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しおりを挟む『あなたちはほぼ同時に瀕死の状態になったのよ。だから、レイチェルの魂とライラの魂を融合させることでレイチェルを生き永らえさせたのよ。』
「ライラまで瀕死の状態だったなんて・・・。」
知らなかった。
ライラが瀕死の状態で倒れていたなんて。
だって、傷なんてぱっと見たかぎりどこにも見当たらなかったもの。
「どうして・・・どうしてどちらか片方しか生きられないの・・・。」
ユキ様も悲痛な表情を浮かべている。その隣で、マコト様は何も言わずに沈黙していた。
女神様の爆弾発言により私たちは注意力が散漫していた。
だから気が付かなかった。
すぐ後ろにナーオット殿下が居たことに。
「レイの魂に雑音が混じっているだと・・・。」
「・・・っ!!?」
「誰だっ!?」
突然聞こえたナーオット殿下の声に驚いて後ろを振り向く。
そこにはライラの血に染まった服から着替えたナーオット殿下がいた。
どうやらこの家にナーオット殿下がいなかったのは服を着替えに行っていたからだったようだ。
ナーオット殿下の目は暗く濁っていた。
「・・・ナオト!?」
マコト様がナーオット殿下の存在に気づき目を丸く見開いた。
そうして、私を気づかわし気に横目でチラリと見た。
「ああ。マコトにユキか。君とユキもこの世界に転移していたんだな。私も君たちを殺した後に、ポカをやらかしてね。この世界に転移してきたんだよ。懐かしいなぁ。よくも私とレイの仲を邪魔してくれたね。今、ここでもう一度お礼をしてあげるよ。」
ゆらりとナーオット殿下がマコト様の方に向かって動き出す。
その手には先ほど持っていたナイフは無く、代わりに真剣を持っていた。
光を浴びて真剣がキラリッと光った。
「邪魔するわよ!だって、あなたってば全然レイのこと大切にしなかったじゃないっ!レイがどれだけ苦しんでいたのか知っているの!!」
ユキ様が真剣に怯むこともなくナーオット殿下に突っかかっていく。
「レイの苦しみに歪んだ顔を見るのがなんとも言えず高揚するんだ。レイは私の物だ。私の物を私がどうしようと勝手だろう?」
心底不思議そうにナーオット殿下が答える。
それを見て、ギリッと歯を噛んだ。
「私はあなたの物じゃない。」
「おや、反抗するのかい?ああ、やっぱりライラとかいう余分なものがレイに混ざってしまった影響だろうか?つまらないなぁ。レイはレイのままでいてくれなきゃ。ダメだなぁ。レイ。私が余分なものを引きはがしてあげるよ。」
そう言ってナーオット殿下はマコト様から私に視線を移した。
その視線のあまりの暗さに身構える。
ナーオット殿下が手に持った真剣を構える。
切られるかもしれない。
そう思ったが身体が震えてしまい上手く動かない。
ユキ様もマコト様も私を助けようとしてこちらに駆け寄ってくるのが見える。
私は、ギッとナーオット殿下を睨みつけた。
「毛を逆立てて威嚇している子猫のようだ。なぁに、私が存分に可愛がってあげるから、もっと良い表情を見せなさい。」
一歩一歩近づいてくるナーオット殿下。
ナーオット殿下を睨みつける私。
しばしの静寂が辺りを包み込み、そうしてナーオット殿下の真剣が振り下ろされる。
瞬間、私の身体を温かい温もりが包み込んだ。
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