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しおりを挟む「なぜ、その女が一緒なのかしら?」
ユキ様は私の存在を認識すると目を釣り上げた。
それもそのはずだろう。彼女は私が皇太子殿下をレイチェル様から奪う女に見えているのだから。
「ああ。彼女の中にレイチェル様の魂が迷い混んでしまったみたいなんです。」
マコト様はユキ様が目を釣り上げているにもかかわらず、にこやかに告げた。
「はあっ!?」
ユキ様の顔が鬼のような形相にかわる。
「あなたねぇ!嘘をつくものじゃないわ!いくらエドワードに近づきたいからって、そんな大嘘つかないでくれる!!」
掴みかからんばかりの勢いでユキ様が私に怒鳴り付ける。
うん。わかるよ、その気持ち。
私だって、実際に体験しなかったらユキ様と同じことを思っただろう。
というか、マコト様とエドワード様がおかしいのかもしれない。レイチェル様の意識が私の中にあるということをすぐに信じたのだから。
「嘘ではないんですよ。不可思議なこともあるものですね。」
「マコトは信じたの?」
「ええ。実際にレイチェル様とお話もしました。それに、私の自白薬入りの紅茶で自白したんですから、信憑性は高いですよ!」
「エドワードも………?」
「ええ。今日にでもエドワード様はこちらに来ると思います。」
「………そう。」
マコト様とユキ様の会話が続く。
私のことを話しているので、会話に入りづらい。むしろ、私はこの二人の会話を聞いていてもいいのだろうか。
「まあ、いいわ!嘘ついてたら私が許さないんだからねっ!!」
ビシッと人差し指をこちらに向けて、キリッとした目をするユキ様。
なんだか、少し可愛いかもと思ってしまった。
苦笑しているマコト様の横で私も少しだけ口の端を上げた。
レイチェル様の記憶があるだけに、ユキ様が不要なおせっかいを焼くだけの善人だと知っているのだ。
「ますば、レイチェル様に魂が戻るように願いながら触れてもらってもいいですか?」
「それだけで元に戻るのですか?」
レイチェル様の枕元に立ってマコト様が切り出した。もちろんユキ様も監視と称して同席している。
「魔法というのは、強い思いが具現化したものなのです。だから、強い思いを持ってレイチェル様に触れればレイチェル様が元に戻る可能性があります。」
マコト様は確信したように告げた。
私はそれに頷き、レイチェル様のほっそりとした白い腕を手に取る。
もうずっと何も食べずに寝ているのにもかかわらず、レイチェル様は健康そのものに見える。
ただ、寝ているだけのように見えた。
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