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しおりを挟むエドワード様は「レイチェル」の名を聞くと、思いっきり目を見開いた。
そして、マコト様の前にズズイッとやってくると、勢いよくマコト様の額にぶつかった。
「いたた………。」
と、マコト様が頭突きを受けた額を右手でおさえる。
しかし、エドワード様は石頭なのかまったく動じた様子もない。
「レイチェルの目が覚めたのかっ!?」
口から唾が出るんじゃないかというほど、勢いよく怒鳴り付けるかのように声を張り上げるエドワード様。
そこには、先程までの冷静な様子は微塵もなかった。
必死な表情でマコト様に詰め寄るエドワード様。
「いえ。ですが、レイチェル様の魂がどこにあるのかがわかりました。」
「ほんとうかっ!!」
マコト様が告げると間髪入れずに、反応をし聞き返す。
その顔には嬉しさが滲み出ていた。
「はい。レイチェル様の魂は、ある女性の身体の中に入っています。」
「そうか。レイチェルの魂は無事だったのだな。よかった。それで、レイチェルの魂をもとの身体に戻すにはどうしたらいいんだ?」
うっすらと目尻に涙を溜めながらエドワード様がマコト様に、確認する。
マコト様は、困ったようにポリポリと頬を掻くと、
「方法はまだ分かっておりませんが、彼女が協力してくださると言っておりますので、すぐにでもレイチェル様は元に戻るかと思います。ご安心ください。」
と、私を指し示しながら告げた。
その言葉に、エドワード様は首を傾げる。
「なぜ彼女がいるとレイチェルが元に戻るのだ?」
「はい。彼女の身体の中にレイチェル様の魂が眠っているのです。だから、レイチェル様を
もとに戻すには彼女の協力が必要不可欠なのです。」
ゆっくりと事実を伝えていくマコト様。
マコト様が告げた内容に、徐々にエドワード様の表情が驚きに染まっていく。
そして、その頬が薔薇色に染まった。
「レイチェルっ!レイチェルっ!」
エドワード様は勢いよく、私に抱きついてきた。
「きゃっ………。」
あまりにも唐突に、強くぶつかるように抱き締められたものだから、驚いて悲鳴をあげてしまった。
それでも、ぎゅうぎゅうとエドワード様は私の身体を離すまいと抱き締めてくる。
その様子を複雑な眼差しで見つめてくるマコト様に気づいて、私は声をあげた。
「え、エドワード様っ。離してください。レイチェルの魂は私の中にあっても今の私の意識はレイチェルではありません。レイチェルは、私の中で眠っています。レイチェルに誤解されたくないので、離してくださいっ!」
「す、すまない………。」
私が今のレイチェルの状況を説明すると名残惜しそうにエドワード様の身体が離れていった。
ほっ………。
思わず安堵のため息を溢す。
「エドワード様。落ち着いてください。今はまだ陛下に気取られる訳にはなりません。表向きはエドワード様はレイチェル様に気がない振りをしていてください。」
マコト様が、そう言ってエドワード様を嗜めている。
それにしても、陛下にレイチェルのことを気取られないようにとは、どういうことだろうか。
レイチェルがエドワード様の婚約者になったのは、陛下が決めたことではないのだろうか。
私の中に確かな疑問が沸き上がってきた。
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