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しおりを挟む「じゃあ、レイチェル。私は猫になってついていくわ。」
「え?」
いったいユキ様は何を言っているのだろうか。
猫になるるだなんて。
人間が猫になるだなんてそんなこと聞いたこともない。
「うふふ。私ね、実は猫に返信できるんだよね。でも、レイチェルを猫の姿に変えることはできないんだよね。あくまで自分だけしか猫の姿にすることができないの。」
にこにこ笑いながら告げるユキ様だけれども、初めて聞く内容に驚きを隠せない。
「百聞は一見に如かずっていうからね。ちょっと変身してみるね!」
そう言うと、ユキ様の周りがぼやけていく。
ふわふわとした白い靄がユキ様の周りに立ち込め、ユキ様の姿が見えなくなる。
「ゆ、ユキ様っ!?」
ビックリしてユキ様の名を呼ぶが返事はない。
次第に白い霧がおさまっていくが、ユキ様の姿が見えない。
「ユキ様っ!?ユキ様っ!?」
慌ててユキ様の名前を呼べば、
『ここよ。ここ!レイチェルの足元を見てちょうだい。』
と、返事が直接頭の中に返って来た。
ユキ様からの念話である。
その言葉に従って私の足元を見ると、真っ黒い猫が鎮座していた。
「ま、まさか・・・ユキ様?」
しゃがんで黒猫ちゃんと目線を合わせながら問いかける。
『そうよ!私の変身完璧でしょ?これならあいつも私のことがわからないわ。』
どうやら、ユキ様は本当に猫の姿になってしまったようだ。
「ほんとうに・・・ほんとうにユキ様なの?」
『ほんとうよ!よく見ててちょうだいっ!』
半信半疑のままユキ様に再度問いかけると、黒猫ちゃんの周りに白い霧が立ち込め、黒猫ちゃんの姿が見えなくなってしまった。そうして、先ほどと同じくしばらく経つと白い霧がおさまっていきユキ様の姿が目の前に現れた。
「まあっ!」
「ふふっ。すごいでしょ?完璧な猫でしょ?この姿ならあいつにバレることはないわ。」
「そうね。すごいわ。ユキ様。」
猫になる魔法だなんて初めて聞いた。
でも、実際に目にしてみると本物の猫と相違ないように見受けられた。
「猫だと夜目も効くから便利なのよ。ちょっとこの姿で探ってくるわ。」
「えっ!?ユキ様一人じゃ危ないわ!もう外が暗くなりかけているもの。」
「大丈夫よ。夜だからこそ目立たないんじゃない。それに夜の闇に紛れれば目立たない黒猫だし。」
確かにユキ様の言うことは一理あるとは思う。
それでも、ナーオット殿下がナオトさんだとすると、一人では危ないと思う。
ユキ様は猫の姿になれても、転移の魔法は使えないのだから。
「………私も一緒に行くわ。」
「レイチェルは猫になれないのだから、見つかっちゃうわよ。」
「だって、ユキ様ここからナーオット殿下のとこまでどうやっていくの?」
「そりゃあもちろん、レイチェルの転移で………って、あれ?………あ、あはははははっ。明日にしよっか?」
ユキ様はやっと移動手段に気付いたらしい。
ということで、日が明けてからもう一度、ヤックモーン王国の王都に行くことにした。
そして、次の日。
「やあ、やっと来たのかい?待っていたよ。レイチェル。」
ヤックモーン王国の王都に転移して散策を始めてすぐに私たちに向かって声がかけられた。
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