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しおりを挟むナーオット殿下の命令によって私に近づいてくるヤークッモ殿下と国王陛下。
ナーオット殿下はその様子を面白そうに見つめながら、私に血を飲ませるために自らの手首にナイフで傷をつける。
そうして手首から滴り落ちる真っ赤な血を、用意されていたグラスの中にたっぷりと注ぎ込む。
コプリコプリと注がれていく真っ赤な血液。
その量から動脈をざっくりと切ったということが伺える。
グラスに並々と血が注がれたことを確認して、ナーオット殿下は手首を布で強く締め付けた。どうやら止血をしているようだ。
あのままの勢いで血液が流れ出ていけば出血多量になって生命の危機もあるだろう。ゆえに止血をしているとみられる。
「・・・っ。さあ、飲め。私の血をたっぷりと注いでやったのだからな。」
「飲めません。」
誰が血など好んで飲むだろうか。
しかも、ナーオット殿下の血など。
「私が手首を痛めた血なのだ。なぜ、飲まない?」
「飲めません。人を操ることができる血なのでしょう?それがわかっていて飲むような愚か者はおりませんわ。」
「まあ、そうだろうな。自発的に飲むのであれば許してやろうかと思ったが・・・。国王よ、レイの身体を拘束せよ。」
「・・・・・・・・・。」
国王陛下はナーオット殿下に言われて私の側に近寄った。
「・・・すまない。」
国王陛下は私の耳元でそう囁くと私の身体を拘束した。
「ヤークッモ殿下、私の血が入ったグラスを持て。そして、レイに飲ませろ。」
「ええ。わかりました。」
やはり笑顔のままヤークッモ殿下はグラスを持った。そうして、私に近寄ってくる。
「口を開けてください。」
笑顔のままヤークッモ殿下が告げる。
私はそれに無言で拒否をし、グッと口を閉じた。
ヤークッモ殿下は笑顔のままグラスを持ち私の前で動作を停止する。
この人には無理やり私の口を開かせるということができないのだろうか。
「なにをやっている。ヤークッモ殿下、さっさとレイに血を飲ませるんだっ!・・・っ!!」
イラっとしたのか、ナーオット殿下は声を荒げた。
その瞬間手に力が入ったのか、手首からコプリと血があふれた。
どうやらまだ血が止まっていないらしい。
よほど深く傷つけたものと思われる。
「でも、彼女。口を開けてくれません。口を開けていただかなければ、血を飲ませることはできません。」
微笑んだままナーオット殿下に告げるヤークッモ殿下。
「・・・っ!!おまえっ!!・・・まあ、いい。無理やりにでも口を開けさせるのだ。」
ナーオット殿下は指示通りにしか動かないヤークッモ殿下に激高したが、すぐに気を取り直して新たな命令をヤークッモ殿下に告げる。
その間にもドクドクとナーオット殿下の手首から血があふれてくる。
「レイチェル嬢。口を開けてください。」
「・・・・・・・。」
「口を開けてくれません。」
私が硬く口を閉じると、ヤークッモ殿下はそうナーオット殿下に告げた。
無理やり口を開けるというのがどういうことだかわかっていないのだろうか。
「おまっ!!ふざけるなっ!!」
「ふざけてなどいません。口を開けていただけないので、血を飲ませることができないだけです。」
微笑んだままナーオット殿下に告げるヤークッモ殿下。
どうも、話が進まない。
ヤークッモ殿下はなにを考えているのだろうか。
いや、ナーオット殿下の指示でしか動かないみたいだからこの場合はナーオット殿下の指示の出し方がまずいのだろうか。
「・・・くっ。私の指示の出し方がまずいというのかっ!!・・・っ。」
ナーオット殿下はザックリと切った手首が痛むのか顔を顰める。
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