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『メインヒーローの皇太子エドワードってね、見た目はこう格好いいんだけど・・・私どうしても好きになれないんだぁ。』

『どうして?』

『目的のためには手段を選ばない性格なの。怖いくらいに。目的のためなら誰かを切り捨てるくらい余裕なんだよ。現実にいたら私は敬遠したいな。』

ローズヒップティーを飲みながら目を瞑ると、そんな声が突然聞こえてきた。
懐かしい声。
でも、誰の声だったかは思い出せない。
それにしても、エドワード様が目的の為には手段を選ばない人というのは・・・どういうことだろうか。
私の前は、いつも優しくて甘いエドワード様だ。私はエドワード様の本質を知らなかったということ?
でも、これまで13年間エドワード様の側にいたけどそんな風に思ったことはない。

もし、仮に今聞こえてきた声のとうりにエドワード様が目的のためには手段を選ばない性格なのだとしたら。

マコト様を苛める私が邪魔になったとしたら。

私は殺されるかもしれない。このお腹の子とともに。
マコト様とエドワード様が想い合うようになってしまったら私はここから逃げ出した方がいいのだろうか。
逃げ出すのは貴族として恥じることだけれども、この子を殺されるくらいなら恥など捨てて逃げ出すことを選ぶだろう。

もんもんとそんなことを考えてしまった。

「レイ。調子はどうだい?マコトからレイに会ったときに吐いていたと聞いて、心配して飛んできてしまった。マコトももっと早くレイのことを教えてくれればいいものを・・・。」

考えこんでいると、部屋のドアが合図もなく開きエドワード様が入ってきた。
どうやら、マコト様に会った時に気持ち悪くなって吐いてしまったことを聞いたようだ。

「妊娠中には良くあることですわ。私が吐くたびにいちいちこちらに来ていたらエディの身が持ちません。」

ソファーに座っている私の隣に、エドワード様は腰を下ろした。
そうして、私にぴったりとくっつくと、私のお腹に手をあてた。

「そうなのか。この子はレイを苦しませているのか?」

「そういうものなんですって。」

「・・・ふむ。」

何やらエドワード様は考えこんでしまった。いったい何を考えているのだろうか。
でも、マコト様との会話もそこそこに私のことを心配して部屋まで来てくれた。
そのことがとても嬉しかった。
まだ、エドワード様の心はマコト様に向いていない。そう言っているようなものだから。

「レイが苦しんでいるのは見ていられないな・・・。」

「なにかおっしゃいましたか?」

何やらエドワード様が呟いたが、うまく聞き取れなかった。
聞き返したが、「いや、なんでもない。」と返されてしまう。
いったいなんだったんだろうか。

「エディがそばにいるとこの子も落ち着くのかとても気分が良いです。」

「じゃあ。私はずっとレイのそばにいなければね。」

「ダメですよ。執務はしてくださいね。皇太子殿下が率先してサボってはなりません。」

「ふふっ。執務よりもレイの方が大切だからね。」

エドワード様は優しく私の髪を撫でながら言う。
その手つきはとても優しくて安心して、頭をエドワード様の肩に寄りかからせた。
それが嬉しかったのか、エドワード様は私の頭にご自分の頭を寄り添わせてきた。

「ご自分のこと、この国のことも大切にしてくださいね。」
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