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しおりを挟む「私の知るエドワードはとっても腹黒でいけすかないような奴だわ。」
ユキ様は憤慨するように告げる。
やっぱりエドワード様は私のことが嫌いで憎いと思っているのだろうか。あの夢のように。
「そうなの・・・。やっぱり私はエドワード様に婚約破棄されるのかしら?」
「うん。私は知っているわ。そのうちレイチェルはエドワードに酷い方法で婚約破棄されて処刑される。だから、レイチェル私と一緒に逃げよう!」
ユキ様はそう言って手を差し出してきた。私は、この手をとった方がいいのだろうか。
でも、今まで見てきたエドワード様は本当に嘘の固まりだったのかと少しだけ疑問が残る。
私はユキ様の手と私の手を交互にジッと眺める。
「でも、私は逃げられないわ。エドワード様が決めたのなら仕様がないことですもの。」
エドワード様が決めたことに逆らえるのは皇帝と皇后様だけ。
私ごときがエドワード様の決定に逆らうことは反逆を意味する。
皇家に対する反逆は死を意味する。
エドワード様から逃げても逃げなくても処刑されるのだ。
「レイチェルにだって幸せになる権利はあるわ!隣国に行きましょう。隣国なら安全だわ!」
それでもなお、ユキ様は逃げることを後押してくる。
幸せ・・・私は今も幸せなの。
エドワード様が愛をささやいてくれるから。この子を授けてくれたから。
でも、この幸せが崩れるというの・・・。
「私・・・私は、幸せよ。」
「幸せじゃないよ!エドワードに無実の罪を着せられて処刑されるんだよ!それのどこが幸せなの!!私、決めていたのよ!レイチェルをエドワードから救うって!!」
「どうして・・・そこまで・・・?」
必死になって説得してくるユキ様に疑問が残る。どうして、そこまで必死になって私を助けようとするのだろうか。
下手をすれば私の逃亡を手伝ったとしてユキ様だって処刑されるかもしれないのに。
いくら異世界からの迷い人だって、処刑されることがなきにしもあらずなのだ。
あまりに酷い異世界からの迷い人が処刑された過去もある。
「私はレイチェルに幸せになってほしいのよ。だって、一方的に虐げられるのなんて見ていられないわ!それに、レイチェルは私の友達にとっても似ているから・・・。」
ユキ様って以外と熱血漢でしたのね。あら、熱血漢は男の人に用いる言葉でしたっけ。
私に似ているユキ様の友人がいるから私のことをその友人に重ねて助けようとしてくださっているのかしら。
「私はあなたの知っている友人ではないわよ。」
まだ会ったばかりだし。友人ではない。知り合いだ。
そう告げるとユキ様がカラカラと笑った。
「そうだよね。レイチェルとは会ったばかりだから友人なんて言われても困るよね。でも、これからは友人にだってなれるよ。生きていればね。」
「そうね。」
友情を育めば友人になれる。どこからが知り合いと友人の違いになるのかよくわからないが、お互いがそう望めばなるのだろう。
でも、それには生きて友情を育まなければならない。
やはり、私はここから逃げ出した方がいいのだろうか。
「ユキ様。私は逃げれば助かるのかしら・・・?」
「まっとうに逃げても捕まるかもしれない。エドワードからレイチェルを処刑ではなく国外追放するように持っていけば可能性はあるわ。このまま逃げるよりは確率が高いかも・・・。」
国外追放・・・?
どうやって国外追放に持っていくの?
エドワード様の性格でそのような生ぬるい刑ですまされることはあるのだろうか。
「どうやって・・・。」
「マコトに協力してもらうわ。」
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