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しおりを挟む「レイチェルっ!!レイチェルっ!!」
気がつけば私は、私にすがり付きながら泣いているユキ様の姿を上から見下ろしていた。
あれ?
私、なぜそこに寝ているのに、自分の姿まで見下ろすことができるのだろうか。
マリアンヌ様も青い顔をして、私の名を呼んでいる。
マリアンヌ様が私の胸に手をあてる。その手から温かい光が柔らかく放たれる。
その光が私の胸に吸い込まれていく。
「………あんたまだ自分の子も抱き締めてないんだよ。まだ逝くには早いよ。」
アンリ様が、私の産んだ子を抱きながら小さく呟いた。
私の産んだ子は、エドワード様や私と同じ黄金色の髪をもっていた。
顔は、アンリ様の腕の中にいるので見ることができない。
エドワード様と私、どちらに似たのかしら。
顔を見せて?
ふよふよと、我が子の傍に近寄る。ふいに、アンリ様の腕の中の我が子が、こちらを向いた。
「ふぇえええ。」
顔をくしゃくしゃにして、泣く我が子の頭を優しく撫でようとするが、何故かさわれなかった。
『どうしてなの………。』
アンリ様もマリアンヌ様も、ユキ様も泣き出しそうな顔をしている。
そして、寝ている私。
もしかして、私は死んだのかしら?
実感はわかないけれど。
「マコト!レイチェルが!レイチェルが!!」
『ユキ、落ち着いて。レイチェル様に何があったの?』
ユキ様は泣きながらマコト様に念話をしているようだ。
あれ?
いつもは聞こえないはずの、マコト様の声が私にも聞こえる。
不思議。
「レイチェルが赤ちゃんを産んだの。でも、レイチェルの出血量が多くて………。心臓が止まったわ。」
ユキ様がしゃくりあげながら、マコト様に告げる。その内容に私はビクリッと震え上がった。
やっぱり、私は死んだの?
『ユキ、………レイチェル様は亡くなったの?』
マコト様の声が震える。
「いいえ。マリアンヌが蘇生してくれたわ。でも、意識が戻らないの。どうしよう………。」
『そんなバカな………。』
「こんなのシナリオにはなかったわ!!」
ユキ様もマコト様も、私が瀕死の状態であることを嘆いているようだ。
私もまだ死ねないわ。
だって、赤ちゃんをまだ抱き締めてないもの。それに、名前だってまだつけてあげられていない。
『最悪だ………第二部のシナリオに似たような展開があった………。』
「えっ?」
マコト様の言葉にユキ様は顔をあげる。第二部のシナリオっていったい何!?
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