78 / 170
77
しおりを挟む
『ありがとう』それは感謝の言葉。
心からの『ありがとう』という言葉はこんなにも気持ちの良いものだったのだろうか。
「・・・ありがとう。」
暖かい気持ちをくれてありがとう。私に嬉しいという思いをくれてありがとう。
いつのまにか、涙がツーッと頬を撫でていた。
「お姉ちゃん・・・なんで、泣いているの?」
ベッドに横になっているメリルちゃんが、不思議そうに訪ねてくる。隣にいるシスターはなにも言わず私たちを優しく見守っていてくれた。
「メリルちゃん、ありがとう。ありがとう・・・。」
そっと、メリルちゃんと手を繋ぐ。
繋いだ手からは暖かい魔力が感じられる。
メリルちゃんが私を癒そうと魔力を注いでくれているのがわかる。
とても、暖かい魔力だ。
「?お礼を言うのは私だよ。お姉ちゃん、ありがとう。」
メリルちゃんは首を傾げながらも満面の笑みで私を見つめる。
その顔には、先程までの絶望なんて全く感じられなかった。
「ずっと寝ていたから、きっとすぐには歩けないと思う。私と一緒にリハビリしようね。」
「うん!」
寝たきりだったから必要な筋肉が落ちてしまったメリルちゃんは、いくら身体を癒したとてすぐに歩くことはできない。
それでも、リハビリをして歩くということを身体が思い出せればきっと歩くことができるだろう。
とくにメリルちゃんはまだ若いし、すぐに歩けるようになると思う。
「ありがとう。ライラさん。ありがとう。お礼を言うことしかできない私たちを許してちょうだい。」
シスターはそう言って目に涙を浮かべながら私の手を握ってきた。
「・・・明日からも来ていいですか?」
「もちろんよ。是非いらしてちょうだい。」
「メリル治ったの!?」
「メリルっ!?」
シスターと話していると、メリルちゃんの嬉しそうな声がドアの外まで聞こえたのか、ライムちゃんとカエデくんが部屋に飛び込んできた。
そして、ベッドの上に起き上がっているメリルちゃんを見つけて二人ともベッドに駆け寄る。
「お姉ちゃんが治してくれたの。まだ歩けないけど、足が動くようになったのよ。」
ベッドから足を出して、動かして見せるメリルちゃん。その姿をみて、ライムちゃんとカエデくんは嬉しそうに笑った。
満面の笑みでメリルちゃんを見つめるライムちゃんとカエデくんを見ていると私まで嬉しくなってくる。
「「ありがとう。おねえちゃん。」」
その二人の満面の笑みは私にも向けられた。
とても、暖かな感情が私の心の流れ込んでくる。
忘れていた気持ちがじょじょに思い出されていった。
「どう、いたしまして・・・。」
人には必ず一人は心配をしてくれる人がいる。エドワード様もそう。
エドワード様も死んでしまえば誰かが悲しむだろう。
レイチェルの記憶を知ってからずっと悩んでいた。 エドワード様を本当に暗殺していいのかどうかを。
でも、こうして目の前で見せられた小さな命の輝きと、忘れていた誰かから感謝の気持ちを向けられる嬉しさ。
人を暗殺しても、こんなに純粋に誰かが喜んでくれるわけではないことを改めて思い出す。
エドワード様は殺せない。殺してはいけない。
私は・・・暗殺家業から足を洗わなければ・・・。
心からの『ありがとう』という言葉はこんなにも気持ちの良いものだったのだろうか。
「・・・ありがとう。」
暖かい気持ちをくれてありがとう。私に嬉しいという思いをくれてありがとう。
いつのまにか、涙がツーッと頬を撫でていた。
「お姉ちゃん・・・なんで、泣いているの?」
ベッドに横になっているメリルちゃんが、不思議そうに訪ねてくる。隣にいるシスターはなにも言わず私たちを優しく見守っていてくれた。
「メリルちゃん、ありがとう。ありがとう・・・。」
そっと、メリルちゃんと手を繋ぐ。
繋いだ手からは暖かい魔力が感じられる。
メリルちゃんが私を癒そうと魔力を注いでくれているのがわかる。
とても、暖かい魔力だ。
「?お礼を言うのは私だよ。お姉ちゃん、ありがとう。」
メリルちゃんは首を傾げながらも満面の笑みで私を見つめる。
その顔には、先程までの絶望なんて全く感じられなかった。
「ずっと寝ていたから、きっとすぐには歩けないと思う。私と一緒にリハビリしようね。」
「うん!」
寝たきりだったから必要な筋肉が落ちてしまったメリルちゃんは、いくら身体を癒したとてすぐに歩くことはできない。
それでも、リハビリをして歩くということを身体が思い出せればきっと歩くことができるだろう。
とくにメリルちゃんはまだ若いし、すぐに歩けるようになると思う。
「ありがとう。ライラさん。ありがとう。お礼を言うことしかできない私たちを許してちょうだい。」
シスターはそう言って目に涙を浮かべながら私の手を握ってきた。
「・・・明日からも来ていいですか?」
「もちろんよ。是非いらしてちょうだい。」
「メリル治ったの!?」
「メリルっ!?」
シスターと話していると、メリルちゃんの嬉しそうな声がドアの外まで聞こえたのか、ライムちゃんとカエデくんが部屋に飛び込んできた。
そして、ベッドの上に起き上がっているメリルちゃんを見つけて二人ともベッドに駆け寄る。
「お姉ちゃんが治してくれたの。まだ歩けないけど、足が動くようになったのよ。」
ベッドから足を出して、動かして見せるメリルちゃん。その姿をみて、ライムちゃんとカエデくんは嬉しそうに笑った。
満面の笑みでメリルちゃんを見つめるライムちゃんとカエデくんを見ていると私まで嬉しくなってくる。
「「ありがとう。おねえちゃん。」」
その二人の満面の笑みは私にも向けられた。
とても、暖かな感情が私の心の流れ込んでくる。
忘れていた気持ちがじょじょに思い出されていった。
「どう、いたしまして・・・。」
人には必ず一人は心配をしてくれる人がいる。エドワード様もそう。
エドワード様も死んでしまえば誰かが悲しむだろう。
レイチェルの記憶を知ってからずっと悩んでいた。 エドワード様を本当に暗殺していいのかどうかを。
でも、こうして目の前で見せられた小さな命の輝きと、忘れていた誰かから感謝の気持ちを向けられる嬉しさ。
人を暗殺しても、こんなに純粋に誰かが喜んでくれるわけではないことを改めて思い出す。
エドワード様は殺せない。殺してはいけない。
私は・・・暗殺家業から足を洗わなければ・・・。
44
お気に入りに追加
7,819
あなたにおすすめの小説
記憶喪失の令嬢は無自覚のうちに周囲をタラシ込む。
ゆらゆらぎ
恋愛
王国の筆頭公爵家であるヴェルガム家の長女であるティアルーナは食事に混ぜられていた遅延性の毒に苦しめられ、生死を彷徨い…そして目覚めた時には何もかもをキレイさっぱり忘れていた。
毒によって記憶を失った令嬢が使用人や両親、婚約者や兄を無自覚のうちにタラシ込むお話です。
旦那様に離婚を突きつけられて身を引きましたが妊娠していました。
ゆらゆらぎ
恋愛
ある日、平民出身である侯爵夫人カトリーナは辺境へ行って二ヶ月間会っていない夫、ランドロフから執事を通して離縁届を突きつけられる。元の身分の差を考え気持ちを残しながらも大人しく身を引いたカトリーナ。
実家に戻り、兄の隣国行きについていくことになったが隣国アスファルタ王国に向かう旅の途中、急激に体調を崩したカトリーナは医師の診察を受けることに。
仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。
天織 みお
恋愛
「おめでとうございます。奥様はご懐妊されています」
目が覚めたらいきなり知らない老人に言われた私。どうやら私、妊娠していたらしい。
「だが!彼女と子供が出来るような心当たりは一度しかないんだぞ!!」
そして、子供を作ったイケメン王太子様との仲はあまり良くないようで――?
そこに私の元婚約者らしい隣国の王太子様とそのお妃様まで新婚旅行でやって来た!
っていうか、私ただの女子高生なんですけど、いつの間に結婚していたの?!ファーストキスすらまだなんだけど!!
っていうか、ここどこ?!
※完結まで毎日2話更新予定でしたが、3話に変更しました
※他サイトにも掲載中
【完結】私から全てを奪った妹は、地獄を見るようです。
凛 伊緒
恋愛
「サリーエ。すまないが、君との婚約を破棄させてもらう!」
リデイトリア公爵家が開催した、パーティー。
その最中、私の婚約者ガイディアス・リデイトリア様が他の貴族の方々の前でそう宣言した。
当然、注目は私達に向く。
ガイディアス様の隣には、私の実の妹がいた--
「私はシファナと共にありたい。」
「分かりました……どうぞお幸せに。私は先に帰らせていただきますわ。…失礼致します。」
(私からどれだけ奪えば、気が済むのだろう……。)
妹に宝石類を、服を、婚約者を……全てを奪われたサリーエ。
しかし彼女は、妹を最後まで責めなかった。
そんな地獄のような日々を送ってきたサリーエは、とある人との出会いにより、運命が大きく変わっていく。
それとは逆に、妹は--
※全11話構成です。
※作者がシステムに不慣れな時に書いたものなので、ネタバレの嫌な方はコメント欄を見ないようにしていただければと思います……。
私は王妃になりません! ~王子に婚約解消された公爵令嬢、街外れの魔道具店に就職する~
瑠美るみ子
恋愛
サリクスは王妃になるため幼少期から虐待紛いな教育をされ、過剰な躾に心を殺された少女だった。
だが彼女が十八歳になったとき、婚約者である第一王子から婚約解消を言い渡されてしまう。サリクスの代わりに妹のヘレナが結婚すると告げられた上、両親から「これからは自由に生きて欲しい」と勝手なことを言われる始末。
今までの人生はなんだったのかとサリクスは思わず自殺してしまうが、精霊達が精霊王に頼んだせいで生き返ってしまう。
好きに死ぬこともできないなんてと嘆くサリクスに、流石の精霊王も酷なことをしたと反省し、「弟子であるユーカリの様子を見にいってほしい」と彼女に仕事を与えた。
王国で有数の魔法使いであるユーカリの下で働いているうちに、サリクスは殺してきた己の心を取り戻していく。
一方で、サリクスが突然いなくなった公爵家では、両親が悲しみに暮れ、何としてでも見つけ出すとサリクスを探し始め……
*小説家になろう様にても掲載しています。*タイトル少し変えました
【完結】二度目の人生に貴方は要らない
miniko
恋愛
成金子爵家の令嬢だった私は、問題のある侯爵家の嫡男と、無理矢理婚約させられた。
その後、結婚するも、夫は本邸に愛人を連れ込み、私は別邸でひっそりと暮らす事に。
結婚から約4年後。
数える程しか会ったことの無い夫に、婚姻無効の手続きをしたと手紙で伝えた。
すると、別邸に押しかけて来た夫と口論になり、階段から突き落とされてしまう。
ああ、死んだ・・・と思ったのも束の間。
目を覚ますと、子爵家の自室のベッドの上。
鏡を覗けば、少し幼い自分の姿。
なんと、夫と婚約をさせられる一ヵ月前まで時間が巻き戻ったのだ。
私は今度こそ、自分を殺したダメ男との結婚を回避しようと決意する。
※架空の国のお話なので、実在する国の文化とは異なります。
※感想欄は、ネタバレあり/なし の区分けをしておりません。ご了承下さい。
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる