっしゃい犯罪者予備軍」
「スミマセン」
ある程度読める物になったので、ぬるくなりかけているお堅い隊長サマをお供に里の奥にある林の空き地へ向かう
「おーい!誰かトンカチ持っていったかー?」
「あーオレだ!ここんとこちゃちゃっと打ってしまうからもう少し貸してくれー」
「後で使うからゆっくりでいいぞー」
「あいよー」
「あれ…?どうして計算通りに術式が機能しないんだ?」
「オイ、さっき教えたところでクソみてぇなミスしてんぞ。
左下んとこ星は星でも6芒星だろ普通。」
「え…?6芒星の術式ってパワーが出すぎて暴発するんじゃ…」
「あ?どんなザコ回路使ったら暴発すんだ
6芒星じゃねぇとせっかく中に貯めた魔力が外に逃げんだろ」
「ってことは…こことここが外れちゃいますよ?」
「何やってんだ、紙よこせバカが…」
サラサラサラッ
「ほら、こうすりゃ回んだろ」
「なるほど!そんな手があったか!」
「ここにこのページの魔法陣を組み込むといいでありまスルよ」
「なんだこの魔法陣…!見た事ないぞ!」
「大賢者サマが使っていたものでありまスルから現代の人間の文明には残っていないでありまスルね。」
「この本…すごい…!
これならファイアボールでも上級魔法と同じくらいの威力が出るぞ!!」
「無駄なことはしないのが大賢者フレアの生き様でありまスル。」
「あ、オリバーさんお疲れ様です。」
「おうケースケ、思ったより来るの早かったな」
「少しフィーラさんに生産職の皆さんについて知ってもらおうと思って早めに切り上げてきました」
「そかそか、それはし~っかりと頼むぜケースケ。
なんせウチの中隊長は生産どころか非戦闘職について何も知らないからな。」
「はい。ビシバシと叩き込みます。覚悟してきてますよねっフィーラさん」
「あ…ああ。こここ、この機会だからなっ!範囲外のことも知っておくことも中隊長としての役目というものだっ…」
「と言うことなので、もう今までの常識の全てバッキバキにへし折ってきます。」
「頼んだ」
「ちょっ…お手柔らかに頼むぞ…」
「お邪魔しました。」
「あ、ちょっと待てケースケ」
「はい?」
「忘れるところだった。これを持っていけ。」
差し出されたのは片手いっぱいに乗るサイズのどちらかと言うとペチャっとした形をした、革張りの箱。
箱自体が肉厚で中には何も入っていなく、柔らかい素材が使われていてスナップボタン(パッチンボタン)が留めてある。
背面にはベルトを通すところが付いている
「これってもしかして…!」
「お前、全部出したらちょっとした山になるくらい沢山カード持ってるだろ。
いつも使う分くらいは分けて入れて持ち歩くモノがいるだろうと思って試しにな。」
「ありがとうございます!!やった!デッキケースをベルトにつけて歩くのやってみたかったんですよ!!
使ってみていいですか?」
「もちろんだとも。」
ベルトを一度外し、ちょうどいい場所に来るところを探す。右腰だと日常生活で当たったりして差し支えが出るので少しずらして右後ろに。
「どうですか?」
「サマになってるぜ。初めてつけたものとは思えないな。実際にカード入れてみせてくれ」
「はいっ!」
パチッと音を鳴らし、あるべき所にデッキを入れてみる。余裕はあるが大きすぎず、出し入れに困るほどはピッタリすぎず、そして何より中が柔らかい素材を使ってくれているのでジャンプしたり、急な動きがあっても中で心配になるような音がしない。まさに完璧なデッキケースだ。
サッ スッ パチッ
「完璧です!ありがとうございます!!」
「そんなに喜んでくれるとはな。作った甲斐があるってものだ。
そうだ、デイモンとレジーのところに行ってみろよ。アイツらも面白そーなものを作ってるみたいだからな。」
「はい、行ってみます。作業中ありがとうございました」
「気にするな。その顔が見れて生産職としては幸せだ。
それと同じの2ついるだろ、今日は気分がいいからついでに作っておいてやるよ」
「ほんとですか!ありがとごうざいます!」
「おうっ」
そこから何人か回って、1番、目につくデッカい物の元へ足が向く。
「スゲェ~…」
「あ、ケースケさん」
「あっお疲れ様ですドリアスさん」
「ケースケさんもお疲れ様です。午前中はなにか大変だったみたいですけど何が合ったんですか」
「はい。ちょっと連中の関係でまたありまして。」
「やっぱりそうだったんですね」
「やっぱり?」
「あのあとクリフトさん達がこの船の完成度合いを聞きにボクを探してたそうなので空路が急ぐかもって」
「空…ってことはコレ、飛行船になるんですか!?」」
「そうですよ。近いうちに小さい軍艦としてボクも役に立てるように設計してるんです。
まだ骨組みに板を張り終わっただけの小舟状態ですけどね。
なにぶん資料がニホン語だとエンジンとか運転のために使うシステムとかもまだまだ解析できてなくて…」
「それなら自分も少し手伝いますよ。専門用語とかは分かりませんけど、力になれると思いますよ」
「本当ですか!助かります!」
「ついでですからフィーラさんにも平仮名と片仮名を教えておきま……あれ?フィーラさん知りません?」
「5尺……1、2、3、4、5。ここのあたりか」
スーーーーー…チャキッ
「フッ!!」
「こんなものだな」
「あれ…材木は?置いてたよな」
「確かに置いたぞ。」
「中隊長、ここに置いてあった3メートルほどの材木知りませんか?」
「ああ、それなら切っておいたぞ。そこに全部。5尺だろ」
「「は?」」
「中隊長…これいくつで切ったんだよ…!」
「この手で尺取り虫のようにして5回目のところだが…」
『「「そんなわけあるか!!」」』
スペースの都合上まぁまぁの距離を持ち、集中して作業していたはずの者達も全員が声を揃えてツッコむ。
1尺と言えば通常30センチとちょっとなので、目標値は150~160センチくらいのはず。
見る資料や30.いくつのものもあれば、33センチのものもあるが、フィーラさんの勘違いはそんな甘い差ではない。
グーの状態から親指と小指を出したものを1尺としてカウントしてしまったため、1尺15センチ×5で必要な長さの70センチほどになってしまっている。
「どこに虫基準にして長さ測るやつがいる!!?」
「わっ…わざとじゃないんだ!
お前達の頑張っている様子を見て感化されたというか、微力ながらも手伝おうと思ってだなっ
ケケケケースケ、お前からも何か言ってくれ」
「いや、目を話した隙に勝手にやったんですからこれは庇っても庇いきれないでしょ。
中隊長さんなんですから自分でやったことくらい自分で後始末してください。」
「中隊長!どうなんですか!?」
「あ…あ…あ…」
ピューーンッ
「すみませんでしたぁぁぁ!!」
『「待てコラァァァ!!」』
「ギャーーーーー!!」
逮捕されましたとさ。
ズルズルズルズルズルズル…
「ほ、本当に反省しているんだぁぁぁぁ!!
サンちゃんの刑だけは…サンちゃんの刑だけはァァァァァ!!」
「今日の中隊長には弁明の余地なしっ!!大人しく反省してきてください!!」
「中隊長だからって許されると思うな!オレ達が苦労してとってきたエルダートレントを台無しにした分の責任はとってもらうぞ!!」
「もうあぎらめろぃ。この際オメェには横社会の厳しさを叩き込まねぇど一生、前に進むこどはでぎねんだ。」
「嫌だァァァァァァ!お慈悲をぉぉぉぉ!お慈悲をくださいぃぃ!!」
「まずは薪割りからやるだ。まっずぐに振り下ろせるようになるまで休憩無しだど」
「ごめんなさぁぁあああーーーーーーーい!!!!」
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