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しおりを挟む「レイチェル………。皇太子妃として、私の隣に立ってくれるのはとても嬉しい。だけれど、私はレイチェルに無理はしてほしくないんだ。政務は私が一手に引き受けても構わないんだよ。」
レイチェルの決意に、エドワード様は驚いたように目を見張った。
弱く大人しく守られているレイチェルが、まさかエドワード様の隣に並び立ちたいと言うとは思わなかったようだ。
「………私は、お飾りの皇太子妃にはなりたくありません。もし、お飾りの皇太子妃でよいということであれば、私はその座を他の方に譲ります。そして、エドワード様のことは諦めますわ。」
強い決意を秘めた目で、エドワード様を見つめるレイチェル。
その眼差しは、守られていたばかりのレイチェルではなかった。
「しかし、その場合、君と私の子はどうするんだ。」
「あの子はエドワード様の血を引く子です。エドワード様が迎え入れてくださるのであれば、その通りにしてくださいませ。もし、他の方を妃にするとおっしゃる際に足かせとなるのであれば、あの子はいないものとして私に託してくださいませ。」
「まさか。妃にするのはレイチェルだけだ。今のは例えで聞いただけであり本心ではない。私は、待つよ。いつまでもレイチェルを待っているよ。」
エドワード様はそう言ってレイチェルに向かって微笑んだ。
「ありがとうございます。エドワード様。」
レイチェルはそう言って頷いた。
「レイチェル。君はいつまでも守られているばかりの姫ではないのだね。蛹から蝶になろうともがいているように見える。私は君を全力でサポートするよ。だから、気にせずゆっくりと君の思う道を進むといい。でも、なるべくなら早く私の元に戻って来てほしい。私たちの子が育つ姿を一番近くで見ていたいんだ。」
「エドワード様。ええ、エドワード様。なるべく早く決意を固めます。私たちの子のためにも。」
二人はこれからのことを硬く約束したようで、真剣な顔で頷きあっている。
私はそんな二人が一日でも早く一緒に生きていけるようにサポートしようと考えていた。
「サポートするとは言ったが、私はなかなか側にはいれないと思う。すまない。皇帝陛下のよからぬ企みにより隣国と一触即発なのだ。落ち着いたら必ず迎えにくるから。それまでに決心を固めておいてほしい。」
「………はい。」
隣国との関係が悪化しているときいて、レイチェルは心なしか暗い表情となった。
「どうか、あまり危険なことはしないでくださいませ。」
レイチェルはそう言って、名残惜しそうにエドワード様から離れる。
そろそろ、エドワード様が城に戻る時間が迫っているようだ。
エドワード様も名残惜しそうにレイチェルを見ると、マコト様に視線を向けた。
マコト様は頷き、シロとクロを呼ぶ。
「レイチェル。何があっても君を世界で一番愛しているよ。」
エドワード様はそう静かに告げると光の渦の中に消えていった。
残されたレイチェルは目に涙を浮かべながらも、エドワード様が消えていった空間を静かに見つめていた。
「………レイチェル。レイチェルが決めたのなら私もレイチェルが、幸せになれるようにサポートするわ。」
「ユキ様、ありがとうございます。」
エドワード様が消えて残されたユキ様は、レイチェルをぎゅっと抱き締めた。
レイチェルも嬉しそうにユキ様を抱き締め返す。二人の確かな友情を見たような気がした。
それからどのくらい立ったのだろうか。
ユキ様とレイチェルは互いにいろいろと話し合っていたようだ。
そして、一夜があけた。
それでも、私の身体はレイチェルの意識が浮上したままだった。
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