皇太子の子を妊娠した悪役令嬢は逃げることにした

葉柚

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「なぁに?あなた具合が悪いの?」

私の目の前に現れたユキ様は開口一番にそう言ってきた。
真っ黒なストレートの髪に小さくて白い顔。大きな目に小さな唇は赤い。
市松人形みたい・・・。って。あれ?市松人形ってなんだっけ?

「レイチェル様。ゲロゲロ君三号いりますか?」

マコト様はそう言ってゲロゲロ君三号を手渡してきた。いつの間に一号から三号になったのだろうか。

「ありがとう・・・。」

私はお礼を言ってゲロゲロ君三号を受けとり、ゲロゲロ君三号のお世話になった。
その間、なぜかユキ様が優しく背中を擦ってくれていた。

「ありがとうございます。マコト様にユキ様。」

「気にしないで。具合が悪いのが良くなればいいのよ。」

「ゲロゲロ君三号はいかがでしたか?さっぱりとした柑橘系の匂いをほんのり撒き散らすようにしたんですが・・・。」

あ。匂いを改良したんですか。
匂いなんて感じている余裕がなかった。

「ごめんなさい。匂いはよくわからなかったわ。」 

「う~ん。効果なしってことですね。まだまだ改良が必要そうですね。」

マコト様はそう言って何やら悩み込んでしまった。マコト様はどうやら魔道具のことになると真剣に考え込んでしまう癖がある。

「マコトっていつも魔道具、魔道具ってつまらないわ。ねぇ、レイチェル。立てるかしら?あちらの東屋まで歩ける?」

「ええ。大丈夫、歩けるわ。」

私はユキ様の手を借りて立ち上がると、ユキ様に支えられるようにしながら東屋に移動した。
東屋に移動すると、すでに木の椅子にはクッションがしかれていた。しかも、3つ。
遠巻きで見ている侍女が察して先回りして用意してくれたみたいだ。
私たちはそれに腰かける。
すると、「失礼いたします。」と言って、侍女が膝掛けを持ってきて座った私の膝にかけてくれた。

「ありがとう。申し訳ないのだけど、お茶と軽く食べれるものを頼めるかしら?」

「かしこまりました。」

気が利く侍女にお願いすると、もうすでにお茶が用意されていたのか、すぐに山盛りのフルーツとともに運ばれてきた。

「どうぞ、召し上がって?」

「うわぁ。すごいわ。いただきますっ!」

「ユキ、がっつかないの!」

「うふふ。気に入ってくださったなら嬉しいわ。」

どうやらユキ様はフルーツが好きらしい。目の前に用意されたフルーツに早速手を伸ばしている。それを嗜めているのはマコト様だ。
マコト様もユキ様も仲がとても良いようだ。異世界からの迷い人同士だからだろうか。

「異世界とはどういうところなのかしら?こことは違うの?」

「ええ。結構違いますが、人の心の暖かさは同じですよ。」

「この世界には美味しいお菓子があまりなくって・・・。ゲームではそんなこと全く思わなかったのに・・・。」

「あ、こら。ユキ!」

私が二人に話をふるとそれぞれ食べる手をとめて答えてくれた。と言っても、食べていたのはユキ様だけだったが。

「ゲーム?ゲームってなにかしら?」

「ちょっと変わったゲームなのよ。主人公が二人いるゲームでね。あ、レイチェルお願いだからエドワードとは別れた方がいいわよ?」

「ユキ!直球過ぎるから!そういう話はもっとレイチェル様と仲良くなってからに………。」

えっ?
異世界の話をしていたのに、急にユキ様は何を言い出すのかしら。
エドワード様と別れるだなんて、なんでそんなことを・・・。
マコト様も否定しないし。なんで?
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