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「エドワード皇太子殿下、ようこそいらっしゃいました。しかし、随分と急な訪問ですな。なにか火急な用でもありましたかな?」

王城の中でも一際豪華な部屋に通された。

その奥には、これまたふかふかで豪華な椅子に座ったヤックモーン王国の国王が座っていた。

ヤックモーン王国の国王は御年60になる。

その頭髪は年齢相応の白髪だった。

ふくよかな体系と目じりの皺がどことなく柔和なイメージを与える。

「急に訪問したことをお許しください。本日は・・・。」

「ああ、お義父上。どうか私を助けてください。そうして、私を痛めつけたエドワード殿下を拘束し、レイを私の婚約者としてください。」

国王陛下に向かって深々と挨拶をする私たち。

代表してエドワード様が本日の来訪目的を告げようとしたが、それを遮ってナーオット殿下が国王陛下に懇願しだした。

その発言内容は驚くべきものだった。

まさか、エドワード様を拘束し、私をナーオット殿下の婚約者とするだなんて。

なにを突拍子もないことを言い出すのだろうかとギョッとしてナーオット殿下を見る。

エドワード様も、ユキ様もマコト様も私と同様の表情をしている。

いくら義父上だとしても相手は国王なのだ。

こんな公私混同した発言が許されるのだろうか、この国では。

「あいわかった。エドワード殿下を拘束し、そこにいるレイをナーオット王太子殿下の婚約者とする。」

「えっ?」

「なっ!?」

「お義父上、ありがとうございます。」

意外にも国王陛下はすんなりとナーオット殿下の意見を受け入れた。

しかも、ナーオット殿下を王太子と言った。

どういうことだろう。

ナーオット殿下は養子ではなかったの?

それに確かヤックモーン王国にはヤクモ第一王子がいて、その方が王太子だったはず。

いったい何がどうなっているのだろうか。

わけもわからないまま、私はエドワード様たちと引き離されてしまった。

私は先ほど国王陛下と謁見した部屋と同じような豪華な部屋に通された。

エドワード様はマコト様とユキ様と一緒に衛兵に連れられてどこかに行ってしまった。

 

 

 

「あの。エドワード様たちはどちらへ?」

私を部屋に連れてきた衛兵に尋ねる。

「お連れ様は地下牢かと思われます。この度は災難でしたね。でも、私たちは王族には逆らうことができません。今頃国王陛下も嘆いておられることでしょう。」

「え?それは・・・どういうこと?」

衛兵は気の毒そうに私を見つめてからそう切り出した。

国王陛下が嘆いているとはどういうことだろうか。

もしかして、この判断は国王陛下のご判断ではないということ・・・?

「レイチェル様。貴女様にはこちらでナーオット殿下のお妃様候補として過ごしていただきます。すぐに侍女を用意いたしますので、なにかあれば侍女にお話しください。」

私の質問は聞かなかったことにされたのか、はぐらかされた・・・。

そして、そのまま衛兵は私を一人部屋に残して姿を消した。

 

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