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「エドワード様は貴女を信用したようですが、私は貴女を信用することはできません。なぜ、エドワード様に近づいたのですか?なぜ、失われたいにしえの魔法を使えるのでしょうか?私にもわかるように、説明していただけますか?」

問いかけるマコト様の目は真剣そのものだ。

しかし、どれも説明のしようがない。

エドワード様に近づいたのは、元ではあるが婚約者であり私が唯一愛した人だからだ。

それに、傷ついて倒れている人をほうっておけるはずがない。

ただ、今の姿を見て私がレイチェルだと言い出してもきっと誰も信じてはくれないだろう。

妄想癖があると言われるのが落ちだ。最悪、皇族を謀ったとして牢に入れられるかもしれない。

「エドワード様が倒れていらっしゃったから心配で介抱しただけです。エドワード様を害そうだなんてまったく思ってはおりません。魔法は・・・先ほど言ったとおり私には使用した覚えがありません。これは本当ですわ。」

これ以上何を言えと言うのだろうか。

「・・・あくまでしらを切る気ですね。」

マコト様は深いため息をつくと、ポケットから何かを取り出した。

手のひらサイズの四角い金属で出来たそれには、ボタンがいくつかついていた。

「できればこれは使いたくなかったんですが・・・。今から私が言うことに対して真実を答えてください。でなければ、この装置が貴女の嘘を教えてくれます。」

どうやらマコト様が取り出したのは、嘘を見破るための魔道具のようだ。

拒否をすれば、余計に怪しまれるに違いない。

ここは、素直にマコト様に従うしかないだろう。

「・・・わかりました。」

「では、これを握っていて下さい。」

そう言って渡されたのは手のひらに収まる大きさの丸い物体だった。その丸いものは、紐で嘘を見破るための魔道具に繋がっている。

言われるがまま、軽く握る。

「この装置の名前を知っていますか?」

装置の名前?

見たことなど全くなかった装置の名前を私が知るはずもない。

「いいえ。知りませんわ。」

「ふむ。本当に知らないようですね。」

じぃーっと装置を見つめるマコト様。

どうやら、私が嘘をつくと装置になんらかの反応が出るらしい。

「この装置はゲロゲロ君18号と言います。」

ゲロゲロ君・・・?

以前、マコト様にゲロゲロ君1号とか言って渡されたアレの改良版なのかしら?

でも、全く用途が違うように思えるのだけれども・・・。

「ゲロゲロ君は吐瀉物を処理する魔道具ではなかったの?」

そう告げると、マコト様の目が大きく見開かれた。

 

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